アジア地域原子力協力「原子力安全文化ワークショップ」成果報告



                           平成9年2月21日
                           地域協力構想委員会
                           原子力安全文化グループ幹事
                           石川迪夫

1.開催概要

  今回の原子力安全文化ワークショップは、第6回及び第7回アジア地域原子力協力国
 際会議において、オーストラリアが提案し、開催されることになったオーストラリア政
 府の主催による新たなワークショップ。今回は以下を目的として開催された。
 ・原子力施設の操業、活動の安全達成における安全文化の役割について、アイデアと経
  験を交換するフォーラムを提供する。
 ・地域内での原子力安全文化の発展、強化に関する協力のスコープと方法を議論する。

 期 間:平成9年1月28日(火)〜31日(金)
 場 所:オーストラリア、シドニー
 主 催:オーストラリア政府
 参加国:オーストラリア(ANSTO:13名、NSB:4名、他:4名)、中国(国家核
     安全局:1名)、インドネシア(BATAN:1名)、日本(5名、傍聴者:2名)、
     マレーシア(MINT:1名)、フィリピン(PNRI:1名)、韓国(MOST:
     1名、KINS:1名、電力:2名)、タイ(OAEP:1名)、ベトナム(NR
     I:1名、VINATOM:1名)
     総勢39名(傍聴者、関係者含む) 

2.ワークショップ概要

 (1) 初日 1月28日(火)
   午前は、ANSTOガーネット教授の挨拶、キャメロン博士の導入説明に引き続き、
  北海道大学石川教授から日本における原子力安全文化の経験・進展についてのレクチ
  ャー、およびANSTOマクドナルド博士からワークショップの概要・目的の説明が
  された。マクドナルド博士は、原子力発電所以外の原子力分野への安全文化の取り込
  みの必要性及び安全文化の主要構成因子の測定方法等の重要性に言及。
   午後は、原子力発電所を導入している韓国、中国、日本から安全文化の実践状況に
  ついて発表。韓国、中国は原子力発電の導入状況、規制との関係の他、国内会議の開
  催も含めて積極的に活動に取り組んでいる状況を報告。

 (2)2日目 1月29日(水)
   終日、原子力発電所以外の原子力分野における安全文化の取り組み状況について、
  各国から発表された。インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムは国の規制
  体制を含めて原子力利用状況の中での安全文化への取り組み努力を紹介。各国とも途
  中段階にあり、本ワークショップで学ぶことに期待していること表明。フィリピン、
  タイからは、RI取扱における具体的な事故事例も紹介され、原子力発電所以外の原
  子力分野での安全文化の必要性が認識された。但し、INSAGが原子力発電所を対
  象にしているものであることに多少抵抗があることが意見された。
   オーストラリアは、研究用原子炉HIFARを対象として、INSAG、ASCO
  T等に基づいて安全文化を向上するための安全文化指標を取り入れた研究・分析等の
  活動を紹介した。日本からは歴史的な背景を加えた法規制体制の変遷、進化及びもん
  じゅ事故からの教訓について説明。

 (3) 3日目 1月30日(木)
   各国が、原子力発電所以外の原子力分野での安全文化の必要性について、ほぼコン
  センサスを得たところでオーストラリア側の提案によりグループ討議を行い、この結
  果を発表。これを基に、ワークショップの結論案をオーストラリア側が準備し、各国
  のコメントを反映した上で結論とした。
   閉会にあたって、東南アジア諸国の感想では、今回ワークショップの機会を提供し
  たオーストラリア及び原子力発電所の経験を紹介した韓国、日本に対する感謝の言葉
  とともに、将来の計画・会合にもさらに学ぶために参加したい旨、発言があった。

 (4)4日目 1月31日(金)
   午前中、シドニーの南30km程に位置するルーカスハイトのANSTO施設を視
  察した。1958年に臨界になった研究用原子炉HIFAR、1990年に導入した
  タンデム加速器、高レベル廃物処理処分技術のSYNROCのパイロット施設を訪問
  した。研究用原子炉については、2003年までに廃炉か新設かを決定することにな
  っている。
   午後には、1992年にANSTOの運転を監視・評価する機関として分離され、
  独立組織となった原子力安全局を訪問した。10人の組織であり、若手の人材育成の
  機会を与えるために日本を含む原子力先進国での研修の必要が検討されている。

3.留意事項

 ○ 韓国、オーストラリアは、中国のVVER導入に懸念を示したが、中国は国家核安
  全局が関係国との協力・技術者の交流を含め、導入するフランス、カナダ、ロシア各
  国の原子力発電に万全を期していることを強調。
 ○ 韓国は、オーストラリアに対して、東洋的なチームワークによる安全文化について
  積極的に説明。日本に対しても協力的であった。