軽水炉MOX燃料再処理の現況と今後の見通し


平成 9年 1月 24日
動力炉・核燃料開発事業団



 軽水炉MOX使用済み燃料は、同程度の燃焼度で照射されたウラン燃料と比較して、1)プルトニウムの含有量が大きく、その同位体組成が高次側に推移している、2)アクチニド含有量が大きく、それによるα放射能量や中性子発生率が高い、3)核分裂生成物のうち不溶解残渣の成分となる白金族元素の含有量が大きい、等の特徴を有し(表1参照)、再処理施設でMOX燃料を処理する場合には、それらの特徴を勘案した設備対応や運転操作上の配慮が必要となる。

 我が国においては原電敦賀及び関電美浜でそれぞれ2体及び4体のMOX燃料がすでに照射されており、並行して動燃等においてMOX燃料の再処理に係わる研究が進められている。
 具体的には、例えば、MOX燃料はプルトニウムがウランと均一化していないと溶解時にプルトニウムの未溶解量が増加するとされ、再処理した際の廃棄物中へのプルトニウムの同伴量の増加等につながる。この確認のため、動燃大洗の照射後試験施設(AGF)及びニュークリア・ディベロップメント(MDC)の燃料ホットラボにおいて、上記のそれぞれ原電敦賀及び関電美浜で照射されたMOX燃料の溶解試験が実施されているところである。なお、最近のMOX燃料製造法で製造され、ある程度以上燃焼した燃料は、ウラン燃料と同様の溶解性を示すといわれ、適切な溶解条件の把握等が図られれば、溶解性に起因する顕著な影響はないと考えられている。
 取り扱いプルトニウム量の増加が抽出工程に与える影響については、動燃東海再処理工場の小型試験設備(OTL)を用いて模擬状態を作っての試験が実施されており、試験範囲での問題はなかったことが報告されている(表2参照)。また、電中研もEC超ウラン研究所と共同でMOX燃料の溶解試験や抽出試験を実施しており、その結果、MOX燃料はウラン燃料とほぼ同じ溶解速度で溶解すること、プルトニウムの増加に伴い懸念される第三相が発生したとしても適切に処理すれば通常の運転状態に戻すことが可能であることと等が確認されている。

 一方、海外においてもMOX燃料の再処理に係わる試験研究が行われており、例えばフランスではCBAフォンテネオローズ研究所のホットセルでの溶解試験、MarcouleのAPMでの溶解試験及び抽出試験がそれぞれ実施され、さらには、LaHagueのUP2 400プラントで4.7トンの工業規模の再処理が問題なく行われた。また、ドイツにおいてもカールスルーエ再処理工場やカールスルーエ原子力研究センターのMILLI施設でMOX燃料の再処理試験が実施され、イギリスでも同様の研究が進められている(表3参照)

 なお、動燃東海再処理工場では炉の分類は異なるもののふげんで照射されたタイプAのMOX燃料がすでに処理されており、ウラン燃料と同様に処理できることが確認されている(表4参照)。今後はさらにプルトニウム含有量の高いタイプBのMOX燃料の再処理を通じて有用なデータが蓄積されるものと考えられる。

 ウラン燃料を対象とした再処理施設でMOX燃料を処理する場合の検討課題に関しては、その多くは既存の技術で対応可能とされているが、具体的にどのような対応が必要となるかは当該再処理施設でMOX燃料を処理する際の運転モードに依存する。年間処理量を大幅に低下させることなく処理できる運転モードとしてウラン燃料とMOX燃料とを9対1の割合で処理すること等が考えられ、これにより設備の大幅な変更なしにMOX燃料の処理が可能であるが、実際の処理を行うにあたって事前に確認あるいは実証すべき項目も一部は存在することが指摘されている。その代表的なものとしては、MOX燃料の溶解特性の把握、燃焼度モニタ開発に係わる基礎データの取得、抽出フローシートの改良試験、プルトニウム重合体の生成評価及び溶媒劣化の評価試験等であり(表5参照)、上述のAGFやM叩Cでの溶解試験及びOTLでの抽出試験はその一部として位置付 けられる。
 また、東海再処理工場でMOX燃料を処理するとした場合の設計解析評価として、臨界や遮へいに係わる安全評価作業も進められている。