なぜ原発を造りつづけるのですか?

○職 業   :主婦

○年 齢   :31歳〜35歳

○性 別   :女性

○御質問の内容:

もう世界の先進国では原発は作らない、止めるという方向になっていますがどうして日本では 推進なのですか。
どうして世界の先進国が原子力を止める方向なのか分かりますか?
原子力発電所って危険なものではないですか?

原子力発電所の寿命は50年、(ですよね)
それに対して放射性元素の半減期は何年ですか?100年、200年、1000年?
その長い年月を誰が管理するのですか?

わたしたちと、わたし達の子どもが生きる時代だけですべての原発の寿命は尽きてしまいます。
そのあと、どうするのですか。
もっと自然エネルギーを推進して 原子力に頼らない、石油に頼らない国を目指すことが大切だと思いますがどうですか。

もっと安全な小さな発電所を都会に作ると廃熱を利用できて効率が良くなる。
いわゆるコージェネレーションですね。   賢い国 日本!知恵を出せば
未来に放射能汚染のない地球を残せると思います。

原子力委員会のみなさん、知恵を出してください、がんばってください。
わたしも一市民として、意思表示していきます。


○回答:
 御質問が多岐に渡りますので、以下内容に応じ、分けて御回答させていただきます。

1.原子力発電の必要性について
 我が国は、原子力発電を除くと、1次エネルギーの95%以上を、海外からの輸入資源に頼っており、原子力発電を自給エネルギーに含めることにより、その自給率を20%まで高めています。また、原子力発電は、供給安定性に優れ、他の資源に比べて燃料の備蓄が容易であること、発電過程において二酸化炭素を発生させないことから、その導入が積極的に進められてきたもので、今後とも、我が国における主要な電源として電力供給を担っていくものと考えます。諸外国においてもそれぞれの資源賦存状況、政治的事情などにより、エネルギー供給構造が異なっているものと理解しています。
 なお、先進国でも最近、原子力見直しの動きが見られ、一例として、アメリカでは今年2月、2010年までに新規原子力発電所を建設、運転開始を目指した「原子力2010」計画を政府が公表しました。フィンランドでは同じく今年5月、原子力発電所の増設計画が国会で承認されています。また、スウェーデンは早くから原子力発電所の2010年までの全閉を決めていましたが、1997年閉鎖期限を撤廃するとともに、1999年に1基を停止した後は、代替エネルギー源の確保が困難なことなどから、当初昨年7月を予定していた2基目の閉鎖については、現在具体的なスケジュールが定まっていない状況にあります。

2.原子力の安全性について
 原子力の開発、利用は、たゆまぬ安全確保のための努力が必要であり、事業者による自主保安活動の徹底、国による原子力施設の設計、建設、運転等各段階における原子炉等規制法に基づく、厳格な安全規制が不可欠です。同時に、原子力は国民の理解を得て進めていくことが重要であり、関係者がこれらの取組みや現状について、情報公開を積極的に進めることにより、活動の透明性を高めるとともに、安全確保のための諸活動に最善の努力を払うべきと考えています。
 この点、東京電力による自主点検及び格納容器漏洩率検査における不正につきましては、この安全確保体制を根幹から揺るがすものであり、現在、調査が進められているところですが、これまでの調査から纏められた再発防止対策については、早急に対処するため、本年10月に開会した臨時国会に、原子炉等規制法、電気事業法等の改正案を上程したところであります。

3.放射性廃棄物の処分について
 放射性廃棄物については、その核種に応じ適切な処分方法が取られております。現在、運転中の原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については、日本原燃(株)が青森県六ヶ所村に設置した最終処分場で埋設処分を行っています。今後、原子力発電所の解体や使用済燃料の再処理により発生する低レベル放射性廃棄物の中で比較的放射能レベルの高い廃棄物や高レベル放射性廃棄物などについては、現在、その安全な処分に向けた規制基準等について検討を行っているところです。また、前者については、日本原燃が六ヶ所村の処分場での処分可能性について調査を行っているところであり、高レベル放射性廃棄物については、その処分に向け設置された原子力発電環境整備機構において、将来の処分場立地に向けた調査が、現在進められています。
 特に、高レベル放射性廃棄物については、放射能レベルが高く、かつ、半減期の長い放射性物質を多く含むため、放射能の十分な減衰を待つには非常に長い期間がかかります。このため、高レベル放射性廃棄物については、安定な形態に固化(ガラス固化)して30〜50年程度冷却のため貯蔵を行った後、地下300m以深の地層中に処分(地層処分)することを基本方針としています。この地層処分では、地下深くの安定した地層(天然バリア)に、複数の人工障壁(人工バリア)を組み合わせた「多重バリアシステム」を用いることにより、最終的にはモニタリングなどの人為的な管理を終了しても安全を確保できるようにしています。このように、処分後のいかなる時点においても人間とその生活環境が高レベル放射性廃棄物中の放射性物質による影響を受けないようにすることとしています。

4.自然エネルギーの推進について
 自然エネルギーは、設備容量の実績で1999年度、風力発電で8万kW、太陽光発電で21万kW、水力発電で4433万kW、などとなっていますが、いずれも自然条件に左右され、設備容量に比して稼働率が低く(大体10数〜20数%程度)なり、発電電力量は小さなものとなっています。昨年7月の総合資源エネルギー調査会総合部会/需給部会報告の中で示されている長期エネルギー需給見通しにおいては、2010年度目標ケースで、設備容量換算で、風力発電で300万kW、太陽光発電で482万kW、水力発電で4810万kW、とされており、風力で約36倍、太陽光で約23倍と飛躍的な導入目標(水力発電については、開発地点やコストの関係で新規導入はあまり見込まれていません。)となっていますが、それでも全体の電力供給目標に対する新エネルギーの割合は、1%程度を占めるに留まっています。
 また、原子力発電所1基(100万kW)を太陽光発電や風力発電で代替するために必要な敷地面積は、太陽光発電で山手線の内側面積とほぼ同程度、風力発電ではその約3.5倍となっております。
 このように、自然エネルギー源は、大規模開発・供給に向かないこと、気象条件に依存し安定供給が困難なことなどから、分散型電源としての採用は引き続き期待されますが、主要電源として現在の火力発電、原子力発電に代替するということは、当面ないものと思われます。

5.コージェネレーションの導入について
 御提案のコージェネレーションにつきましては、効率的な熱使用のために需要地における導入が重要であり、この観点から先の地球温暖化対策推進大綱においても、現状約150万kWから、2010年で約460万kWと3倍の導入を見込んでおり、積極的な導入が期待されています。
 しかしながら、ライフサイクルでキロワットアワー当たりの二酸化炭素排出量を見ると、天然ガスによるコージェネレーション発電は、石炭火力電源に比して二酸化炭素排出量は半分以下となりますが、原子力発電に比較すると約15倍の二酸化炭素が排出されることとなります。

6.環境と調和した持続的な社会の発展について
 地球温暖化問題は、放置すれば必ず我々の未来に影響を及ぼします。また、中国等アジアにおいては我が国のたどった高度成長の段階に入りつつある国があり、例えば中国のエネルギー使用量を現在の我が国レベルに置き換えると、世界のエネルギー需要を40%近く押し上げることとなります。このようにエネルギーセキュリティの確保、先進国としての二酸化炭素問題への対応の責務等我が国を取り巻く環境、またそのおかれた状況を踏まえると、引き続き持続的な発展を果たしていくためには、現実的なエネルギー供給確保策を考えていくことが重要であると考えます。