原子力委員会がこれまで示してきた放射性廃棄物に係る処分事業の考え方とITERとの整合性について

 

○職 業    : 公務員

○年 齢    : 46歳~50歳

○性 別    : 男性

○御質問の内容 :

現在、文部科学省によりITERサイト候補地の選定作業が進められており、同省の設置した「ITERサイト適地調査専門部会」は、調査対象地の公募に当たり、「ITERサイト国内調査条件」中の「調査項目」に沿った提案書の提出を求められた3道県の提案書等に基づき調査を行い、10月18日、その結果を取りまとめました。

 私は、この調査選定作業、特に「ITERサイト国内調査条件」の内、

 3.社会環境条件

 (4)地元の協力

 ② ITER施設に係る、ホスト国の規制体系が適用される。ITERの建設及び運転に際し、ホスト国の現行のあるいは今後整備される法令・基準類に従って、

 (中略)

  2. 運転及びデコミッショニングにより発生する数万トンオーダーの低レベル放射性廃棄物の処理/処分が行われうること、

 に地元の理解と協力が得られること。

との記述が、基本条件とされていることについて、これまで貴委員会により示されてきた放射性廃棄物の処理・処分の考え方と異なると考えており、貴委員会の見解をお伺いしたいと思います。

 具体的には、ITERから発生する放射性廃棄物の処理/処分については、現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物は、例えば50~100m程度の深度の地下処分が考え方として示されているだけで、それ以外の放射性廃棄物を含め、具体的な処理/処分方策は今だ検討段階にあることは、貴委員会バックエンド対策専門部会報告(H10.5 RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的な考え方について/H10.10 現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について)のとおり明らかであります。

 以上のように、ITERから発生する放射性廃棄物の具体的な処理/処分方策等を説明しないまま”処理/処分が行われうること、に地元の理解と協力が得られること”をITERサイト適地調査の基本条件とすることは、前述の専門部会報告(H10.5 RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的な考え方について)の「さいごに-国民の理解を得つつ処分事業の着実な実施を図るために-」に次のように掲げている貴委員会の基本的な考え方と異なるものと考えます。見解をお伺いします。

 なお、この「ITERサイト国内調査条件」は、昨年11月の第73回原子力委員会に旧科学技術庁が「ITERサイト国内調査条件(案)」として提出した資料とほぼ同じ内容であり、当該調査項目については修文はありません。

さいごに-国民の理解を得つつ処分事業の着実な実施を図るために-

 処分事業が遅滞なく着実に実施されるためには、技術的・制度的に安全の確保が図られることはもちろん、当該事業に対する国民の不安をなくし、理解を得られることが不可欠である。

 事業の実施に当たっては、当該事業の必要性と共に、どのような廃棄物が、どのような処分事業主体によって、どのように処分されるのか、特に安全確保はどのように図られるのか、といった事業の全体像が、計画の初期段階から国民に周知される必要があり、このための積極的な情報の提供が行われなければならない。その際、正確・詳細な情報と共に、専門的な知識を持たなくても理解できる分かり易い情報が提供されることが重要である。このため、処分事業主体が設立されるまでは、準備会が、処分事業主体設立後は、事業主体が中心となり、積極的な情報提供を行うことはもちろん、国においても当該事業の必要性や安全確保の考え方等について広報を行っていくことが重要である。(以下、省略)

(原子力委員会バックエンド専門部会報告「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的な考え方について」より)

 

○回 答 :

 平素より原子力政策に関心をお持ちいただき、ありがとうございます。

 一般に原子力政策を推進するに当たっては、原子力委員会が示す考え方と原子力の関係機関が実施することとの整合性をとりつつ進めてきています。したがってITERについても同様に進めています。

 御存知のように、ITERにつきましては、当委員会の下、核融合会議にて技術的側面に関する検討を行い、社会的側面に関しては、ITER計画懇談会を設置し、検討を実施しました。特にITER計画懇談会の報告書につきましては、ITER計画の全体像、ITERの必要性、安全確保の考え方、どのような廃棄物が出るのか、どのように処分するのかなどについても示しているところです。なお、この報告書は、約1ヶ月間の公開期間(4/3~5/2)を設け、広く国民の皆様より御意見をいただき、5月18日にとりまとめられました。原子力委員会は、このITER計画懇談会及び核融合会議の検討結果を踏まえ、本年6月5日、「国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について)を決定したところです。

 ITER計画懇談会の報告書に記載しておりますように、ITERは20年間の運転の結果、トリチウムが機器に付着すること、真空容器内部の機器等が中性子の照射により放射化することにより、廃炉・解体時に放射性廃棄物が発生します。ITERで発生する放射性廃棄物は、すべて低レベル放射性廃棄物と呼ばれるものであり、放射性物質の濃度に応じて、つぎの3種類に分類されますが、それぞれに対し、処分の考え方*)は既に示しています。

(1)高βγ濃度区分低レベル放射性廃棄物  :「地下利用に十分余裕を持った深度に処分」

                                (例えば地表から50-100m程度の深度)

(2)低濃度区分低レベル放射性廃棄物  :浅地中の「コンクリートピット処分」

(3)極低濃度区分低レベル放射性廃棄物  :「素堀り処分」 

*「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的な考え方について」

  原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会(平成10年5月)

 

 ITERサイト適地調査における調査対象地の公募開始(本年7月5日)にあたっても、上記のことを踏まえて、調査項目が示されたものと考えます。

 我が国における低レベル放射性廃棄物の具体的な処理処分については、「低濃度区分低レベル放射性廃棄物」は、青森県六ヶ所村において実際に処分が実施されています。他の低レベル放射性廃棄物に関しましては、今後、軽水炉等の廃棄物処分事業を、国民の理解を得つつ着実に実施していきたいと考えております。数十年に渡るITERの建設・運転の後の廃棄物処理処分におきましても、軽水炉等に習い処分できるものと考えております。そのために、今後も、より一層国民の皆様の理解を得る努力を払うつもりでおりますので、よろしくお願い致します。