第29回原子力委員会定例会議議事録(案)
1.日 時 1998年6月2日(火)10:30〜12:00
2.場 所 委員会会議室
3.出席者 藤家委員長代理、依田委員、遠藤委員
石榑東京大学教授
(事務局等)今村審議官、伊藤原子力調査室長
吉舗専門委員
瀬山国際協力・保障措置課長
森口動力炉開発課長
森山廃棄物政策課企画官
廃棄物政策課 千原、石崎、前川、坂本、玉井
動力炉開発課 増子
動燃改革法整備準備室 犬塚
国際協力・保障措置課 田口、池田
日本原子力産業会議国際協力センター 中杉
原子力調査室 杉本、池亀、中山
- 4.議 題
(1)高レベル放射性廃棄物処分の推進について
(2)原子力バックエンド対策専門部会報告書「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」について
(3)核燃料サイクル開発機構の業務に関する基本方針の策定について
(4)地域協力構想調査について(9年度委託調査結果)
(5)パキスタンによる核実験の実施について
(6)その他
- 5.配布資料
- 資料1 高レベル放射性廃棄物処分の推進について(案)
資料2-1 RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について
資料2-2 「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」の概要
資料3 核燃料サイクル開発機構の業務に関する基本方針の策定について(案)
資料4-1 平成9年度地域協力構想調査について
資料4-2 平成9年度地域協力構想調査報告書
資料5 パキスタンによる地下核実験の実施(5月30日)について
資料6 第28回原子力委員会臨時会議議事録(案)
席上配布 「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について 案(平成10年2月5日、原子力バックエンド対策専門部会)」に対するご意見と回答
席上配布 核燃料サイクル開発機構法第二十七条
- 6.審議事項
- (1)高レベル放射性廃棄物処分の推進について
- 標記の件について、資料1に基づき、藤家委員長代理より
- 会合そのものにも原子力委員として参加している高レベル放射性廃棄物処分懇談会において、前回の委員会で報告書が取りまとめられた旨の報告を受け、原子力委員会としてはこれを重く受けとめ、委員会としての考え方をまとめることとしたい
との発言があり、委員より
- 原子力委員会決定の案文は妥当と考える。世代間の公平の観点から現世代の責任を明示し、後世代に問題を残さないとの考え方は評価できる。本分野における研究開発は海外に比べて10〜20年遅れており、早急に進める必要がある。また、国や電気事業者などの関係機関が連携し協力して積極的に進めるべきであり、研究開発においては情報公開をしっかりと行っていくことが重要。まだ出発点にすぎず、原子力委員会としても今後とも責任をもってフォローしていく必要がある
- 本分野は、原子力の開発利用を進めていく上で残された積年の課題であったが、今回処分方策の方向性を出すことができたことは大変意義があり、今後これを実践し、着実に進め成果に結びつけていくことが国民の期待に応えることになる。今後、事業資金の確保、実施主体の設立、安全確保の基本的考え方、深地層研究施設について、早急に具体化していくことが重要
- 今後とも社会の理解と支援を得ながら進めることが重要。深地層研究施設は大切であり、岐阜県の東濃の計画、また北海道の幌延においては正に新しい提案がなされているところでもあり、地元の意見を尊重しながら進めること。懇談会報告書を新たな出発点として捉え、国民の議論を深めていくことが必要。情報公開を徹底し透明性を高めるとともに、立地地域と処分事業との共生や、立地地域と電力消費地との共生について一層議論していくことが重要。関係機関が積極的に取り組むのはもちろん、原子力委員会としても責任を持って全体の進捗を見ていく
等の意見があり、審議の結果、資料1が原案通り決定された。
- (2)原子力バックエンド対策専門部会報告書「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」について
- 標記の件について、石榑東京大学教授及び事務局より資料2-1、資料2-2及び席上配布資料に基づき、平成10年5月28日に開催された標記部会において報告書が取りまとめられた旨報告があった。
これに対し、委員より
- RI・研究所等廃棄物については、様々な分野においてRIや核燃料物質が利用される一方で、これまで廃棄物は現場での保管で対処してきた。本報告書においては、安全かつ合理的な処理処分方策、安全基準、実施体制について基本的考え方が取りまとめられていると認識
- 前議題の高レベル放射性廃棄物とともにバックエンド対策は遅ればせながら着実に進んでいるとの印象。180件あまりの国民からの意見は、本件に対するいろいろな方々の意見の表れと考えられる。今後も国民の理解を得るべく積極的に情報提供をすることが重要
- 関係法令の整備など諸制度の整備については重要であることから関係機関と検討してほしい。RI・研究所等廃棄物事業推進準備会における検討が早急に進められることを期待。その際、現場からの要望や指摘なども適切に汲み上げていってもらいたい
- 高レベル放射性廃棄物が比較的少数の大企業体を対象とするのに比べ、本分野は多数の比較的小規模な事業者が対象になる点など、前者と異なった観点から本分野について積極的、総合的に取り組んでいくことが大切。原子力委員会としては、本報告書を受けとめて今後とも審議を続けていきたい
等の意見があった。
- (3)核燃料サイクル開発機構の業務に関する基本方針の策定について
- 標記の件について、事務局より資料3に基づき説明があった。
これに対し、委員より
- 核燃料サイクル開発機構法が今国会で認められたのは画期的であり、国民の期待と希望を託したもの。本年2月の原子力委員会決定においても、機構に対して明確な使命を与えるための基本方針の策定に主体的に取り組むことを明確にしたところ。基本方針の策定スケジュールは了解
- キャッチアップ型の研究開発からの脱却が重要であり、名称の中にある「開発」は英語に訳すと「research and development」の意であると認識。研究成果を大事にしながら開発を進めていくことが大切であり、機構は大学や産業界との連携の中で、研究についても重点をおいてやっていくことを明確にすることが大切になってくる
- スクラップアンドビルドの徹底は困難な問題であるが、適切な評価機関において実施することが大切
- 技術移転については、コマーシャルマインドの持ち方に関わるものと認識。開発を段階的に捉えていくことが技術移転に繋がる。開発集団は常に技術を外に出しながら進む。例えば新しいウラン濃縮技術について採用していくか、何をスクラップしていくかなど、経営としての判断がある
- 国主導の研究開発に関しては、官民の役割分担が大切であり、いずれか一方だけでは完結しない。円滑な技術移転のために、制度的にもうまく進めることが大切。大規模開発は既定の開発路線で進みがちであるが、フレキシビリティと外部からの受け入れをしつつ、開発路線にのった技術だけに固執しない経営主体が大切。例えば、FBRといっても単一のものではなくバリエーションをもったものであり、限られた資源の中で多様性をいかに出すか、燃料燃焼度の向上やMOX燃料利用が再処理施設の設計に与える影響なども先取りして検討するなどの姿勢が新法人に期待される
- 整理廃止事業については、単なる撤退ではなく、これまでの成果をまとめ、何が残された課題かを整理するという大きな使命を果たすという姿勢が大切。ふげんの歴史はATRの歴史として完結させてほしい
- 研究開発の目標については、一つずつ独立したものとして議論するのではなく、全体像を見渡した上で検討することが重要。研究開発は新しい発想を取り込んでいけるかが大切
- 原子力開発は当初エネルギー資源論から議論されたが、近年地球温暖化など環境論の面からの必要性が議論されるようになっている。その意味でも、資源論の観点からの核燃料の「リサイクル」と、放射性物質を環境に出さないという環境論の観点からの「ゼロリリース」が大切。機構の使命については、サイクルの必要性から整理し、機構のミッションを決めていかなければならない
- 核燃料サイクルを確立することの歴史的意義を再認識しておく必要があり、これまでの情勢変化を踏まえた上で、官民の役割なども考慮して進めていく必要がある
- 競争原理がうまく機能していくようにすることが重要
- 機構に与えるべきミッションを、人材と体制を含めた三つの側面から今後も審議していくこととしたい
等の意見があり、引き続き審議することとなった。
- (4)地域協力構想調査について(9年度委託調査結果)
- 標記の件について、事務局より資料4-1及び資料4-2に基づき説明がなされた。 これに対し、委員より
- これまで相手国からの要望に沿って単発的に事業を進めてきた感があるが、今後体系的にアジア協力を行っていくことが必要
- 東南アジア諸国などにおいてもいずれは原子力発電を導入していくことを念頭に、それらの国におけるセイフティカルチャーや技術者の育成などに、我が国として積極的に協力していくことを考えるべき
- 原子力を含めたアジアのエネルギー問題に、我が国としてどこまで積極的な外交姿勢がとれるかが問題。要請主義ではなく、主体的、戦略的な発想が必要
- 原子力分野における我が国の国際協力の実績はあるが、個別対応や受け身的な協力が多い。総合的で戦略的な視点からの国際協力が大切
等の委員の意見があった。
- (5)パキスタンによる核実験の実施について
- 標記の件について、事務局より資料5に基づき説明がなされた。
これに対し、委員より
- NPTを中心とする核不拡散体制への挑戦の形態としては、NPT加盟国で核開発疑惑がある国によるNPT内部からの挑戦と、今回のようにNPT未加盟国による外部からの挑戦の2通りがあり、それぞれに対する対処の仕方は変わってくる。内部からの挑戦に対しては、IAEAによる保障措置(93+2計画)を徹底させることなどが有効であり、外部からの挑戦に対しては、先進国が対応の足並みをそろえ、国際規範を守らせることが重要
- 原子力の平和利用を進めるためには、核軍縮が進むよう我が国として協力していくべき
等の委員の意見があった。
- (6)議事録の確認
- 事務局作成の資料6第28回原子力委員会臨時会議議事録(案)については、時間の関係上、次回の委員会までに確認することとなった。
なお、事務局より、次回は6月5日(金)に臨時会議を10:30から開催する方向で調整したい旨発言があった。