第2次取りまとめ総論レポート

「わが国における地層処分の技術的信頼性」に関する

OECD/NEAの専門家による国際レビュー

NEA/RWM/PEER (99) 2

 

 

 

OECD/NEA国際レビューグループの報告

1999年10月20日

 

 

(仮訳:核燃料サイクル開発機構)

翻訳にあたっては原文に忠実であることを原則としたが,正確を期すための補足等が必要な箇所については【訳注】を付した。


要約
 原子力委員会の指針に沿い,核燃料サイクル開発機構(JNC)は,経済協力開発機構・原子力機関(NEA)に対し,独立した立場から国際的な専門家による第2次取りまとめ総論レポートに関するレビューの実施を申し入れた。レビューの対象は「日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発に関する第2次取りまとめドラフト【訳注:第2ドラフトのこと】」として記述されているものである。

第2次取りまとめの主な目標は以下の通りである。
−日本における地層処分の技術的信頼性を示すこと
−初期の研究開発段階に続くサイト選定と制度化の技術的拠り所となる情報を提供すること

 政府により第2次取りまとめ報告書が承認されれば,地層処分計画は現在の研究開発の段階から,サイト選定と制度化の手順が形成される新しい段階へと移行し,新しく設置される実施主体が事業を開始することになるとされている。

 NEAはJNCとの間で合意された条件のもとにレビューを引き受け,専門家による国際的なレビューグループ(以下,「IRG」【訳注:International Review Groupの頭文字をとったもの】)を組織した。レビューは1999年の5月中旬から10月にわたって行なわれた。レビューの一環として,日本で1週間のワークショップを開催したことは重要な要素となっており,その機会にIRGはJNCの研究者との詳細な情報交換や,JNCの研究施設を訪問することができた。レビューワークショップは,JNC以外の関係機関に対して公開で行なわれ,それらの機関はオブザーバーとして参加した。
 NEAレビューは国際機関における研究評価レベルで行われ,他のグループによって実施されることになるモデル化手法やデータに関する詳細なレベルでのレビューによって補足されている。NEAレビューは,JNCが研究開発の全体的な達成度を評価するのを助け,原子力委員会へ提出する報告書の改訂にあたって有益な提案を提供するために実施された。
 レビューの全体的な結論として,日本における地層処分の技術的基盤は,現段階にあっては十分なレベルの説得力と信頼性をもって示されており,次の段階に進み,適切にサイト特性調査や安全評価を行うことができるような手法が開発されていると言うことができる。しかしながら,現在の第2次取りまとめドラフトとそこに示される解析の内容は,IRGとJNCが議論し,本レポートにおいて記述しているような方法で改善される必要がある。レビューの主な結果は以下のとおりである。

 地質環境 第2次取りまとめドラフトにおける日本の地質環境にかかわる記述は,その目的に照らして,明確で包括的なものである。しかしながら,現状においては地層処分の観点から取得されたデータや野外観察は相対的に限られたものであり,地質環境にかかわる情報の多くが文献から得られたものであるということに留意しなければならない。 処分地を決定するまでの過程において,より詳細な調査がなされる必要がある。
 日本の地質構造の特徴は,プレートが衝突している所に日本列島が位置していることに起因し,このため地殻変動は比較的活発で,世界的にみても放射性廃棄物の地層処分を計画している他の国々よりも大きなものとなっている。このような地殻変動は地層処分の長期安全性に影響を及ぼす可能性があり,原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書や第2次取りまとめの関心事の一つとなっている。IRG の見解として,新たな断層が発生する確率が小さい地域を特定することは合理的であり,また信憑性もあるが,地層処分の安全評価において新たな断層が発生するシナリオを除外することは,現段階では受け入れられないものと考える。したがって,日本の地層処分概念をより確固たるものとし,その性能を示すためにも,断層シナリオを安全評価に加えることを推奨する。

 地層処分の工学技術 第2次取りまとめドラフトでは,人工バリアの設計と性能に力点を置き,地層が有するバリア機能への依存度を相対的に下げている。このことは,処分場が初期の概念設計の段階にあり,地層が有する性能に大きな不確実性が存在することを考慮すれば受け容れられる考え方である。人工バリアの設計と性能に関する分野でのJNCの研究成果は非常に高い水準に達していることを特記しておく。人工バリアシステムの性能については,今後の最適化に向け大きな裕度をもって設計することが可能であり,様々な断層シナリオに対しても適用することができるものと考えられる。

 安全評価 安全評価は第2次取りまとめドラフトの中核をなしている。適用された一般的な方法論については,諸外国で公表されている同様の報告書の記述に匹敵するものであり,また国際機関が示したガイドラインとも一致したものとなっている。データベースが一般的なものであることや日本の地層処分計画が比較的初期段階にあることを考慮すれば,今回評価した研究成果は感銘を与えるものであり,処分計画を次段階へ進めるうえで十分な成果と言うことができる。ここでIRGは,とくにシナリオ解析の網羅性を明らかにすること,データ設定やモデルの仮定についてより注意深いアプローチをとることなど,いくつかの側面についてさらに配慮することを推奨する。第2次取りまとめでは,さまざまな地質環境や地表環境を視野に入れなければならないことが,その内容を複雑にしており,したがって高いレベルのわかりやすさと透明性を確保することが必要である。この点については総論レポートドラフト全般にわたって改善する必要があると言える。

 第2次取りまとめで得られた成果 将来行なわれるサイト選定と制度化にあたって必要となる情報を提供するための技術基盤は十分に確立されてきているが,これらの知見は,サイト選定や適切な規制体系を構築をするために今後必要とされる段階に向け,十分論理的で構造的に整理された形として示されているとは言い難い。とくに,第2次取りまとめを構成する本質的な部分と得られた主要な知見については総合的にみて曖昧さを残してはならず,また第2次取りまとめを通じて得られた成果は,意思決定者とそれを補佐する技術専門家に対して分かりやすくまとめられていることが重要である。この点に関して,IRGとJNCが行った議論は有益な手段となっており,これを勘案することにより,第2次取りまとめの最終版では,2つの最も重要な目的,すなわちサイト選定と安全基準策定に資する技術的拠り所を示すことができると考える。


目 次

要約

1.序論
  レビューの背景   レビューの委任事項
  OECD/NEAで組織した国際レビューグループ
  レビューの基本方針と実施8
  本報告書について

2.日本の地質環境および安全のコンセプト
  全般
  火山活動
  隆起・沈降
  断層活動
  地質環境の一般的な変遷
  種々の岩盤に関する検討
  地質および処分場のサイト選定についてのコメント
  推奨する事項

3.地層処分の工学技術
  全般
  オーバーパック
  緩衝材および埋め戻し材
  処分場の設計
  まとめ

4.安全評価
  全般
  安全評価報告書の作成
  シナリオ
  モデル化
  データ
  結論

5.第2次取りまとめの成果の提示と得られた知見
  全般的な考察
  個別事項
  提案

6.総評
  結論

  参考文献
  付録:国際レビューチームのメンバー


1. 序論

レビューの背景
 日本では過去20年にわたり高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発が行われてきた。現在,核燃料サイクル開発機構(JNC)【訳注:以下,「サイクル機構」という】が中核機関としてその役割を担っている。サイクル機構は1998年10月に発足し,その前身は動力炉・核燃料開発事業団(PNC)である。サイクル機構の使命は,核燃料サイクルを確立することであり,高速増殖炉の開発,再処理技術,プルトニウム燃料開発および使用済燃料の再処理によって生じる高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発を行っている。

 動力炉・核燃料開発事業団は,1992年に,「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書 - 平成3年度 -」(PNC, 1992)を公表した。この報告書は一般に「H3報告書」と呼ばれ,非常に多くのレビューを受けた。

 1997年に,原子力委員会(AEC)【訳注:正確には,原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会】は,「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」(AEC, 1997)【訳注:以下,「専門部会報告書」という】を公表した。専門部会報告書には,地層処分研究開発の第2次取りまとめ報告書を作成する理由が述べられている。同報告書はさらに,第2次取りまとめにおいて,

「地層処分の技術的信頼性を示すとともに,処分予定地選定や安全基準の策定に資する技術的拠り所を示すこと」

としている。

サイクル機構は,「H12報告書」と呼ばれる「地層処分研究開発の第2次取りまとめ報告書」のドラフト【訳注:第2次取りまとめ第2ドラフトのことであり,以下「第2次取りまとめドラフト」という】を取りまとめた。第2次取りまとめドラフトは,「総論レポート」と日本の地質環境,地層処分の工学技術,地層処分システムの安全評価に関する3つの分冊の4つの文書から構成されている。

 また,専門部会報告書は,

「第2次取りまとめ報告書については,国際的な専門家によるレビューを受け,そのレビュー結果とともに国に提出し,評価を受けること」

としている。

 専門部会報告書の指針に従い,サイクル機構は経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)に対し,第2次取りまとめ総論レポートについて中立の立場からの国際レビューを依頼した。この国際レビューは,個別の分野の専門家によって安全評価の手法やデータについて別途行われているより詳細なレベルでのレビューによって相互に補完しあうものである。

NEAでは,サイクル機構からのレビュー委任事項をもとに国際レビューを行うことを受理し,「国際レビューグループ」を組織した(以下,IRGもしくはグループ)。本報告書はそのレビュー結果を記載したものである。

レビュー委任事項
 サイクル機構から提出されたレビュー委任事項(JNC, 1999a)は以下のとおりである。

「NEAによるレビューは,日本の地層処分計画が比較的初期の段階にあることとくに,地質環境情報は幅広い地質環境を対象とした一般的なものであり,その取り扱いには自ずと制限があるといった特徴に留意したうえで,第2次取りまとめ報告書で記載した事項の適切さを評価することに焦点をあてるものとする。したがって,NEAによるレビューは,安全評価にかかわる基本事項や原理,用いた概念や手法,構築された地層処分システムについての理解が世界の最新の知見に沿ったものであるかどうかについて確認することに焦点をあて,国際機関における研究評価レベルで実施するものとする。サイクル機構としては,このNEAによるレビューをもって,別途実施しているモデルやデータなどの個別分野の詳細なレビューを補完することを意図している。」

「レビューの対象は第2次取りまとめ報告書のうち総論レポードラフトとし,3つの分冊については,必要に応じてレビュー実施者が参照できるものとする。」

 したがって,総論レポート(JNC, 1999b)が本レビューの主な対象となっている。3つの分冊(JNC, 1999c; 1999d; 1999e)はIRG全員に配付され,レビューの参考としたが詳細なレビューには踏み込まなかった。

 また,専門部会報告書には第2次取りまとめの目的が示され,主要な課題が列挙されているため,IRGのレビューの基盤としていこれを用いた。

OECD/NEAで組織した国際レビューグループ
 IRGは6名のメンバーで構成した。その内訳は,各国の放射性廃棄物管理の計画に関与した経験を有する4名と,中立な立場の国際的専門家1名およびOECD/NEAの専門家1名である。IRGの座長はHelmut Rothemeyer教授(ドイツ)が担当した。各メンバーの氏名と経歴は付録に示してある。

 IRG全員が地層処分の研究開発全般に精通している。一つのチームとして活動することに加え,総論レポートやその他のレポートを詳細に評価するため,各メンバーがそれぞれ得意とする専門分野に最も近い項目に専念できるよう,担当箇所の分担をおこなった。限られた範囲ではあるが,個々の分野において特別に精緻な検討を加える必要があった際には,レビューメンバーが所属する機関やその関係機関の研究者の知見も反映した。

レビューの基本方針と実施
 レビューの基本方針については,IRGの初会合の時点から議論を行い,その後の検討を通じて適宜見直しを行った。その結果,以下に至った。

  1. 本レビューは,1997年の専門部会報告書で要求されている国際レビューにあたる。専門部会報告書では,地層処分の信頼性に力点が置かれている。したがって,本レビューでは,日本における高レベル放射性廃棄物地層処分について,政策にかかわる問題については最小限にとどめ,技術的な面とその信頼性に焦点をあてることとした。
  2. 本レビューは,総論レポートに焦点をあて,国際機関における研究評価レベルで実施することを心掛けた。これはサイクル機構からのレビューの委任事項に沿うものである。
  3. 第2次取りまとめドラフトに記載された情報は,幅広い地質環境を対象としたものである。処分場のサイトは特定されておらず,岩種については花崗岩体などの結晶質岩と第三紀の泥岩や砂岩などの堆積岩として定義されている。レビューの委任事項にしたがい,サイトに固有なデータがないことに留意して,結論や技術的な解析の評価を行うこととした。
  4. 第2次取りまとめドラフトが以下の2つの目的を達成しているかという点にとくに注意を払った。

    - 日本において地層処分の技術的信頼性を評価するうえでの技術的基盤が示されていること
    - 初期の研究開発段階に続くサイト選定や安全基準の策定のための技術的拠り所を与えていること

  5. 技術報告書は,日本において安全に地層処分を実施する可能性を評価するうえで密接に関係する3つの主要な技術テーマについて記述が行われている。このため,異なる分野が相互に論理的に首尾一貫した仮定を用いていること,および適切に優先順位付けがなされて技術的検討が行われていることを確認することが重要であると考えた。

 レビューの対象となった報告書類は1999年5月半ばに受理した。その後,レビューは以下のように進められた。

●6月上旬にパリでレビューグループで会合をもった。この会合では,サイクル機構の代表者から,「サイクル機構の第2次取りまとめの背景と特徴」について2つの説明を受けた。これらの説明において,第2次取りまとめに用いたアプローチに加え,第2次取りまとめを取り巻く日本の地層処分計画や推進体制など政策的枠組みが紹介された。これにより,第2次取りまとめは高レベル放射性廃棄物ガラス固化体のみを対象とした地層処分を取り扱ったものであること,現段階では処分概念はモニタリングを含む処分後の制度的管理に依存しないこと,廃棄物の再取り出し性については検討の対象として明記されていないことを理解した。これらの特徴については,将来,サイクル機構の処分概念に適切な改良を求められるようなことが生じた場合には,改めて検討されるものと理解した。

●IRGは7月と8月にJNCに対して予備的にコメントや質問を行った。これらのコメントや質問全てに対してサイクル機構は書面で回答を行った。予備的なコメントと質問およびそれに対する回答は,以下に述べるワークショップにおいてIRGとサイクル機構の研究者との間の議論を進めやすくするため適切に編集整理された。サイクル機構の要請にもとづき,第三者に対してこの資料を公開することを了承した1。

●8月の第4週には,サイクル機構研究者とのワークショップを1週間にわたって日本で開催した。このワークショップにはサイクル機構以外の日本の機関からのオブザーバーも出席した。ワークショップでは,予備的に示されたコメントや質問で取り上げたすべての項目について,深く掘り下げた議論を行った。また新たに見い出された項目についても議論が行われた。IRGは,さらにサイクル機構東海事業所の研究施設への訪問も行った。ワークショップの期間中,サイクル機構は,IRGが行ったコメントの大部分について了解し,第2次取りまとめ報告書に反映することとした。ワークショップの最後にあたり,Rothemeyer博士から口頭にて,途中経過としての本レビューの講評を行った。ワークショップの翌週には,IRGのうち2名が東濃鉱山を訪問した。

 ワークショップで得られた最も重要かつ今後のレビューで留意すべき点として,第2次取りまとめドラフト,とくに総論レポートは未だ途中段階のものであること,データは取得中のものもありすべてが反映されていないこと,日本語版では別冊も作成中であること,総論レポートの全体内容については地層処分研究開発協議会/検討部会で引き続き検討中であることがあげられる。


1 この資料はNEA/RWM/PEER(99)3としてまとめた。この資料に示されている内容は,精密に構成されたものではなく,IRGの各メンバーからの最初の印象にもとづくコメントや質問と,それに対するサイクル機構の最初の回答であるということに注意していただきたい。これらの見解や回答のいくつかは,IRGとサイクル機構との間で行われた日本でのワークショップの期間中あるいは終了後に修正されている。本報告書NEA/RWM/PEER(99)2が,全体として,唯一のそして最終のIRGの公式見解である。
●本報告書を最終的に完成し,1999年10月20日にサイクル機構へ送付するまで,IRG内で何回かにわたって見直し作業が行われた。

 

本報告書について
 本報告書は,1999年5月に作成されたサイクル機構の2次取りまとめ総論レポートのドラフトに関するレビューをまとめたものであり,このレビューによってサイクル機構が日本の原子力委員会から与えられた責務を全うするために,自らの達成した成果を評価し,第2次取りまとめ報告書の修正を行うことを支援するものである。したがって,本報告書は主にサイクル機構の研究者と管理職,すなわち第2次取りまとめに深く関わった者に対して作成されたものである。しかしながら,本報告書は,国際機関における研究評価レベルで行われたレビューの結果をまとめたものとはいえ,別途作成された資料,すなわち資料NEA/RWM/PEER(99)3や日本で開催したワークショップの議事録に記載されている詳細なコメントや議論をできるだけ多く取り込むように心掛けている。よって,本報告書の内容は十分に一般性を有しているものであり,第2次取りまとめの詳細やその報告書の記載内容全てに,必ずしも精通していない読者にとっても理解できるものと考える。

 本報告書は,第2次取りまとめ総論レポートドラフトの目次との対応が可能となるよう,次の6つの章から構成されている。

  1. 序論
  2. 日本の地質環境および安全のコンセプト
    主に,総論レポートドラフト第III章に対応
  3. 地層処分の工学技術
    主に,総論レポートドラフト第IV章に対応
  4. 安全評価
    主に,総論レポートドラフト第V章に対応
  5. 第2次取りまとめの成果の提示と得られた知見
    主に,総論レポート第I, II, VI, VII章に対応
  6. 総評

 本報告書は,IRGメンバー全員の合作であり,最終的に合意した内容を示すものである。本報告書の内容については,サイクル機構による確認は受けておらず,事実誤認があるとすればそれはすべてIRGの責任である。

 

2. 日本の地質環境および安全のコンセプト

全般

 日本の地質構造は,プレートが衝突する地域に日本列島が位置することに支配されており,そのため,放射性廃棄物の地層処分を検討している世界の他の国に比べて,地殻変動が一般に活発である。地層処分の長期安全性に対する地殻変動の潜在的な影響は,専門部会報告書および第2次取りまとめドラフト報告書においても認識されている。他の国は概して,日本には構造的に安定とみなせるような場所はないという感覚を抱いており,安全な地層処分コンセプトの開発は,日本の計画にみられる特別のチャレンジである。このチャレンジは,程度はともかく,イタリア,台湾,スイスなども直面しているものである。

 全体として,第2次取りまとめドラフトにおける日本の地質環境に関する記述は,その目的に照らして,的確かつ十分に包括的である。しかしながら,現段階においては,地層処分の観点から得られたデータや野外観察は相対的に限られており,地質情報の多くが文献調査によっていることに留意が必要である。

 第2次取りまとめドラフトで考慮されている主要な項目は,火山活動,断層活動とそれに伴う地震活動,隆起・沈降・侵食・堆積である。気候・海水準変動も考慮されているが,これらは生物圏への潜在的な影響はあるものの,地層処分の長期性能の観点からの重要性は幾分低いと思われる。

 これらの点のいくつかについては,すでに文書によりコメントし,また,東京で行なったワークショップにおいて広範囲にわたって議論した。これらの議論における最も重要な点を以下にまとめる。

火山活動
 日本における火山活動についての現有データによる分析は十分であり,火山活動によって処分場が破壊されるリスクが無視できるような地域が日本に存在するという結論は,確かな根拠に基づいているといえる。

隆起・沈降
 日本における垂直方向の地殻変動に関して,第2次取りまとめドラフトで示されたデータは,広域にわたる隆起,すなわち,国土の多くが,相当の上方成分を伴う構造的な応力を受けていることを示している。ただし,一方では沈降している地域もある。報告書に示された隆起速度は一般に高く,場合によっては,他の構造的に活発な地域において知られている造陸・造山運動の速度よりも大きい。将来に予想される侵食の程度,すなわち処分場の上部から削剥される可能性のある被覆層の厚さ,に対して隆起・沈降が明らかに影響を及ぼすことを考慮して,IRGはこれらの地質学的プロセスについての信頼性の高いデータベースの重要性を強調する。

 隆起データは,将来の侵食によって著しい厚さの被覆層が削剥される可能性のある場所を見きわめる上で有用である。地層処分のサイト選定段階において,隆起データは,候補サイトをランクづけするために,また,処分場の設計条件,たとえば最低深度を決める上で,考慮されなければならない。すなわち,これらのプロセスについての定量的な知見は,処分場のサイトを選ぶ上での重要な要素となると考えられる。

断層活動
 日本における活断層に関するデータベースは,本質的に地表での観察(空中写真判読と地表踏査)および地震記録データに基づいている。これらのアプローチは,実際の活断層の数をかなり過少評価しているように思われる。したがって,IRGは,適切に選ばれた処分場における将来十万年にわたる断層活動の潜在的な影響が,低めに見積もられていると考える。日本において断層活動が起こる可能性のある地域の分布については,地層処分計画において今後さらに研究を続けることが必要な点であるように思われる。

 したがって,IRGは,将来の十万年にわたって,個々の地域における断層活動の大部分は予想できるという,第2次取りまとめドラフトにおける断層活動の取り扱いについて同意見ではない。報告書に示された活断層についての情報は,断層活動が起こる可能性の高い地域と低い地域とを区別するためには間違いなく有効であるが,断層活動が全く排除できる地域を設定できるというものではない。

 第2次取りまとめドラフトでは,将来十万年の間,断層活動が起こる場所は,現存する活断層に限られ,したがって,少なくとも既知の活断層から10km離れた処分場は,破壊のリスクにさらされないと仮定している。IRGは,この重要な仮定には,科学的な根拠が十分でないと思う。さらに,報告書の様々な部分での断層活動の取り扱い方が,必ずしも一貫してない。安全評価の章で用いられているいくつかの仮定は,上述の仮定と矛盾しているように見える。

 以上のように,既存の断層の変位あるいは新たな断層の発生について,断層活動を確率論的なプロセスと考え,そのように取扱うことを勧める。サイクル機構は,すでに,この問題に取りかかっており,断層シナリオの評価を行っている。

地質環境の一般的な変遷
 より一般的な視点からの,将来に起こりそうな地質環境の変遷に関し,第2次取りまとめドラフトに示された情報に基づけば,日本の比較的安定な地域については,合理的な予測ができると考えられる。しかしながら,そのような予測の不確かさのレベルは,将来の期間が長くなるにつれて増加する。

 第2次取りまとめドラフトにおいては,過去数十万年にわたる地質事象についての知識に基づき,将来十万年までの地質環境の変遷を,信頼性をもって予測でき,それ以降は信頼性が低くなると仮定している。しかしながら,十万年までは無視できると考えたいくつかの地質プロセスや事象が,十万年以降は起こりやすくなるという仮定には無理がある。地質環境の将来の変遷を,漸進的な変化の結果として予測することが,より論理的で科学的にも確かだろう。現在の科学は,地圏の挙動が十万年経過したらそのパターンを変えると仮定できるだけのレベルにはない。

種々の岩盤に関する検討
 第2次取りまとめドラフトは,2つの一般的な母岩である結晶質岩と堆積岩を対象に,地層処分コンセプトを開発している。様々なタイプの母岩に関する潜在的な長所と問題点についての広範に及ぶ国際的な知見は,ほとんど活用されていない。とくに,構造的な変位に対する反応が岩石のタイプによって異なることは,日本列島の構造的な条件との関連性が強い。たとえば世界的にみて,粘土に富む地層の多くは塑性的な挙動をし,透水性をほとんど,または全く増加させることなく,断層変位を吸収できることが知られている。粘土の含有量がとくに高い必要はない。現在または将来,日本における処分場の潜在的な母岩あるいは潜在的に好ましい被覆層を検討する際に,このような観点が考慮されることは有益であろう。【訳注:説明不足のためIRGに誤解されているが,第2次取りまとめドラフトでは粘土に富む地層は堆積岩として扱っている】

地質および処分場のサイト選定についてのコメント
 第2次取りまとめドラフトを通して,潜在的に好ましくない地質学的特徴からの最小距離が,地層処分のサイト選定のクライテリアとなり得ることが,繰り返し記述されている。そして,主要な活断層からの距離として10kmが,火山からの距離として50kmが言及されている。

 現在はまだ地層処分計画の比較的初期の段階にあること,および実際のサイト選定は第2次取りまとめの役割でないことを考慮すると,定量的なクライテリアがこの初期の段階に明確にできるかのような印象を与えないように注意する必要がある。特別な地質的特徴からの見積もりの距離など,絞り込みの要素は,潜在的に好ましい地域を選定する際に活用されるものであるが,一方で,サイト選定のクライテリアとして用いられる数値は,サイトに固有の特徴に依存しており,詳細かつ現実的な安全評価によって支持される必要がある。

 現時点では,サイト選定の要素として,処分場と潜在的に好ましくない地質学的特徴との間の空間的な関係を検討することが望ましい。それは,候補サイトに関する固有の情報が得られるようになった時に,サイト選定のクライテリアとして形を変えることになる。【訳注:説明不足のためIRGに誤解されているが,第2次取りまとめドラフトでは,活断層および火山の影響範囲を保守的(最大限)に見積もって,それぞれ一律に10kmおよび50kmと仮定したとしても,その範囲外となる地域は広く分布すること,および影響の範囲は個々の地域によって違っており,将来,特定の地域を調査すればこの距離は小さくなること,を記述している。すなわち,安定な地域がわが国にも存在することを述べているのであって,最小距離やサイト選定のクライテリアとしての距離に言及したものではない】

 そのほかに,潜在的に好ましい地域を選定する際に考慮すべきサイトの要素としては,沈降,比較的粘土に富んだ地層の存在,および離島が挙げられる。

●沈降に関しては,時間とともに隔離が進むことから,処分場の候補サイトにとって好ましい特徴であり得ることを考慮する価値があるだろう。

●上述したように,粘土に富む地層が,仮に深部岩盤あるいは被覆層として存在すれば,構造的に活発な地域における長期安全性にとって,好ましい特徴となると思われる。

●第2次取りまとめドラフトは,日本の主要な国土での地層処分に焦点を当てている。人口の中心から離れた小さな島も検討されるべきである。もし,いくつかの小島が,構造的な安定性と母岩の水理条件などの観点から,許容できる地質条件を備えていることがわかれば,人間からの距離や海洋環境の大きな希釈能力といった長所が,サイト固有の安全評価で注意深く評価されるべきである。

推奨する事項
 上述した内容および東京での会議における議論に基づき,IRGは以下を推奨する。
●断層活動に関し,日本のような構造的に活発な地域においては,断層の変位は,既存の断層あるいは新たに形成される断層にかかわらず,どこでも起こる可能性があると考える方がより議論を十分なものとするであろう。既知の活断層や地震の震源地についてのデータベースは,将来,断層活動の発生の確率との関係で地域をランクづけすることに活用できる。このアプローチの結果として,また,安全性の評価のために,断層活動を本質的に確率事象とみなして,断層シナリオを安全評価において考慮すべきである(これは,すでに東京での会議で,サイクル機構に受け容れられている)。断層活動の確率についての定量的な評価には,必ず,大きな不確かさを伴う。したがって,断層活動を被った際の人工バリアおよび天然バリア性能への影響については,注意深い検討を継続し,処分場の設計およびサイト選定における意思決定要因として用いられるべきである。

●適切な母岩の選定については,上述した断層活動について推奨した事項と関係があることは明らかである。断層活動の確率を定量的に正当性をもって示すことは,不可能ではないにしろ,困難であることから,岩石によって断層活動に対する反応が異なる点を,重要なサイト選定の要素として考慮すべきである。粘土に富む地層は塑性的な挙動を示し,断層に切られた際にも,全体として低い透水性を維持し得ることが知られている。粘土に富む地層は,一般により高い核種保持能力を有し,したがって,より効果的な地球化学的バリアであるという長所もある。これらを考慮し,粘土に富む堆積岩層が,深部岩盤または被覆層として確保できるのであれば,日本においても本格的に検討されることを推奨する。

●処分場のサイト選定に関しては,これまで余り注意が払われていないような,潜在的に好ましい特徴,すなわち,沈降による隔離の増加および小島の遠隔性について,今後はより考慮されることを推奨する。

●最後に,定量的なサイト選定の基準,たとえば,潜在的に活発な地質学的特徴からの離間距離は,地層処分計画の現段階においては明確にせず,数字で表現されるような基準はサイト固有のデータが得られ安全評価ができるようになるまで定めないことを推奨する。

 

3.地層処分の工学技術

全般
 地層処分場の安全性は適切な地質環境と適切に設計され選定された人工のバリアに依存する。地質を適切に選択することは,各国それぞれの置かれた条件に強く依存し制約を受けるが,人工バリアシステムはその地域の環境に柔軟に適合させ,最適なものとすることができる。また,人工バリアの性能は試験を行うことができる。水理地質学的,地球化学的環境の安定性を処分の観点から合理的に確保できるということが示されれば,これらの試験に基づいて長期の予測が可能となる。

 人工バリアシステムと処分場の設計は,とくに初期の概念的な段階においては,地質環境のモデルに比較的高い不確実性が存在しているので,処分場のセイフティケース【訳注:適切な日本語がないのでそのまま用いた。意味としては,地層処分の安全性について論証した総体をいう】を作成するうえで基本的に重要なものである。したがって,第2次取りまとめは人工バリアに重点を置き,地質環境のバリア機能に過度に依存していない。第2次取りまとめ報告書においては,このことはオーバーパックや緩衝材,埋め戻し材の材料の選択,および処分場の設計と建設・操業・閉鎖技術【訳注:原文はconstruction】に反映されている。

 サイクル機構が行ったオーバーパックと緩衝材,埋め戻し材に関する研究は,国際的に高い水準であり,いくつかの領域では先端的なものとなっている。

オーバーパック
 オーバーパック材料の選択およびオーバーパックの設計について明瞭に記述されている。チタン,炭素鋼および銅という3種類の材料が考慮されている。炭素鋼の選択は,設計要件に対する材料評価に基づいて行われている。オーバーパックの耐用年数にかかわる設計要件も含め,これらの設計要件は充分な信頼をもって満たされていることが示されている。

 腐食挙動は,人工的に作られた塩素イオンが支配的な溶液と,炭酸イオン・炭酸水素イオンが支配的な溶液の2つを用いて明らかにされている。これらの溶液は日本の代表的な深部地下水を模擬している。この2つのタイプの地下水については,どちらも還元性環境となっていることが期待されている。腐食深さは保守的に見積もられている。したがって,サイトに固有なデータが使用できるようになれば,理由を明確にして現在の保守性のレベルを最終的に緩和していくことが可能であると考えられる。

 最終的な肉厚の決定には,オーバーパックの信頼性の高い製作に関する実現可能性や,最終製品に対して使用した材料と溶接部の非破壊検査による品質確認といった要素も考慮されなければならない。

 廃棄体を横切る岩盤のせん断的な変位が,設計の基本的な荷重として考慮されていないことに注意が必要である。過渡的あるいは永続的な不均一荷重についても考慮されていない。現在の設計および肉厚であれば,予測できる不均一な荷重が,オーバーパックの健全性を脅かすと考える理由はない。しかし,たとえ岩盤のせん断的な変位を設計ベースにおいては荷重として考慮しないとしても,オーバーパックの強度限界が示されていれば,設計の信頼度は増すであろう。

緩衝材および埋め戻し材
 H3報告書で評価されたベントナイト単体に代えて,第2次取りまとめにおいてはベントナイト‐ケイ砂混合体を緩衝材として提案している。この材料は設計要件を満たすことが示されている。

 緩衝材の製造および設置方法の技術的可能性も室内試験で確認されている。しかしながら,処分場の湿潤した環境においては,緩衝材の設置は,室内試験から予想されるほど容易ではないことに留意すべきである。

処分場の設計
 処分場の設計と建設・操業・閉鎖技術に関する記述は,第2次取りまとめ報告書の目的に対して極めて充分なレベルでなされている。現状は一般的な記述のレベルであり,処分計画がよりサイトスペシフィックな段階に移行すれば,その内容について再び評価を行う必要があろう。

 サイトが選定されサイト特性調査が進めば,それに合わせて実際の処分場レイアウトが決定されなければならない。このプロセスは,アクセスと換気のための立坑の数と位置に関する最終的な要件にも影響を与えるであろう。また放射線管理区域とその他の区域を区分する必要性についても影響を及ぼすだろう。

まとめ
 工学的な検討の多くは,まだ国際的な学会誌に投稿されておらず,このため日本語圏以外の幅広い読者がアクセスできないことが惜しまれる。いくつかの検討結果は確実に出版に値する。今後その研究成果を幅広く普及することをサイクル機構に奨励したい。国際的な学会誌に論文や報告書を投稿することにより,継続的に専門家によるレヴューを進めることができ,信頼性の形成にも大いに役立つであろう。東海村にある非常に優れた実験施設ENTRYとQUALITYで行われてきた,また今後なされていく研究は,日本の計画だけでなく,世界の放射性廃棄物管理計画にとって非常に価値のあるものである。

 諸外国の高レベル放射性廃棄物処分計画と比べて,現状の処分場の設計は,実際サイト選定段階に移行していく時点で開発される通常のレベルよりも,進んだものとなっている。その1つの理由は,諸外国および国際協力における経験を日本のプログラムに全面的に利用できることである。また,国際協力は今後,地層処分場の設計,建設およびその後の操業で用いる概念や方法における信頼性を確立していくうえでも,必要不可欠な役割を果たすものである。

 

4. 安全評価

全般
 安全評価は第2次取りまとめにおいて中核的な役割を果たしており,日本における幅広い地質環境や地表環境の情報に基づいて実施されている。特定の地質環境条件を対象としないで整備されたデータベースや,日本の地層処分計画が比較的初期段階にあることを考慮すれば,今回評価した研究成果は,感銘に値するものであり,処分計画を次段階へ進めることを促すものとなっている。とくに安全評価の結果は,設定した地層処分システムが線量の基準を満たすとの見通しを示すとともに,処分サイトにおけるデータの変動幅を見込んでも十分な裕度があることを示している。

第2次取りまとめドラフトの安全評価においてこのような優れた成果が得られていることは客観的な事実であるが,現在の段階のみならず今後のことも念頭において,IRGは改善すべき点を示した。

●適用された一般的な方法論については,諸外国で公表されている同様の報告書のものと比べて遜色がなく,国際機関が示したガイドラインとも概ね整合がとれている。IRGはとくに,安全評価上考慮すべきシナリオの網羅性に関することや,データの選定やモデルの仮定の設定においてより注意深いアプローチをとることなど,いくつかの側面についてさらに配慮することを推奨する(シナリオおよびデータに関する節を参照)。

●第2次取りまとめでは,幅広い地質環境や地表環境を考慮していることから安全評価が複雑なものとなっている。したがって,追跡性(traceability)やわかりやすさ(transparency)を向上させることが強く望まれる。これを念頭に盛り込まれるべき情報量,内容の表示法,評価から得られた知見に関する考察において改善が求められる。

●ニアフィールドに関する設計固有の情報に対して,地質環境の特性に関するデータは,幅広い地質環境を対象とした一般的なものである。したがって,得られた結果については注意深い解釈が必要である。

 これらの点については,コメントとともに以下に具体的に述べる。さらに,処分の実施における判断のプロセスにおいて,安全評価を実際に適用することを睨んで追加のコメントを行った。

安全評価報告書の作成
 第2次取りまとめドラフトにおける安全評価の文書化(総論レポートドラフト第V章と分冊3ドラフト[JNC,1999e])にあたっては,完成度を高めるためさらに情報と説明を追加する必要がある。とくに総論レポートドラフト第V章についての見直しが必要である。IRGは,レビューワークショップにおいて,安全評価におけるいくつかの重要な点を理解するため,別途補足説明を受けた。分冊3ドラフトでは,これらの点について総論レポートに比べより満たされているものもあるが,方法論と概念的な側面に関しては,やはり説明を追加するべきである。

 安全評価における報告書の構成だてや編集は骨の折れる作業である。これは,様々な地層処分システムを安全評価において同時に取り扱う第2次取りまとめについては,なおさらのことである。読みやすさを向上させるために,章のはじめに評価の文脈について紹介する節を設けるべきである。これにより,章の構成に沿って,様々な地層処分システム,評価の基準・指針,全般的な方法論が示されるべきである。このうち全般的方法論については,第2次取りまとめドラフトよりも,より包括的に説明すべきである。

 とくに,総論レポートドラフト第V章については,内容を順序立てた上でそれに沿って逐次説明するように見直すべきである。同じ内容の項目についてはすべての関連する情報をひとまとめにし,節の見出しとその内容の整合をチェックすべきである。たとえば,第2次取りまとめドラフトではレファレンスケースに関する説明が第V章全体に散りばめられている。レファレンスケースに関する情報は概念モデルの節に示されているが,この節では概念モデル自身の説明がほとんどない。報告書の読みやすさを向上させるため関連箇所を相互に参照するべきである。

 IRGは,総論レポートドラフト第V章と分冊3ドラフト両者の結論に,今後の研究開発に役立つ知見を導くための議論が十分に含まれていないことを指摘した。たとえば,実際のサイトにおいて適用できることを確認しておく必要がある評価の基本的な仮定や,サイト選定指針の検討に資する拠り所を与えるために必要な地下水の流れや隆起速度などのサイト特性の重要度を明らかにするため,安全評価の結果についてさらに検討すべきである。この点については,現段階で定量的な値を示すことを推奨しているのではなく,むしろ地層処分システムの安全性とサイトにかかわる事項との関連性を,定性的に議論しておくべきという意味である。

シナリオ
 シナリオ解析は,安全評価において土台をなすものであり,それを実施する際にも,報告書としてまとめる際にも,とくに労を要する。第2次取りまとめでは,設計のオプション,幅広い地質環境や地表環境,被ばくを想定する種々のグループといった多様な要素と日本の地質に固有の特性を取り扱うため,さらに難しいものに取り組むこととなっている。したがって,先に推奨した報告書の構成だてや編集に配慮することが,ここではとくに重要である。

 全体的に,解析ケースと補足の情報を示すことに力点が置かれている。しかし,この情報が過多となっているため全体像がややつかみにくい。むしろ,判断の根拠や安全評価上考慮すべきシナリオの網羅性に関する議論が必要である。

 さらに以下の点に関し,概念や方法論的側面から内容を明らかにし,説明を加えることが望ましい。

●将来の時間的推移に関するシナリオの概念は,他の関連する概念とは別に扱われるべきである。レビューを行う者にとって,異なる地層処分システムに関するシナリオの取り扱いについて理解するのは容易ではないであろう。これらは「代替シナリオ」ではなく,「代替地層処分システムに対するシナリオ」である。用語のあいまいな使い方は,報告書をさらにわかりにくくさせる原因となる。たとえば,「代替シナリオ」という語は,場合によっては「感度解析のケース」や「不確実性解析」(別のモデルやデータなど)の意味で用いられている。方法論とその適用について理解しようとする場合,全体としては,このことが妨げとなる。【訳注:alternative scenarioという語は実際には用いていないが,alternative model cases,alternative geological environment cases,alternative design casesという語は用いており,混乱を招いたものと思われる】

●地下水シナリオの作成に関する解析の手順についてはより注意が払われるべきである。すなわち,シナリオを作成するために,どのようにして,どのような理由で様々なFEPを関係づけたかという点である。このことは,FEPの明確化とともに安全評価上十分な網羅性を確保するために,重要なステップである。FEPリストについては詳細かつ十分な情報が示されているにもかかわらず,FEPの関係づけについては,基本的な考え方や判断の基準などの情報が報告書にほとんど盛り込まれていない。この作業は次の2つのサイクルで実施されていると考えられる。まず,第1サイクルとして,レファレンスケースに対する1つの変動が取り扱われる。この段階においても1つの仮定に基づいて考慮すべきすべての影響について同時に取扱われていなければならない。たとえば,地下水の流れが大きくなると,天然バリア中での核種移行は速くなるとともに,ニアフィールドからの核種の放出において異なる境界条件を与えることにより影響を及ぼす。次に,全体性能解析と呼ばれている第2サイクルにおいて,複数の変動の組み合せが考慮されているが,どのような理由により,組み合せの対象として選んだのか,あるいは選ばなかったのかが明らかにされていない。たとえば,内陸地域における地圏と生物圏の接点の選択においては,比較のための適切な基準として設定するとしか述べていない[JNC 1999e;section 7.1]。

●第2次取りまとめドラフトでは,「全体性能」という言葉は,諸外国の報告書とは異なる使い方がされている。方法論への導入部分として,方法論的なアプローチにおける全体性能解析の役割について説明すべきである。総論レポートドラフト第V章における全体性能解析の取り扱いは,分冊3ドラフトにおける取り扱いと必ずしも整合がとれていない。第1サイクルは,その解析結果がシステムの性能の尺度を与える第2サイクル(全体性能解析)において取り扱う変動要因を選ぶための中間的なステップとして位置づけられているように思われる。この理解が正しいものであるか否かにかかわらず,この点に関する説明についてあいまいさを残さないようにすることが重要である。

●シナリオの分類において,変動シナリオを天然現象における通常の時間的推移に関するシナリオから分けて示すことには議論の余地が残る。なぜなら,前者を構成するFEPは,地層処分システムの通常の時間的推移の一部をなすと考えられるからである。このようなFEPとしては,気候変動,一部のオーバーパックの早期破損,将来の人間活動として明らかに想定できるもの,隆起・侵食などを挙げることができる。

●上述した概念的な側面のほか,安全評価上考慮すべきすべてのFEPの組合せが考慮されているかどうかが問われる。たとえば,隆起はレファレンスケースの結晶質岩に対してのみ考慮されている。一方,堆積岩の場合,同じ隆起・侵食速度を仮定したとしても結晶質岩の場合に比べ,処分場が早期に地表近傍の酸化状態の領域や地表へ到達することが考えられる。

●隆起・侵食による廃棄体の地表への到達を考慮していることは,第2次取りまとめドラフトの特徴となっている。このシナリオの取り扱いに関する受容性は,日本において現在検討されている安全規制の枠組みの中においてのみ評価することが可能である。表層における仮想的なウランの鉱物化を,この状況を解釈するためのナチュラルアナログとして用いることは確かに有効である。しかし,この方法では,処分場が地表に到達する場合とウラン鉱石とで,たとえば局所的に比放射能が異なっているといった,両者の違いが考慮されない。

 その他のシナリオやシナリオを導くFEPでは,坑道の支保の劣化や井戸の特性2に関する仮定についてさらに検討が必要である。また,処分場のシーリングミスの可能性についても検討すべきである。後者については,品質保証を100%信頼してこのシナリオを排除するということは難しいと考える必要がある。

 断層シナリオの解析に関するいくつかのコメントはすでに第III章に関連して述べた。この点においては,サイト選定の基本的考え方として断層の発生するリスクが高い場所を避けることを強調すべきである。そして,処分場に直接影響を及ぼす断層の発生確率は十分に小さいことを信頼性をもって示すための研究に焦点があてられるべきである。この場合,断層シナリオは低確率事象の1つの取り扱いの例として示すことができる。

 FEPを除外する判断基準の適用について詳細に検討することは,国際機関における研究評価レベルで行われたレビューの範囲を超えている。しかし,これは非常に重要な側面であり,将来の研究の方向性を示す上でも大切であるため,総論レポートではこの点について不確実性をさらに幅広く取り扱うことを推奨する。


2 本報告書の後段に記述した生物圏の節も参照のこと。

モデル化

●ニアフィールド:
 ニアフィールドに関するFEPの解析は,十分包括的かつ詳細であり,最新の研究の水準を満たしている。

 人工バリアと母岩の相互作用に関し,熱と応力の効果や地球化学的(アルカリプルーム)効果について,またトンネル支保の劣化に関する仮定や他の処分場レイアウト(地下水の流れに平行な処分坑道,大規模な断層を横切る坑道など)といった点についてさらに検討することが望ましい。

 数値解析のために選ばれた核種は,対象とする廃棄体(高レベルガラス固化体)と整合がとれているものの,核種選定の考え方についてはややあいまいさが残るため,改善が必要である。線量に基づく選定アプローチの方がわかりやすいと思われる。

 ニアフィールド性能の評価においては,人工バリア中のガスの移行,緩衝材の長期健全性,ニアフィールド岩盤の影響などのいくつかの個別のプロセスに関して不確実性が残るため,将来の研究開発の方向性を導くように議論することを推奨する。

●ファーフィールド:
 母岩中の地下水の流れと核種移行を評価するために,処分場と天然バリア中の主要な地下水移行経路となる地質構造について,簡略な取り扱いとしている。この簡略化によるアプローチは,幅広い地質環境を考慮する現段階においては適切である。評価手法とデータベースについてはサイトの具体的な情報が得られた時点で適宜見直す必要がある。

 亀裂性の結晶質岩に適用するものと同じ基本モデルを堆積岩に適用している。この際,母岩の透水性や,間隙率,収着特性の違いを考慮している。これは,おおまかな近似であり,将来,個々の岩種それぞれに応じたよりきめの細かい解析が必要である。とくに,砂岩のように比較的透水性の高い岩種のケースでは,多孔質の岩盤マトリクス中の物質移動メカニズムについて論ずるべきである。

 岩盤中の物質移動のモデルと仮定については,総論レポートドラフトにおいてもより詳しく記述した方がよい。実際分冊3ドラフトには,このような情報が示されている。

 上記のモデル上の制約に留意する必要があるが,実施された解析のアプローチは最新の研究水準にあり適切なものである。

●生物圏:
 生物圏評価の手法は,BIOMASSプロジェクトで開発・整備されてきたものに沿っている。それらは,国際的な傾向をよく配慮しており,FEPや被ばくグループについては十分に包括的なものとなっている。気候変動はレファレンスバイオスフィアの取り扱いにおいて考慮されていない。しかし,日本は氷河作用を被らないと考えられるので,このことは必ずしも現段階において制約になるというわけではない。

 IRGは,安全評価全体の中で生物圏をより統合的に扱うことを推奨する。とくに,全体的なシナリオの枠組みにおいて様々な生物圏に関するより詳細な解析と議論を行うことが適切である。この点については,総論レポートドラフトにもっと情報を盛り込むことを推奨する。IRGは,レビューワークショップにおいて,生物圏における希釈機能と,地圏と生物圏の接点(井戸の特性)に関する補足説明を受けた。報告書には,これらを盛り込むべきである。

 全体性能解析において地圏と生物圏の接点として河川を選ぶのは,井戸のようなもっと保守的なケースがあるため,疑問が残る。浅い井戸の掘削は可能性の高い想定であり,長期安全性を示すための評価の基本としてこれを設定することが適切である。全体性能解析において地圏と生物圏の接点に河川を設定するには,もっと頑健な理由が必要である。

 地圏と生物圏の接点として,たとえば河川や深井戸による工業用の揚水を仮定し,大きな希釈水量を用いる場合,安全評価では決定グループの考え方を組み込む必要がある。第2次取りまとめドラフトで用いているような大きな希釈率によって,個人の線量基準と比較するために線量を推定している例はほとんどない。サイクル機構は解析において決定グループの考え方について検討することを推奨する。決定グループは他のいかなるグループと比べても処分場から生じるリスクが大きいか,同等となる生活場所や様式,食習慣をもつ。決定グループのメンバーに対して推定された線量は,個人のリスク基準とより適切に比較されることになる。【訳注:説明不足により誤解を招いたが,決定グループの考え方はすでに取り込まれており,より明確に理解できるよう修正を行っている】

●確証(validation):
 IRGは,個々のバリアや処分場の性能を評価するための長期のモデル化の結果についてくり返し「確証」という言葉を用いることには賛成しない。この言葉の使用は誤解を招く可能性がある。「モデルの試験」や「信頼性の構築」といった表現の方が求めるものが厳密でなく説明しやすいというのが,最新の国際的な見解として示されている。この国際的な見解に基づけば,長期間を対象としたモデル化や性能評価/安全評価により達成されるのは,地層処分システムの安全性を「合理的に裏付ける」ことである [NEA, 1999]。

データ
 安全評価に用いられたデータは,うまく記述されている。いくつかの個別パラメータの値,たとえば,(河川の年間水量のような)地圏と生物圏の接点に関するものについては,総論レポートドラフト第V章にも記載すべきである。

 一般にデータの選定は,整備された情報を分析することにより裏付けられている。これらの情報の多くは日本のプログラムにおいて整備されている。実施された作業は大変価値の高いものである。

 今回のレビューの範囲では,解析に用いた個々のパラメータの選定値が適切かどうかについては評価していない。公表された最新の諸外国の安全評価と比べ,いくつかのパラメータについて第2次取りまとめドラフトでは,システムの性能に関し,好ましい値となっている。このようなパラメータとしては,たとえば,いくつかの元素(Zr, Th, Ra)の溶解度やマトリクス拡散深さなど,母岩中の核種保持に関するパラメータが挙げられる。これらについて,追加の裏付けがなされ,全体的に受け容れられるものとする一方で,諸外国の安全評価で示された値をもとに基本となるケースとしての解析を行い,好ましいケースの解析として第2次取りまとめドラフトのデータを用いるということも1案と考えられる。

 第2次取りまとめドラフトにおいてSe-79は重要な核種であるため,最新の文献の半減期に対し,少なくとも半減期の設定の違いによる影響を解析によって把握しておくことが適切である。

 最後に,化学毒物のインベントリや他の放射性廃棄物について考慮することになれば,第2次取りまとめドラフトでは検討されていない地層処分システムへの新たな要求項目を生じさせる可能性があることにふれておきたい。たとえば,I-129やCl-36のような可溶性で,長半減期かつ収着しにくい核種をインベントリとして含む廃棄体を共処分することが例として考えられる。

結論
 日本における幅広い地質環境を考慮して設定した地層処分システムに対する安全評価の結果は,諸外国で提案されている線量の基準を満たすとの見通しを示すとともに,実際の処分サイトにおけるデータの変動幅を見込んでも十分な裕度があることを示している。結果として,評価の鍵となる部分は,接近シナリオの確率が十分に小さいと判断できる適切なサイトが選定できることが確認されているという点である。

 安全評価の章は,報告書のわかりやすさを向上させ,結果に対する議論を補強しつつ,議論を論理的に構築して示すことについて改善するよう注意深く見直すことが望まれる。

 結論は確かな裏づけのある解析結果に基づいて導くことを推奨する。また,保守性の点で十分とはいえない計算については,そのアプローチやデータについて十分な根拠と見解の一致が得られれば,性能を向上させる可能性があることを示すために用いられるべきであると考える。

 第2次取りまとめドラフトの安全評価は幅広い地質環境を考慮した一般的なものであることに留意する必要がある。すなわち,実際のサイトデータに基づいていないため,安全評価の仮定が適切であることの確認や,第2次取りまとめドラフトにおいて述べているような「適切なサイト」を実際に選定するという点で,第2次取りまとめドラフトの安全評価の適用性については,制約があることに注意しなければならない。もちろん,サイトを特定しない段階において鍵となる要因を明らかにしておくことは重要である。このことは,処分計画の将来の段階に向けた指針を導くうえで有益である。処分候補地が明らかになれば,安全評価の手続きはサイトにおける地質環境とそれに応じて設計される処分場に関する個別の情報に基づいて見直される。サイトの選定から処分場の安全審査にいたる長い時間を要するプロセスにおいて,段階的に安全評価を実施することが求められる。これらの安全評価は順次見直されるデータベースに基づいて実施される。

 第2次取りまとめドラフトにおける安全評価のアプローチは,人間に対する放射線学的な影響を評価することに焦点をあてた,通常のものである。これは,ICRPや諸外国の関係機関がとっている立場や専門部会報告書の指針と整合がとれている。しかし,いくつかの国や国際的な場において,より幅広い意味で環境への影響を評価することに関心が払われつつある。将来,たとえば,廃棄物の化学毒性による影響のような非放射線学的な影響について関心が高まることが予想される。

 

5.第2次取りまとめの成果の提示と得られた知見

全般的な考察
 第2次取りまとめが国に提出され,国の評価によって受け入れらることにより,地層処分計画は現在の研究開発の段階からサイト選定や規制体系の整備,さらに処分事業の実施主体の設立といった新しい局面に移行することになる。それゆえ第2次取りまとめは日本における高レベル放射性廃棄物処分計画の進展にとって,極めて重要なものと位置付けられている。

 意思決定に積極的に寄与するために,第2次取りまとめを構成する本質的な部分と得られた主要な知見については,廃棄物処分の専門家や他の技術的な専門家だけではなく,興味を持っている一般公衆といった種々の読者に対して,曖昧さを残さないことが重要である。専門部会報告書は,第2次取りまとめが対象とする読者について言及していないが,JNCによって提案される処分コンセプトに対して信頼性を構築する必要性があることを示している。これは種々の読者に対してわかりやすさを有することを求めていることにほかならない。第2次取りまとめ総論レポートはこの点が大きく不足している。とくに技術的ではなく専門家ではない人々が理解できることを目的とした箇所についてはそうである。報告書のこれらの箇所を改善するために,努力する必要がある。

個別事項
 日本におけるワークショップにおいて,IRGは JNCに対して以下を示した。

●総論レポートドラフトの第I章に関して:
  1. JNCは専門家と応えたが,IRGにとっては,この章の対象としている読者がよくわからない。
  2. 全体的に,長寿命廃棄物や地層処分に関する基本的な情報が整理されて示されていないため,専門知識のある読者でさえ混乱する可能性がある。【訳注:説明不足により混乱を招いたが,JNCは第2次取りまとめ全体が専門家に対して作成されたものであり,第I章はむしろ専門家でない人に提示する情報として示したもの。英文にすると中途半端な印象を与えたものと考えられる】
さらに,
●第II章に関して:
  1. 第2次取りまとめの技術的な目標を,とくにH3報告書との関係でより明確にすべきである。たとえば,IRGは第2次取りまとめに要求されている「技術的信頼性」と,H3報告書で確立された「技術的な実現可能性」についてを説明してもらうために,JNCに対して特別なプレゼンテーションを求める必要があった。【訳注:「技術的信頼性」の意味を明確にするため,「セイフティケースにおける信頼性の高さ」であると説明した】
  2. 処分概念の基本的な特徴,すなわち多重バリアシステムとそれらの安全機能は明確に示される必要がある。このような記述は後段のより専門的な章にゆずるべきではない。
  3. たとえば線量/リスク拘束値と線量/リスク限度といった,第2次取りまとめドラフトで説明している安全性に関する基本的な概念に関係する語が正確に用いられるべきである。
  4. サイトの好ましい特性は,研究開発の結果として決定されるべきものであり,II章で予め説明されるものではない。さらに,一つのサイトで全て満たされていることが困難と考えられるような特性を確固たる概念なしに示唆することのないよう注意しなければならない。
  5. たとえばモデルやデータが「十分に検証および確証されるべきである」といった将来の研究開発に過度な期待をするべきではない。   【訳注:上記3,4,5については不適切な英訳に起因するところが大きい】
  6. 地質環境の隔離能力を示すためには,オクロ以外のアナログ,たとえばシガーレイクの方が適切と考えられる。日本の計画において現在調査されているナチュラルアナログでも,特定の隔離バリアの効果を支持するうえでより有効なものと考えられる。

●日本におけるサイト選定や,法規制の枠組みの構築に関する意思決定のための情報として,研究の基本的な成果が示されなければならない第VI章に関していえば,現在の章では不十分であり,必要な統合化と提案が不足している。このことはJNCによってすでに認識されている。
●第VII章については,レビューにおいて直接議論されていない。しかし,それまでの前段部分の章において,第2次取りまとめの基本的な目的が適切に記述されているか,関係のある語が適切に定義され,統一的に使用されているか,研究成果の要約が示されているかについて,今一度検討することを提案する。

 JNCに対して公平を期すため,第2次取りまとめドラフトはまだ作成途中であり,たとえば放射性核種の溶解度といったデータはまだ収集されていること,またたとえば地層処分研究開発協議会において,研究の内容とその成果をどのような章構成で提示するかに関して検討が行なわれている所だということに言及しておかなければならない。これは,日本でのワークショップの間にレビューチームにとって明らかとなったことである。 JNCはまた,日本語版の第2次取りまとめドラフトの作成過程においても,研究成果を提示する際に必要なわかりやすさを確保するために,初期の段階から多くの事項を,日本の一般公衆に対して説明しなければならなかった。

提案
 サイト選定と規制の枠組みの構築のための情報を提供するという観点から,総論レポートドラフト第VI章において,研究成果に関する適切な考察が示されることがIRGはとくに重要なことだと思える。ワークショップにおいて,見直される第VI章と後述する要約については,次のような点に関する明確で簡潔な議論を含むべきことが提案された。

1.地層処分の技術的な信頼性のための判断の拠り所
 とくに,日本の計画の将来段階において解決されるべき残された課題と項目を明らかにしつつ,第1次取りまとめに比べ信頼性が向上している理由について議論されるべきである。この趣旨で,特定の段階において,十分な信頼性を有していることが,処分場のサイト選定や計画および開発に影響する全ての課題を解決したということを意味しているわけではなく,むしろこれらの課題が次の段階へ進むための決定において重大な足枷とはならないと判断され,将来の段階においてそれらを解決するための見通しがあるということを意味しているという点を強調したい。

2.サイト調査のための方法論
 サイト調査のための方法論については明確な構造が必要であり,関係する手続きについて検討が行われる必要がある。これに関連して,サイトと総合的な処分システムの評価に関する規制面での役割と影響が明確にされる必要がある。

3.処分施設の安全性と環境面での性能に影響をおよぼすサイトの特性
 これらの特性について記述されるべきであり,それらがどのようにシステムの安全性に影響を及ぼすかに関する見解が示されるべきである。技術的な要因の他に,たとえば,人口密度や保護区域といった一般的あるいは環境面での要因についても検討される必要がある。地層処分計画の現段階においては,これらの要因について定量的な形でサイト選定基準が示される必要はないという点を強調したい。

4.人工バリアの性能に影響を及ぼす要因
 たとえば,イライト化を引き起こさないようなベントナイト粘土の最高温度,いくつかの材料に関して保証されるべき純度,および処分場に使用される材料を確保するための品質保証計画

5.工学技術の利用可能性
 これには提案された工学的対策の成熟度とそれらの経済性に関する評価が含まれる。

6.放射線学的影響およびその他の潜在的な影響を評価するための安全基準
 これには,たとえば,実際に受ける線量ではなく安全指標としての「線量」;定量的解析あるいは定性的な解析のための信頼性のある時間スケールの明確化;放射線学的な観点以外の影響評価手段が含まれる。

7.不確実性 対 信頼性
 長い時間スケールにわたる性能を文字通りに証明することはできないということを明確に示す必要がある。観察と自然の法則は「真実の姿」を記述しているものではなく,我々の知識の実体を記述しているということに注意すべきである。それゆえ意思決定に関する基準は,収集された情報の品質,関係する個人や機関の信頼性,および意思決定プロセスの公開性といった観点から,適切な安全性の「合理的な裏付け」を達成することである。安全評価は,得られた情報を収集,整理するにあたって技術的な信頼性を得るために,一貫してとられた手順について明らかにするべきである。それゆえ,不確実性を明確にし,ある種の対策によって不確実性を避けるもしくは減少させるための戦略は,今後開発され文書化されなければならない。第2次取りまとめにおける幾つかのケースでの不確実性の取り扱いの例は役に立つものと考えられる。これらの例は[NEA,1999]において記述されている方法と類似のものである。第2次取りまとめドラフトにおける地層処分コンセプトが確固たるものであることを強調し,より具体的に示すことが必要である。

8.特別なシナリオ
 以下の点は,とくに取り扱いが困難なものである。
  i) 処分場の通常の機能を妨害する恐れのある人間活動の発生に関する不確実性
  ii) 将来の人間の生活習慣に関する知識不足
 人間活動から発生する不確実性に対比して,天然および人工バリアの変遷に起因する不確実性を検討するために,故意ではない人間侵入を含むシナリオは形式化された方法で取り扱われるべきと考えられている。

 最後に,第2次取りまとめドラフトは膨大な量の情報を含んでおり,広い範囲の読者を対象とするには高度に技術的である。総論レポートドラフトでさえ,プロジェクトの概要を提供するためには量的に多すぎる。したがって,サイクル機構は適切な分量でもっと簡単に読むことができる要約を準備することを考えるべきと思われる。そのような要約は,専門家を含む様々な読者に対して,第2次取りまとめドラフトの性質,提案されたアプローチおよび主な結果を伝えるという目的にとって非常に有効である。一方で,サイクル機構は日本語の別冊を作成している。この文書はこのような要求にうまく応えるものとなろう。

 

6.総評

 全体的にみて,1999年5月の第2次取りまとめのドラフト報告書3は,日本の地層処分計画が初期の,すなわち研究開発の段階であることを考慮すれば,注目に値すべき技術的な成果が示されており,1992年の第1次取りまとめから多大な進展があったということができる。これに関してとくに人工バリアのデータベースが改良されている点をあげることができる。

 地質環境については,第2次取りまとめの目的に照らして,明確で包括的な記述となっている。しかしながら,現状においては地層処分の観点から取得されたデータや野外観察は相対的に限られたものであり,地質環境にかかわる情報の多くが文献から得られたものであるということに留意しなければならない。処分地を決定するまでの過程において,より詳細な調査がなされる必要がある。

 日本の地質構造の特徴はプレートが衝突している所に日本列島が位置していることに起因し,このため地殻変動は比較的活発で,世界的にみても放射性廃棄物の地層処分を計画している他の国々よりも大きなものとなっている。このような地殻変動は地層処分の長期安全性に影響を及ぼす可能性があると考えられる。IRGの見解として,新たな断層が発生する確率が小さい地域を特定することは合理的であり,また信憑性もあるが,地層処分の安全評価において新たな断層が発生するシナリオを除外することは,現段階では受け容れられないものと考える。したがって,日本の地層処分概念を確固たるものとし,その性能を示すためにも,断層シナリオを安全評価に加えることを推奨する。

 第2次取りまとめドラフトでは,人工バリアの設計と性能に力点を置き,地層が有するバリア機能への依存度を相対的に下げている。このことは,処分場が初期の概念設計の段階にあり,地層が有する性能に大きな不確実性が存在することを考慮すれば受け容れられる考え方である。人工バリアの設計と性能に関する分野でのサイクル機構の研究成果は非常に高い水準に達していることを特記しておく。人工バリアシステムの性能については,今後の最適化に向け大きな裕度をもって設計することが可能であり,様々な断層シナリオに対しても適用することができるものと考えられる。

 安全評価は第2次取りまとめドラフトの中核をなしている。適用された一般的な方法論については,諸外国で公表されている同様の報告書の記述に匹敵するものであり,また国際機関が示したガイドラインとも一致したものとなっている。ここでIRGは,とくにシナリオ解析の網羅性を明らかにすること,データ設定やモデルの仮定についてより注意深いアプローチをとることなど,いくつかの側面についてさらに配慮することを推奨する。データベースが一般的なものであることや日本の地層処分計画が比較的初期段階にあることを考慮すれば,今回評価した研究成果は感銘を与えるものであり,処分計画を次段階へ進めるうえで十分な成果と言うことができる。

 第2次取りまとめでは,さまざまな地質環境や地表環境を視野に入れなければならないことがその内容を複雑にしており,したがって高い追跡性とわかりやすさを保証することが必要である。この点については総論レポートドラフト全般にわたって改善する必要があると言える。とくに,第2次取りまとめを構成する本質的な部分と得られた主要な知見については総合的にみて曖昧さを残してはならず,また第2次取りまとめを通じて得られた成果は,意思決定者とそれを補佐する技術専門家に対して分かりやすくまとめておくことが重要である。この点の情報をまとめるうえで,IRGとサイクル機構が行った議論は有益な手段となっており,これをふまえ,第2次取りまとめの最終版では,その2つの最も重要な目的,すなわちサイト選定と安全基準策定に資する技術的拠り所を示すことができると考える。

 信頼性の構築に関しては,第2次取りまとめが本来有していた高い品質に加え本レビューにより今後行われる改善と,本レビュー以外で行われている個別の技術レビューが非常に効果的な材料となる。さらに,信頼性の構築やコミュニケーションにかかわる分野における技術論文で示された最新の考え方を処分計画の達成度の提示にあたって取り入れることができれば,一層強化することが可能である。

 以上,日本の地層処分の技術的基盤の輪郭が示されるとともに,サイトを特定しない方法により現段階では十分なレベルの信頼性をもって評価が行われており,次の段階で行われる適切なサイト特性調査と安全評価に向けての手段が整ったものといえる。


3 第2次取りまとめのドラフト報告書は総論レポートと3つの分冊から構成されているが,IRGは総論に重点をおいてレビューを行った。

結論

 第2次取りまとめが国に提出され,国の評価によって受け入れらることにより,地層処分計画は現在の研究開発の段階からサイト選定や規制体系の整備,さらに処分事業の実施主体の設立といった新しい局面に移行することになる。

 IRGの見解では,日本において高レベル放射性廃棄物地層処分の規制体系の確立や処分場サイトの選定を進めるために段階的な意思決定のプロセスを開始するうえで,そのための科学技術的基盤は十分に整っているといえる。実際,日本は処分場のサイト選定に入ろうとしてる他の国々よりも進んでいると言うことができる。

 引き続き行われる段階を通じて処分計画は進展していくものであり,今後の意思決定はより高いレベルの要求がなされるため,地層処分の長期の安全性について十分な信頼を得ていくことは,必ずしも容易なものとはならないであろう。したがって,地層処分の安全性に対する信頼を確かなものにするため,今後も引き続き努力する必要がある。われわれIRGは,この試みが引き続き成功を収めるものと楽観的に捉えている。


参考文献

AEC, 1997. Guidelines on Research and Development Relating to Geological Disposal of High-Level Radioactive Waste in Japan, Advisory Committee on Nuclear Fuel Cycle Backend Policy, Atomic Energy Commission of Japan, April 1997.
JNC, 1999a. Request by the Japan Nuclear Cycle Development Institute for an international peer review of the JNC H12 study to be organised by the OECD/NEA, letter from Mr. S. Masuda to Mr. H. Riotte, Tokyo, 11 March 1999
JNC, 1999b. H12 Project to Establish Technical Basis for HLW Disposal in Japan - Project Overview Report, JNC TN1400 99-010, Japan Nuclear Cycle Development Institute, May 1999.
JNC, 1999c. H12 Project to Establish Technical Basis for HLW Disposal in Japan - Supporting Report 1 - Geological Environment in Japan, JNC TN1400 99-011, Japan Nuclear Cycle Development Institute, May 1999.
JNC, 1999d. H12 Project to Establish Technical Basis for HLW Disposal in Japan - Supporting Report 2 - Repository Design and Engineering Technology, JNC TN1400 99-012, Japan Nuclear Cycle Development Institute, May 1999.
JNC, 1999e. H12 Project to Establish Technical Basis for HLW Disposal in Japan - Supporting Report 3 - Safety Assessment, JNC TN1400 99-013, Japan Nuclear Cycle Development Institute, May 1999.
NEA, 1999. Confidence in the long-term safety of deep geological repositories - Its development and communication, NEA/RWM/DOC(99)4, Nuclear Energy Agency of OECD, March 1999.
PNC, 1992. Research and Development on Geological Disposal of High-Level Radioactive Waste, First Progress Report, PNC TN1410 93-059, Power Reactor and Nuclear Fuel Development Corporation, September 1992.

付録:国際レビューチームのメンバー

Jesus Alonso

Mr. Alonso holds a degree in energy engineering from the Politechnical University of Madrid (Spain) and a specialisation certificate from the Ecole Sup駻ieure d'Electricit Paris (France). He has over 27 years of experience in the nuclear field, including 14 years in power plant industry. He has devoted the last 13 years to radioactive waste management (both low- and high-level).
Mr. Alonso started his professional career in 1972 joining the French nuclear power plant constructor Framatome, with which he worked until 1976 when he joined the Spanish Architect Empresarios Agrupados as head of the Safety Analysis Section. In that position he participated in the design, construction and operational analysis of four Spanish Nuclear Power Plants (both PWR and BWR).
In 1986 he joined ENRESA, the Spanish Agency for the management of radioactive wastes, which had been created the year before. His initial commitment was the Safety Analysis, construction follow-up and licensing of the El Cabril radioactive low level waste disposal facility, and subsequently the analysis of operation and first renewal of the operation permit. From the beginning he was also involved in the safety studies of the management of radioactive high level waste. He is in charge of Safety Assessment Studies for geological disposal and has led ENRESA's participation in the European Project Spent Fuel Disposal Safety Assessment (SPA), as well as other R+D international projects in the area of disposal of radioactive wastes.
He is a member of NEA-PAAG, has participated in a number of NEA-RWMC Working Groups, and has been appointed as an expert to different IAEA advisory groups, taking part in the RADWASS Programme.

Kenneth W. Dormuth

Dr. Dormuth received a Ph.D. in Theoretical Physics from the University of Alberta in 1971, and has more than 25 years' experience in various aspects of technology related to nuclear energy and the environment.
Dr. Dormuth joined AECL in 1971 as a reactor physicist on a team developing and assessing advanced CANDU reactor designs and nuclear fuel cycles. Subsequently, he worked as a mathematical analyst, modelling the behaviour of radioactive materials in the atmosphere and groundwater, and led the development of a risk assessment methodology for radioactive waste disposal.
In 1981, Dr. Dormuth was appointed Manager of Applied Geoscience for AECL, responsible for research and development of technology for siting and designing a nuclear fuel waste disposal facility. Among his responsibilities was the development of the Canadian Underground Research Laboratory near Lac du Bonnet, Manitoba. In 1985, he became Director of AECL's Geological and Environmental Science Division, directing R&D on the siting, design, risk assessment, and biosphere effects of a nuclear fuel waste disposal facility.
Dr. Dormuth was appointed Director of AECL's Nuclear Fuel Waste Management Program in 1994. In this position, he led AECL's participation as proponent in the review of the nuclear fuel waste disposal concept under Canada's Federal Environmental Assessment and Review Process.
He assumed his current position as Director of CANDU Environmental Studies for AECL in 1998. He directs programs for continual improvement of AECL-supplied CANDU reactors in the areas of environmental emissions, waste management, and decommissioning planning. He is also responsible for environmental assessments of AECL's CANDU reactor projects.
Dr. Dormuth was the Canadian representative on the Joint Technical Committee of the NEA International Stripa Project, is currently the Canadian representative on the Waste Technology Advisory Committee of the IAEA and was Canadian Project Director for a cooperative program of waste management research under an agreement between the United States and Canada. He has served on numerous other international committees and studies related to nuclear waste management.

Ferruccio Gera

Dr. Gera obtained his doctorate in geology from the University of Rome in 1961.In 1961-1962 he spent five months at the CEN in Mol, Belgium with an EC fellowship working on the migration of radionuclides in sandy aquifers. In 1962-1963 he spent one year at the Oak Ridge National Laboratory (ORNL), Tennessee, USA, with a post-doc fellowship to work on near surface disposal of radioactive waste.
After a brief teaching experience, in 1966, he joined the regulatory branch of the Italian nuclear organization, at the time called CNEN (National Committee for Nuclear Energy). During the following period with CNEN he spent approximately four more years as a visiting scientist at ORNL working on various aspects of safety assessment of radioactive waste disposal in salt formations. In the period between 1974 and 1976 he was head of the Waste Disposal Section at the Casaccia Center of CNEN, where he was involved with the Italian R&D programme on disposal of HLW in clay formations.
In 1976 he joined the Nuclear Energy Agency of OECD, where he remained for approximately five years working on various aspects of the Agency's programme related to geological disposal of radioactive waste. In 1981 he joined ISMES, an Italian company of which ENEL, the national electricity generating company, is the major stock holder, with managerial functions. In the 16 years with ISMES he has managed many projects dealing with the feasibility assessment of disposal of long lived radioactive waste in Italian clay formations. In the same period, he was also involved in a variety of additional activities related to different aspects of radioactive and hazardous waste management and environmental protection.
Since leaving ISMES, in April 1997, he has been working as a consultant. Most of the consultant work has been on behalf of the International Atomic Energy Agency.
Over the years he has participated in the activities of numerous committees, groups of experts and consultancies on behalf of various organizations including the International Atomic Energy Agency, the Nuclear Energy Agency of OECD and the European Commission. Most of the groups dealt with some aspect of radioactive waste disposal.
He is the author of over 60 publications dealing with the management of radioactive and hazardous waste and other environmental issues.

Claudio Pescatore, Secretariat

Dr. Pescatore holds a Ph.D. in nuclear engineering from the University of Illinois, Urbana-Champaign (USA). He has 20 years' experience in the field of nuclear waste covering low-level waste, high-level waste and spent-fuel storage and disposal.
Dr. Pescatore joined the Brookhaven National Laboratory in 1982 and was directly involved in the study of high-level waste and spent-fuel disposal concepts in basalt, salt, and tuff formations: reliability and modelling studies of waste package materials during storage and disposal, analyses of gaseous and aqueous pathways for radionuclide migration, peer reviews of environmental impact assessments studies and site characterisation plans. At Brookhaven, he was group leader for Radioactive Waste Performance Assessment. Till 1995, he was also adjunct Professor of Marine Environmental Sciences at the University of New York, Stony Brook.
Dr. Pescatore joined the NEA/OECD in 1992 in the Division of Radioactive Waste Management and Radiation Protection, where he has been Acting-Head of the Division. He has been at the centre of several recent international initiatives such as the ASARR and GEOTRAP projects, the GEOVAL'94 symposium, the IPAG studies, etc. On behalf of the NEA he has organised numerous international peer reviews of national studies. Namely: SKI's Project-90 (Sweden), AECL's Environmental Impact Statement of the Disposal of Canada's Nuclear Fuel Waste, the 1996 Performance Assessment of the US Waste Isolation Pilot Plant (WIPP), the SKI's SITE-94 project (Sweden), the Nirex methodology for scenario and conceptual model development (UK), and the present JNC's H-12 study (Japan).

Helmut Rothemeyer , Chairman

Dr. Rothemeyer read physics and reactor technology at the Technical University of Aachen (Germany) and the University of Bristol (United Kingdom) and concluded his studies with a diploma in physics and a doctorate degree in (nuclear) engineering. After additional qualification as research reactor operator he was appointed Head of the laboratory "Reactor Operations" of the Federal Institute for Science and Technology (PTB) in Braunschweig (Germany).
From 1973 - 1977 Dr. Rothemeyer worked in the department "Reactor Safety and Radiation Protection" of the German Federal Minister for the Interior (BMI)*. Within the supervisory functions of this department he was responsible for safety-related questions concerning the concepts, sites, construction and operation of pressurised water reactors.
Since 1977 Dr. Rothemeyer has been appointed director and professor in charge - as deputy director and since 1983 director - of the department "Long Term Storage and Final Disposal of Radioactive Waste" of the PTB, and since 1989 of the department "Nuclear Waste Management and Transport" of the newly founded Federal Office for Radiation Protection (BFS).
Dr. Rothemeyer is a member of the Radioactive Waste Management Committee (RWMC) of the OECD-NEA and of the Sub-group on Principles and Criteria for Radioactive Waste Management of the IAEA for many years. He was also a member of the former International Radioactive Waste Management Advisory Committee (INWAC) of the IAEA.
Dr. Rothemeyer is editor and co-author of the book "Final Disposal of Radioactive Waste - Guide for responsible Waste Management in Industrialised Societies", VCH 1991 (in German), and,together with Prof. Herrmann, author of the book "Long-term Safe Repositories", Springer 1998 (in German).

Lars Werme

Dr. Werme holds a Ph.D. in physics from Uppsala University, Sweden, where he has also been associate professor since 1973. He has been working for the Swedish Nuclear Fuel and Waste Management Co. (SKB) on materials science issues in nuclear waste management since 1979.
Dr. Werme joined SKB in 1979 as manager of SKB's materials science research programme; a position he still holds. The research has been focussed on the chemical stability in groundwater of high level waste glass and spent nuclear fuel and the chemical and mechanical stability of waste container/overpack materials. From 1983 to 1988 he was project manager for a joint Japanese-Swiss-Swedish ("JSS-Project") for the study of the chemical durability of a radioactive high level waste glass similar to the waste glass produced at COGEMA's "Atelier de Vitrification de La Hague". From 1992 to 1998 Dr. Werme was project manager for "Canister (container/overpack) Design" within SKB:s Encapsulation Plant Project. Since 1994 Dr. Werme is editor of the Journal of Nuclear Materials.


* These responsibilities rest now with the Federal Minister for Environment, Nature Protection and Nuclear Safety (BMU) 1