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第242号 原子力委員会メールマガジン 放射線の利用について―その15(放射性同位元素で標識した水の利用)

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2018年4月13日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┃  (4月3日)
┃   ・プルトニウム利用の考え方について(文部科学省、資源エネルギー
┃    庁、外務省)
┃   ・使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更に
┃    ついて(資源エネルギー庁)
┃  (4月11日)
┃   ・日本原子力研究開発機構新型転換炉施設原子炉設置変更許可につい
┃    て(諮問)(原子力規制庁)
┃   ・「原子力利用に関する基本的考え方」のフォローアップ
┃   ・産業界、研究機関、学協会等の連携による3つのプラットフォーム
┃    の立ち上げについて(日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、
┃    日本電機工業会)
┃   ・使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更に
┃    対する意見について(見解)
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・
放射線の利用について―その15(放射性同位元素で標識した水の利用)

                              中西 友子
 水は私たちの身の回りに溢れている。しかし私たちはその水についてどの程
度詳しく知っているだろうか。例えば植物について考えてみよう。植物はどこ
からどの位の量の水を吸収しているのか、その駆動力は何なのか、植物が根か
ら吸収した水は導管と呼ばれるパイプのような組織を流れて上部に移動するが、
その水の速度はどの位なのだろうか・・・。
 また、植物では光合成と呼ばれる、水と二酸化炭素から糖を作る反応が起き
ているが、その際に使用される水は一体どこの水でどの位使用されるのだろう
か。光合成では二酸化炭素については調べられているものの、水についてはあ
まり知見が無い。水はそこにあって当たり前と思われている節がある。

 そこで、放射性同位元素で標識した水を使って植物がどのように水を吸収す
るかを測定してみた。ここではその結果を簡単に紹介したい。植物に吸収させ
る水は酸素を放射性同位元素で標識した水(O-15標識水)とした。実験は放射
線医学総合研究所で行った。O-15を作製し、水を構成する酸素(O)元素の一部
がO-15に置き換わった放射性の水を植物の根に与え、水の移動をO-15から放
出される放射線を測定する装置を新たに試作して計測した。測定試料は、ダイ
ズの根の上部の茎(長さ1cm)とした。

 O-15はポジトロン(陽電子)放出核種であり、崩壊して発生した陽電子が電子
と消滅する時には2本のガンマ線を180度互いに反対方向に放出する。そこで、
その茎の外側に一組のガンマ線計測機器で茎を挟む形で設置し、茎中に根から
吸収されたO-15標識水が時間と共にどの位の量が運ばれてくるかを測定したの
である。ただし、O-15の半減期は僅か2分なので、放出される放射線の量は2
分ごとに半減する。よって、計測のできる時間は20分間にも満たないほどだっ
た。

 その結果、驚いたことには、根にO-15標識水を供給してから15分ほどで長
さが僅か1cmの茎(50〜60マイクロリットル)の中に40〜50マイクロリットル
ほどの水が蓄積されることが分かった。この1cmの茎の中の導管内の水分量は
2マイクロリットルほどである。つまり根から新しく吸収され、茎へと上がっ
てきた水は、茎中の導管内に留まることなく、その大部分は導管から周囲の組
織へと漏れ出し、その茎全体に近い量まで溢れ出てきていることになる。

 では、その漏れ出した水はどこに行くのだろうか、今度はトリチウム(H-3)
で標識した水を用いて調べてみた。トリチウムの場合は、放出されるベータ線
のエネルギーが低いので、茎の外側には放射線は出てこない。そこで、ダイズ
は生きたままでは測定できず、その都度、ダイズの茎のスライスを切りだして
はその断面に存在するトリチウムの量を測る必要がある。トリチウム水を5秒
間だけ供給してから、直後、5秒、10秒と時間を追って茎の断面を調べてみた。
その結果はO-15標識水の挙動と同様で、新しく吸収されて上ってきた水は導管
から組織へ水平に漏れ出し、そして約2分後にはまた導管に戻っていることを
確認した。

 さらに、導管から漏れ出た水のゆくえについて、O-15標識水を利用して、茎
表面からの蒸散、導管から篩管への移動、導管以外の組織による上部方向への
移動などの可能性を調べてみたものの、やはり導管から漏れ出た水はまた導管
に戻っていることが明らかになった。

 そして、同じ茎の少し上の方の複数箇所(各々長さ1cm)を対象として、各箇
所に同じように2個ずつ、計測器を取り付け、根から吸収されてきたO-15標識
水がいつ、どの位の量になるかを測定し、各箇所への水の蓄積動態を比較した
結果、茎の中を移動していく水の速度は一定であることが判った。つまり、根
から吸収された水は茎で導管から大量に漏れ出るものの、また導管に戻って上
へと運ばれるが、導管内の水の流れの速度は一定であることが示されたのであ
る。このことは、茎の中では新しく上がってきた水にそれまで蓄積されていた
水が置き換わっていくことを表している。そこで、シミュレーションを行った
ところ、20分ほどで、それまでその茎の内部に存在していた全ての水の半分ほ
どが新しく吸収された水に置き換わっていくことが示された。

 では、水が動く駆動力は何だろうか。茎の中のイオン濃度はあまり変化して
いない。よって、水は浸透圧により動いたとは考えにくい。拡散で動いたにし
てもどうしてその方向性が決まるのだろうか。

 このように水の動態には未だに判らないことが多い。しかし、ここで示した
ように、水そのものを構成している元素を放射性同位元素に置き換えることに
より、放射線測定から水の動きをさらに定量的に解明していくことができる。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●4月3日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】プルトニウム利用の考え方について(文部科学省、資源エネルギー
庁、外務省)

<主なやりとり等>
 文部科学省、資源エネルギー庁から、本年1月に委員会が作成した「プルト
ニウム利用の現状と課題」に対する意見を伺い、その後、委員との間で質疑応
答を行いました。

【議題2】使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更に
ついて(資源エネルギー庁)

<主なやりとり等>
 使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について資
源エネルギー庁から説明を受けました。

●4月11日(水)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイト
に掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】日本原子力研究開発機構新型転換炉施設原子炉設置変更許可につい
て(諮問)(原子力規制庁)

<主なやりとり等>
 日本原子力研究開発機構新型転換炉施設原子炉設置変更許可の諮問について
原子力規制庁から説明を受けました。

【議題2】「原子力利用に関する基本的考え方」のフォローアップ
・産業界、研究機関、学協会等の連携による3つのプラットフォームの立ち上
げについて(日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、日本電機工業会)

<主なやりとり等>
 産業界、研究機関、学協会等の連携による3つのプラットフォームの立ち上
げについて、事務局から全体概要説明を行った後、過酷事故プラットフォーム
に係る取組について日本原子力研究開発機構から、廃棄物のプラットフォーム
に係る取組については事務局から、軽水炉のプラットフォームに係る取組につ
いては電気事業連合会からそれぞれ進捗報告を行いました。

【議題3】使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更に
対する意見について(見解)

<主なやりとり等>
 使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更に対する原
子力委員会の意見の案について事務局から説明が行われました。その後、委員
の間で議論を行い、修辞上の軽微な修正を加えた上で答申することとなりまし
た。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
 ┣原子力防災会議
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/ )
 ┣原子力災害対策本部
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/ )
 ┗原子力立地会議
  (http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/ )

■内閣官房
 ┣原子力関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/ )
 ┣最終処分関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/ )
 ┣原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html )
 ┗「もんじゅ」廃止措置推進チーム
  (https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/monju/index.html)
 
■経済産業省
 ┣高速炉開発会議
 ┃(http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html )
 ┣高速炉開発会議 戦略WG
 ┗◆【New】エネルギー情勢懇談会
 
■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┣総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
 ┃┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
 ┃┗基本政策分科会
 ┃ ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
 ┃ ┣発電コスト検証WG
 ┃ ┣電力需給検証小委員会
 ┃ ┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )
 ┃ ┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
 ┃  (http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku
 ┃  /denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)
 ┣エネルギー情勢懇談会
 ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)
 ┗使用済燃料対策推進会議
  (http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)

■原子力規制委員会
(https://www.nsr.go.jp/)
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html )
  ┣合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣量子科学技術研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )
  ┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html )

■文部科学省
 ┣原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣◆【New】核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┣◆【New】原子力施設廃止措置等作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/088/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗「もんじゅ」廃止措置評価専門家会合
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/022/index.htm)

■復興庁
 ┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )
 
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●次号配信は、平成30年4月27日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、佐野 利男委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せいただいた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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