費用について教えてください。

○職 業   :学生

○年 齢   :21歳〜25歳

○性 別   :男性

○御質問の内容:

 私は,現在、大学で環境問題に関するゼミに所属しており、主にエネルギーについて学んでいます。その中で特に、今、大きな問題として取り上げられている原子力発電について関心を持ち調べています。原子力に関する資料を集めようと思い、様々な書籍、インターネット等々を通じて情報を集めていますが、原子力に関する費用については、ほとんど掲載されていません。原子力に関する費用というのは「原子力発電所を建設するために必要な費用」・「発電所の維持費」・「発電所解体に要する費用」・「再処理にかかる費用(輸送費の表示も含む)」「高レベル放射性廃棄物の管理・維持費」等々のことです。これらのような原子力発電所を取り巻いている費用について教えてもらえれば幸いです。どうかよろしくお願い致します。


○回 答:


 発電原価を構成する諸元については、原子力の別にかかわらず、私企業の情報であり一般に公開されていませんが、電源別の発電原価については、各事業者の有価証券報告書営業費用明細表から、求めることができます。また、お問い合わせの個々の費用について、公表されているものとしては、建設費用について、原子炉設置(変更)許可申請書に見積額の記載があります。電力会社によっては、建設費についてそのホームページにおいて公表を行っています。解体費用については、「原子力発電施設解体引当金に関する省令」(平成元年五月二十五日通商産業省令第三十号)第2条の規定に基づき発電所施設毎の総見積額が定められています。高レベル放射性廃棄物の処分費については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律第十一条第三項の単位数量当たりの最終処分業務に必要な金額を定める省令」(平成十二年十二月二十日通商産業省令第三百九十八号)において、規定されています。

 再処理費及び返還高レベル放射性廃棄物の貯蔵費については、私契約のため、単価については公表されていませんが、再処理費については、事業者毎に、「使用済核燃料再処理引当金に関する省令」(昭和五十八年三月三十一日通商産業省令第二十一号)に基づき、積立額が規定されており、有価証券報告書引当金明細表に解体引当金等と併せ記載されています。

 上記費用については、ある年度における実態を表していますが、稼働期間全体に渡たるトータルコストを現在価値に換算し総発電電力量で除した発電原価試算や、電源間における相対的なコスト比較を行うために、共通の手法で火力等他電源についての試算を行った例もありますので、参考に以下御紹介します。

 まず、国際機関である、OECD/NEAにおいてまとめられたものがあります。これまでに5回ほど行われていますが、直近では、1998年に「Projected Costs Of Generating Electricity In 2005-2010: Increasing Competitiveness Of Gas, VersusCoal And Nuclear 」が公表、出版されています。また、運転・保守コストについても「Methods of Projecting Operations and Maintenance Costs for Nuclear Power Plants」(1995年)として公表されています。国内では、通商産業大臣の諮問機関であった総合エネルギー調査会第70回原子力部会(平成11年12月)において、「原子力発電の経済性について」として、試算方法及び試算結果についてまとめた結果が公表されています。また、この試算に用いられた諸元、前提条件については、平成13年3月経済産業省において「核燃料サイクルのコスト試算について」として詳細が公表されています。