「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正及び「原子力災害対策特別措置法」の制定について

平成11年11月9日
原子力委員会決定

 今般、(株)ジェー・シー・オーのウラン燃料加工施設において、我が国で初めての臨界事故が発生した。この事故は、多くの方々の放射線による被ばくや住民の避難、屋内退避を招くなど、40年余りにわたる我が国の原子力研究開発利用の歴史の中で、極めて重大な事故であり、当委員会は、国民の原子力に対する信頼を大きく揺るがすものとして、厳粛に受け止めている。当委員会は、事故後、数次にわたり事故の経緯、影響等について報告を受け、審議を行ってきた。事故の原因究明及び再発防止については、原子力安全委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会において鋭意調査検討が行われているところであるが、同事故調査委員会の中間報告、原子力安全規制の抜本的強化と原子力災害に係る法的措置、それらに関連する政府の財源措置について、当委員会は、行政庁の報告を受け審議を行い、その結果、以下の結論を得た。

 当委員会としては、類似の事故を未然に防ぎ、また、事故が生じた場合の備えを万全にするための措置を早急に講じることが必要であると考える。このため、安全規制に関しては、国による継続的なチェックによる厳しい緊張感の保持等を内容とする「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正、また、原子力防災対策に関しては、初期動作などにおける国、自治体の連携強化、原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化、原子力事業者の防災対策上の責務の明確化等を内容とする「原子力災害対策特別措置法」を制定することが適当である。
 その際、安全規制については、当委員会がこれまでの審議においても指摘したように、事業者の自己責任原則と相まって安全が確保されることを関係者は改めて自覚すべきである。
 また、防災対策については、本法が有効に機能するよう、制度面の整備、ハード、ソフトの両面での条件整備、総合的な訓練の実施、必要な予算措置等にも努めていくことが肝要であると考える。

 今般の事故は、安全確保や防災対策に止まらず、エネルギーセキュリティの観点から見た核燃料加工等の我が国のフロントエンドのあり方、国内の原子力産業のあり方、経済的効率性の追求に伴う課題等、今後当委員会が原子力政策を審議するに当たって考慮すべき課題を投げかけている。また、今回の事故により、国内外において、我が国の核燃料サイクルを柱とする原子力政策に対する信頼感が著しく損なわれたことに鑑み、国民の信頼回復に一層努めるとともに、国際社会に対しても今回の事故や我が国の原子力政策の展開について積極的に情報発信し、国際社会の理解を得ていくことが必要である。このような対応については、原子力長期計画策定の場を含め、当委員会において引き続き審議を行っていくこととする。