付録Ⅳ


我が国の核融合エネルギー研究開発の基盤



 核融合エネルギーを形成するプラズマ核融合技術は、プラズマ物理学、原子核物理学、機械工学、原子核工学、電気・電子工学、システム工学、品質工学などの幅広い分野にわたる技術の総体として成立するものである(別紙1参照)。したがって、プラズマ核融合技術の水準の高さは、各種分野における研究が高い水準を有していることを反映しているといえよう。
 実際、世界的にみても、核融合研究開発の先端を行く国や地域は、高い科学技術水準を有している。

 我が国における核融合エネルギー研究開発は、付録Ⅱで述べたように、国際的競合の中で進展してきた。このような競合の中で、我が国が世界に先駆けて提唱、実証を行ってきた概念、技術が現在の最先端の核融合研究開発の基盤となっているものも少なくない。

    例えば、物理面では、
  ○
プラズマを囲む磁力線の形状を工夫することで、プラズマから発生する熱と粒子を制御し、プラズマの純度を高く保つようにしたダイバータ機能の有効性を実験的に実証した。この技術は、ITERをはじめ、世界の多くの装置に採用されている構造となっている。

  ○
トカマク型装置において、長時間プラズマ電流を維持するため、トランスの原理によらず高周波(低域混成波)でプラズマ電流を駆動する(非誘導電流駆動)方式を実証し、ITERの定常運転シナリオの基礎となっている。

    また、工学の面では、
  ○
プラズマを加熱するために、電気的に中性な粒子ビームを入射する装置を使用するが、その粒子ビームとして、従来の正イオンではなく負イオンを用いることにより、ビームの加速電圧をITERで要求される領域まで向上することに成功した。

  ○
日本独自の方式(ヘリオトロン方式と呼ぶ)を提唱し、付録Ⅱで紹介した成果をあげている。

 こうした世界に誇る技術への我が国の寄与は、例えば、国際原子力機関(IAEA)が主催して開催する核融合エネルギー会議における我が国の発表論文数にも表れている(別紙2参照)。

 これら技術の成果の背景には、研究開発機関や大学等の研究成果に加え、それを現実のものとする最新の製造技術を有する産業界の高い技術水準の裏付けあることを忘れることはできない。

 また、研究機関、大学、産業界における過去からの絶え間なく核融合研究開発に従事する研究者と研究費が確保されてきたことが大きい要因ともいえる。実際、これまでの我が国で行われているエネルギー関連研究開発における核融合エネルギー研究開発の割合を研究者数と研究費で比較しても、核融合エネルギー研究開発の研究者と研究費は、時代の影響を大きく受けることなく、ある一定の割合を確保してきている(別紙3及び別紙4参照)。

 核融合エネルギー研究開発において、我が国が国際的にも十分通用する高い知見と技術を備えるに至った土壌は、各種科学技術分野の順調な進展と、安定した研究資金に支えられた研究者の努力によって形成されてきている。