第28回原子力委員会臨時会議議事録(案)
1.日 時 1998年5月29日(金)10:30〜12:50
(11:55〜12:25 中断)
2.場 所 委員会会議室
3.出席者 谷垣委員長、藤家委員長代理、依田委員、木元委員
近藤元日本学術会議会長
森嶌上智大学教授
日本原子力研究所 岸本理事、日埜ITER業務推進室長
(事務局等)加藤原子力局長、林政策課長、伊藤原子力調査室長
吉舗専門委員
有本廃棄物政策課長、瀬山国際協力・保障措置課長、
柴田核融合開発室長
廃棄物政策課 千原、石崎、川上、前川
国際協力・保障措置課 田口
核融合開発室 塩崎
原子力調査室 松澤、杉本、池亀
- 4.議 題
(1)第127回核融合会議の結果について
(2)ITER特別作業グループ(SWG)の報告について
(3)木元委員の海外出張について
(4)高レベル放射性廃棄物処分懇談会の報告書について
(5)その他
- 5.配布資料
- 資料1 第127回核融合会議の結果について
資料2 ITER特別作業グループ(SWG)の報告
資料3 木元原子力委員会委員の海外出張について
資料4-1 高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について
資料4-2 高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について(参考資料)
資料4-3 所感 −高レベル放射性廃棄物処分懇談会の意見のとりまとめを終えて−
資料4-4 高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について(付属資料)
資料5 第27回原子力委員会定例会議議事録(案)
席上配布 パキスタンによる地下核実験の実施について
席上配布 パキスタンによる核実験の実施について(声明)
- 6.審議事項
- (1)第127回核融合会議の結果について及びITER特別作業グループ(SWG)の報告について
- 標記の件について、事務局、日本原子力研究所 岸本理事及び日埜ITER業務推進室長より、資料1及び資料2に基づき説明があった。
これに対し、
- ITER計画の設計条件を決める要素がほぼ出そろったと考えてよいか
(岸本理事より)コスト検討を除いては概ね明らかになったと考えている。サイト対応設計活動のためのサイト特性が明らかになれば、より具体化すると思う
- ITERの建設コストが当初の50%程度になるということは、規模の縮小を意味するのか。規模縮小になっても当初のITER計画の目標は満たせるとの認識か
(岸本理事より)基本的にはその認識。主な論点はエネルギー増倍率(Q)である。当初、欧州はQを無限大にすべきとの意見であったが、これまでの設計検討からQを無限大にしなくても開発上の問題はないとする日本側の主張を受け入れるとの結論に至ったもの
- 当初計画から先細りの感があるが
(岸本理事より)少なくとも日、欧、ロのスタンスは変わっていない。米国もコストを50%程度にすべきとの主張をしており、この程度の合理化を図れば、米国内の支持が得られるとの認識
- 国際協力の下での大型プロジェクトとして、あまり前例のないチャレンジングなものと認識。コストダウンして計画しても、結局当初見積もり額と変わらない程度になってしまうという懸念もあるが、この点の検討もされたのか
(岸本理事より)そのような議論はしていないが、欧州においては、日本側主張に賛同するかどうかの激しい議論が行われ、その結果としてQ値にこだわる必要はないとの結論に至ったものと聞いている。コストはQ値に依存するところが大きく、Q値が変わらなければコストが大きくアップすることはないと考えている
- ITERをサイエンスの究極としてとらえるのか、エネルギーマシンとしてとらえていくのかという問題もあると思う。現在、米、ロがサブパートナー的になってきており、今後の我が国のイニシァティブが重要になるものと思う。原型炉へのインパクトをきちんとみていくことが必要
(岸本理事より)原型炉へのイメージをもって実験炉を考えていくべきというのが従来からの日本の主張。その観点で、材料の開発をどう進めていくかが次のステップへ進むための大きな課題であると思う
等の質疑応答及び委員の意見があった。
- (2)木元委員の海外出張について
- 標記の件について、事務局より資料3に基づき、木元委員が1998年5月31日(日)から6月8日(月)までの9日間、欧州エネルギー・原子力事情視察調査のため、海外出張する旨、説明があった。また、木元委員より
- 訪問先では政府高官などに会うのではなく、PAの観点や、エネルギーや原子力に対して市民がどう捉えているのかという観点から臨みたい
等の説明があった。
- (3)議事録の確認
- 事務局作成の資料5第27回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
- (4)高レベル放射性廃棄物処分懇談会の報告書について
- 標記の件について、高レベル放射性廃棄物処分懇談会座長である近藤元日本学術会議会長及び座長代理である森嶌上智大学教授より、資料4-1、4-2、4-3、4-4に基づき、平成10年5月26日に開催された標記懇談会において報告書が取りまとめられた旨報告があり、
(近藤座長より)廃棄物処分の重要性は益々大きくなっている。後世代に荷物を残さず、また今後の技術の進歩にもフレキシブルに対応する必要がある。国会や国民の間でも議論が行われることが重要
(森嶌座長代理より)情報公開が行われていてもその情報は国民に浸透していないことから、情報をもっと分かりやすく発信することが必要。今後の原子力の利用に関する議論について行政がしっかりと受けとめ、併せて今後の原子力利用の意味合いを国民に広げてもらいたい
等の発言があった。これに対し、委員より
- 高レベル放射性廃棄物処理処分の問題は大変重要な問題であり、原子力委員会としても、平成7年に2つの専門部会を設置してそれぞれ審議を尽くしてきたところ。本懇談会の審議状況を見ると、これまで原子力とは無縁の先生方を含め、アカデミアの経営参加や、アカウンタビリティとリーダーシップなど、委員一人一人が個人として今後の原子力をどうするかについて真剣に議論をしておられた。今後の原子力委員会の審議のあり方を考える上で大変意義深いものと考える
- 本音で議論できたことは非常によかった。報告書の「さいごに」にもあるように、「高レベル放射性廃棄物処分の問題については、政治の場においても現世代の意思を立法の形で明らかにすることが必要」であり、それなくしては前に進めない。また、「そのためにも、国民の各層における議論が十分に行われ、国民の理解と信頼を得るための努力がなされなければならない」のであり、今後の継続が大切。その意味でもここからがスタートであると認識
- 近藤座長はじめ委員のご努力に感謝したい。我が国はこの分野における研究開発が諸外国に比べて立ち遅れてきたが、原子力先進国として廃棄物処分問題に答えを出し、原子力の進むべき道筋をつけていかなければならない。そのためにも国民に理解してもらうことが必要。近藤座長の国民へのメッセージには感銘を受けた
- 原子力は科学技術としてだけでなく、政治、経済、社会からの側面があり、本報告書では幅広い観点からの考え方が表され、評価は十分できていると認識。今後も廃棄物処分対策について総合的な観点で捉え、積極的にこれに取り組んでいくことが大切
- 議論の中でも、「なぜ高レベル放射性廃棄物処分の議論が必要なのか」「なぜ地層処分なのか」との疑問が多く出た。今後、生活者として「どうして原子力なのか」との視点から議論することが必要と感じた
(近藤座長より)電力を大量消費する都会の人の立地地域への理解を深めることが大切であり、立地地域の方々と痛みを分かち合っていくことが重要
- 原子力との共生とは何か、そこから始めなければならない
等の意見があった。最後に藤家委員長代理より
- 原子力委員会として、高レベル放射性廃棄物処分の重要性に鑑み、本報告書を重く受けとめる。本日の議論を踏まえ、谷垣委員長と相談の上、次回の委員会において高レベル放射性廃棄物処分に対する原子力委員会の考え方を取りまとめたい
との発言があった。
- (5)パキスタンの地下核実験の実施について
- その他の議題として、事務局より席上配付資料「パキスタンの地下核実験の実施について」に基づき、説明があった。
これに対し、委員より
- 前回インドが核実験を行った際にも委員長談話を出したが、対外的に周知させることが重要
- パキスタンのシャリフ首相の演説で、日本が核武装していれば広島・長崎の悲劇は避けられたとの趣旨の発言の報道があったが、核抑止力に関するこのような認識は、核不拡散に反する非常に危険なもの。インドとパキスタンの核実験が世界に広がることを懸念
- シャリフ首相は、国民世論に鑑みて核実験を行った旨の発言をしたようだが、リーダーシップの観点から問題がある
- 今回の核実験に対する原子力委員会の意思を出すに当たっては、「委員長談話」では弱い感じがするが「委員会決定」はなじまない。とすれば「声明」の形で出してはいかがか
等の意見があり、原子力委員会としての意思表示の方法について事務局に検討を指示するとともに、委員会中断の後、谷垣委員長の出席の下で改めて審議することとした。
<11:55〜12:25まで中断の後、谷垣委員長出席の下で再開>
- (6)高レベル放射性廃棄物処分懇談会の報告書について
- 標記の件について、近藤座長より谷垣委員長あてに報告書が手交され、谷垣委員長より
- 5月13日に動燃改革法が成立したが、高レベル放射性廃棄物処分の問題については、この国会審議においても再三議論がなされ、国民的な関心の深さを認識するとともに、本懇談会において議論の集約を行っている旨答弁してきたところ
- 社会的、経済的側面や様々な観点から、専門家以外の広範な国民の意見を聞くなどの精力的な努力に対し、心から感謝申し上げる
- 本報告書を踏まえ、2000年を目途とした実施主体の設立や、事業資金あるいは安全確保に関する基本的な考え方の策定など、具体化に向けた所要の準備を関係行政機関や電気事業者と密接に協力しながら早急に進めていきたい。処分に関する研究開発についても関係研究機関と協力しながら進めなければならない。また、国民一人一人が、他人事でなく、先送りしてよい問題ではないと意識してもらうための活動も行っていく必要がある
- この問題の重要性に鑑み、本報告書を重く受けとめ、原子力委員会として処分の推進について見解を取りまとめたい
との発言があった。
- (7)パキスタンの地下核実験の実施について
- 標記の件について、谷垣委員長より
- 我が国をはじめ各国が最大限の自制を求めてきたにもかかわらず、パキスタンが核実験をしたことは誠に遺憾。原子力の開発利用を平和利用に限って行っている我が国として極めて残念
との発言があり、各委員より
- 日本が核武装していなかったために広島・長崎の悲劇が起こったとの主旨のシャリフ首相の発言があったようだが、極めて遺憾。しかし、我が国が被爆国であることを強調し過ぎたために、このような認識の引き合いに出されてしまった面がないか。また、核実験を求める国民世論があったから行ったとの同首相の発言には、リーダーシップの欠如を感じさせる面もある。原子力委員会として相手国とその国民両方に訴えるようなことを言うべき
- 核抑止力の恐怖の均衡の上にあるという発想が依然としてあり、宗教対立や民族対立を背景とした地域核が連鎖的に出現する恐れがある。原子力の平和利用について、冷戦時代とは違う形で我が国が主導して推進していくよう努力する必要があり、原子力委員会としても強い姿勢を出すことが重要
- 我が国は原子力を平和利用に限って進めている一方、平和利用をそれ程行っていない国々が核兵器開発を進めている。日本の国益に反することが行われているという怒りを覚える。原子力委員会の役割である原子力平和利用の推進という観点から、強く意思表明すべき
- 地域特有の背景があるだろうが、今回のパキスタンの行動とともに、その引き金となったインドの行動に対しても問題にしたい。国としての対応については多面的な議論があるが、原子力委員会として今回の核実験に対する考えを声明としてまとめたい
- 委員長談話でなく、声明になったことはよいこと。(核兵器のない世界を目指すという強い意思を)対処療法的に表すのではなく、継続していくことが重要
等の意見があり、席上配布資料「パキスタンによる核実験の実施について(声明)」(案)の最後の行の「期待」を「要請」に変更した上で、声明とすることで了承された。