低レベル放射能の利用開発について

○職 業   :その他

○年 齢   :66歳〜70歳

○性 別   :男性

○御質問の内容:


 低レベル放射性自然物質に関しての輸入、取扱い、保管等に関する規制される放射線量の数値などの法制約等などについて知りたい。古来日本人は低レベルの放射能は、温泉療法などで恩恵を受けながら暮らして来ました、余りにも強力な核爆弾の影響で、我々は全ての放射能に過剰拒絶反応を示しています。 
 もともと放射能は貴重なエネルギーであり、しかも半永久的エネルギーです。
 その低レベルの放射能の利用による恩恵は計り知れない広範囲で大きな未知の分野が残されて居ります。
 この分野の開発に早急に着手すべき時だと考慮します。省エネ、環境機器、医療・健康機器等など多くの分野での新技術開発に寄与出来ると信じます。

○回 答:
 御質問の中で「低レベル放射性自然物質」とは、天然に存在する低線量の放射性物質のことと解釈しお答えいたします。
 一般の方々にはあまり知られておりませんが、放射性物質あるいは放射線は、すでに現時点においても、医療、農業、工業等の分野において広く利用されております。これまでに実用化された放射線利用の例を図1及び図2に示します。
 まず、身近に感じられる分野と思われる医療について例を挙げると、心臓の異常や肺を診断する「胸部X線(レントゲン)検査」、胃などを診断する「胃のX線検査」、身体を輪切り状に撮影するX線CTスキャン(X線コンピュータ断層撮影検査)等があります。

 工業分野では、X線やガンマ線の透過力を利用して大型タンカーやジェットエンジンの検査などに用いられています。この他に、蛍光灯のグロー放電管や煙感知器にも放射性物質が使われています。
 農業分野においては、放射線は農作物の品種改良や、農薬を使わない害虫駆除などに用いられています。ジャガイモの保存のための発芽防止にも使われています。
 なお、放射線の利用につきましては別の御質問へのお答えの中でも紹介しておりますので、そちらも合わせて御覧下さい。
 (質問19「現在,放射線はどのように利用されているか?また、利用されていることで人体に影響は無いのか?」

 また患者の身体的な負担の少ない放射線診療の実現、食品照射による食品衛生の確保、排煙からの窒素酸化物・硫黄酸化物の除去技術などによる環境保全、高分子材料の改質等の効率的なプロセス技術の製造業への応用等、様々な分野における放射線の利用が一層期待されており、日本原子力研究所独立行政法人放射線医学総合研究所を始めとする多くの関係機関で更なる研究開発が進められています。これらの放射線を利用した技術の開発、利用は国民生活の質の向上、環境と調和する循環型社会の実現、活力ある産業の維持・発展等、21世紀の社会的な要請にこたえることになるでしょう。

 もちろん放射線は、取扱いを誤れば健康に影響を及ぼす危険な道具という面もありますが、安全に利用するための法令も体系化されており、御質問の天然に存在する低線量の放射性物質につきましてもその濃度や数量に応じて規制の対象となっております。規制に関する法令は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びこれらの関連法令等があり、規制対象となる数量等につきましてもそれらの中に記載されております。放射性物質の規制についてはこちらでもう少し詳細に御紹介いたします。

 なお本回答については、文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課の協力を得て作成いたしております。