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第19号 原子力委員会メールマガジン 2008年11月14日号
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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2008年11月14日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃
┣ トピックス  広瀬委員からひとこと 「パキスタンの核開発」
┣ 定例会議情報 第16回環太平洋原子力会議(16PBNC)について など
┣ 部会情報等  核融合専門部会報告書(案)へのご意見を募集中!(〜11/20)     
┃        分離変換検討会の開催について
┣ 読者コーナー
┣ 事務局だより
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※核融合専門部会報告書(案)に対するご意見を11月20日(木)まで募集中
です。皆様からの率直なご意見をお待ちしております。


━・・・━ トピックス 広瀬委員よりひとこと ━・・・━・・・━

「パキスタンの核開発」

今回はパキスタンの核開発のお話です。

インドと同様、パキスタンも原子力の開発には早くから着手していました。独
立後8年たった1955年に原子力委員会を設立、1965年には現在の首都イスラマ
バードの近郊に原子力科学技術研究所を設立し、アメリカから研究炉を購入し
ました。その後中国から研究炉や天然ウラン重水炉を購入しています。石油危
機以降、原子力発電にさらに力を入れました。現在、カラチ発電所(カナダ製
原子炉、1972年運転開始、出力13.7万KW)とチャシュマ原子力発電所(中国製
原子炉、2000年運転開始、出力32.5万KW))で発電を行っており、パキスタン
の電力の約3%を供給しています。チャシュマでは次の原子炉(中国製、30万
KW)を建設中です。

ここで終わっていれば問題はないのですが、パキスタンは核兵器にも手を出し
ました。1974年にインドが核実験を行ったあと、インドがいくら「平和利用の
ための核実験」と言っても、パキスタンは説得されませんでした。Z.A.ブット
ー首相は、核科学者のA.Q.カーン博士に、「草を食べてでも、核兵器の開発を
急げ!」と命じました。ここからカーン博士のバトルが始まります。貧困問題
を抱える国ですが、たとえ国民が飢え死にしてでも、核兵器の開発を行えとの
メッセージだったのです。

なぜパキスタンはここまでして核兵器の開発に力を入れたのでしょうか。その
理由はひとえにインドとの対立です。インドとパキスタンは1947年にイギリス
植民地支配から分離独立しました。多数派ヒンドゥー教徒に支配されるのは嫌
だ、ムスリム(イスラーム教徒)だけで別の国を作る、と主張した結果です。
一方、インドは宗教が違っても一緒に暮らせるはずだといって、政教分離国家
を建設しました。しかもムスリムの約3分の1がインドに残りました。パキス
タンは後に再分裂してバングラデシュが誕生し、現在この3カ国にはそれぞれ1
億5000万人前後のイスラーム教徒が住んでいます。建国の理念が真っ向から対
立する印パ両国は以来「宿敵」になりました。これまで3度の戦争を経験し、
国境付近では日常的に銃撃戦が続いています。パキスタン人の多くは、「イン
ドは分離独立を反故にして、パキスタンを吸収しようとしている」との恐怖心
を抱いてきました。

しかし、事情はともあれ、パキスタンの核開発のやり方はいただけないもので
した。遠心分離器を製造する蘭独英の合弁企業ウレンコに勤めていたカーン博
士は、ウレンコから盗み出した技術をもとにパキスタンで遠心分離器を製造、
高濃縮ウランの取り出しに成功しました。しかもそれを「カーン・ネットワー
ク」と呼ばれる闇市で、リビアや北朝鮮に流したといわれています。核兵器の
製造を決意したことによって外国からの技術、資機材、燃料の供給を受けられ
なくなったパキスタンは、闇市で必要なものをすべて調達し、1998年にインド
に次いで核実験を行い、核兵器保有を宣言したのです。

前回ご紹介したインドの例と同様、否、それ以上に大きな犠牲を払ってパキス
タンは核開発を行いました。国家の生存にかかわる重大な利益が絡むと思った
とき、たとえ貧困問題を抱える国であっても、あらゆる圧力をはねのけ、制裁
を覚悟で核開発を行ったのです。実験後にあるパキスタン人は、日本人の学生
の「あんなに貧困にあえぐ国民を犠牲にして、核実験に莫大なお金を使ってい
いのか?」という質問に対して、「国家があってはじめて国民の意味があるの
です。国家が消滅するかも知れない事態に多少の犠牲はやむを得ません」と答
えました。国際的には悪の権化のように言われるカーン博士は、パキスタン国
内では、少なくとも敵国の核の脅威からパキスタンを守るだけの抑止力を備え
るために尽力した英雄として扱われています。

発展途上国が核兵器保有を決意するとはこういうことです。もし、われわれが
本気で核兵器の廃絶を目指すのであるならば―そして実際日本はそれを目指し
ているのですが―、こうした核兵器信奉を崩す努力をしなければなりません。
核兵器さえあれば自国の安全は保障される、という神話こそ打破されるべきも
のであり、そのためには、核兵器を保有していることがかえって危険を招くこ
とになるという国際レジームを構築していくことが大事ではないでしょうか。

○広瀬委員の紹介
広瀬崇子(ひろせ たかこ)   専修大学法学部教授、ロンドン大学博士号(国際関係論)   2007年(平成19年)1月より原子力委員会委員(非常勤)   紹介のページはこちら ↓       http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/iin/hirose.htm ●次号は伊藤委員からひとことの予定です! ━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━ ●11月4日(火)第45回定例会議の概要は以下のとおりでした。 ・第16回環太平洋原子力会議(16PBNC)について(日本原子力学会・日本原子 力産業協会)10月13〜17日に青森市文化会館において開催された第16 回環太平洋原子力会議について、同会議事務局よりご説明いただきました。委 員より、参加国や参加者、発表者の国の構成について等の質問がありました。 <ことばの解説> 環太平洋原子力会議(PBNC)は、環太平洋地域をはじめとする世界各国・地域 の原子力平和利用開発の一層の推進と原子力技術の有用性に対する理解促進を 目的として、1976年以降、隔年で開催されています。日本での開催は第2 回(東京)、第10回(神戸)に続き3回目となります。現在の主催者である環太平 洋原子力協議会(1988年設立)には、日本からは(社)原子力学会と(社)日 本原子力産業協会が参加しています。 ・エネルギーに関する意識調査について(日本原子力産業協会) <主なやりとり等> (社)日本原子力産業協会が10月28日に公表した「エネルギーに関する意識 調査」の結果概要について、担当者よりご説明いただきました。委員より、調 査方法等について質問があったほか、調査結果の更なる分析を期待する等のコ メントがありました。 ●11月11日(火)第46回定例会議の概要は以下のとおりでした。 ・国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)の環境負荷評価報告 書について <主なやりとり等> 事務局より、10月17日に米国エネルギー省が公表したGNEPの「プログ ラムレベルでの環境影響評価」ドラフトについて説明を行いました。委員より、 報告書には慎重な言い回しが目立つ等コメントがありました。 ・松田原子力委員会委員の海外出張について <主なやりとり等> 松田委員が11月16日〜23日の間でスウェーデン、フランスを訪問し、原 子力関係者との意見交換や研究施設の視察を行う予定であることを事務局より 説明しました。 ・高浜発電所3,4号機用MOX燃料調達に係る輸入燃料体検査申請について (関西電力株式会社) <主なやりとり等> 関西電力担当者より、高浜発電所3,4号機で使用するMOX燃料の調達先の 品質保証活動が適切に実施されていることを確認し、その結果を踏まえて、電 気事業法に基づく輸入燃料体検査申請を経済産業省に対して行った旨の報告が ありました。 ●次回は11月18日(火)に開催します。議題は以下の予定です。  ・放射性同位元素の供給の現状と課題について ●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞 ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や 配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。 ━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━ ●原子力委員会には調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されていま す。これらの部会や懇談会等は原則として公開しており、どなたでも傍聴でき ます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけ ます。 ●原子力委員会 核融合専門部会報告書(案)に対するご意見の募集が、まも なく終了します(平成20年11月20日(木)まで)。核融合研究開発に関 するご意見をお持ちの方は、お早めにお願いいたします。皆様からの率直なご 意見をお待ちしております。 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/kakuyugo2/bosyu/081021/bosyu081021.htm ●11月7日(金)につくば市において核融合専門部会 ご意見を聴く会を開 催いたしました。プログラム及び概要は以下のとおりでした。 <プログラム> (1)開催趣旨説明 (2)第1部:ご意見発表者との意見交換等   @ご意見の聴取   A部会構成員との意見交換 (3)第2部:会場に参加された方々からご意見を頂く <概要> 第1部では、事務局より核融合研究開発の概況及び報告書案の説明をした後、 有識者よりご意見を伺いました。第2部では人材育成や核融合炉の早期実現、 知的財産保護と国際協力等について会場からの発言を求め意見交換を行いまし た。 ●11月13日(木)の分離変換技術検討会(第3回)の概要は以下のとおり でした。 <議題>  ・分離変換技術の導入意義・シナリオの論点整理  ・分離研究に対する研究開発の現状について <主なやりとり等> 分離変換技術の導入意義・導入シナリオ等についてこれまでの議論の論点を整 理した上で、その論点の内、分離技術について2000年に実施されたチェッ ク&レビューからの進捗状況を中心に、日本原子力研究開発機構及び電力中央 研究所より説明を受け、分離技術の進捗等に関して議論を行いました。 ━・・・━━ 読者コーナー ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━ ●皆さまからのお便りをお待ちしています!このメールマガジンや、原子力委 員会の活動に関するご意見・ご感想等を、melmaga-iken@aec.go.jp まで、ぜ ひお寄せください。なお、お寄せいただいたご意見・ご感想などは、個人情報 を除きこのメールマガジンに掲載させていただくことがあります。また質問に つきましては、そのすべてには回答できない場合がありますので、ご了承をお 願いいたします。 +-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 先週、出身大学の学園祭にあわせ、サークルのOB会が開催され、久しぶりに関 西に帰ってきました。ついでに大学の時の研究室(生物物理の研究室)にも訪 問し、先生や院生の後輩と研究室にいた頃の話などいろいろしてきました。卒 業してから数年経つのですが、研究室の雰囲気も全然変わらず、実験ばっかり していた大学院生の頃をふとなつかしく感じました。 現在は、専門の生物化学とはまったく違う原子力の世界におりますが、ほとん ど知らなかった世界に触れることができ、日々勉強している毎日です。最近は、 11月末に開催されるアジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合に向け た準備に日々を過ごしております。すでにFNCAに関わって1年半以上経過 しましたが、関われば関わるほど、アジアにおける原子力協力の重要さ、その 奥深さを実感しています。現在の自分の仕事が、将来のアジアにおける原子力 利用の発展に少しでもお役に立てればと思いながら日々がんばっています。 (川端) ●次号配信は11月28日(金)午後の予定です。 ====================================================================== 発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局) ○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ   mailto: melmaga-iken@aec.go.jp ○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ  http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm ○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/ ○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。 ======================================================================

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