現行の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長期計画」という)の策定以来約4年が経過し、この間に、以下に示すように原子力を巡る情勢は大きく変化してきている。
このような情勢を踏まえ、今後適切な時期に長期計画の見直しを行う必要があることから、長期計画の予備的検討に関する調査を行うこととし、現行の長期計画の策定以降の内外の情勢変化、原子力開発利用の進捗状況等について、関連情報の収集・整理、レビュー等を行うとともに、21世紀を見通した今後の長期計画のあり方等について、論点の整理等を行うこととする。
- 地球温暖化防止京都会議(COP3)において、温室効果ガス削減に係わる数値目標が合意され、我が国に課せられた削減目標の達成に向けて、原子力が果たす役割への期待が 高まっている。
- 新しい原子力発電所の建設認可、プルサーマル計画の進展、青森六ヶ所村の再処理工場への試験用の使用済燃料の搬入等、原子力開発利用を巡る進展が見られる。
- 一連の事故等により国民の信頼を失った動力炉・核燃料開発事業団の抜本的な改革・改組が行われ、「核燃料サイクル開発機構」が発足した。
- 原子力の研究開発において、従来のキャッチアップ型から、フロントランナーとして独創性を重視し、研究の成果を通して世界に貢献していくことが求められている。
- インド・パキスタンによる地下核実験の実施、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を巡る国際情勢の変化、米露の核兵器の解体への対応等、国際的な核不拡散の強化に向 けた取組が必要となっている。
- 加速器等の原子力研究開発基盤の充実により、その利用についての新しい可能性が芽生えつつある。
- 原子力が国民生活に直接関与する放射線の医学利用等の進展が見られる。
長期計画には、エネルギー、環境、科学技術、社会システムなど、種々の分野が含まれており、これを網羅的に調査するには、多くの労力と時間を要することから、本調査においては、原子力委員会専門部会で報告書等がまとめられている分野については、改めて調査することは避けることとし、それ以外の分野で、新長期計画を策定する際に、特に論点となると考えられる「21世紀社会に向けた長期計画の在り方」「エネルギーの安定供給を支える軽水炉発電体系」「高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発」「国民生活に貢献する放射線利用」「未来を拓く先端的研究開発」「新しい視点に立った国際的展開」「原子力の社会的受容」に関する調査を実施することとする。なお、本調査は原子力委員会からの委託により実施したものである。