原子力研究開発利用長期計画の予備的検討に関する調査について(概要)
平成11年4月23日
原子力調査室
1.21世紀社会に向けた長期計画の在り方
(1)21世紀の原子力研究開発利用に求められる理念
- 人類文明の中の原子力
−物質に内在するエネルギーの開放・利用を目指す「量子の世界」への挑戦により、人類文明の新たな段階へ移行
- エネルギーとしての原子力
−有用な天然資源を次世代に継承し、「自律的」なエネルギー源を確保
- 地球環境との調和を図る原子力
−大量生産・大量消費型からリサイクル文明へ
−原子力の一定規模の推進なくして、温室効果ガスの排出削減目標の達成は困難
- 総合科学技術としての原子力
−世界のフロントランナーとして優れた着想と提案を取り入れながら、研究開発を活性化し、成果を発信
- 国際社会における原子力
−核兵器の究極的廃絶と原子力の平和利用を両立させ、国際的な核不拡散の強化に貢献
(2)次期長期計画の在り方
- 21世紀に向けての原子力研究開発利用の全体像と長期展望を提示し、我が国全体として、整合性のとれた政策体系を構築
- 原子力関係者の具体的指針にとどまらず、国民や国際社会に向けたメッセージとしての役割を重視
- 国と民間の連携・協力を強化し、「棲み分け」から「相互乗り入れ」へ転換
- 普遍的な理念や政策の明確化と柔軟性に配慮した実務の実施
- 軽水炉サイクル計画と「将来の研究開発」のそれぞれの理念の明確化と、両者の整合性の確保
- 「将来の研究開発」に対する選択肢の提示とマイルストーンの設定
2.エネルギーの安定供給を支える軽水炉発電体系
- 成熟技術としての軽水炉発電の着実な推進
- 軽水炉におけるプルトニウム利用の意義と位置付けの再確認
- 使用済燃料の再処理の基本方針の明確化と中間貯蔵事業の具体化
- 高レベル放射性廃棄物の処分事業の展開に向けた体制の整備
3.高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発
- 目指すべき将来像と実用化シナリオの明確化
- 経済性、資源、環境負荷低減、核不拡散等の観点から評価基準を明確化
- 幅広い技術的選択肢の評価研究として、実用化戦略調査研究を実施
- 経済的・効率的な研究開発の実施と関係機関間の連携体制の構築
- 「もんじゅ」の早期運転再開を目指し、研究開発目標を明確化
- フロントランナーとしての国際協力の基本的考え方を明確化
4.国民生活に貢献する放射線利用
- 「人」の視点に立った、生活に「安心」をもたらす放射線利用の位置付け
- 診断、治療、核医学の分野での放射線利用の広がりと高度化
- 環境保全、福祉の向上への貢献
- 食品照射、品種改良による安全で衛生的な食品流通と食糧確保への貢献
- 宇宙に生きる人類の将来のための放射線技術
- 東南アジア地域を中心とした放射線利用に係わる国際貢献
- 放射線に関する国民の理解の増進と教育への取り組み
5.未来を拓く先端的研究開発
- 新しい科学の手法を提供し、知的フロンティアを拡大
- 光、荷電粒子、中性粒子の理解と、ミクロな世界が持つ機能の活用による研究開発の広がりと可能性
- 先端的研究開発を物質・情報・技術・エネルギーと位置付けて推進
- 世界におけるリーダーシップを発揮できる研究開発体制の整備
- 独創性を重視した評価基準の設定など、研究評価のための体制の整備
6.新しい視点に立った国際的展開
- 我が国の主体性と国際的動向が連携した「International Engagement」の考え方の下に国際的取り組みを展開
- 内外の情勢の変化を踏まえた包括的、戦略的な政策の展開
- 国際機関の活用など、多様な政策手段の活用
- 積極的な情報発信等による国際的な信頼関係の醸成
- 原子力の平和利用に立脚した核不拡散・核軍縮への努力
- 高い成長ポテンシャルを有するアジア地域における原子力発電導入への支援
- 前向きなモーメンタム維持のための米国との協力活動の再活性化
- 余剰兵器プルトニウム管理・処分への協力
7.原子力の社会的受容
- 国民が主体的に判断できるよう情報公開への取り組みを強化
- 国の政策の一方的な説得ではなく、政策決定過程への国民参加を確保
- 積極的な情報の提供・発信のための体制の強化、手法の改善と内容面の工夫
- 学習指導要領の改訂等を踏まえた原子力教育の一層の充実
- 長期的な観点からの地域振興等を通じた原子力施設と立地地域の共生