〔原子力委員会資料〕

デコミッショニングシンポジウムの開催結果について


平成9年 1月14日

(財)原子力施設デコミッショニング研究協会

  1. 目的
     近年、原子力施設の経年変化に伴う更新・廃止の必要性が増えてきており、最近では、日本原子力研究所のJPDRの解体が終了し、日本原子力発電鰍フ東海発電所の停止が決定されたことにより、デコミッショニングに対する一般の関心が高まりをみせてきている。この時に当たり、この問題に対する一般の理解を深めて貰うために、内外のこの分野の実績と技術開発の現状を報告・議論することを目的とした。

  2. 開催日時
    平成8年11月18日(月)  13:15 〜 17:05

  3. 開催場所
    東京都千代田区内幸町2−2−2  富国生命ビル28階 会議室

  4. 主催者
    財団法人 原子力施設デコミッショニング研究協会

  5. 後援機関名
    科学技術庁
    通商産業省資源エネルギー庁
    社団法人 日本原子力産業会議
    日本原子力研究所
    動力炉・核燃料開発事業団

  6. 参加人数
     伊原原子力委員長代理、内田前原子力安全委員長、
    科学技術庁(廃棄物政策課他)3名、通商産業省資源エネルギー庁2名、日本原子力研究所(理事長、副理事長他)17名、動力炉・核燃料開発事業団8名、茨城県庁1名、報道関係者(読売他)6名、大学5名、電力関係25名、関係団体(原子力環境整備センター、電力中央研究所他)25名、賛助会員(上記に含まれる賛助会員を除く)144 名、オーストラリア大使館1名、その他54名、挨拶・講演者8名                       計 301名

  7. プログラム

    平成8年11月18日(月)   (午後 13:15〜17:05)
     13:15〜13:25 挨 拶 財団法人 原子力施設デコミッショニング研究協会
                       理事長  村 田   浩

     13:25〜13:40 御挨拶 科学技術庁 原子力局
                         廃棄物政策課長  有 本 建 男 殿
                       資源エネルギー庁 公益事業部
                       原子力発電安全企画審査課
                         廃止措置対策室長 新田見 実 雄 殿

     13:40〜14:10 特別講演 「デコミッショニングの動向と将来展望」
                        東京大学大学院
                          工学研究科教授 石 榑 顕 吉 殿

     14:10〜14:55 報告 「我が国におけるデコミッショニングの実績と技術
                     開発」
                     財団法人 原子力施設デコミッショニング研究協会
                       専務理事 松 元   章

     14:55〜15:25 報告 「東海1号炉のデコミッショニング計画」
                       日本原子力発電株式会社
                       発電本部
                         廃止措置計画部長 油 井 宏 平 殿

     15:25〜15:40 休憩

     15:40〜16:35 特別講演「フオートセントブレイン炉(FSV炉)のデコミ
                      ッショニングの実績」
                      前ウエスチングハウス社フオートセントブレイン炉
                      デコミプロジェクトマネージャー
                        Mr.Vincent Likar

     16:35〜17:05 報告 「解体廃棄物をめぐる国際的動向」
                      日本原子力研究所 東海研究所
                      バックエンド技術部
                        計画管理課長代理 大 越  実 殿

  8. 講演の概要

    (1)石槫 東京大学大学院工学研究科教授 のご講演
     米国では近年、実用炉の廃止措置を解体撤去も含めて実施するケースが急増し、4基が 解体撤去終了または解体中、9基が安全貯蔵中、4基が廃止措置計画書を提出中で、この 状況に対応して連邦規則の改訂も進行中である。ドイツでは、ニーダライヒバッハの解体 撤去が終了して緑地化され、HDR、MZFR及びグンドレミンゲン発電所の解体を実施してい るほか、グレイフスワルト発電所でも一部解体を開始した。我が国では、実用炉の廃止措 置について、1982年長期計画の「基本的考え方」を端緒に展開され、本年再開された総合 エネルギー調査会廃止措置小委員会でも検討が加えられている。本委員会では、廃止措置 に関する技術水準の検証、安全確保の手続き、廃棄物処理処分及びPA等について検討して いる。今後の課題は、要素技術の組み合せを基礎とした「技術開発」、廃棄物の再利用を 含む「廃棄物の処理処分」、「届け出基準等の整備」及び「研究炉の廃止措置」である。

    (2)松元(財)RANDEC専務理事 の報告
     JPDRの廃止措置に先行または平行した「JRR-3」等研究・試験炉の改造・解体事例、PWRのSG交換を含む「原子力施設」のメインテナンスは、原子力施設デコミでの技術が基盤になった。JPDR解体プロジェクトは、要素技術開発から解体実地試験まで体系的に進め、全設備が運搬の容易な容器に収納可能なまでに解体され、世界的にも珍しい実績を上げた。デコミッショニングに携わる者の使命は、現在進められている「高度化技術開発」等を踏まえて、原研再処理施設デコミ計画及び原電東海発電所の解体撤去を安全に成就し、その技術を軽水炉の廃止措置に備えて発展させ、蓄積することである。また、解体廃棄物の合理的取扱いについても検討が必要である。

    (3)油井 日本原子力発電(株)廃止措置計画部長 のご講演
     東海1号炉の停止は、我が国初の商用発電炉として、原子力発電の普及及び技術者養成 等の導入目的を達成したこと、軽水炉に比べ発電単価が割高なこと、国内唯一のガス炉で運転維持費が増加していること等を勘案して決定された。廃止措置に係わる課題としては、技術の合理化、経済性の向上、廃棄物処理・処分の制度化及び放射性廃棄物処分費の引当 金制度の整備がある。東海1号炉は平成10年に停止したあと、国の廃止措置標準工程に準拠して燃料の取出搬出を行うが、これには3年半ほどを要する見込みである。次いで5〜10年程度の密閉管理のあと、解体撤去を行う。実際の作業に入るには、廃棄物関連制度の確立が前提になる。また、解体撤去に要する期間も廃棄物のレベル区分に左右される。解体撤去後の敷地は発電所用地として再利用を予定している。

    (4)Mr.V.F.Likar 前WH社FSV炉デコミプロジェクトマネージャー のご講演
     FSVのデコミでは、プレストレスコンクリート製原子炉圧力容器(PCRV)の上壁を切断 して炉心を水漬けにするユニークな方法を採用したので、ダイバーによるきめ細かい作業 が可能となった。PCRV上壁はダイヤモンドワイヤソー(DWS)で細断し、トラックで搬出した。PCRV内部の千数百個のグラファイトブロックは、炉頂に設置した回転式作業台の下面に設けたバスケットに収納し、バスケットを輸送キャスクに入れて搬出した。重量245トンの炉心支持板は、ダイバーが支持板下面の12本のモジュール型蒸気発生器と12本の支柱を切り離したあと、ジャッキで支持板を上部に押し上げてDWSで2分割し、更に輸送のため格納容器内で細断した。原子炉のベルトライン部はDWSで14個のブロックに切断し、輸送のため更に細断した。放射性廃棄物は容量8,200  、放射能71,000Ci、重量7,300 トン(このうち4,000 、1,300トンがSEGの減容施設に移送された)、作業員の集積被ばく線量は3.80人・Sv、デコミ総費用は189百万ドルであった。

    (5)大越 日本原子力研究所バックエンド技術部計画管理課長代理 のご講演
     低・中レベル解体廃棄物の処分方針は、地層処分、山岳処分、浅地中処分など、各国の 廃棄物管理の全体方針に従って決定される。規制除外は、欧米においては、汚染レベルが 極めて低い解体廃棄物に対して広く実施されていて、1979年からこれまで、362,000トン 以上の解体廃棄物が規制除外された。規制除外されたものが他国に流通する可能性がある ため、IAEA等の国際機関で統一のとれた基準の検討が行われている。金属廃棄物の再利用 を行うに当たっては溶融処理が採用され、世界で4施設が稼働している。


     以上のご講演につき、質問が会場から3件、後日文書により11件が寄せられた。いづれも、 廃棄物の課題、寿命延長、コスト等に係わる技術的なものであった。