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第14号 原子力委員会メールマガジン 2008年9月5日号
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  @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
 2008年9月5日号
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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┣ トピックス   広瀬委員からひとこと
┣ 定例会議情報  政策評価部会 報告書についてなど
┣ 部会情報等   原発議会サミットにおける委員長の基調講演の
┃         ホームページ掲載                      
┣ 読者コーナー  
┣ 事務局だより
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━・・・━━ トピックス 広瀬委員よりひとこと ━━・・・━━・・・━
インドの原子力事情

カルカッタ(現コルカタ)にアーナンド・ナガルというスラム街があります。
「歓喜の街」の意味で、フランス人作家ドミニク・ラピエールの小説の舞台に
なりました。娘の結婚持参金のために自らの臓器を抵当に入れて借金をする父
親、わずかなお金のために自分の妻をスラムの別の住人に売り渡す男、といっ
たすさまじい生き様や、ヒンドゥーやイスラームの祝祭に晴れ着を着て熱狂す
る人たちの生活をヴィヴィッドに描いたショッキングかつ感動的な作品です。
その最後のくだりは、

 歓喜の街の天使が息せききって叫んだ。「とうとう勝ったわ!わたしたちは
 いまでは、(中略)ソ連のひとたち、中国、そしてイギリスのひとたちのよ
 うに強くなったんです。そのうち田んぼに水もやれるし、毎年何度かお米の
 取り入れもできるし、村やスラムに明かりをともすこともできるでしょうし、
 みんなお腹いっぱい食べられる。もう貧しいひともいなくなる。わたしたち
 の偉いドゥルガー(ヒンドゥー教の神様)、インディラー・ガンディー(首
 相)が、いましがたラジオで放送したんです――われわれは今朝、はじめて
 核実験を行った!」(長谷泰訳、括弧内は筆者注)

これは1974年のインドの第1回の「平和目的のための」核実験をさしています。
当時のインドは、国民の3分の2が字が読めず、半分近くが貧困にあえぎ、飲
み水も行き渡っていない状況でした。その中での核実験です。スラムの住人は
それを歓喜で迎えました。

核実験に激怒したカナダは75年にインドへの原子力援助を停止し、81年にはア
メリカも燃料供給を停止しました。先進国からの支援や供給を止められたイン
ドは、以後自力で開発を推進します。核兵器製造はいつでも行えるけど、今の
ところは平和利用だけだ、と強調しながら。そして1998年の核実験と核兵器保
有宣言へとつながります。

インドの初代首相ネルーは、西洋近代文明の強い影響を受けた人でした。彼は
核兵器には反対していましたが、将来的に原子力は必要と考え、独立の翌年(
1948)に早くも原子力法を制定し、原子力委員会を発足させました。その結果、
1956年には第1号研究炉(軽水炉)においてアジアで初の臨界を達成し、続い
て1960年に重水炉サイラスでの臨界に成功します。以後、天然ウラン重水炉が
主軸となります。73年にはカナダ製の原子炉が商用運転を開始します。

ところが、この間、インドは1962年に中印国境戦争で屈辱的な敗北を喫し、し
かも中国はその2年後に核実験を行います。さらにNPT(核拡散防止条約)が
成立すると、5大国以外の国は半永久的に核兵器を持てないことになります。
つまり、中国の優位性が確定してしまうのです。インドはNPTの調印を拒否し、
外国からの援助なしに自力開発を行います。ウランをほとんど生産しないイン
ドは国内に豊富にあるトリウムを使う技術の開発を計画し、高速増殖炉の開発
まで行いました。そして核兵器も自力で製造したのです。

インドは現在年率8〜9%の成長の経済発展を遂げつつあります。当然エネル
ギーが不足します。特に電力不足は深刻です。しかも、地球温暖化問題が取り
ざたされ、中国と並んでインドの動向が世界の注目をあびるようになりました。

こうして民生での原子力利用があらためて脚光を浴びることになったのです。
現在稼動している15基の原子炉による発電容量はインドの発電容量の2.8%程
度を占めるに過ぎません。2010年までに新たに8基、2020年までに23基の建設
が予定されていますが、予定通り進む保証はありません。ウラン燃料も懸念材
料です。トリウム・サイクルの開発も進んではいますが、実用化にはまだ時間
がかかります。

こうした状況の中、米印原子力合意がなされ、それに伴って諸外国から技術、
機材、そして燃料が入ってくる道が開けそうになりました。国内外での反対は
根強くあり、いばらの道です。でも、独立以来の原子力開発の歴史、急速な近
代化に伴うエネルギー需要の増大、そして地球温暖化問題への配慮を考えれば、
インド政府がこれにかける意気込みがいかに強いかは、自ずと明らかです。

○広瀬委員の紹介
広瀬崇子(ひろせ たかこ)   専修大学法学部教授、ロンドン大学博士号(国際関係論)   2007年(平成19年)1月より原子力委員会委員(非常勤)   ご紹介のページはこちら ↓        http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/iin/hirose.htm ●次号は伊藤委員からひとことの予定です! ━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━ ●8月26日(火)第37回定例会議の概要は以下のとおりでした。 ・「原子力発電の健全な推進基盤構築」に向けた取り組み状況について <主なやりとり等> (社)日本原子力産業協会の服部理事長より、昨年5月にまとめた「原子力発電 の健全な推進基盤構築のための提言」についての取組状況についての報告と、 重点的に取組む事項について説明がありました。委員より、評価方法について の質問や、事業者の事業リスクの分析と管理能力等についてコメントがありま した。 ・高速増殖原型炉もんじゅのプラント確認試験等の工程について <主なやりとり等> 文部科学省及び(独)日本原子力研究開発機構の担当者より、もんじゅの工程変 更について説明がありました。委員より、延期を繰返さないために、事業リス ク評価に基づく柔軟なスケジュール公表等の工夫が必要ではないかとする意見 や、当事者には国家基幹技術の研究開発に携わる喜びを胸に課題解決に挑戦し ていくことを期待するが、他方で規制当局もまた安全の確保の観点からの厳格 な対応は当然としても、将来技術の研究開発に係ることであり、課題に対し創 造的に対応していく役割を分担していることを忘れないでほしいとの意見があ りました。 ・アジア原子力協力フォーラム(FNCA)第2回「アジアの原子力発電分野 における協力に関する検討パネル」開催について <主なやりとり等> 事務局より、9月1日、2日に三田共用会議所において開催するFNCAの第 2回パネルについて、プログラムや各国からの出席予定者等について説明があ りました。 <ことばの解説> アジア原子力協力フォーラム(FNCA)とは、日本が主導するアジア地域で >の原子力平和利用推進の枠組み。原子力の平和利用を通じて、アジア地域の持 続的発展や貧困の撲滅、環境の保全を目指している。参加国は10カ国(日本、 オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、 フィリピン、タイ、ベトナム)。 <リンク>  ・文部科学省 FNCAのページ    http://www.fnca.mext.go.jp/index.html ・伊藤原子力委員会委員の海外出張について <主なやりとり等> 伊藤委員が英国・ロンドンへ出張しWNA(World Nuclear Association)の 年次シンポジウムで講演すると共に、英国が今年の夏に公表した原子力白書や 放射性廃棄物に関する白書の関係者との意見交換、軽水炉の視察等を行う予定 であることを事務局より説明しました。 ●9月2日(火)第38回定例会議の概要は以下のとおりでした。 ・日本政策金融公庫による原子力分野における先進国向け投資金融について <主なやりとり等> 経済産業省より、日本政策金融公庫による原子力分野における先進国向け投資 金融について、背景やスキームについて説明がありました。委員より、制度の 導入・運用についての方針、融資の金額や条件等について質問がありました。 <ことばの解説> 日本政策金融公庫は、平成19年5月18日に成立した株式会社日本政策金融 公庫法に基づき、平成20年10月1日に、国民生活金融公庫、農林漁業金融 公庫、中小企業金融公庫及び国際協力銀行(国際金融等業務)が統合して誕生 する新たな金融機関。会社法が適用される株式会社ではあるが、全株式を政府 が保有するほか、予算の国会議決等の国の監督が規定されている。 ・原子力政策大綱に示している放射性廃棄物の処理・処分に関する取組の基本  的考え方の評価について <主なやりとり等> 事務局より政策評価部会がとりまとめた報告書についての説明があり、原子力 委員会としてその内容を妥当であると判断するとともに、関係行政機関等に対 して報告書の提言にも留意しつつ取組を進めることを求め、また引続き状況の 聴取を行い必要な対応を求めていくことを決定した。委員より、全ての関係者 の努力が必要であるとの指摘がありました。 <リンク>  ・原子力委員会 政策評価部会のページ    http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/seisaku/index.htm ・平成21年度原子力関係経費概算要求額総表(速報値)について <主なやりとり等> 平成21年度原子力関係経費概算要求額総表(速報値)について、総額が昨年 度比約6%増の約4900億円であることを報告すると共に、昨年からの変更 点を中心に事務局より説明しました。 ●次回は9月9日(火)に開催します。議題は以下の予定です。  ・我が国のプルトニウム管理状況について  ・アジア原子力協力フォーラム(FNCA)第2回アジアの原子力発電分野   における協力に関する検討パネルの結果について ●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。  今号の「事務局便り」でも紹介させていただいておりますとおり、定例会議  は通常毎週火曜午前、霞ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも  傍聴できます。開催案内や配布資料はすべてホームページでご覧いただけま  す。 ━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━ ●原子力委員会には、下部組織として部会や懇談会等が設けてあり、これらの  会合でも調査審議を行っています。これらの部会や懇談会等は原則として公  開しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料はすべてホーム  ページでご覧いただけます。 ●原子力委員会ホームページに、第6回全国原子力発電所立地議会サミットに  おける近藤委員長の基調講演を掲載しました。   http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/kettei/koenkai.htm ━・・・━━ 読者コーナー ━━・・・━━・・・━━・・・━ ●皆さまからのお便りをお待ちしています!  このメールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、  melmaga-iken@aec.go.jp まで、ぜひお寄せください。なお、お寄せいただ  いたご意見・ご感想などは、個人情報を除きこのメールマガジンに掲載させ  ていただくことがあります。また質問につきましては、そのすべてには回答  できない場合がありますので、ご了承をお願いいたします。 +-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 先日、大学時代の部活で苦楽を共にした友人と会う機会があり、酒をのみなが ら、当時の苦労したことやくだらないことで笑いあったり、お互いの今の仕事 について真面目に語り合ったりしました。その中で特に話題になったのは、「 リーダーの資質とその役割」でした。大規模なプロジェクトであれ、それを支 える研究であれ、それを成功に導くには優れたリーダーが必要だという認識は 互いに一致しつつ、優れたリーダーに備わっているべき資質、リーダーとして 相応しい人間の見定め方等、色々について話しあったことを記憶しています。 原子力委員会事務局として勤務している現在、プロジェクトの規模が大きいこ とが原子力研究開発の特徴の一つと認識していますが、その成功には、優れた リーダーの存在が一つの条件ではないかと時折感じることがあります。ちょう ど先月、原子力委員会では、原子力研究開発に関する議論、検討を行うべく、 研究開発専門部会を再開しました。折角の機会なので、原子力研究開発を成功 に導くことができる「リーダーが備えるべき能力」といったことについても、 私なりに少し考えてみたいとも思っています。(渡邉) ●次号配信は9月19日(金)午後の予定です。 ====================================================================== 発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局) ○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ   mailto: melmaga-iken@aec.go.jp ○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ  http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm ○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/ ○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。 ======================================================================

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