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第290号 原子力委員会メールマガジン

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.290 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2020年4月3日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆

┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣委員からひとこと
┣ 会議情報
┃  (3月24日) 
┃  ・放射化学について(大阪大学)
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━・・・━━ 委員からひとこと ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
昔からの手法に学ぶ最新技術―ミクロオートラジオグラフィの場合
                                中西 友子

福島原発事故による放射性物質を吸収した米の分析など組織中の化合物や元素の
微細な分布や動きを調べるために、ラジオアイソトープ(RI)の利用は
欠かせない。しかしかつて開発された手作業の方法は今ではあまり利用されず、
必要な薬品も製造されなくなり再び同じ手作業で行うことが困難となってきた。
ここでは測定現場における研究手法の一つの問題点について触れてみたい。

生体組織の中での化合物や元素の分布を詳細に画像化する技術に
ミクロオートラジオグラフィ(MAR)という手法がある。この方法は、生体試料に
RIを吸収させたのち、生体組織の薄い切片を切り出し、その中にどの位のRIがどの
ように蓄積されたのかを調べるために開発された。この方法では第一に薄い
生体切片をどのように切り出すかが問題であり、そのため生体試料を樹脂の中に
埋め込んだり、凍結を行ったりして、その後にミクロンオーダの薄さに切り出して
測定試料とする。さらにその中に取り込まれたRIから放出される放射線を何らかの
形でイメージとして取り出さなくてはならないが、そのためには薄い感光フィルム
を利用する。試料をこのフィルムと接触させた後、現像して顕微鏡下で像を
解析するのである。分解能はフィルム上のハロゲン化銀粒子の大きさであり、
非常に分解能が高いイメージング手法である。

さてその感光フィルムをどのように作るのかが問題である。組織切片をガラス板の
上に接着させて、その上からフィルムとなるエマルジョン(乳濁液)を塗るのか、
あるいはガラス板の上に感光フィルムをまず塗っておき、その上に試料切片を
載せるかで得られる像の質が異なってくる。微細な歪のでき方に差があったり、
エマルジョンの拡散の仕方やその試料との相互作用が微妙に異なるのである。
この違いは生物材料の種類によっても当然異なり、ミクロンオーダの歪みは
顕微鏡下でないと分からない。また、フィルムを現像するとRIの分布像は得られる
ものの、元の組織片の顕微鏡写真と重ね合わせなければ、どこにRIがあるのか
どうかを解析することはできない。よってこの放射線像と顕微鏡像の両方をいかに
組織の歪みを少なくして重ね合わせることができるのかが実験上の重要な
テクニックとなっている。

実は、かつては原子核乾板と呼ばれるフィルムを塗布したガラス板が市販されて
いた。原子核乾板とは、荷電粒子が通った後の微細な飛跡を調べるため、
素粒子実験に用いられてきた検出器でもある。しかしこの原子核乾板はニーズが
減少してきたため、現在ではもう市販されてはいない。また塗布できるフィルム
作成用のエマルジョン液もとうとう日本では殆ど手に入らなくなってしまった。
そこで、生体組織内のRI分布を詳細に調べるためMAR手法を使おうとすると、
個々の研究者が努力して上に述べた方法を獲得する以外に道はない。
 
参考だが、この原子核乾板を応用した技術は、最近では、宇宙からのミュー粒子の
透過度を利用したミューオンラジオグラフィとして、火山、ピラミッドや
原子炉容器などの内部構造の非破壊イメージング手法として使用されている。
しかし、この原子核乾板に相当する機材を独自に作り上げるためには相当な苦労が
あったのではないかと推察している。

話を福島原発事故後の放射性物質を吸収した米の分析に戻すと、玄米内の
セシウム137(Cs-137)の分布を詳細に調べようとすると現状ではMARに頼る他に
手法はない。玄米をスライスして通常用いられているイメージングプレート(IP)
の上に載せて放射線像を得ても、分解能はあまり高くないので胚芽部分に
高いことが分かる程度である。そこで研究者による試行錯誤の試みが行われること
になる。まず、玄米試料は樹脂などに埋め込まずそのまま凍結してガラスの上に
接着させる方法を工夫する。フィルムを作成するエマルジョンは別のガラスの上に
塗布し、非常に薄いシートをかぶせ、そのシートの上に試料を圧着し低温で露光
させる。この方法では露光後に試料とフィルムはうまく剥がれるようになり、
顕微鏡下でそれぞれの像を撮り重ね合わせることができるようになった。
これらの過程は実際の試料と向き合った研究者による改良の連続の結果、
到達することができたものである。

そしてこの方法でMARを行ってみたところ、IPでは全体に放射能が高く見えた
胚芽部分の中でも特に葉や根の原基の部分が高い像を得ることができた。そして、
玄米のその他の部分では、果皮を除くと大部分を占めている胚乳部分にはCs-137は
殆ど分布していない像を得ることができた。またCs-137を吸収させると植物中の
どこにどのように蓄積するのか、導管と師管をどのように動くのかも時間を追って
植物の茎の切片のMARから解析することもできた。この方法ではかつて得られた
ミクロラジオグラフィよりもはるかに分解能の高い像が得られるようになった
ことは特筆されるべきだろう。

実験現場のニーズから生じる個人の発想に依存する実験には、案外古いと思われて
いる手法を手探りで改良していくことも重要なことであるように思われる。その
ような努力の重なりの上に貴重な研究成果が得られていることを再度認識していく
必要があると考える。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。

会議は霞ヶ関周辺で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●3月24日(火)の会議の概要は以下のとおりです。
詳しくはウェブサイトに掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】放射化学について(大阪大学)

<主なやりとり等>
 大阪大学より、放射化学の取組について御説明いただき、
  その後委員との間で質疑を行った。
  委員より本分野における女性の割合などについて質問があった。


●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、【New】マークを付けております。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
┗原子力防災会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/)
┗原子力災害対策本部会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/)
┗原子力立地会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/)

■内閣官房
┗原子力関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/)
┗最終処分関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/)
┗原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html)
┗「もんじゅ」廃止措置推進チーム
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/monju/index.html)


■経済産業省
┣高速炉開発会議
(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html)
┣エネルギー情勢懇談会
┣高速炉開発会議戦略ワーキンググループ
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kosokuro_kaihatsu/kosokuro_kaihatsu_wg/index.html)

■資源エネルギー庁
┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html)
┗原子力小委員会
(http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/index.html)
┣自主的安全性向上・技術・人材WG
┣放射性廃棄物WG
┣地層処分技術WG
┗原子力事業環境整備検討専門WG
┗電力基本政策小委員会
┣総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/)
┣長期エネルギー需給見通し小委員会
┣発電コスト検証WG
┗電力需給検証小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu)
┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)
┗エネルギー情勢懇談会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)
┗使用済燃料対策推進会議
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/shiyozumi_nenryo/index.html)

■原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/)
┗◆【New】原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html)
┣原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html)
┣放射線審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html)
┣国立研究開発法人審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html)
┣量子科学技術研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html)
┣日本原子力研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html)
┣原子力規制委員会政策評価懇談会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html)
┗原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html)
┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html)

■文部科学省
┗原子力科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm)
┣原子力人材育成作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm)
┣原子力研究開発・基盤・人材作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/100/shiryo/1420802.htm)
┣核融合研究作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm)
┣核不拡散・核セキュリティ作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm)
┣原子力バックエンド作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/099/index.htm)
┗核融合科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm)
┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm)
┗調査研究協力者会議等(研究開発)
┗「もんじゅ」廃止措置評価専門家会合
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/022/index.htm)

■復興庁
┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html)
┗原子力災害からの福島復興再生協議会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html)

■環境省
┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す る専門家会議
(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html)

■厚生労働省
┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896)


●次号配信は、2020年4月17日(金)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、佐野 利男委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せいただいた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていただきます。)
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