第39回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年10月8日(火)10:30~12:10
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員
内閣府
 榊原参事官(原子力担当)
経済産業省 原子力安全・保安院
 中村首席統括安全審査官
 原子力発電安全審査課 佐藤統括安全審査官
外務省
 科学原子力課 篠原課長、馬越課長補佐

4.議題
(1)原子力安全規制法制検討小委員会中間報告書(案)について
(2)第46回IAEA総会の概要
(3)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
(4)遠藤委員長代理の海外出張について
(5)その他

5.配布資料
資料1-1 原子力発電所における不正記録問題等の調査結果と再発防止について
資料1-2 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力安全規制法制検討小委員会中間報告(案)
資料1-3 原子力発電所における自主点検作業記録の不正等の問題についての中間報告
資料1-4 原子力発電所における自主点検作業記録の不正等の問題について
資料2 第46回IAEA総会の概要
資料3 原子力二法人統合に関する検討の進め方について(案)
資料4 遠藤原子力委員長代理の海外出張について
資料5-1 第37回原子力委員会臨時会議議事録(案)
資料5-2 第38回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)原子力安全規制法制検討小委員会中間報告書(案)について

標記の件について、中村首席統括安全審査官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(木元委員)  資料1-3の2頁の原子炉再循環系配管のひび割れについては、いろいろと報道されているが、ひび割れの兆候は、検査の方法によって発見されたりされなかったりすると聞いている。例えば、精度の高い検査をすると、全部が疑わしくなってしまうことも考えられる。こうしたことが、原子炉再循環系の配管でもありうるのではないか。
(中村首席統括安全審査官)  定期検査や物を作るときの検査は、基本的な材料の欠陥を把握するための手法を採用している。一方、今回の場合、事業者の自主点検では、もっと精度の高い検査を実施していると聞いている。
(木元委員)  その辺りが良く理解されていない。精度の高い検査で、安全上問題のない欠陥が見つかったが、規定に則した調査の結果では問題ない、といったことがコメントできれば良いと思う。
(中村首席統括安全審査官)  今後、施設の健全性評価の基準を作っていく上で、検査の方法やひび割れの大きさの確認、健全性評価の手法、といったプロセスをルール化していくことが重要だと考えている。
(木元委員)  あるプラントでは、この方法で検査し、問題が見つかったが、別のプラントではその検査方法を用いていないので問題が見つからない、といったこともありうると思う。そのため、もっとも精度の高い検査方法を統一して採用するということになるのか。
(中村首席統括安全審査官)  今回事業者が自主点検で用いた新しい検査の方法を、規制として取り入れるかどうかについては、まだ判断していない。現在、定期検査で用いている検査方法は、世界的にも用いられているオーソドックスな方法である。しかし、技術の進歩もあるので、別の方法を取り入れることを我々は否定しないし、事業者がより早く見つけようとする取組を阻害してはいけないと考えている。
(木元委員)  この程度の問題であれば健全な運転ができる、という基準を示す方向にあるとの認識でよいか。
(中村首席統括安全審査官)  そのとおりである。
(木元委員)  格納容器の気密性の検査で不適切な調整を実施したかもしれない、という報道があるが、これについてはどのような状況か。
(中村首席統括安全審査官)  その件については、本日の報告には含まれていない。まず事実かどうかを確認することが重要である。ある程度事実が究明されてから、必要があれば措置することになる。
(遠藤委員長代理)  今後のスケジュールはどうなっているのか。
(中村首席統括安全審査官)  資料1-1の3頁「Ⅲ.再発防止策の検討」部分にまとめてあるが、1.自主点検の法制化、2.設備の健全性評価の義務付けと評価基準の明確化、3.不正行為に対する罰則の強化に関しては、法律改正をお願いしたいと考えており、10月半ばから始まる臨時国会に向けて準備を行っている。4.品質保証の確立の義務化については、保安規定の中身の問題であるので、政省令をどうするのかについて実務的に進めていきたい。5.申告制度の運用改善については、既に外部委員会を立ち上げ、申告中の案件が6件ある旨公表したところである。現時点では、個別問題の内容を公表できる段階ではないが、今後は、ほぼ4半期ごとに申告の件数は公表していきたい。6.説明責任については、実際に実行に移していきたい。さらに、検査のあり方については、検査制度の枠組みそのものを変えなければならないところは、少し時間をかけて実施していくが、実行できるものについては、今すぐにでも実施していきたい。7.原子力安全規制行政の体制の充実とは、新たに設ける独立行政法人の件である。安全規制行政を支えるための一つの機関として、今度の臨時国会で審議をお願いする予定である。
(竹内委員)  維持基準については、現在どうなっているのか。
(中村首席統括安全審査官)  維持基準については、日本機械学会が中心となって、整備が進められている。まずは学協会で、専門家などの意見を取り入れて整理を行っていただき、その結果を規制当局として安全規制の基準に取り入れられるかを判断していきたいと考えている。
(竹内委員)  公的に扱えるようになるためには、例えば保安規定の改定などが必要になるのか。
(中村首席統括安全審査官)  保安規定にも関係しないわけではないが、法律の中で位置付けを明確にすることが重要だと考えている。
(木元委員)  自主点検を法律に位置付けるとあるが、自主点検の調査項目まで事前に届け出るよう義務付けるのか。
(中村首席統括安全審査官)  まだ決まっていないが、基本的には、記録の義務化や体制、検査方法のルールといった基本的な事柄の審査といった枠組みになってくると思われる。
(木元委員)  リスクコミュニケーションにおいては、軽微な事象でも全て公開すべきとあるが、一般の方々には軽度なものと重度なものの区別が難しい。情報を出したときに、それがどのくらいのものなのか、情報を提供される側できちんと理解することが必要となるし、逆に提供する側はどのように受け止められるかを考えなければならない。こういったことは、リレーションシップ・マネジメントの取組みに含まれていると思うが、危害情報を共有しようというだけでは、逆に危険な部分があるので、このマネジメントをきちんとやってほしい。
 また、リスクばかりを強調するとベネフィットが忘れがちになるので、相まっていくように努力してほしい。
(竹内委員)  今回の件でシュラウドという言葉が有名になったが、一般の人はシュラウドというものが、どのようなものか知らなかったと思う。シュラウドについて発表するときは、その役割も含めて評価結果をきちんと説明しないと一般の方には理解できないのではないか。現状では、シュラウドという特異な名前だけで危険なものと思われてしまっているところがある。
(藤家委員長)  安心して任せてもらうためには、どのような組織、どのような人材が必要なのか。また、かなり専門性の高いことを易しく説明していかなければならない。果たしてどこまで説明が可能なのか。やらなければならない、というだけでは済まないところがあり、その限界も考えておかなければならない。特に科学性・合理性がベースになっているが、それだけで分かってもらうのは難しい。説明責任の重要さと難しさを認識した上で、次のステップに進まなければならない。

 (2)第46回IAEA総会の概要

標記の件について、篠原課長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(遠藤委員長代理)  追加議定書は、核不拡散の重要な手段の一つなので、締約国が増加するよう普遍的に努力していかなければならない。今月末にFNCA(アジア原子力協力フォーラム)を開催するので、そこでもアジア各国に強く主張したいと考えている。また、国際輸送については、透明性確保のために、IAEA(国際原子力機関)のトランサス(TranSAS : Transport Safety Appraisal Service)を日本も受けるべきではないかと思うが、外務省はどう考えているのか。最後に、北朝鮮について、何か動きがあるか。
(篠原課長)  トランサスは、IAEAが、加盟国からの要請により、その国の輸送に関する法体系や制度を審査し、問題があれば指摘する、というサービスである。イギリスは既にサービスを受けており、その際、輸送経路の沿岸国にもオブザーバーとして参加してもらっており、高く評価されている。また、フランスも受けようと手を挙げており、日本も受けるべきだと幾つかの国から指摘されていることは事実であり、外務省としては、受けられるなら受けた方が良いというスタンスである。ただ、日本は輸送国として分類されているが、他国の排他的経済水域を通る輸送は行っていないと承知しており、そのような状況で、トランサスを受けるのにかかるコストを考えると受ける状態になっていないという判断である。ただ、日本だけが後ろ向きと思われるのも好ましくないので、ある時点で受けるべきだと考えている。
 北朝鮮とIAEAの関係については、現時点で目立ったことはない。水面下で、北朝鮮とIAEAの技術的な話し合いが行われているのではないかと思われる。
(遠藤委員長代理)  輸送問題について、若干であるが沿岸国の排他的経済水域を通過している。日本は、狭い意味での輸送国ではないのも事実だが、最大の関与国であることは事実であり、このサービスを早く受けるべきだと思う。関係国に日本の透明性を示すべきであり、前向きに検討すべきだと思う。
(篠原課長)  外務省としても関係機関に前向きに検討するようお願いしていきたいと思う。
(竹内委員)  私も透明性向上の観点からトランサスを受けるべきと考えている。

 (3)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について

標記の件について、竹内委員より資料3に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。

(遠藤委員長代理)  まず、原子力委員会で検討し、作成した素案に対して、関係機関から意見を聴取する、という理解で良いか。
(竹内委員)  そのとおりである。
(遠藤委員長代理)  関係省庁・機関からの意見聴取は、限定することなく幅広く話を聞くべきではないかと思う。
(木元委員)  今は、具体的に実行しなければならないことを明確にしなければならない段階であり、この検討スケジュールで良いと思う。まずは、それぞれの法人の中で検討している委員会などがあると思うので、その検討を行っている方から意見を聴きたい。我々の頭の中で考えたことは、当事者に受け入れられるものかどうか分からない。まずは当事者と必要な話をしなければ、話がまとまらない。これは「必要に応じて」ではなく、必須のことだと思う。当事者を入れた「ロ」の字で話合いをしようと言ったのは、まさしくこういうことであり、早く実施したい。
(竹内委員)  既に業務の見直しや人材の交流が始まっている。このようなことについて話を聞きたい。
(藤家委員長)  定例会議で検討するのか、それとも別の場を設けるのか。
(木元委員)  定例会議で議論しなければならないことはたくさんある。定例会議で議論することは1つか2つに絞り、後は別の場を設けてオープンに議論すれば良いと思う。1年間休ませていただいたが、今後は定例会議になるべく出席したいと思う。今はやらなければならないことがたくさんある。
(藤家委員長)  本件については、担当委員を決めた方が良いと思う。担当委員として竹内委員にお願いしたい。

 (4)遠藤委員長代理の海外出張について

標記の件について、榊原参事官より資料4に基づき説明があった。

 (5)その他
  • 原子力委員会の今後の取組について、以下のとおり意見交換があった。
    (遠藤委員長代理)  現在、核燃料サイクルやプルサーマルは厳しい状況に置かれているが、核燃料サイクルは我が国にとって非常に重要であり、その第1歩としてのプルサーマルを再活性化すべきである。原子力委員会の今後の対応策について、3つの点から提案したい。
     1つ目は、立地地域対応である。特に地元のオピニオンリーダーに対し、原子力委員会の考えを理解していただけるよう努力すべきである。その1つの方法として、原子力委員会の地方開催が考えられると思う。
     2つ目は、海外対応である。我が国は使用済燃料の再処理を仏国、英国に依頼しているが、前回の定例会議でも述べたとおり、仏国から返還計画を提示してほしいとの要望があった。英国からも同じような要望がありうる。我が国が預けているプルトニウムの返還は国際的に約束していることなので、きちんと対応しなければならない課題である。
     3つ目は、核燃料サイクルの全体像をより明らかにすることである。これは、原子力委員会の説明責任を果たすことでもあり、改めて専門的な検討が必要である。検討すべき項目としては、例えば、1.プルトニウム・バランスは今後どうなるのか、2.海外に預けているプルトニウムを今後どのように取り扱うのか、3.FBR(高速増殖炉)の実用化に向けたロードマップ、4.再処理工場・MOX製造工場をどう位置付けるのか、5.中間貯蔵をどう位置付けるのか、6.使用済燃料の貯蔵状況はどうなっているのか、7.プルサーマルの経済性はどうか、8.使用済MOX燃料のリサイクルについて、が挙げられる。
     これは私個人の意見であり、原子力委員会でこれから議論していきたいと思う。
    (木元委員)  これは、マスコミでも問題提起されていることであり、当然検討すべきことだと思う。昨日、福島県知事が委員長のところにお見えになった。知事は、地元の理解がなければ進まない、核燃料サイクル政策を白紙に戻して考え、原子力長期計画を見直すべき、とおっしゃっている一方、原子力発電を止めたら大変なことになるということもきちんと言及されている。私なりに勘案すると、核燃料サイクル事業ありき、原子力発電ありきと受け止められような説明では、地元の方々に理解してほしいといっても、地元の方々に拒否されてしまう。市民参加懇談会を立ち上げた意義がここにある。原子力行政を理解してほしい、また、核燃料サイクル政策の必要性を伝えたい、というときは、なぜやるのか、なぜ原子力なのか、といった根源的なところから始めなければならない。市民参加懇談会は、日本では、どのようなライフスタイルを維持していくのか、そのためにはどうすれば良いのか、エネルギーが必要ならば、どのように供給していくのか、といった観点から議論して自ら選択できるようでなければ、ご理解いただけないというスタンスである。なぜ原子力なのか、なぜ核燃料サイクルが必要なのか、といった基本的なことが合意できなければ、話は進まない。知事は、この点を十分にご承知なのだと思う。
     私は、原子力委員会の主催で検討会を開催すべきだと考えている。その検討会は、福島県のエネルギー政策検討会のような方式にして、福島県知事にも来ていただくのはどうか。この検討会は、3つのグループ、1.立地県や発電所のある市町村の首長などのグループ、2.メディアのグループ、3.市民のグループを作り、1.では、まず広聴、皆さんのお話を聴くことから始める。また、当事者、例えば東京電力や原子力安全・保安院の方にも出席してもらう。2.のメディアの方には、例えば、今後の核燃料サイクルについて、メディアの立場からどのように見ているのか、我々が知り得ない点について話していただく。3.では、一般の方から、ご意見を伺い、基本的な姿勢やこれからの日本をどうしていくのかについて協議していく。このように、我々が主体的に皆さんのご意見を伺って、今後の危機を乗り切るためにこのように考えた、ということを我々で報告書にまとめる。その報告書をまとめた上で、地方に伺うことが重要であり、そこで初めて説明ができるのだと思う。このようなプロセスなしで、ご理解いただくのは無理だと考えている。手間隙かかることだが、やらなければならない。
    (藤家委員長)  どのように社会と関わっていくのか、国際対応をどうするのか、に対して、その中身をどのように作るのか、まずデータベースを作る必要がある。うまく噛み合わせて進めていく必要がある。
    (遠藤委員長代理)  まず第1段階として、原子力委員会が、その責任において専門的検討を行うべきである。
    (木元委員)  原子力委員会を地方で開催することはできるが、今はここで緊急に対応すべき状況であり、例えば、週に2回ぐらい検討会を開いて、福島県知事にも来ていただく。話があれば、知事もこちらに来るとおっしゃっている。その検討会の報告書を踏まえた上で、地方で原子力委員会を開催すれば良いと思う。
    (藤家委員長)  知事に来ていただいたときに、こちらから何を示すのかが重要である。福島県知事との約束では、グランドデザインを明確にして、目安のようなものを示すことになっている。まず、それを用意して、その後に知事に来ていただく、というプロセスが必要である。
    (木元委員)  用意しておくことは重要だが、福島県知事は、白紙に戻して考える、とおっしゃっている。
    (藤家委員長)  白紙撤回が、今、どのような意味を持つのかについて十分に考える必要がある。国際対応は、なぜ国際約束をしなければならなかったのか、といった背景を知ることが重要である。
    (木元委員)  白紙撤回を受け入れるのではなく、例えば、白紙撤回するのであれば、日本のエネルギー政策をどうすべきだとお考えか、とこちらも白紙の状態で知事としてのご意見をまず聴くべきである。
    (藤家委員長)  進め方については、もう少し検討したい。
    (遠藤委員長代理)  3つの対応策は並行して進めるべきだが、特に3つ目の対応策を重点化してやるべきである。追加して検討すべき項目がないかなどについて議論したい。
    (木元委員)  個別論も重要だと思う。ただ、原子力村だけの話合いにしてはならない。基本的なことを踏まえた上で、個別的な点について、いろいろと意見を伺い、やはりこれしかない、といったような議論を重ねれば良いと思う。
    (藤家委員長)  データベースなしで議論することは難しい。例えば、プルトニウム・バランスについては、議論だけでは明確にならない。こういうケースではこうなる、といった具体的なデータベースが必要である。これは、これからどのような話をしていくのかにも関係してくる。その時点から、木元委員が提案するようなプロセスが始まると思う。
    (木元委員)  個別的なデータは、既に経済産業省などでも作っている。それらを参照して自分たちが作る。
    (藤家委員長)  原子力委員会自らの責任で作ることを約束している。遠藤委員長代理の提案は、その約束を踏まえたものだと思う。検討すべき項目については、引き続き議論したい。

  • 事務局作成の資料5-1の第37回原子力委員会臨時会議議事録(案)及び資料5-2の第38回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。

  • 事務局より、10月15日(火)に次回定例会議が開催される旨、発言があった。