中間報告のポイント



I.今何が問題になっているか
最近の我が国のエネルギー問題をめぐる問題


「3つのE」と「長期エネルギー需給見通し」

・我が国のエネルギー政策の基本的な目標は、「3つのE」の同時達成
 1)経済成長(Economic Growth)
 2)エネルギー・セキュリティー(Energy Security)
 3)環境保全(Environmental Protection)
・具体的目標としての「長期エネルギー需給見通し」(1994年6月策定)

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我が国が直面する諸問題

 我が国をめぐるエネルギー情勢は、表面上の平静さとは裏腹に、実際には大きな困難に直面。
1)最近のエネルギー消費の急増傾向(→省エネルギーの停滞)
2)新エネルギー導入の停滞感(→期待は大きいものの、現実には導入停滞)
3)原子力政策に対する国民の不信感の高まり(→長期的な展望の不透明化)
4)気候変動問題への対応の必要性の高まり(→COP3への対応)

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 このままでは「長期エネルギー需給見通し」の達成は困難。(これは、同時に「地球温暖化防止行動計画」の達成も困難なことを意味するもの。)
1)COの排出抑制という国際的な責務への対応上問題
2)石油依存度が低下せず、脆弱なエネルギー需給構造のまま推移

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今後の課題

1)「長期エネルギー需給見通し」達成に向け、省エネ・新エネ・原子力について、改めて具体的施策の強化を図ることが必要。
2)エネルギー問題の長期的な性格にかんがみ、「長期エネルギー需給見通し」の範囲を超える超長期の課題についても検討を進めることが必要。



II.直ちに実施すべきこと
「長期エネルギー需給見通し」達成のための追加施策


省エネルギー ==> 部門毎のきめの細かな努力の積み重ねと横断的対策の実施

・産業部門:省エネ法の運用強化、自主的努力の推進(工場ごとのエネルギー原単位の毎年1%以上の低減努力目標)等
・民生部門:機器の効率向上、建物家屋の断熱性の向上等
・運輸部門:機器の効率向上、物流効率化等
・横断的対策:地方公共団体による省エネ活動促進、省エネ型ライフスタイルへの転換、省エネ型DSM推進等

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  今後2000年度まで最終エネルギー消費の伸びを0%に抑制  

新エネルギー ==> 集中的な支援の実施による普及の加速化

・国による基本方針の策定及び各主体(国、地方公共団体、事業者、国民一般) の役割の明確化と、風力発電による売電事業等の新エネルギー導入事業に対する支援(法的措置を含む)
・太陽光発電の市場自立化促進
・クリーンエネルギー自動車大量導入等の地方公共団体による新エネルギー導入に関する先進的取組の支援

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  一次エネルギー総供給に占めるシェア2.0%(2000年度)の達成  

原子力 ==> 国民の視点に立った原子力政策の推進

情報公開の徹底や立地地域の長期的発展に向けた地域振興策への取組等

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  原子力政策に対する国民の信頼回復  

(==>総合エネルギー調査会原子力部会において審議中)



III.今から考えなければならないこと
「3つのE」のトレードオフの中で直面する将来のシナリオ


超長期のシミュレーション結果
 我が国における長期的なエネルギー問題の展望のため、2030年度に向けたシミュレーションを実施。
 その結果は、今後、我が国のエネルギー問題は、「痛み」を伴う選択を迫られるような厳しい事態に陥るおそれがあるということを示すもの。

シミュレーションの「シナリオ」と試算結果
        
基本的想定
試算結果
シナリオ1・一定の経済成長率達成
 (2011〜2025年度平均2.2%)
・現行程度の省エネ・新エネ施策
・原子力は20基程度増加の後、横ばいに転ずる
・エネルギー消費の伸びは年1.0%程度
・CO2排出量は1990年度の約50%もの大幅増加
・石油依存度も48%の高水準
シナリオ2・一定の経済成長率達成
 (2011〜2025年度平均2.2%)
・省エネ(5千万kl相当)
・新エネ(8千万kl相当)施策の最大限強化
・原子力は更に50基程度増加
 (この結果、設備容量1億kW相当を達成)
・エネルギー消費の伸びは年0.7%程度
・CO2排出量はおおむね1990年レベルに抑制可能
・石油依存度は41%まで低下
参考シナリオ・経済構造改革等実行せず、経済成長は大幅に鈍化
 (2011〜2025年度平均0.8%)
・現状程度の省エネ・新エネ施策
・原子力は20基程度増加の後、この水準を維持
・エネルギー消費の伸びは年0.6%程度
・CO2排出量は1990年度の約20%もの増加
・石油依存度も47%の高水準




「痛み」の負担と国民的な判断に基づく選択

 今後、「3つのE」の同時達成のためには、我が国のエネルギー政策についても、ライフスタイルの抜本的改変、膨大なコスト負担、規制的措置の導入といった「痛み」を伴う厳しい選択に直面せざるを得ず、このような選択は、最終的には国民の判断によるべきもの。

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  「痛み」の量的イメージの明確化  

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今後の課題

 今後の我が国のエネルギー政策の在り方について、国民一人一人が身近な問題として真剣に考え、国民的な議論を展開することが必要。また、学校教育におけるエネルギー教育の充実も重要。



(参考)



2030年度時点で必要とされる
省エネルギー・新エネルギー・原子力の量的イメージ

(1)5千万klの省エネルギー・イメージ

 5千万klの省エネルギーの実施は、例えば以下のような対応の組合せによる膨大な量の節減に相当する。
(ただし、これは単純化のために、一定の仮定の下で試算を行ったものであって、例示されている個々の対応が具体的な政策推進の方向を示すものではないことに特に留意が必要である。)

  1. 産業部門(約1.5千万kl)
     既にエネルギー消費効率は世界のトップクラスを達成しているが、今後更に相当の効率向上の努力が必要。
     例えば1973年度以降1994年度までの21年間で、製造業におけるエネルギー消費効率は約4割改善したところ、今後2030年度までの36年間で更に約5割改善する。

  2. 民生部門(約1.5千万kl)
     今後のエネルギー消費の伸びが高いと見込まれる分野であることを踏まえるならば大幅なライフスタイルや都市構造の変更等を念頭に置いた極めて厳しい対応が必要。

    <家庭部門>
    ・すべての住宅の断熱性を高めて、現状より20%省エネ型の住宅にするよう改築する(=約5百万klに相当)
    ・家庭での冷房のための年間エネルギー使用量の半分を削減する(=約1百万klに相当)
    ・家庭での電気毛布、洗濯機、掃除機、電子レンジ、衣類乾燥機、電気カーペットによる年間エネルギー使用量の半分を削減する(=約2百万klに相当)

    <業務部門>
    ・すべてのビルの断熱性等を高めて、現状より30%省エネ型のビルにするよう改築する(=約8百万klに相当)

  3. 運輸部門(約2千万kl)

     民生部門同様、今後のエネルギー消費の伸びが高いと見込まれる分野であり、交通体系等の改変等を念頭に置いた厳しい対応が必要。

    <旅客部門>
    ・流入規制等により、6大都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県)における自家用乗用車の約3割を公共交通機関に振り替える(=約6百万klに相当)
    ・自家用乗用車への一人乗りをやめる(相乗りの徹底)(=約12百万klに相当)
    (1994年度の乗車密度は約1.54人)

    <貨物部門>
    ・貨物トラックの積載率を5%向上させる(=約3百万klに相当)
    (1994年度の積載率は約46%)


(以上、合計で約5千万kl)


注1.上記のエネルギー削減量は、機器等の使用を取りやめることだけではなく、使用時間の短縮化あるいは機器等の効率化によっても達成され得ることに留意。
注2.1973年度から1994年度の間に、各部門のエネルギー消費効率は次のように変化した。
  産業部門(製造業):IIP(鉱工業生産指数)原単位は約40%改善
  家庭部門:世帯当たり原単位は約49%増大
  業務部門:床面積当たり原単位は約21%改善
  旅客部門:輸送(人キロ)当たり原単位は約38%増大
  貨物部門:輸送量(トンキロ)当たり原単位は約9%増大
注3.上記の試算は、産業部門等、各部門内における2030年度時点のエネルギー消費構成が、1994年度実績と変わらないものと仮定して行った。



(2)8千万klの新エネルギー導入イメージ  8千万klの新エネルギー導入は、例えば以下のような膨大な量の新エネルギーの導入に相当する。
(ただし、これは単純化のために、一定の仮定の下で試算を行ったものであって、具体的な政策推進の方向を示すものではないことに特に留意が必要である。)

 また、新エネルギーは長期的には大きな潜在供給力を有するものの、技術的・経済的制約があること、中でも自然エネルギーについては、(貯蔵や転換効率に関する技術進歩により克服できる面があるにせよ、)エネルギー密度が低いとか、自然条件に左右され安定性に欠けるといった内在的な要因や利用形態による制約があることから、一定の限界があることに留意が必要である。

1)太陽光発電:
2030年度まで、新規住宅着工(約70万戸/年)及び屋根のふき替え(約20万戸/年)に当たり、日射条件の良い住宅の2軒に1軒の設置等を継続する。(=約42百万klに相当)

2)風力発電 :
国内の建設可能地域(平均風速5m/s以上、標高500m以下、傾斜5度以下、等)約3,600kmの約8割に、直径約40mの500kW級の風車を建設する。(=3百万klに相当)

3)未利用エネルギー:過去20年間の導入量5万klを約340倍に拡大する。
  (=約17百万klに相当)

4)その他の新エネルギーについても導入量を最大限拡大する。
  (=約15百万klに相当)

(以上、合計で約8千万kl)

 なお、2030年時点で8千万klの新エネルギー導入量を達成するためには、前提条件の設定の仕方等不確定要因は多いが、単純な仮定の下で計算すると約140兆円*の設備投資(これを、仮に政策的な価格差補てん等で行う場合の追加的費用は、約30兆円*)が必要となる。


注.*:革新的技術開発が実現できた場合のコストダウンについては織り込んでいない。


(3)1億kWの原子力設備容量のイメージ

 1億kWという原子力設備容量については、原子力委員会の「原子力の研究、開発及び利用に関する原子力長期計画」(いわゆる「原子力開発利用長期計画」)において、2030年度における設備容量として期待されているもの。
 この設備容量を実際に実現するためには、現状程度の出力の原子力発電施設を約50基追加設置する、すなわち、1996年12月時点で、51基の原子力発電施設が稼働中であることを踏まえるならば、原子力発電施設をおおむね倍増することを意味している。