1.企業・産業のあり方

JCOは第7次キャンペーンにおいても1バッチのU3O8粉末をSUSバケツで溶解し、それを貯塔に入れて各バッチの硝酸ウラニル溶液の濃度を均一化した。さらに第9次キャンペーンではSUSバケツで溶解した溶液を沈殿槽に入れ、しかも1回あたり2.4kgUの溶液を入れる規定に違反して、16.6kgUを沈殿槽に入れたため、臨界事故を起こした。
このようにモラル・ハザードをエスカレートさせたことが今回の事故の直接原因である。この事故の最初の契機は作業能率の向上という効率化追求行動であったが、それをエスカレートさせた結果が事故の直接原因となった。その意味では今回の事故は効率性の追求が安全性を犠牲にした結果であるといえよう。
企業はリスクの形態、リスク発生の確率、リスク発生の複雑性の程度等を事前に評価(リスク・アセスメント)することや、リスクの予防や発生したリスクを管理すること(リスク・マネージメント)も重要である。しかし、何がハザードとなるかを詳細に検討することが不可欠である。特にモラル・ハザードは特定化の困難なものが多い。今回の事故を契機にリスク・アセスメント、リスク・マネージメントと同時にこのモラル・ハザードの形態、影響を分析する科学の発展が望まれる。
(原子力利用と安全確保の責任)
(1)社会と安全をめぐる基本問題
@安全文化の浸透と定着
| (a) | 一定の危機認識に基づいて、原子炉等規制法に基づく加工施設への事業許可や変更許可に際しての科学技術庁(行政庁)及び原子力安全委員会によるダブルチェック等により、事前のハード型安全確保対応が図られていた。しかしながら、今回の事故の直接原因に見られるようにJCO側において、組織の各自がそれぞれの役割を安全性とのかかわりで具体的に意識し行動しなかったことの反省から、危機意識が風化していたと言わざるを得ず、国側もそれを検出・是正するには至らなかった。 |
| (b) | 今回は、「国の認可を受けた作業手順」の実現を保証する社内体制は存在せず、安全を無視した作業手順の変更が加えられ、国の検査等の安全確保支援も十分機能していなかった。さらに、希薄であるともいえる危機認識のために、予め策定されていた事後の安全確保対応が臨界事故を想定していたとは言えず、その結果、事故直後の対応策や情報ネットワークの形成などの事故後の対応の遅れに結びついた。 |
| (c) | 今回の臨界事故の、とりわけJCOにおける「作業手順無視」と「臨界制限量無視」といった事前の安全確保対応の原則を無視した組織的行動、それと連動した作業員の研修・訓練の不在、事後の安全確保対応の不備、情報公開や内部通報などの事前・事後に関わる安全確保支援の不足、等々は、JCOにおける危機認識の風化に起因するものが少なくない。こうした安全確保対応と安全確保支援の欠陥の下で、国際的な価格競争等の経済的圧力がJCO社内に浸透していったものと考えられる。 |
