原子力政策円卓会議(第3回)の結果について
1.日 時 1999年8月23日(月) 午後1時30分〜午後5時00分
2.場 所 東京ビッグサイト 会議棟6階
(東京都江東区有明)
3.テーマ 「今後の原子力のあり方について」
- 4.出席者
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| ○モデレーター | |
| 石川 迪夫 | 原子力発電技術機構特別顧問
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| 茅 陽一 | 慶應義塾大学教授(副司会)
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| 木村 孟 | 学位授与機構長(司会)
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| 中島 篤之助 | 元中央大学教授
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| ○オブザーバー | |
| 木元 教子 | 原子力委員会委員
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| ○お招きした方 | |
| 伊藤 和明 | 文教大学国際学部教授、NHK解説委員
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| 今北 眞奈美 | 中学校教諭:兵庫県
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| 大谷 昭宏 | ジャーナリスト
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| 大谷 鮎子 | (株)オリジナル・メディア・サービス代表取締役社長、
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| | 女性の暮らし研究所所長
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| 小川 順子 | 会社員:神奈川県
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| 杉本 英弥 | 団体職員:福井県
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| アイリーン・美緒子・スミス | 環境ジャーナリスト
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| 中田 眞佐美 | 主婦、大学院生:長野県
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| 藤井 冨美子 | 名古屋女子大学教授、教育研究所長、付属幼稚園長
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| 山根 幸美 | 主婦:茨城県
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| | (敬称略 五十音順) |
- 5.概 要
- ●原子力に関する教育について
- 日本の中学校では、2002年から「総合的な学習の時間」が設けられるが、この時間を使って、環境・エネルギー教育に本格的に取り組んでいく必要がある。そこでは自分で問題点を見つけ、調査し、話し合いを進め、自分なりの意見を持てるようにしなくてはならない。
- 今の子供達の意識の中では、原子力という言葉を原爆に結びつけてしまい、だから怖い、危険と連想される。このようなイメージを払拭することが必要であり、問題をどう解決すればよいか、議論すべきである。
- 教育においては、安全だと教えるのではなく、ニュートラルにさまざまな情報提供を行っていくことが重要である。いろいろな選択肢があることを具体的に示し、子供達に自ら考えさせることが大切である。
- ●情報公開の在り方について
- 負のイメージには、マスメディアの影響が大きいが、それを増殖させてきたのは原子力政策や、事故時の虚偽報告等であり、それはメディアの責任ではない。原子力発電は安全であると言っても、負のイメージ、不信感はなくならない。
- 原子力関係者が安全に対して過大な期待を持たれ、一般とのギャップがあった。「もんじゅ」事故の対応では担当者は追い込まれ、素直に情報を開示できなかったのではないか。これにより負のイメージがさらに増幅されてしまったと思う。この問題の原点には、広島・長崎の原爆があると思う。
- 原子力発電に不安を感じるというのは、放射線や放射能に不安を感じているということではないのか。例えば宇宙船で浴びる放射線量は、原子力発電所よりもはるかに大きいにもかかわらず、原子力の方がはるかにイメージが悪いという、偏見がある。科学技術を見る目はもっと冷静であるべきだ。
- ●原子力発電所の立地について
- 原子力発電は、立地地域において、諍いや遺恨を残し、民主主義を破壊してしまったという側面もあるのではないか。
- 例えば福井県には原子力発電に関連する産業に従事している住民が多く、その意味で原子力発電に頼っている部分が大きい。そのようなところで原子力発電について自由な討論を行うことは難しい。
- 玄海町に原子力発電所を作ろうとした時、地元の若手から、電力の消費地と供給地の首長サミットを開催するという条件が出された。このサミットは今でも毎年開催されており、消費地の首長から、供給地に対して謝意が表されている。消費地と供給地のコミュニケーションを持ちながら進めていくべきである。
- ●再生可能エネルギーについて
- 原子力については、事故時の対応のまずさなどマイナスのイメージばかりが多く報道され、逆に新エネルギーについては高い評価がされ過ぎているのではないか。太陽光や風力は伸ばすことが必要だが、質の高い電力の安定供給が重要である。
- 風力発電を推進しているデンマークは農業国だが、日本は高度な工業国で、同列に論じることはできない。中国のように原子力発電を増やしたいという国もあり、世界の情勢から脱原発という議論はおかしい。再生エネルギーにも取り組むべきだが、日本のように資源の乏しい国では、原子力発電は必要である。
- 風力発電で全部を賄うことはできないが、数%程度は賄える。なぜ各国の動きを見習わないのか。
- ●原子力発電の今後の展開について
- 政府は温暖化防止のために20基の原子力発電所が必要と言っているが、その根拠の説明が不十分である。リードタイムも考えると、誰も目標年次までに20基建設されるとは思っていない。
- エネルギー需給見通しは、1年前に本として出版されている。その中で原子力発電所20基増設の根拠も出ている。これは努力目標の数値である。個人的には、それが現実にできるとは思っていないが、半分できれば成功と思う。
- 脱原発を主張するのなら、具体的な脱原発シナリオを出していくことが必要ではないか。是非出してもらいたい。
- 国の政策として、原子力発電を20基増設するというシナリオしかないのは問題があると考えるので、市民だけでなく国としても脱原発のシナリオを作成するべきである。
- ドイツでは、連邦政府と電力業界との間でコンセンサス協議が行われているが、脱原子力の情勢は混沌としている。原子力をやめて足りない電力は、原子力に依存しているフランスから買うと言っている。
- ●原子力長期計画策定会議との関係について
- 円卓会議で出された意見は、聞き放しではなく、随時、長期計画の審議に提出されるべきである。また、国民の意見を随時審議に取り入れて、双方向的な公聴会を開くべきである。
- 円卓会議は原子力委員会から独立した立場をとっており、原子力長期計画の審議等、原子力委員会の活動に逐一ものを言うことは考えていない。本年度の円卓会議は来年早々にも提言をまとめる予定である。その段階では原子力長期計画は議論の最中であり、円卓会議からの提言については尊重されることを期待している。円卓会議には原子力委員をはじめ関係者も出席・傍聴しており、何らかの形で原子力委員会側に伝えられると考える。
- 長期計画への提言は、来年1月の段階ではかなり議論が進んでおり、遅過ぎるのではないか。
- 長期計画策定会議では、基本的な考え方を検討している段階である。その下に6つの分科会を設置しようとしているが、現在、メンバーを選定している段階である。
- ●安全性、原子力防災対策等について
- 原子力は災害に対して強いのか、特に地震に対して検証する必要がある。幸いこれまで日本の原子力発電所は震度5以上の地震に見舞われたことがないが、もしそのような地震が起こった場合は、液状化現象などの地盤災害の影響を受ける可能性を考慮する必要がある。
- 原子力発電が問題になるのは、安全性に対する国民の不安が要因として考えられる。万一、事故が起きた場合、自己責任での防災は不可能であるので、政府及び自治体においては、避難・誘導体制等の構築を真剣に考えて欲しい。
- ●エネルギー全体の中での原子力の位置付けについて
- 世界的な潮流から電気事業に関する規制緩和も避けられないと思うが、そのような環境でも原子力が経済的な競争力を持ち得るのか疑問だ。
- 限られた予算の中で、どこに投資すれば、最もCO2削減の効果があるかを考えるべきである。欧米では、エネルギー利用の効率化が原子力よりも数倍も有効であるとしているのに、なぜ、日本では原子力を選んだのかについて説明が必要である。
- 経済面から見ると、原子力発電をしばらく止めて、今後のことを議論するというようなことをやれば、経済が停滞してしまう。原子力発電は最善とは言わないが、やらなければいけないと思う。
- 核兵器を廃絶すべきとの意見には賛成であるが、原子力発電は貴重なエネルギー源であり、今、何故、この選択肢を放棄する必要があるのか疑問である。
- 日本のエネルギー全てを原子力発電に託すといった考えは、現在の長期計画においても全くないが、現在、策定中の長期計画の中で、新エネルギーの可能性についても評価し、総合的にエネルギー全体の中での原子力の位置付けを議論することになっている。
- ●その他
- デンマークの例のように、政策決定への市民参画、具体的には市民が専門家から情報を得て判断を行うコンセンサス会議の設立を提案する。