平成8年12月10日
(社)日本原子力産業会議
平成7年度のわが国経済は、景気が緩やかな回復傾向で推移して、実質経済成長率は、3年連続の0%台から抜け出し、2.4%を記録した。総発電電力量は、前年度比1.9%増で、総発電電力量に占める原子力発電のシェアは、前年度より1.6%アップの33.8%となった。
7年度の原子力開発の動向をみると、運転を開始した原子力発電所は1基(女川2号機)で、年度末で49基、発電設備容量4,119万kWとなった。また、新規の着工がなかったため、7年度末における建設中の原子力発電所は、前年度に比べ1基減少し、4基(玄海4号機、柏崎刈羽6、7号機、もんじゅ)、417万2,000kWであった。
平成7年度の原子力産業実態調査結果は、電気事業の原子力関係支出高が対前年度約13%減と大幅に減少した一方で、鉱工業の原子力関係売上高は、同約5%増と増加に転じた。電気事業支出高は、建設費、運転維持費の減少が主要因となっており、鉱工業売上高は、RI・放射線機器部門、原子炉機材部門、燃料サイクル部門での増加が主に貢献している。
鉱工業原子力関係受注残高は、売上が増加したものの、原子力発電所の新規着工がなく、建設中の基数も減少していることを反映して、5年連続で大きな落ち込み(対前年度10%減、平成7年度売上1.2年分相当)を見せることとなった。
また、鉱工業原子力関係支出高は、売上には連動することなく、対前年度8%減となった。これは、保守メンテナンス等その他製造部門での支出額の減少が影響している。
今後の展望としては、電気事業の原子力関係支出見込みは、1年後平成7年度実績の1.06倍、2年後同1.10倍、5年後には同1.22倍と順調に拡大する予想が得られた。特に建設費は、新規の原子力発電所建設が拡大することが計画されており、5年後に7年度実績額の1.79倍が見込まれている。
また、鉱工業の原子力関係支出見込みは、平成7年度実績に対し、1年後0.97倍、2年後0.94倍となり、5年後には0.97倍になると見込まれており、こちらは再処理関係が伸びるものの、電気機器製造業等の原子炉機器関係設備の減少がひびき、全体で微減傾向で推移していくことが予想されている。この見通しの背景には、国内外での競争力ある製品、サービスの提供のため、より厳しいコスト管理をはかる等各社の経営努力が一部含まれていることも考えられる。
2.項目別概要
(電気事業の支出動向)
〇電気事業の原子力関係支出高は、前年度比12.8%、2,448億円減の1兆6,678億円となった。このうち、全体の53%を占める運転維持費が8,835億円(同941億円、10%減)、24%を占める建設費が4,050億円(対前年度比1,707億円、30%減)となっている。また、新規立地に関わる事前調査費等が含まれる準備費は、767億円(同40億円、5%増)となっている。
(鉱工業の売上動向)
〇鉱工業の原子力関係売上高は、対前年度5.2%増の2兆387億円となり、前年度の大幅な減少から一転し、再び2兆円規模に回復することとなった。納入先別にみると、電気事業向けは全体の77.4%を占めている。部門別では、総売上高に占める構成比41%を占める原子炉機材部門で前年度比5%増、構成比25%の保守メンテナンス、サービス分野等の「その他製造」部門は同3%減、構成比12%の燃料サイクル部門が同7%増となった。さらに、RI・放射線機器部門では、医療用放射線機器等の売上が伸び、構成比8%の同76%増となった。業種別では、電気機器製造業が構成比31%の対前年度12%増、造船造機業が構成比17%の同5%増と比較的大きく伸びている。
(鉱工業の受注残高)
〇鉱工業の原子力関係受注残高(平成8年3月末現在)は平成7年度売上の約1.2年分に相当する2兆3,768億円(前年度比10%減)であった。部門別内訳では、全体の50%を占める原子炉機材部門が対前年度12%減の1兆1,944億円、27%を占める燃料サイクル部門が同11%減の6,353億円となっている。
(鉱工業の支出動向)
〇鉱工業の原子力関係支出高は前年度比7.6%減の1兆8,208億円となった。内訳は生産支出高が1兆7,522億円(前年度比7.7%減)で全体の96%を占めている。研究支出高は686億円(同5%減)であった。部門別にみてみると、原子炉機材が全体の46%を占め、「その他製造」等が23%、燃料サイクル19%、建設・土木7%、RI・放射線機器4%、発変電機器2%などとなっている。対前年度比でみると、前年度飛躍的に伸びた保守メンテナンス等「その他製造」部門が26%減と大幅に減少しており、この部門の減少が全体の減少の主要因となっている。生産設備投資は前年度比11.1%減 の1,969億円となり、このうち燃料サイクル部門が全体の88%を占めている。売上高に対する研究投資(支出)の比として表される研究投資率は、0.3ポイント低下し、3.37%となった。
(商社の原子力関係取扱高)
商社の原子力関係取扱高は、対前年度比3%増の5,451億円となった。このうち、国内取扱高は、対前年度比3.5倍の3,260億円、輸入取扱高は、同半減の2,133億円、輸出取扱高は、同0.3倍の57億円となった。項目別内訳では、輸出、輸入、国内取扱高の合計で前年度構成比17%であった原子炉機器・関係設備が構成比54%となり、同3.3倍の2,936億円となったのが目立っている。
(今後の支出見込み)
〇電気事業の原子力関係支出見込みは、1年後(平成8年度)には7年度の1.06倍、2年後は1.10倍、5年後は1.22倍の2兆126億円と着実に伸び、2兆円規模に達するものとみられる。見込みの内訳をみると、準備費が1年後1.20倍、2年後1.27倍まで増大した後、5年後には、逆に0.81倍まで落ち込むかたちで推移する一方で、建設費は、1年後0.98倍、2年後0.92倍とやや減少した後、5年後には1.79倍に拡大すると見通されている。これは、新規を含む立地点にかかわる事前調査費等が1年後から5年後に至るまでに多く投資され、5年後には、実際の建設段階に入ることにより、準備費に代わって建設費が増加してくるであろうとの見通しである。この他、燃料費は、5年後1.32倍と比較的大きな伸びが見込まれている。ここ数年、電気事業の5年後までの支出見込みは、L字型もしくはV字型となる傾向が続いていたが、今回調査ではじめてそのパターンを脱し、順調に上昇する予測が得られたことになる。
〇鉱工業の原子力関係支出見込は、1年後は平成7年度実績の0.97倍、2年後0.94倍、5年後には0.97倍の1兆7,605億円が見込まれており、やや起伏はあるが、僅かに減少傾向にあることが伺える。部門別にみると、最も大きな伸びが見込まれているのは、再処理工場計画関係で、再処理部門で、5年後には平成7年度の1.63倍、603億円増、再処理・廃棄物・輸送機器部門で同1.55倍、225億円増が見込まれている。一方、原子炉機器・関係設備は22%、1,533億円減と見込まれている。 業種別では、5年後に原子力専業が26%増を見込んでいるのに対し、電気機器製造業が32%減と大幅減を見込んでいることが目立っている。
(人員の動向と見込み)
〇民間企業(電気事業および鉱工業)の原子力関係の総従事者は、対前年度393人(0.7%)増の6万540人となった。内訳は、電気事業が10,204人(同2.2%増)、鉱工業が5万336人(同0.4%増)といずれも微増となった。また、民間の技術系従事者は前年度比2.0%増の3万5,686人となっている。
○ 今後の見通しとしては、民間企業(電気事業および鉱工業)の原子力関係従業者は、平成7年度実績比で1年後1.00倍、2年後1.01倍、5年後の平成12年度には1.04倍(2,369人増)の6万2,909人と増員が見込まれている。このうち、電気事業は、5年後1.03倍、鉱工業は、同1.04倍とそれぞれ増員見込みとなっている。
(鉱工業に対するアンケート調査の結果)
鉱工業の7年度の原子力関係主力製品製造設備の平均操業率は前年度より4.2ポイント上昇し、63.3%となった。また、現有の原子力製品製造設備の採算ラインは70.3%という結果となっている。また、原子力技術者等の確保の状況については、量的には、64%の企業が確保できているとしている一方で、質的には、71%が確保できていないとしていることから、依然、質的需要に対しては、満足のいく人的補強が十分でない状況が続いている。原子力関連の輸出については、平成7年度実績のあった企業は、全体の12%であった。また、8年度以降、全体の13%が輸出計画があるとしている。輸入については、全体の77%が国内調達100%を達成しているという結果であった。
以 上