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U.事故の全体像
1.事故の発生した施設
- 今回事故の発生した株式会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所(茨城県那珂郡東海村大字石神外宿2600番地)の転換試験棟は、同社の前身である日本核燃料コンバージョン株式会社が、住友金属鉱山株式会社から使用施設、人員及び技術を引継ぎ、昭和55年11月に濃縮度12%のウランの粉末を製造するために核燃料物質の使用許可を取得し、その後、昭和59年6月に使用施設から濃縮度20%未満のウランの液体製品も製造可能な加工施設に変更許可されたものである。
東海事業所の敷地面積は約156,000m2であり、この中に加工施設を包括する約45,000m2の区域を周辺監視区域としており、転換試験棟以外に軽水炉用燃料(濃縮度5%以下)の再転換施設として第1加工施設棟(年間最大処理能力220トン・ウラン(tU))及び第2加工施設棟(年間最大処理能力495tU)がある。
(図U−1−1,図U−1−2)
転換試験棟は、濃縮度20%未満の六フッ化ウラン(UF6)、スクラップ又はイエローケーキから、主として高速実験炉「常陽」用として、二酸化ウラン(UO2)粉末又は硝酸ウラニル溶液を製造する施設で、年間の処理能力は3tUであり、この他、濃縮度50%未満のウランの再転換の実験も行える施設である。(図U−1−3)
転換試験棟は鉄骨造軽量ブロック張り平屋建て(延べ床面積約260m2)であり、化学処理施設、核燃料物質の貯蔵施設、放射性廃棄物の廃棄施設等で構成されている。このうち化学処理施設は、UF6加熱装置、UF6加水分解装置、溶媒抽出装置、溶解装置、沈殿装置、仮焼装置、還元装置、混合装置等で構成され、UO2の製造には、全ての装置が使用される。また、硝酸ウラニル溶液は、このうち溶解装置、溶媒抽出装置、沈殿装置、仮焼装置等によって精製されたウラン粉末を再び溶解装置を使用して製造される。
- 2.事故の発生の状況
(1)作業の目的
- 核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)との契約に基づき、「常陽」の燃料用として、平成11年度に濃縮度18.8%、ウラン濃度380グラム・ウラン/リットル(gU/g)以下の硝酸ウラニル溶液を転換試験棟において約160リットル(g)(約60キログラム・ウラン(kgU))製造することとなっていた。製造に当たっては1作業単位(以下、「バッチ」という。)分の2.4kgU(溶液量約6.5g)ずつ溶解を行い、輸送の単位である6〜7バッチ分の約40g の硝酸ウラニル溶液を均一化することとなっていた。
この作業は、スペシャルクルーと呼ばれる5人の作業員のうち3人で行われることとなっていた。なお、スペシャルクルーは、転換試験棟での作業以外に第1、第2加工施設棟の廃液処理も行っていた。
- (2)作業内容
- 今回の作業はスペシャルクルーのうち3人の作業員で実施され、9月中旬よりウランの精製を開始し、9月28日に終了して、29日から硝酸ウラニル溶液の製造を開始している。本来であればウラン粉末を溶解塔で硝酸を加えて溶解すべきところを、10g入りのステンレス鋼製の容器(いわゆるバケツ。以下「ステンレス容器(10g)」という。)でウラン粉末を溶解した後、硝酸ウラニル貯塔(以下、「貯塔」という。)において濃度を均一にするという社内で作成した手順書をも無視して、5g入りのステンレス鋼製のビーカー(以下、「ステンレス容器(5g)」という。)及び漏斗を用いて、1バッチ(2.4kgU)以下で制限して管理すべき沈殿槽に29日には4バッチ(約9.6kgU)の硝酸ウラニル溶液を注入し、30日午前に3バッチ(約7.2kg)の硝酸ウラニル溶液を注入したとしている。(図U−2−1)
- (3)臨界の発生と継続
- 上記の作業の結果、9月30日午前10時35分頃、沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達し、警報装置が吹鳴した。臨界は、最初に瞬間的に大量の核分裂反応が起こり、その後、臨界状態停止のための作業が功を奏するまで約20時間にわたって、緩やかな核分裂状態が継続したものであった。臨界状態を停止するために、10月1日午前2時30分頃から、臨界の継続を助長していた沈殿槽外周のジャケットを流れる冷却水の抜き取り作業を関係者の協力を得てJCOの職員が実施したことにより、午前6時15分頃、臨界状態は停止した。その後、臨界停止を確実にするためホウ酸水を注入し、午前8時50分には臨界の終息が最終的に確認された。
この臨界による総核分裂数は、沈殿槽から採取された硝酸ウラニル溶液の日本原子力研究所(原研)による分析結果から、2.5×1018個と評価されている。
- 3.事故の通報連絡・避難等の対応
(1)事故の通報連絡・対策本部の設置
- 今回の事故の第一報がJCOから科学技術庁にもたらされたのは、事故発生から約44分後の9月30日午前11時19分であった。この連絡を受け、科学技術庁では、現地の運転管理専門官が12時頃にJCO東海事業所で状況把握を開始している。その後、12時30分過ぎに、科学技術庁から首相官邸へ連絡がなされた。また、午後1時頃には、科学技術庁職員が現地に派遣され、午後2時には原子力安全委員会への正式報告がなされている。
午後2時30分には、科学技術庁災害対策本部が設置され、さらに午後3時には、災害対策基本法に基づく防災基本計画に従って、科学技術庁長官を本部長とする政府の事故対策本部の設置が決定された。この政府の事故対策本部において関係省庁が協力して事態に当たることとされ、関係省庁において所要の措置が取られた。また、現地においても、原研、サイクル機構等の原子力専門機関や電気事業者等の参加・協力を得つつ、午後3時30分頃に科学技術庁東海運転管理専門官事務所内に科学技術庁現地対策本部(現地対策本部)が設置され、午後5時頃に原研東海研究所内に移設された。さらに午後9時には、小渕内閣総理大臣を本部長とする政府対策本部会合が開催された。
また、原子力安全委員会の緊急技術助言組織の召集が午後3時30分に決定され、午後6時に緊急技術助言組織会合が開始されている。
- (2)避難等の対応
- 政府による対応と並行して、地元地方自治体においては、午後3時に東海村による350メートル(m)圏内の住民避難要請、午後10時30分に茨城県による10キロメートル(km)圏内の屋内退避勧告等、所要の対応が行われた。
- 4.放射線及び放射性物質による影響
(1)環境モニタリング
@環境モニタリングの実施状況
- 初期活動として、固定観測局(モニタリングステーション・ポスト)における空間放射線量率(ガンマ線)の監視が強化されるとともに、移動測定車等により空間放射線量率の測定が実施された。その後、第1段階モニタリングとして、敷地周辺を中心に大気塵埃、土壌、葉菜等の採取・測定が実施され、また、施設から半径10km圏内の16方位で空間放射線量率(ガンマ線)の測定及び土壌、葉菜等の採取・分析が行われた。加えて、水道水、井戸水、雨水、畜産物等の採取・分析が行われ、さらに、今回の事故状況からすると海洋環境への放射性物質の拡散は考えられなかったが、念のため、海水、海産物の採取・測定が実施された。
第2段階モニタリングでは、第1段階モニタリングの結果を踏まえて、固定観測局及びJCO周辺の空間放射線量率による監視、これまでに検出された試料(大気塵埃、土壌、葉菜)について施設から半径4km圏内の全方位で採取・測定が実施された。また、希ガス等の放出による外部被ばくを推定評価するために、熱蛍光線量計(TLD)が回収され、積算線量(ガンマ線)が測定された。
- A環境モニタリングの結果
- 環境モニタリング結果の概要は以下のとおりであった。
- (a)空間放射線量率
- JCOがサイクル機構の協力のもと敷地境界付近で9月30日午前11時36分から臨界終息まで測定した空間放射線量率は、ガンマ線については最大0.84ミリシーベルト/時(mSv/h)であった。また、中性子線については、同日午後4時半以降測定され、最大4.5mSv/hであった。
東海地区全般の状況については、茨城県及び原子力事業者が設置している固定観測局のうち、県舟石川局で最大で3.1マイクログレイ/時(μGy/h)(2分値)が測定された。固定観測局以外では、9月30日、移動測定車等により敷地周辺及び施設から約4kmまでの範囲で空間放射線量率(ガンマ線)の測定が実施された。その結果は0.03μSv/h〜0.44μSv/hであった。臨界が終息した10月1日の午前6時15分頃には、全ての固定観測局の空間放射線量率(ガンマ線)は平常のレベルに戻った。また、臨界終息後の10月1日に施設を中心に半径0.5kmから半径10km圏内までの範囲の16方位で空間放射線量率(ガンマ線)の測定が行われたところ、全ての地点で平常のレベルであった。
- (b)環境試料核種分析結果
- 環境モニタリングにおいて検出された核種は次のとおりである。
ナトリウム24 (Na-24) (半減期15時間)
:中性子による放射化生成物
マンガン56(Mn-56) (半減期2.6時間)
:中性子による放射化生成物
ストロンチウム91 (Sr-91) (半減期9.5 時間)
:核分裂によって生成したクリプトン91(Kr-91)(希ガス)の崩壊生成物
ヨウ素131(I-131) (半減期8日)
:核分裂によって生成
ヨウ素133(I-133) (半減期21時間)
:核分裂によって生成
ヨウ素(I-135) (半減期6.6時間)
:核分裂によって生成
セシウム138(Cs-138) (半減期32分)
:核分裂によって生成したキセノン138(Xe-138)(希ガス)の崩壊生成物
バリウム140(Ba-140) (半減期12.8日)
:核分裂によって生成したキセノン140(Xe-140)(希ガス)の崩壊生成物
ランタン140(La-140) (半減期40.3時間)
:核分裂によって生成したXe-140(希ガス)の崩壊生成物
今回の臨界事故では、希ガス及びヨウ素がガス状の物質として施設から放出されたと考えられる。一方、粒子状の核分裂生成物は検出されていないことから、これらの物質は、施設の換気系に設置されていたHEPAフィルタによって除去され、環境への放出はほとんどなかったものと考えられる。
表U−4−1に、各測定項目についての結果を示す。
- (c)その他環境試料分析結果
- 水道水、大気塵埃、土壌及び河川水についてウランの分析が行われたが、測定値は平常のレベルであった。このことから、今回検出されたウランは天然由来のものと考えられる。
- (d)汚染検査
- 施設から半径700m圏内の地表面、半径350m圏内の人家の窓ガラス、農産物、水産加工品、校庭等の汚染検査がサーベイメーターにて行われた。その結果、いずれも平常のレベルであった。
- (e)ガンマ線による積算線量
- 92地点に設置されていた熱蛍光線量計(TLD)により、ガンマ線の積算線量が測定された結果、事故の影響による積算線量注)は、転換試験棟から300mの1地点で270μGy、600〜800mの4地点で20〜30μGyであった。その他の87地点では有意な差は認められなかった。
注)事故の影響を見るため、周辺の状況の変化を考慮し、直近の同一季節である平成10年度第2四半期積算線量(今回の設置日数に換算)が、バックグラウンドとして差し引かれている。
- B環境モニタリング結果の評価
- 臨界(核分裂)により生成したと考えられるガス状物質(希ガス,ヨウ素)が放出され、広範囲の複数の地点において空間放射線量率(ガンマ線)が上昇した。また、環境試料(大気塵埃、土壌、葉菜等)が分析された結果、一部の試料から、臨界により生成したと考えられる短半減期のヨウ素及び希ガスの崩壊生成物(Sr-91、Cs-138、Ba-140、La-140)並びに臨界により発生した中性子により放射化されたと考えられるNa-24及びMn-56が検出された。しかし、施設から放出されたガス状物質による空間放射線量率(ガンマ線)の上昇は、最大でも数μGy/hでありかつ短時間であったこと、事故に起因して検出された環境試料中の放射性物質のレベルは十分に低くかつ短時間に減衰してしまう核種であったこと、また、積算線量の結果からも、住民の健康及び環境に影響を及ぼすものではないと判断された。
- (2)線量評価
@線量評価の考え方
- 今回の事故による線量には、事故の発生した沈殿槽から放出された中性子線とガンマ線の線量のほか、放出された放射性物質からの放射線の線量があり、その評価は次の考え方により行われている。
敷地周辺における線量については、線量計等による個人の線量データがほとんど得られないことから、基本的には、モニタリングの実測値等から場所における線量を推定し、それを基に個人の線量を推定する。評価の対象とする線量としては、
(a)臨界継続時における転換試験棟からの中性子線及びガンマ線
(b)臨界終息後の転換試験棟からのガンマ線
(c)転換試験棟から大気中に放出された放射性物質からの放射線
(クラウドガンマ、呼吸摂取、経口摂取)
の3つがある。(a)の評価の方法については、敷地の内外において実測された中性子線及びガンマ線の実測値を統計処理し、転換試験棟からの距離及び時間により線量を推定する。(b)、(c)については、モニタリングの実測値に沈殿槽に残った硝酸ウラニル溶液の分析結果も活用した計算により線量の分布を推定する。
敷地内における線量については、事故の間に敷地内にいた個人を特定することが可能であると考えられ、そのうちある程度の者については、個人線量計やホールボディ・カウンタにより測定されていることから、そのデータを活用して個人線量を推定することを基本とした。評価の対象となるのは、中性子線及びガンマ線である。評価の方法については、まず、個人線量計やホールボディ・カウンタによる個人線量データが得られる者については、それに準拠した。個人線量データが得られない者については、個人線量データが得られる者で類似の行動をした者があれば、そのデータを活用するとともに、以上によることができない者については、モニタリングの測定値や計算から場所による線量を求め、個人線量を計算により推定する手法を適用した。
- A周辺環境の線量評価
- 敷地周辺における個人の線量を評価する基礎となるものとして、周辺環境の線量評価がとりまとめられた。周辺環境における線量のほとんどは、臨界継続時の沈殿槽から周辺環境に達する中性子線及びガンマ線によるものであった。
臨界継続時の沈殿槽から周辺環境に達する中性子線及びガンマ線による線量については、敷地内外の中性子線及びガンマ線のモニタリングの実測値から直接評価し、周辺環境における時間、場所ごとの線量を示した基礎資料(以下「基礎資料」という。)として、表U−4−2のとおりとりまとめた。具体的には、次の手順で行った。
(a)JCO東海事業所の第一加工施設棟粉末貯蔵室のガンマ線エリアモニタの測定結果(図U−4−1)から、今回の臨界事故における線量率の時間変化が求められた。線量率のパターンから、初期の反応の変化が大きい部分(ここでは9月30日午前11時までを指し、以下「バースト部」という。)とその後の比較的なだらかに長時間にわたって臨界状態が続いた部分(以下「プラトー部」という。)に分けて評価することとした(図U−4−2)。ガンマ線エリアモニタの測定値については、バースト部の初期のピークを除き、信頼できる値であると評価された。
(b)プラトー部の線量を、敷地周辺の中性子線及びガンマ線のモニタリング結果(9月30日午後8時45分頃測定)の空間分布と上述のガンマ線エリアモニタの時間変化から評価した。
(c)原研那珂研究所の中性子モニタの測定値について、上述のガンマ線エリアモニタの測定値と傾向として一致した時間変化を示すとともに、バースト部の初期のピークも測定できている(図U−4−3)と評価されたので、その実測値からバースト部とプラトー部の線量の比を求め、バースト部の線量を評価した。
(b)で用いられたモニタリング実測値は、ひらけた野外におけるものであるので、基礎資料は、仮にある人が表に示された距離に事故発生時から示された時刻まで屋外に滞在した場合の積算の線量を示しているものである。従って、建物の中や背後にいた人については、遮へいによる線量減少の効果が反映されていないことから、基礎資料の値をそのまま用いると実際より高い値となっている。
周辺環境に達する放射線としては、以上の他に臨界終息後に沈殿槽から周辺環境に達するガンマ線が考えられるが、その線量を評価した結果、沈殿槽から100mの距離において、追加的な遮へいがなされなかったとした場合でも、事故後1年間の積算線量が0.1mSv以下であることから、十分に小さいと判断される。
周辺環境へ放出された放射性物質からの線量については、施設から大気に放出された放射性物質(希ガス及びヨウ素)からの線量を評価した結果、周辺環境の中でも最も大きな線量となる地点の実効線量当量は、0.1mSv程度であることから、十分に小さいと判断される。
敷地周辺の住民等の個人線量の評価については、上述の周辺環境の線量評価(基礎資料)を基に、個人の条件(事故期間中にいた場所と滞在時間、建物等の遮へい)に応じて行う必要がある。
- B個人の線量評価
(a)周辺住民等
- 事故発生当日の9月30日より、避難所となったコミュニティ−センタ−において行われた表面汚染検査で検出限界値を超える値が検出された者、東海村より依頼のあった者、個人的に希望のあった者等について、サイクル機構、原研、放射線医学総合研究所(放医研)においてホ−ルボディ・カウンタによる被ばく線量の測定が行われた。その結果、転換試験棟近傍に事故発生後数時間にわたり滞在した者7名について検出限界値を超える値が検出され、その値は6.4〜15mSv(暫定値)であった。(注:検出限界値は被ばく後の時間によって異なる。)
また、科学技術庁により敷地周辺の住民等について個人の行動調査が行われており、今後、その結果及び基礎資料に基づき、個人の線量評価の推定が進められることとなっている。
- (b)JCO社員等
- 今回の事故により現場で作業をしていたJCO社員3名が重篤な被ばくをし、うち1名が12月21日に死去した。これら3名の線量はそれぞれ16〜20グレイ・イクイバレント(GyEq)以上、6.0〜10GyEq、1〜4.5GyEq程度であった。
(注:GyEqは、高線量被ばく時における、放射線の種類に応じて急性影響に特有な生物学的な効果を考慮して影響の程度 を表す単位)
このほか、56名の被ばくが確認された。そのうち36名についてはホールボディー・カウンタで検出され、その値は0.6〜64mSv(暫定値)であった。また、フィルムバッジの測定結果により22名が確認され、その値は0.1〜6.2mSv(1cm線量当量)(ガンマ線)であった。なお、フィルムバッジで検出された22名のうち2名はホールボディー・カウンタでも検出されている。
また、臨界状態の停止のための作業等に従事したJCO社員24名について、被ばくが確認され、ホールボディー・カウンタで検出された者の値は9.1〜44mSv(暫定値)で、線量計(ポケット線量計)で測定された者の値は0.03〜120mSv(1cm線量当量)(暫定値)であった。
事故発生時にJCO東海事業所内にいた同社の社員、関連会社の社員等には、原子炉等規制法等に定められているフィルムバッジを着用していなかった者や事故後施設内にフィルムバッジを放置した者が多く、また、放射線業務従事者でない者がいた。これらの者についても線量評価のおおよその目安となる推定については、該当する者の行動調査のみならず、線量評価等の幅広い情報が必要であると考えられるため、JCOと関係機関が協力して、上述の@の線量評価の考え方に基づいて、その作業が進められることが期待される。
- (c)その他の防災業務関係者
- 東海村消防署、サイクル機構、原研等の防災業務関係者についても被ばくが確認されている者がいるが、その線量は防災業務関係者の被ばく線量の上限値である50mSvを十分下回るものであった。
このうち、サイクル機構及び原研の職員については、個人線量計の測定値からの線量評価がまとまっており、検出限界を超えた者が、それぞれ49名、8名であった。また、事故への対応において、JCOの社員3名の救急活動にあたった東海村消防署員3名について、6.2〜13mSv(暫定値)の被ばくが確認されている。
防災業務関係者の中には、フィルムバッチやポケット線量計を着用しておらず、被ばく線量が評価されていない者もおり、今後、当時の作業状況等から被ばく線量を評価する必要があると考えられる者については、上述Aの周辺環境の線量評価(基礎資料)や個人の行動調査に基づく被ばく線量の推定が行われることとなっている。
今回の事故による被ばくが個人線量計、ホールボディ・カウンタにより確認されている者は、転換試験棟近傍に事故発生後数時間にわたり滞在した者7名、JCO社員等59名、東海村消防署の消防士3名、臨界停止のための作業に従事したJCO社員24名、その他の防災業務関係者57名である。(表U−4−3)
- 5. 国際原子力事象評価尺度(INES)による暫定評価
- 国際原子力事象評価尺度(INES)とは、原子力施設において発生した事故・故障等の重大度を簡明、かつ、客観的に判断することを目的に策定されたものであり、世界各国で用いられている。評価に当たっては、事象を本評価尺度の「所外への影響」(基準1)、「所内への影響」(基準2)及び「深層防護の劣化」(基準3)の3つの基準により評価するとともに、その評価のうち、最高のものを当該事象の評価結果とすることとなっている。
今回の事故については、10月1日、科学技術庁から次の暫定値が公表されるとともに国際原子力機関(IAEA)に通報されている。すなわち、「所外への影響」については法定限度を越える程度の公衆被ばくの可能性があるところからレベル4、「所内への影響」については従業員が極めて多量の被ばくをしているところからレベル4、「深層防護の劣化」については評価対象外であるとし、これら3つの基準を踏まえ暫定値を4としている。
なお、本暫定値については、本事故調査委員会が行った原因究明の結果等を踏まえ、専門的、技術的立場から今後、「原子力施設事故・故障等影響度評価委員会」で評価検討が行われ、その結果を踏まえ科学技術庁が正式な評価結果を決定の上、公表するとともにIAEAに通報する予定である。
- 6.海外への情報提供
- 海外の関心の高さ及び国際間の正確な情報提供の重要性に鑑み、在外公館を通じた事故情報の連絡及び経済協力開発機構/原子力機関、経済協力開発機構/国際エネルギー機関(OECD/NEA、OECD/IEA)、IAEA等の国際機関へ専門家を派遣し事故の説明を行ってきた。また日本における原子力分野の透明性を高め、国際的な信頼を確保する観点から、事故の実態を把握することを目的とする専門家チームをIAEA、米、露、仏及び独から受け入れてきた。
IAEA専門家チームの報告書はすでに公開されており、我が国が来日中の専門家チームに提供した情報や、現地において専門家チームが独自に行った放射線測定結果を基に事実関係を記述するとともに、当該専門家チームによる暫定的な結論を示している。
(参考資料U−6−1)
中立的専門家チームにより作成されたIAEA報告書では、正確な情報が伝えられており、IAEAのホームページで閲覧できる。
(参考) IAEA専門家チームの報告書(1999年11月15日) の結論
@事故は、第一にヒューマンエラー及び安全原則と基準の重大な違反によって発生した。
A事故は、有意な放射性物質の飛散につながる事故ではなかったため、汚染事故ではなく、本質的に照射事故である。
B臨界が始まった後の20余時間の間、放射線が転換試験棟で生成し、離れた距離においても、それが計測されたが、建屋から放出されたのは、微量の希ガスと気体状のヨウ素のみであった。臨界が終了し、遮へい実施後は、敷地の外側の放射線レベルは通常に戻った。
C事故直後、周辺で微量の放射性核種が検出されたが、検知された核種の半減期は短く、この事故による残留汚染はない。このような微量の放射性物質は、地域住民や彼らの子孫の健康や環境条件に対する放射線による影響を及ぼすことはない。
Dこの地域の農産物には全く影響はなく、完全に安全である。本チームが測定した住居地域の放射線レベルは、通常のバックグラウンドレベルであった。
E事故によって、この地域の産業及び農業が間接的に損害を受けていると報告されているが、これは、被ばくが限られており、放射性の残留物がないにもかかわらず、多くの人々が、本事故を汚染を伴う事故であると考えているからである。
F事故は、3名の過度に被ばくした作業者の健康への影響の観点から重大であった。また、JCO施設の規制体系、安全審査手続き、セーフティーカルチャーにも密接に関連する。
G日本において、事故調査中であり、調査が進むとともに、暫定的な情報の多くは修正されるであろう。例えば、転換試験棟への入室と沈澱槽内からの適切なサンプル採取が可能になれば、核分裂生成割合のより良い推定が可能になる。これにより、被ばくした作業者や住民の線量の再評価が可能になるであろう。さらに、事故の詳細な要因調査には時間を要するであろう。









