リスク評価について

○職 業   :学生

○年 齢   :20歳以下

○性 別   :女性

○御質問の内容:

 原子力にかんするリスク評価はどこまでできているんですか。いつ頃になればきちんとしたリスク評価ができるのでしょうか。


○回 答:

 原子力施設の安全性に関するリスク評価についての御質問かと思います。この場合のリスク評価とは、リスクを定量的に評価するための手法である確率論的安全評価(PSA:Probabilistic Safety Assessment)または、確率論的リスク評価(PRA:Probabilistic Risk Assessment)と言っています。

 PSAとは、原子力施設等で発生し得るあらゆる事故を対象として、その発生頻度と発生時の影響を定量的に評価し、その両者で判断される「リスク(危険度)」がどれ程小さいかで安全性の度合いを表現する手法です。

 PSAでは、原子力発電所において起こりうると考えられる種々のトラブルが発生する頻度と、その影響を網羅的に計算します。発生する頻度は、トラブルのきっかけとなる機器の故障や破損などが起こる頻度と、そのような事態に対応するために設けられた安全装置が故障する確率を逐一計算して求めます。影響は、これらの機器の故障や破損が生じ、さらに安全装置も故障するようなトラブルのシナリオ(事象)に基づいて計算します。

 原子力施設の安全審査等での安全評価では、代表的な通常考えうる異常・事故事象を最大級の事故事象を含めて想定して、その異常あるいは事故に至る過程を解析し、原子炉の損傷の程度や公衆の被ばく線量を評価する決定論的安全評価が主に行われており、一部確率論的な考え方が用いられております。

 しかし近年では、PSAの適用が進みつつあり、PSA技術の進展に応じて段階的にその活用が図られてきています。既に原子力発電所の定期安全レビューやアクシデントマネジメント(事故管理)の整備に活用されるなど、安全管理等に取り入れられてきています。

 実際に原子力施設にPSAを適用する場合は、評価の目的の範囲に応じて、様々な箇所での人的要因(ヒューマンファクタ)の評価、地震のような原子力施設の外側からの事象の影響についての考慮、施設の中で事故がどのように進展していくかのシミュレーション、放射性物質が施設外に放出された時の公衆への影響の評価等が必要であり、その際使用するデータや事故に関する知識には不確実さがあるため、PSAの結果を用いる際には十分な理解と注意が必要です。

なお、原子力における安全評価については、原子力安全委員会
http://nsc.jst.go.jp/
の安全目標専門部会
http://nsc.jst.go.jp/senmon/shidai/senkaisi_kensaku_f.htm
における議論の中でも扱っております。評価の現状につきましてはこちらも御参照ください。