第3回動燃改革検討委員会の結果について(速報)
平成9年6月6日
科 学 技 術 庁
1.日時 平成9年6月6日(金) 15:00〜18:00
2.議題 (1)委員及びコンサルタントによる調査状況報告
1)コンサルタントによる調査の中間報告
2)委員による個別調査結果報告
(2)動燃事業団改革の基本的方向性
1)動燃事業団改革の基本認識
(動燃改革検討委員会座長試案)
2)自由討議
- 3.結果概要
- (1)近岡科学技術庁長官、岡科学技術政務次官、吉川座長はじめ8名の委員が出席。(その他、関係者、プレス、一般人として、約180名が傍聴。)
- (2)調査状況の報告として、以下の点について説明がなされた。
- 事務局より、外部コンサルタントの調査状況の中間報告として、事業の具体的目標の設定、事業規模、人事管理等について現在までに抽出された問題点が報告された。
- 久米委員より、品質管理の観点から、管理の方法等についての調査結果として、管理者による現場の把握、作業者・管理者による情報の共有化等の必要性が指摘された。
- 矢野委員より、危機管理の観点から、安全管理体制等についての調査結果として、現場の責任体制への配慮の不足、閉鎖的性格に起因した緊張感等の欠如等が指摘された。
- (3)吉川座長より、座長試案について説明があり、各委員のコメントを反映させたものとして試案を作成したが、
- 1)各委員のコメントは、深さ、幅とも様々であり、具体案としてまとめるに到らなかった旨、
- 2)従って今回は、問題の本質が何であるかを明らかにし、各委員の基本認識の共有を図ることが必要である旨、
の発言があった。
- (座長試案の要点)
- ○原子力政策と動燃
・将来のエネルギー源確保に向けた原子力開発は、エネルギー安全保障とともに、国際貢献につながるものとして、国民が支持
・その開発の主役として、動燃は国民の付託を受けているものと認識
- ○動燃における潜在的困難の存在
動燃の業務には、基礎研究・開発・実用化の三つの直列した要素があり、これらは思考様式や作業形態の面で異なった性格を持つものであり、これらが混在していることが潜在的な困難
- ○潜在的困難の顕在化
次のような動燃を取り巻く状況変化により潜在的困難が顕在化
・先駆者の消失
→他に学ぶべき先駆者が不在であることから、自らが自律的システムを構築することが必要であった
・経済のグローバリゼーション
→メガコンペティションと言われる中、あらゆる技術は競争力を持ってはじめて存在可能であるが、動燃にこの点が欠けている
・急速な技術進歩
→我が国の産業技術の進歩との接触といった外界に開かれた研究開発の基本的態度を取り入れることなく、閉鎖的なままできた
- ○動燃における問題の構造
・事業体としての課題
先例のない研究開発/高い安全性/競争力ある技術の供給の同時的実現
・動燃の失敗
事故の防止と措置、コスト高のために技術を売れなかったことが大きな失敗であり、この問題の本質は状況の変化に的確に対応できないことである
- ○問題の本質
・経営の不在に起因
動燃問題は、組織全体の行動決定者が特定できず、真の責任が不明となる、いわゆる日本病の現われの一つ
(4)座長試案に関する委員の主な意見は以下のとおり。
- 我が国の中核機関として、動燃と原研が与えられた使命を果たすという構造を明確にする必要があり、原子力基本法第7条に言及すべき。また、軽水炉を越える原子力技術開発については、日本とフランスのみならず、ロシア等もあることを明記すべき。
- 事業の要素の統合が強調されすぎており、分化も必要であって、両者の調和が重要。状況の変化への対応に関しては、企業の場合には市場原理により自動的に対応が可能である面を持つが、動燃のような官僚組織においては裁量のグレーゾーンが多く、強いリーダーシップが必要。
- 経営は国家レベルでみると複合システムであって、動燃のリーダーシップという問題のみならず、国のリーダーシップも加えて考えるべき。
- 試案は動燃に優しすぎる。動燃には、とるべき悪いところはとって再起するような、かなり痛みを伴う外科的治療が必要。
- 動燃の持っている技術は財産であり、蓄積されたノウハウやスキルを活用するためには、あまりドラスティックにやるべきではなく、事業を抜本的に見直した上で再出発すべき。
- 経営は、人事権と予算権である。動燃は国の機関であり、経営は原子力委員会や科技庁の問題であり、動燃としては管理不在と言うべき。
- 経営には階層があり、どのレベルにも経営というものがある。
- 当初のミッションから変わったのであれば、動燃の経営者がそれを理解し、国に対して提案すべきであり、そうしなかったことが動燃の経営不在である。
- 基礎研究の原研と実用化の動燃を統合するのは、事業の分化と統合のバランスから困難。統合では、ミッションがあいまい、意志決定困難、一貫した評価システムなどで問題。
- 研究開発のうち、基礎的分野で大学などとの連携を図るなど裾野を拡げることも考慮すべき。
- 先進リサイクルといった原子力の平和利用の技術体系を確立できるような、野心的な研究ができる体制にすべき。
- 改革がどのような形になるにしても原子力施設は存在するのであり、安全管理と対社会性という観点は改革の絶対条件。
- (5)座長総括において、今後の進め方について以下のとおりとりまとめられた。
- 1)本日の議論を踏まえ、次回会合(6月17日)において、委員会としての提案の原案を座長試案の形で提示し、審議。
- 2)座長試案の方向性としては、以下に配慮し座長に一任。
- 多数意見を中心としてまとめ、少数意見にも言及する。
- 動燃を抜本的に見直し、再出発させる。
- その際、強いリーダーシップと裁量権を持たせるなど経営の刷新を図るとともに、条件として、厳正な経営の評価、安全性、対社会性の確保等を満たす。
(以上)