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第288号 原子力委員会メールマガジン

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.288 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2020年3月6日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆

┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣委員からひとこと
┣ 会議情報
┃  (2月25日) 
┃  ・グロッシーIAEA事務局長との意見交換
┃  (3月3日) 
┃  ・アジア諸国における人材育成シンポジウムについて
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━・・・━━ 委員からひとこと ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
         英国の地層処分と情報提供
                            岡 芳明

昨年11月末に日英原子力対話で訪英する機会に、英国の放射性廃棄物の
地層処分の担当機関であるRWMを訪問したので報告する。なお、海外機関
訪問に際しては、事前にホームページ等で理解をしてから話を聞き、
日本の参考になることを考えることにしている。

RWMの活動
RWM(Radioactive Waste Management )はNDA(Nuclear 
 Decommissioning Authority)の100%子会社(下部組織)で2014年に
設立され、約200人が仕事に従事している。場所はオックスフォードに
近いハーウエルにある。ハーウエルは英国原子力研究発祥の地で、
サイクロトロンのほか、各種の研究機関が立地している。英国の企業との
連携の拠点になっている。

英国の地層処分場の立地活動は、過去にも行われた。地元は賛成したが、カンブリ
ア州が反対して不成功に終わっており、その教訓を踏まえて、2014年に白書「地層
処分の実施」が公表され、現在の活動が開始されている。

英国の立地活動はコミュニティの合意に基づいた政策レビューを原則とし、Consent 
 base(同意ベース)のアプローチと呼ばれている。立地プロセスは、関心の喚起、
コメントによる関与、サイト準備の順で進められる計画である。州は参加するか
しないか決めないといけない。参加しないときは意見を言う権限はないとのこと
であった。

地質のスクリーニングについては、英国地質調査所のマップが、地域ごとに作られて
いるので、それを利用している。これまでに資源探査のためなどにボーリングで採取
された岩のデータから、地下の地層に関する3次元の地質マップがある。昔の石炭の
探鉱のみならず、近年のシェールガスの探査で多数のボーリングデータが集まって
いるのではと推測する。

英国の地層は、イングランド南部のフランスと似た地質、イングランドとウエールズ
地方の地質、スウェーデンやフィンランドに近いスコットランドの地質に大別できる
そうである。

立地活動と地質のスクリーニングが、RWMにおいて、別の活動として行われている
ことも英国の特徴である。すなわち、立地活動は、地域の関心喚起が目的で、
処分の安全性は説明の中心に置かれていない。RWMのホームページを訪問すれば、
これらの技術情報が得られるようになっている。

規制や手続きには原子力規制、環境規制、開発同意の3種類があり、原子力規制庁
(ONR)や環境省は文書で同意を発行する。

今後5年間で、2サイトを選んで10〜15年かけて立地したいとの希望である。
反対か賛成かではなく、問題を中性化するのが良いと考えられている。
この点も参考になる。

地層処分は世界の多くの国で立地活動が行われており、教訓は国際機関でまとめ
られている。規制についても各国のネットワークがあるので、それを生かすこと
ができる。

RWMはイングランドとウエールズに対するサイト評価報告書を、2019年12月の総選
挙後に公表する予定とのことであった。(報告書は2020年2月に公開されており、
処分場の必要性などとともに、どのように評価を進めるかが説明されている。)

日本でも地層処分に向けた活動が行われている。日英とも国民や地域の関心喚起の
活動が行われている。日本では関心喚起の活動が、技術的安全評価の準備活動と
とともに、あるいはそれ以上に必要であると感じる。

一般向け情報の日英比較
RWMと日本の地層処分担当機関のホームページの一般向け説明を比較してみた。
比較したのはRWMの「Introduction to geological disposal」 とNUMOの「知って
ほしい地層処分」である。

日本は技術的な安全の説明が多い。英国は、細かい技術的な安全性の説明では
なく、処分場と人工バリア、天然バリアのポンチ絵と、閉鎖後は保守不要である
ことなど、論理的な要点を述べている。

NUMOのパンフレットには、ガラス固化体、原子燃料サイクル、プルトニウム、
ステンレス容器、ガラス固化体からの放射線の影響、オーバーパック、ベント
ナイト、緩衝材等の言葉が出てくる。これらの言葉はRWMの一般向けパンフレット
には出てこない。

ページ数はRWMが38頁 NUMOが23頁で、RWMは写真だけのページも多い。写真は
イメージの改善に役立つと感じる。ガラス固化体という言葉は、RWMのこのパンフ
レットには出てこない。

RWMのホームページは多様なホームページ訪問者があることを想定して、5種類の
リンクが示されている。この中の一般向けの情報の項目である「Learn about 
 geological disposal」をクリックすると、短いビデオを活用し、説明文は短い
が、幅が広い。ホームページ訪問者向けの視点で作られている。日本のホームペー
ジは細かい技術的な説明が並んでおり、英国の方に一日の長があると感じる。SNSに
慣れた世代には、短いビデオは有効で、SNS対応の点でも英国は進んでいる。

RWMとNUMOの一般向け説明の違いを比較したが、この問題は、次に述べるように、
根が深いことに気が付くべきである。

日本の原子力関係者は、自分の理解している放射性廃棄物や原子力の安全性につい
て、国民や地元に説明することが広報だと考えていないだろうか。職業倫理的には
正しいかもしれないが、コミュニケーションの目的が信頼構築であることを考えると、
これは短絡的すぎないか。理解するとは「腑に落ちる」ことと考えると、上から目線
と誤解される恐れもある。

そもそも原子力専門家と同じ理解を一般国民に求めるのは無理である。自分が専門家
になるのに、何年かかったかを考えてみるとよい。昨年7月のメールマガジンで、
リスクコミュニケーションについて述べたように、かえって逆効果かもしれない。
RWMは技術的説明をホームページの別項目で行っている。

原子力のコミュニケーションを折に触れて勉強してきたが、米国産業界が行っている
メディア対応がコミュニケーションの要点と誤解していたことがある。コミュニケー
ションの多様さや複雑さを理解するのが理科系の自分には難しかったと、以前に述べた。
原子力関係者の大部分は、理科系・技術系で、コミュニケーションの心理面などの
複雑さを理解できていないことに気が付いていないのではないか。問題を理解すれば、
対策は立てられるのだが。

英国の橋渡し情報
RWMは、地質のスクリーニングに関する国民や専門家向けの情報として、①非技術的な
聴衆向けのサマリーやビデオ、②技術的だが、地層処分の専門家でないグループ向け
の情報やビデオ、③地層の専門家向けの情報:英国地質調査所の報告書の3種類の
情報を用意している。

日本の参考になるのは、特に、②技術的だが、地層処分の専門家でないグループ
向けの情報やビデオが用意されていることである。RWMの専門家が、むき出しに
なった地層の前で、地層とは何かなどを短いビデオで説明している。これは一般
向け情報と専門家向け情報をつなぐ情報で、原子力委員会が提案している根拠情報
作成提供の「橋渡し情報」の一つである。

英国・米国の厚く、実践的なコミュニケーションの社会科学的理解
英国は牛海綿状脳症(BSE)の政府の失敗の反省などから、科学コミュニケーション
の長い歴史と、厚い科学コミュニケーターの層がある。米国はスリーマイル島原発
事故後の1980年代に、リスクコミュニケーションについて、全米研究協会が多数の
学者を集めて検討した報告書がある(参考文献1)。米国のこの分野の理解も深い
と感じる。

伝聞主体の理解を改める必要性
地層処分の一般向け説明の日英比較から、気が付いたことを述べたが、地層処分に
限らず、欧米の根拠の情報(第三者機関や政府機関の情報や先行事例等)から考え
ると、日本は偏っていると気が付くことは多い。偏るのは伝聞主体の情報交換と
意見集約が行われているからではないか。

日本において、原子力専門家は、「ムラ」で、伝聞主体で意見形成するのでは
なく、英語の根拠情報を検索し、理解し、考えることから始める必要はないだ
ろうか。技術者は根拠の情報というと、技術基準のようなものを想起するよう
だが、ここでいう根拠の情報(エビデンス)とは、そのような狭い領域のもの
ではない。

伝聞主体の理解が、日本の原子力利用をゆがめ、弱くしているのではないか。
問題に気が付くことがまず必要と思うがいかがだろうか。この問題は原子力に
限らないかもしれないが。エビデンスに基づく政策は欧米では普通に行われて
いるのだが。

なお、NUMOのホームページは改善が計画されているとのことである。

参考文献1: "Improving Risk Communication" National Research Council, 
 National Academy Press, Washington DC 1989

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で
開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて
原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●2月25日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】グロッシーIAEA事務局長との意見交換

<主なやりとり等>
 冒頭、グロッシーIAEA事務局長より、今後のIAEAの取組や日本との
連携についてご発言いただき、その後、委員、原子力関係機関との意見交換を
行った。委員からは、原子力の平和利用及び核不拡散、発電以外の分野での
原子力利用、原子力分野における女性の活躍について質問があった。

●3月3日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】アジア諸国における人材育成シンポジウムについて

<主なやりとり等>
  アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の取組に基づき、原子力分野に
おける人材基盤の強化のため、インドネシアにおいて人材育成シンポジウムの
開催を予定している旨、事務局から説明を行い、その後、委員との間で質疑を
行った。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、【New】マークを付けております。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
┗原子力防災会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/)
┗原子力災害対策本部会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/)
┗原子力立地会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/)

■内閣官房
┗原子力関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/)
┗最終処分関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/)
┗原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html)
┗「もんじゅ」廃止措置推進チーム
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/monju/index.html)


■経済産業省
┣高速炉開発会議
(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html)
┣エネルギー情勢懇談会
┣高速炉開発会議戦略ワーキンググループ
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kosokuro_kaihatsu/kosokuro_kaihatsu_wg/index.html)

■資源エネルギー庁
┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html)
┗原子力小委員会
(http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/index.html)
┣自主的安全性向上・技術・人材WG
┣放射性廃棄物WG
┣地層処分技術WG
┗原子力事業環境整備検討専門WG
┗電力基本政策小委員会
┣総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/)
┣長期エネルギー需給見通し小委員会
┣発電コスト検証WG
┗電力需給検証小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu)
┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)
┗エネルギー情勢懇談会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)
┗使用済燃料対策推進会議
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/shiyozumi_nenryo/index.html)

■原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/)
┗◆【New】原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html)
┣原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html)
┣放射線審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html)
┣国立研究開発法人審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html)
┣量子科学技術研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html)
┣日本原子力研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html)
┣原子力規制委員会政策評価懇談会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html)
┗原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html)
┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html)

■文部科学省
┗原子力科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm)
┣原子力人材育成作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm)
┣原子力研究開発・基盤・人材作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/100/shiryo/1420802.htm)
┣核融合研究作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm)
┣核不拡散・核セキュリティ作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm)
┣原子力バックエンド作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/099/index.htm)
┗核融合科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm)
┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm)
┗調査研究協力者会議等(研究開発)
┗「もんじゅ」廃止措置評価専門家会合
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/022/index.htm)

■復興庁
┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html)
┗◆【New】原子力災害からの福島復興再生協議会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html)

■環境省
┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する
 専門家会議
(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html)

■厚生労働省
┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896)


●次号配信は、2020年3月19日(木)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、佐野 利男委員、中西 友子委員
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今後の原子力委員会の業務の参考とさせていただきます。)
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