第3回ITER特別作業部会の結果について
平成11年10月
核融合開発室
本年3月のITER会合(於:仏)において、建設以降の段階(建設、運転、利用、運転終了)における主要事項(コスト分担、ホスト極・非ホスト極の義務、事業体組織・運営形態、発注方式、第3国の参加等)に関する具体的検討をノン・コミッタル・ベ-スで行う特別作業部会を設置し、本年末までに報告書を作成し、来年1月のITER理事会で同報告書を検討することが合意された。今次会合は、同特別作業部会の第3回目である。
1.日 時 平成11年10月2、4~6日
2.場 所 サンクト・ペテルブルク(ロシア)
3.出席者
日本 中村 雅人 科学技術庁核融合開発室長(日本メンバ-代表)
岸本 浩 日本原子力研究所理事(共同議長)
高津 英幸 〃 ITER業務推進室調査役(コンタクトパ-ソン)
栗原 和久 〃 ITER開発室主査 他
EU E.カノビオ EU第12総局顧問(EUメンバ-代表、コンタクトパ-ソン)
K.ピンカウ 前マックス・プランクプラズマ物理研究所長(共同議長)
J.ワト- CEA最高委員付科学審議官
D.ドートウ゛ッチ ITERカナダ運営課長 他
ロシア V.コルツアビアン 原子力省原子力科学局次長(ロシアメンバ-代表)
O.フィラトフ エフレモフ研究所科学技術センタ-長(ホ-ムチ-ムリ-ダ-)
L.ゴルブチコフ 原子力省原子力科学局課長官(コンタクトパーソン) 他
ITER R.エマ-ル ITER共同中央チーム所長 他
- 4.結果概要
(1)建設以降の段階における主要事項
括弧内は、以前の会合において概ね共通認識に至っている事項。
- ① コストと貢献
- 利益として、科学的技術的な利益と経済や産業への利益があるが、科学的な利益については参加極で分かち合うこと。
(・ 均等貢献の原則の適用は不適切であること。)
- ホスト極は、建設、運転、利用、運転終了の段階において多くの利益が得られるとともにプロジェクトの安定的実施の責務があることから建設コストの最低50%を担うべきこと。
- 非ホスト極は、プロジェクトが国際協力で進められるものであり責任を分かち合うことが必要であることから、実質的な貢献を行うべきこと。なお、実質的な貢献としては、建設コストの中の共通的機器(ホスト極に依存しない機器)のコストの半分以上であるべきこと。
- 各極の分担の大枠については協定署名までに明らかにすること。
- ITERにおいて実施される科学的計画の決定手続きは、科学的検討を基礎とするものの、各極の貢献度合いを反映させたものとすべきであること。
- ② 事業体組織の設立
- 事業体組織について国際協定にその設立の規定を盛ること。
- 評議会(Council)及び所長を設けること。
(・ 所長には計画の成功のために必要な権限を付与すること。)
- 事業体組織の設立形態に関し、可能性のある例として、ホスト国の民法により各研究機関が参加して設立されるケース(例:ラウエ・ランジェバン研究所(ILL)及び欧州放射光実験施設(ESRF)。いずれも仏国の民法に基づく非営利組織)、ホスト国の特別立法により設立されるケース、及び国際法により設立されるケースが列挙され、今後更に検討が必要であるとされた。
- ③ サイト選定及びホスト・非ホスト極の責務
- サイトの公式提案は、政府間協議(Negotiation)の開始前までに誘致に関心のある極により行われること
(・ ホスト極は社会インフラの整備や各種支援活動において然るべき役割を果たすこと。)
- 非ホスト極は、プロジェクトの実施の責任をホスト国と分かち合い、当該極の特定のニーズに基づいた社会的インフラの整備に適切な貢献を行うこと。
- ホスト極及び非ホスト極による便益(輸入税、輸出税の免除等)については、公式サイト提案の段階において必要な事項を明らかにすること。
(・ 許認可についてはホスト極の法令に従うこと。)
- ホスト極は許認可手続きに関し、規制の枠組みを明らかにすること。
- ④ 運営
- プロジェクトの効率的な実施の観点から、性能、コスト、スケジュールを保つことが調達の原則であること。
(・ 貢献の方法としては、共通基金方式とin-kind方式の両方が必要であること。)
(・ 貢献方法の共通基金方式とin-kind方式の割合については、事前に定めること。)
- 全ての職員は所長の監督下に入ること。
(・ 事業主体が直接雇用する職員数は少なくすること。派遣職員については5年程度の契約とすること。)
- 直接雇用する職員についても雇用期間を5年程度とすること。
(・各極内に調達等を実施する支援機関をそれぞれ置くこと。)
- ⑤ 第3国の参加
- 国際協定の当初締約極は、現行EDA延長活動への参加極である日本、EU、ロシアの3極とし、他極の参加は国際協定署名後、当初締約極の合意に基づいて認められるべきであること。
(・活動参加に必要な最低限の貢献レベルを定めること。)
- 一定以上の貢献を行う極については参加極とし、それ以下の貢献を行う極については準参加極として取り扱うこと。
- (2)非公式政府間協議(Exploration)
- 早期の非公式政府間協議の開始に向け、その内容、時期について意見交換を行った。
その結果、平成8年に行われた非公式政府間協議と基本的に同様の内容(「正式交渉の準備に関心がある極間の、ノン・コミッタルな事前準備協議」、「各極が極内で正式交渉のマンデートを得ることができるに足る十分な共通理解が得られれば、終了」)とすることで、概ね共通認識に至った。そのために国際協定の草案を作成する。
また、非公式政府間協議の早期終了を目指すべきであるとし、来年9月に協議の状況を中間的にまとめた報告書を作成すること、来年末の非公式政府間協議の終了を目指すことが概ね共通認識となったが、開始時期については、「各極の準備が整った段階で開始する」こととしたものの、具体的な時期については今後更に検討することとなった。
- (3)その他
- 現在のITER装置の名称「RTO/RC(ReducedTechnicalObjectives/ReducedCost)」は適切でないとされ、「FES(FusionEnergySource)」、「FEAT(FusionEnergyAdvancedTokamak)」、「ACT(AdvancedConceptTokamak)」が提案された。装置の名称については、3案を来年1月開催予定のITER理事会に報告することとされた。
- 現在の工学設計活動におけるIAEAの役割が高く評価され、今後もIAEAの後援を求めるべき旨概ね共通認識に至った。
- ロシアより、ロシアの予算確保の都合上、現在のEDA活動の終了時期(2001年7月)と協定署名時までの間においても、国際的な取り決めを締結する等の何らかの対処が必要である旨発言があった。
- (4)今後の特別作業部会のスケジュ-ル
第4回 12月6~9日(於:ウィーン)
・SWG報告書の作成