長計策定会議FBRへの意見

○職 業   :農林水産業

○年 齢   :51歳~55歳

○性 別   :男性

○御意見の内容:

高速増殖炉開発についての意見

 長計策定会議で高速増殖炉(以下FBR又はFR)の研究開発、及び「もんじゅ」についての審議が始まりましたが、このテーマに深く係わっている委員が多いせいか、一面的な発言が見受けられます。そこでいくつかの論点を提案します。

○FRの研究開発は原爆製造を目的に始り、世界初の原子力発電所は米国のFBRであるEBR-1が1951年末に発電を開始し、それ以降核兵器保有国でFBRの開発が加速したことは、まず議論を始める前の基本認識と考えます。1952年、米国のベイリー委員会は「原子力(FBR)より再生可能エネルギーの方が有望」と報告しています。
 我国でも1956年の第1回長計で既に「最終的な動力炉は増殖動力炉とする」とされ、そのために相当規模の試験炉の輸入を提言しています。第2回長計では実用化の時期として、1970年代後半とされ、倍増時間も約10年とされていました。しかし、現行の長計ではFBR懇談会の報告を受けて、FBRサイクルは「潜在的可能性が最も大きいものの一つ」に過ぎず、「もんじゅ」は「研究開発の場の中核」に評価を下げた訳です。
 世界中で研究開発が始って50年以上経ち、さらに実用化まで後30年、50年(資料16-2)というのでは、とても実用技術として成立たないのは明らかです。

○現在、サイクル機構を中心に、「FBRサイクル実用化戦略調査研究」がなされていますが、フェーズⅡの中間報告ですら、実証炉の炉型や再処理の方法をいくつか提案して、現行の「もんじゅ」に続くとされた実証炉計画はご破算になったのではないですか。これに対する評価をまずなすべきではないですか。ナトリウム冷却炉に絞り込んだはずの日本のFBR開発のどこに問題があったのかについて評価されたい。

○FBR懇談会の報告(97)ではFBR開発を進める上での今後の課題として4点を挙げています。(安全の確保、住民・国民の理解と合意形成、コスト意識と計画の柔軟性・社会性、核不拡散への努力)これら4点について、当事者であるサイクル機構及び国がどのように取組み、それがどう評価されたのか、この策定会議で審議されるべきです。
 そしてこの懇談会の報告を受けての「新法人の基本構想」(新法人作業部会-中間報告)では、「FBRの実用化が予定の路線とされていた従来の考え方から脱却して、(実用化は)新法人による研究開発成果によって決る」として、「もんじゅ」からの実証炉開発はここで終了したのではないですか。現行長計ではこの点について言及しませんでしたが、今回は是非審議されたい。

○本来FBRとはその増殖性にあったはず(熱中性子炉はFBRが実用化されるまでのリリーフ)が、いつの間にかウラン資源の有効利用より高レベル放射性廃棄物量の削減・核種分離変換が主要な目的とされるようになってきました。第16回会議の資料からも伺えますし、今まで関係者が多く発言しています。「もんじゅ」が臨界に達する前に当時の動燃理事長が発言していましたし、昨年12月のIAEA/TWGFRでも関係者が、「もんじゅを再開して5~10年データを取ったら、後はMA燃焼に取組む」と言っていました。FBRの審議からウラン資源の有効利用やエネルギーセキュリティの項目は外すべきではないですか。

○FBRサイクルの特性と意義(資料16-2)では2050年以降の軽水炉とのリプレースを想定していますが、全て原子力発電がFBRに置き換わった際、必要となるプルトニウム量、軽水炉用の再処理工場、FBRの使用済燃料再処理工場、燃料加工工場、これらから発生する放射性廃棄物の種類及び量、そして何よりこれら低レベル、中レベル、高レベル、TRU、ウラン廃棄物の最終処分場をどこに作るのか、を先に議論すべきではないですか。英仏に委託した再処理による返還廃棄物すら中レベル・低レベル・回収ウランについては引取る自治体すらなく、ましてや最終処分場については候補地すらありません。FBRサイクルが導入されれば、日本列島中にプルトニウム燃料と使用済燃料、そして放射性廃棄物が日常的に行き交うことになります。
 最終処分場、高レベル廃棄物については中間貯蔵施設も含めて、まずこの後始末をしてから軽水炉やFBR、そして再処理という議論を始めるのが順序であり、今までに学んできた学習ではなかったのですか。

現在の全国原子力発電所の設備容量4712万kW 
これを全てFBRに替えると、「もんじゅ」級で約168基
「もんじゅ」燃料の核分裂性プルトニウムを1.0tとすると168t(fiss)
年間取替え量を「もんじゅ」で0.4tとすると67.2t/年(fiss)
六ヶ所再処理工場で抽出されるプルトニウムは約5~6t/年(fiss)
FBRの増倍年数を40年とすれば、2世代かかる
FBRの増倍年数を90年とすれば、3世代かかる

○当策定会議では「もんじゅ」の運転再開を前提とした発言もありますが、利害関係のある人は別として、住民や国民は再開を望んでいないことは明らかです。再処理論議の際にも、政策変更に伴う責任論噴出を恐れて既定路線の堅持を選びましたが、今回のFBR論議でも同じ過ちを犯さないよう願う次第です。