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第279号 原子力委員会メールマガジン


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.279 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2019年10月25日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆

┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣委員からひとこと
┣ 会議情報
┃  (10月15日) 
┃  ・岡原子力委員会委員長の海外出張報告について
┃  (10月21日) 
┃  ・「もんじゅ」廃止措置の進捗状況(文部科学省)
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━・・・━━ 委員からひとこと ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
フランスの高レベル放射性廃棄物の地層処分:ビュール地下研究所
                             岡 芳明


9月中旬にIAEA総会のため渡欧する機会を利用して、フランスのビュールに
ある地層処分のための地下研究所と、ラハーグにある稼働中と廃止措置中の
再処理工場を訪問した。海外の状況は、日本の原子力利用を考える参考になった。

今回はフランスの高レベル放射性廃棄物の地層処分とビュールの地下研究所に
ついてのべる。

フランスの放射性廃棄物管理(処分)は、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が
一元的に行っている。ANDRAは原子力発電のみならず、軍事、研究開発、
医療等の放射性廃棄物すべてを扱う管理機関である。政府は、高レベル
放射性廃棄物の地層処分のために、ビュールを地下研究所サイトと定め、
ANDRAが地下研究所を運営している。なお、高レベル・長寿命放射性廃棄物の
処分あるいは研究対象になった地層が処分場の対象となりうることは、地下
研究所の役割を定めた規定により示されている。

放射性廃棄物はフランスでは、その分類を明確に規定する法律はなく、
半減期が30年以下の短寿命放射性廃棄物と、30年以上の長寿命放射性
廃棄物に分類され、個々の廃棄物パッケージの特性を踏まえて、対応する
処分施設(地層処分、浅地中処分、中深度処分(深さ20m程度、検討中))
への割り当てが行われる。軍事プログラムで発生する放射性廃棄物は、
民間プログラムに移行する時点でインベントリ(在庫量)に含められる。

フランスでは 1991年の放射性廃棄物管理研究法によって、
高レベル放射性廃棄物については、地層処分、長期貯蔵、分離変換(最近、
日本では有害度低減と呼ばれている)の研究が15年間行われ、この結果を
検討し、地層処分が選ばれた。2006年に放射性廃棄物管理計画法が定められた。
この法律は3年ごとに放射性廃棄物の管理に関する国家計画を策定することを
要求しており、ANDRAは放射性廃棄物の国家インベントリを取りまとめることが
求められている。

ビュールはパリ市から東方向のドイツとの国境に近い地域にあり、ナンシーから
車で訪問した。緩やかな丘陵に、牧草地や林が広がっている。集落を避けて、
地層処分の地域が設定されている。土地はANDRAが買収したが、農業や牧畜業は
許可されているそうである。集落の戸数は多くなく、20−30戸程度の印象である。
フランスでは地下は国家に所属するとのことである。

ANDRAの地上施設は敷地内に2か所あり、1か所は、地下施設へ作業員の移動や
物資の搬送用の立坑のある地区。もう一か所は使用済燃料の再処理工場から
送られてきた高レベル放射性廃棄物等を地層処分時の処分体の体裁にする
地区である。処分体は斜坑によって、500mの地下の坑道までケーブルカーで
輸送する計画である。

立坑のある地区の外側には、ホテルとフランス電力(EDF)の図書館がある。
図書館は一般用とのことである。ビュールの村役場の横にはCLIS(地域情報
フォローアップ委員会)の小さい建物があった。これら以外のいわゆる箱モノ
には気がつかなかった。おそらく、道路や水道など公共インフラがANDRAの
施設とともに、整備されたのではなかろうか。

ビュールには地下約500mの位置に約150m程度の厚さの粘土層があり、
そこに処分する計画である。計画では、立坑が二つあり、エレベータで
地下試験場につながる。粘土層の入口でエレベータが一度減速して試験場に
到達する。人の乗るエレベータのそばには機器の搬入や掘削した岩の搬出用の
エレベータがある。

地下試験場の坑道は直径10m程度で、それに直角な約80cmの横穴(処分坑)に、
使用済燃料を再処理したときに発生するガラス固化体の容器を、処分坑の枠の中を
滑らせるための突起物(スペーサ)を付けた鋼鉄製容器に入れ(処分体)、
それを順に押し込み、多数の処分体を押し込んだ後は、坑道との境界に
プラグを置いて、ガラス固化体からの放射線から坑道を遮蔽する。また、
使用済燃料集合体を再処理のため切断するときに発生するハルやエンドピースは、
圧縮して容器に詰めたものが再処理工場から送られてくるので、それを何体分か
まとめ周囲にコンクリートを流し込んで固めたコンテナーを作り、それを重ねて、
直径約8mの処分坑に処分する。

地下の圧力は水平方向が圧倒的に大きいので、これらの処分坑にはこの圧力が
最も大きい方向と平行に設ける。坑道や処分坑を掘ると数年間で10センチ程度
収縮するので、その緩衝層として穴あきコンクリートペレットを詰めたコンクリート枠を、
坑道や処分坑と粘土層との間に作る。こうするとその内側の枠
(処分体を押し込む枠)は岩盤の収縮の影響を受けないので、
これら2つの枠を同時に施工できるとのことである。

フランスの地層処分では、処分場閉鎖までの期間は、地層処分の意志決定を、
将来世代が変更できる可逆性が求められている。これを満たすために、
処分坑に定置したガラス固化体の処分体の回収可能性の試験も行われている。
ガラス固化体を入れた処分体と処分坑の枠との間にスペーサを置く構造によって、
処分体を処分坑に押し込むだけでなく、回収することもできる。

地下の坑道には全く水は見られない。粘土層が良い耐水性を持っている証拠である。
粘土岩は坑道を掘ると表面の水分が抜けて白っぽくなりひびが入って割れる。
坑道にはコンクリートを吹き付けて空気との接触を避けている。立坑を将来ふさぐ
時のための試験と思われるが、厚さ数mのベントナイトで、坑道をふさぐ試験も行っていた。

地下での災害に備えて、緊急時避難ブロックが坑道のところどころに設けてある。
見学の際も緊急時のための酸素供給器具を腰につけて入坑した。

現在の坑道(地下試験施設)は実際の処分場と比べるとごく小さい区域との
ことである。なお、試験施設といっても多数の計器が並んでいるわけではなく、
処分実施のための坑道と処分坑の構築にかかわる作業が行われている。

地表には地下研究所の建物がある。見学館があり、それと隣接して技術展示施設が
あり、実物大の定置試験機器などが並べられていた。

ANDRAは地層処分の研究開発のマネジメントを行っている。実証試験的なものは
自ら行っているが、地層処分に係る研究はフランス地質・鉱山研究所
(Bureau de Recherches Geologiques et Minieres, BRGM)やそれぞれの専門ごと
に大学等に委託して行っている。

日本との類推で、フランス原子力・再生可能エネルギー庁(CEA)が地層処分の
研究開発を主に行っているのではないかと思っていたが、そうではなく、
CEAはソースタームとイベントリーを担当しているとのことである。地層処分に
限らず、専門分野ごとに専門家に委託しつつ研究開発を行うフランスの姿勢は、
学理のわかる専門家と実用とをつなぐ仕組みとして、日本でも参考になる。

出張前にもらったANDRAのパンフレットによると、各種情報シリーズ
(essential series, reference series, periodical series, discovery series, 
science and technology series, report series, industrial practices series)
として、国民に情報が提供されている。国民が知りたいときに、関心に応じて、
知りたいレベルまで、情報が得られる状態にすることは、地層処分のフェーズに
かかわらず、日本において、放射性廃棄物処分にかかわる組織が、組織的、
継続的に取り組む課題ではなかろうか。

日本では、コミュニケーションは、対面での対話のことと誤解する向きもあるかも
しれないが、国民に対する情報提供のインフラの構築は、コミュニケーションにとって
必要不可欠で喫緊の課題ではなかろうか。

フランスでは、原子力施設の立地地域との対話が、地域情報委員会(CLI)によって
行われている。ビュールにおいては地域情報フォローアップ委員会(CLIS)が開催されて
きている。最近のCLISの結果を受けて、処分場の操業開始までの15年間を、実証試験期間
(パイロット操業期間)に設定したそうである。ANDRAにとっても、地下でいきなり
操業開始するより、地下でまず試験期間として操業試験をすることはメリットがある。
CLISはANDRAが外部の声を改善にとり入れるメカニズムにもなっている。

なおANDRAのパンフレットには使用済燃料集合体のまま処分する図を載せたページが
あった。見学した技術展示施設には見られなかったので質問したら、見学はさせて
いないが、燃料集合体のまま処分する方法も試験はしているとの事である。

今回のビュール地下研究所の見学では、地下施設での試験のみならず、研究開発の
実施体制や知識基盤、情報提供、安全管理、地域との対話など様々な点で、
フランスの懐の深さ、フランスの原子力の強さを感じた。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で
開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、
すべて原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●10月15日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】岡原子力委員会委員長の海外出張報告について

<主なやりとり等>
 事務局より2019年9月15日(日)〜22日(日)にかけてオーストリア、
フランスに出張し、ウィーンではIAEA総会に出席、フランスでは放射性廃棄
物管理機関ANDRAのビュール地下研究所、オラノ社のラハーグ再処理工場を
視察した旨報告し、その後質疑を行った。

●10月21日(月)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】「もんじゅ」廃止措置の進捗状況(文部科学省)

<主なやりとり等>
 「もんじゅ」廃止措置の進捗状況について、文部科学省より御説明いただき、
その後、委員との間で質疑を行った。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、【New】マークを付けております。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
┗原子力防災会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/)
┗原子力災害対策本部会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/)
┗原子力立地会議
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/)

■内閣官房
┗原子力関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/)
┗最終処分関係閣僚会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/)
┗原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html)
┗「もんじゅ」廃止措置推進チーム
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/monju/index.html)


■経済産業省
┣高速炉開発会議
(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html)
┣エネルギー情勢懇談会
┣高速炉開発会議戦略ワーキンググループ
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kosokuro_kaihatsu/kosokuro_kaihatsu_wg/index.html)

■資源エネルギー庁
┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html)
┗原子力小委員会
(http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/index.html)
┣自主的安全性向上・技術・人材WG
┣放射性廃棄物WG
┣地層処分技術WG
┗原子力事業環境整備検討専門WG
┗電力基本政策小委員会
┣総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/)
┣長期エネルギー需給見通し小委員会
┣発電コスト検証WG
┗電力需給検証小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu)
┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
(http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)
┗エネルギー情勢懇談会
(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)
┗使用済燃料対策推進会議
(http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/shiyozumi_nenryo/index.html)

■原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/)
┗◆【New】原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html)
┣原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html)
┣放射線審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html)
┣国立研究開発法人審議会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html)
┣量子科学技術研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html)
┣日本原子力研究開発機構部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html)
┣原子力規制委員会政策評価懇談会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html)
┗原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html)
┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html)

■文部科学省
┗原子力科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm)
┣原子力人材育成作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm)
┣原子力研究開発・基盤・人材作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/100/shiryo/1420802.htm)
┣核融合研究作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm)
┣核不拡散・核セキュリティ作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm)
┣原子力バックエンド作業部会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/099/index.htm)
┗核融合科学技術委員会
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm)
┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm)
┗調査研究協力者会議等(研究開発)
┗「もんじゅ」廃止措置評価専門家会合
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/022/index.htm)

■復興庁
┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html)
┗原子力災害からの福島復興再生協議会
(http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html)

■環境省
┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す る専門家会議
(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html)

■厚生労働省
┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896)


●次号配信は、2019年11月8日(金)午後の予定です。


●次号配信は、2019年11月8日(金)午後の予定です。
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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、佐野 利男委員、中西 友子委員
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今後の原子力委員会の業務の参考とさせていただきます。)
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