当面の核燃料サイクルの具体的な施策について(案)

平成9年1月31日
原子力委員会決定


 当委員会は、昨年10月に決定した「今後の原子力政策の展開にあたって」に基づき、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会の検討結果も勘案し、当面の核燃料サイクルの具体的な施策について審議を行った。
 その結果、エネルギー・セキュリティーの確保と地球環境問題への対応の観点から、原子力発電は今後とも有力なエネルギー源であり、安全の確保と平和利用の堅持の大前提の下に、着実に開発利用を進めることが引き続き必要であること、また、我が国のおかれている資源的な制約や環境保護の観点から、原子力発電を長期に安定的に進めていく上で、核燃料サイクルを円滑に展開していくことが不可欠であることを改めて確認し、以下の通り当委員会の考え方を示す。
 なお、当委員会は、今後とも核燃料サイクルの着実な展開に向けて、その進捗状況と状況の変化を的確に把握し、必要に応じ適切な場において評価・検討を行い、これらの結果については、平成6年に策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の見直しをも視野に入れ、適切に政策に反映していく。

(1)軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)
 再処理によって回収されるプルトニウムは、ウラン資源の節約と有効利用の観点から核燃料として利用するが、その際、国際的な協調の下、計画の透明性を確保し、余剰のプルトニウムを持たないとの基本的な方針を堅持する。
 とりわけ、プルサーマルは、安全性、経済性の観点及び海外や「ふげん」での利用実績から、現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であり、原子力発電所を有する全ての電気事業者が共通の課題として取り組み、プルトニウムの回収見通しから、2010年頃までには全電気事業者が実施する必要がある。
 具体的には、まず、海外再処理で回収されたプルトニウムを用いて2000年までには3〜4基程度で開始し、その後、国内外でのプルトニウムの回収状況や個々の電気事業者の準備状況等に応じて2010年頃までに十数基程度にまで拡大することが適当である。
 このため、国における基本的な方針の下、まず、電気事業者は全事業者に係わるプルサーマル計画を速やかに公表することが必要である。これを踏まえ、早急に、国及び電気事業者は、所要の準備等を促進するとともに、情報の公開や対話の一層の促進等地元をはじめとした更なる国民的な合意形成に向け、特段の努力を傾注していくことが重要である。
 さらに国はプルサーマルの具体化等を勘案しつつ、東海再処理工場等を活用して、使用済混合酸化物(MOX)燃料再処理技術の開発を推進する。

(2)使用済燃料の管理
 我が国は、発生する全ての使用済燃料を再処理することを基本としており、この観点から、六ヶ所再処理工場の建設を着実に推進する必要がある。
 この再処理を行うとの基本の上に立って、使用済燃料は再処理されるまでの間、エネルギー資源として適切に貯蔵することが重要である。このため、いくつかの原子力発電所においては、当面の対策として、その貯蔵能力の増強を地元の理解を得つつ早急に実施する必要がある。
 さらに、今後の使用済燃料の貯蔵量の増加を見通して、長期的な使用済燃料の管理に係わる具体的対応を図っていくことが必要であり、従来からの発電所敷地内での貯蔵に加えて、2010年頃を目途に発電所敷地外における貯蔵も可能となるような所要の環境整備について早期に結論を得るべく、関係省庁と事業者からなる具体的な検討の場を早急に設ける必要がある。

(3)バックエンド対策
 高レベル放射性廃棄物の処分については、原子力バックエンド対策専門部会の報告書が近くまとまる予定であり、その結論をも踏まえて研究開発を推進するとともに、高レベル放射性廃棄物処分懇談会での社会的・経済的側面を含めた幅広い議論を通じて、処分の円滑な実施へ向けた処分対策の全体像をできる限り速やかに明らかにするべく、一層の努力を傾注する。
 また、原子力施設の廃止措置に関して速やかに所要の制度整備を進めることが重要であり、発生する放射性廃棄物の処分方策について、原子力バックエンド対策専門部会において検討を開始する。

(4)高速増殖炉の開発
 長期的観点から実施している高速増殖炉の開発については、別に定めるとおり、高速増殖炉懇談会を設置し、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について、幅広く検討を行う。