原子力政策円卓会議(第2回)の結果について
1.日 時 1999年7月13日(火) 午後1時30分〜午後5時00分
2.場 所 サンケイ会館5階 サンケイホール
(東京都千代田区大手町)
3.テ ー マ 「高レベル放射性廃棄物処分について」
4.出席者
○モデレーター
石川 迪夫 原子力発電技術機構特別顧問
小沢 遼子 社会評論家
茅 陽一 慶應義塾大学教授
木村 孟 学位授与機構長(副司会)
中島 篤之助 元中央大学教授(司会)
○オブザーバー
木元 教子 原子力委員会委員
○招へい者
市川 富士夫 明治大学理工学部非常勤講師;中央大学商学部非常勤講師
鈴木 篤之 東京大学大学院教授
田中 靖政 学習院大学法学部政治学科教授
中村 政雄 科学ジャーナリスト
伴 英幸 原子力資料情報室共同代表
山地 憲治 東京大学大学院教授
(敬称略 五十音順)
- 5.概 要
●「高レベル放射性廃棄物処分方策」について
- 高レベル放射性廃棄物の処分に際しては、慎重、確実、安全が重視されるべきである。
- 欧州が地下を選択したことに加え、地下であれば人間環境から隔離できるから専門家は地下の方が安全と思うが、素人は逆に地下では不安になる。
- 地上に高レベル放射性廃棄物を置くのは処分ではないが、回収可能な状態で地下に置けば、いずれ処分に移行することもできる。
- 地層処分の議論では後世の人に影響のないようにというが、事前評価のみならず後世の人がモニターできることが必要である。
- 安全性の担保が重要であり、リスクが許容範囲であれば倫理的にも問題はない。どの位安全なら安心なのかが問題であり、安全と安心を近づける努力が必要である。
- ●「高レベル放射性廃棄物処分研究」について
- 貯蔵場所として適切なのは地上なのか、地下なのかという議論は、地下貯蔵が本当に安全なのか否か実際に調べて明らかになったときに結論が出る問題である。従って、そのためにも地下の状態を調べる施設を作って研究すべきである。
- 地下については検討し、研究する必要があるが、日本では地下研究施設を作るのにも地元などから賛成してもらえない。立地問題であり難しいが、研究が進んでいないと処分の具体性は出てこない。
- 地層研究を先行して行うことについて、どこも同じ地層はないので、研究の結果、適切と分かれば、そこが廃棄物処分場になるのではないかという不信感が地元にはある。
- ●「社会的受容性」について
- 安全と安心の確保のための研究が重要であり、国際的な共同管理構想も含めた施設の整備が重要。事業化において、最終処分場の建設が自治体にとって魅力的となる条件整備が重要。また国民、地元、有識者、ジャーナリストなどがイメージできるような情報を多く提供すること。これらを包括して計画し、並行して進めなければならない。
- 原子力が恐いという情報は早く伝わる。これまでどういう情報をどう伝えていくかを十分検討してこなかった。毅然とした態度で堂々と説明するという姿勢を示す方策を考えていくべき。そのためには広報が大事であり、広報体制を見直すべき。
- 技術開発や、国民に実際に見てもらうといったプロセスを進めていくことによって、結果的に国民に地下の埋設が良いと思ってもらえることを期待している。
- ●「核不拡散」について
- 回収されたプルトニウムは、プルサーマルにより速やかに使用すべき。
- 再処理はこれ以上行わずに、プルトニウムの発生を抑えるべき。既に再処理で生じたプルトニウムは、プルサーマルで使うのは危険である。ガラス固化処理して再利用できないようにすべきである。
- 日本は核拡散防止条約の優等生であるべきで、世界のリーダーシップをとるべき。
- 国内では、情報の公開を徹底し、核不拡散技術開発を進めていくべき。国外では、ロシアの核拡散リスクの低減に積極的に協力すべき。
- 核不拡散の手段として、保障措置と核物質防護があるが、核物質防護が行きすぎると国際的な透明性が下がる。
- ●プルトニウムの扱い
- 使用済燃料として保管、再処理してプルトニウムを保管、MOX燃料として使用のどれか一つの方策ではなく、混合的な解決しかない。
- FBRは何十年か先に必要になってくると思うので、FBRの研究のためにプルトニウムが必要である。
- プルサーマルは、プルトニウムの使い方としては無駄使いだと思う。プルサーマルを行うために再処理するのではなく、必要な量だけ再処理すべき。
- すでにあるプルトニウムはガラス固化体にして、地上管理で直接処分を行うべき。
- ワンススルーは使用済燃料の永久貯蔵を意味するが、中間的に貯蔵しておき、将来再処理できる選択肢を残しておくべき。
- ●FBR路線の継続について
- FBRを何のために作るのか議論をすべき。プルトニウムがだぶついている状況で増殖すれば、核拡散の可能性が高まる。研究であれば経済性を無視していいが、コストが高いのに実用炉を作ることについては、国際的にも疑念を持たれる。
- FBRでは、増殖比を下げてプルトニウムを燃やすこともできる。