第36回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年9月24日(火)10:30〜12:00
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 榊原参事官(原子力担当)、渡辺参事官補佐
経済産業省 原子力安全・保安院
 原子力防災課 山下課長
 原子力発電安全審査課 佐藤統括安全審査官

4.議題
(1)平成15年度原子力関係経費の見積もりについて
(2)東京電力、東北電力及び中部電力の原子力発電所再循環系配管における新たな事案の発表について(原子力安全・保安院)
(3)核燃料サイクル政策について
(4)尾身大臣の第46回国際原子力機関(IAEA)総会出席及び要人会談の概要について
(5)第3回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について
(6)その他

5.配布資料
資料1−1 平成15年度原子力関係経費の見積もりについて(概要)(案)
資料1−2 平成15年度原子力関係経費の見積もりについて(案)
資料2 東京電力、東北電力及び中部電力の原子力発電所再循環系配管における新たな事案の発表について
資料3−1 核燃料サイクルの推進について
資料3−2 核燃料サイクルに係る今後の検討について(案)
資料4 尾身大臣の第46回国際原子力機関(IAEA)総会出席及び要人会談の概要について
資料5 第3回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について
資料6 第35回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
(1)平成15年度原子力関係経費の見積もりについて

標記の件について、榊原参事官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(森嶌委員)  なぜ「3(4)基礎的・基盤的研究」と「6.原子力の研究、開発及び利用の推進基盤」の額が平成14年度の額より減っているのか。概算要求のときは、ポリシーを示すことが重要である。これまで、原子力委員会は、原子力長期計画などで、長期的に技術を維持し、承継していかなければならないことを強調している。原子力委員会としては、基礎的・基盤的研究などについても、その必要性を主張していくべきである。
(榊原参事官)  3.(4)の基礎的・基盤的研究には、設備の維持費が比較的多く含まれている。これら固定的な経費の縮減努力の結果が出ている。
(渡辺参事官補佐)  補足すれば、「3.(1)加速器」の大強度陽子加速器計画なども基礎的・基盤的研究に当たる。このように、より重要度のあるものに重点配分した結果、森嶌委員がご指摘されたように減額になった部分がある。
(藤家委員長)  大強度陽子加速器計画など大きなプロジェクトを予算に組み入れた場合、どうしても他の部分にしわ寄せが生じる。一種の企業努力が必要となる。
 ここで、資料1−1に基づき、今年度予算の見方について説明したい。原子力委員会では、核燃料サイクルを政策順位1位として推進している。本見積もり案でも、核燃料サイクルについて、いろいろと記載されており、概ね満足できる状況になっていると思われる。
 また、例えば、立地地域の実状ニーズを考えて電源三法をどうすべきか、核燃料サイクルに向けて中間貯蔵をどうするのか、自主点検をどう考えていくのか、いわゆる法定点検と自主点検との関係をどう整理するのかなど、新しい視点が出てきている。これらに対して、すぐに予算に反映されるということではないかもしれない。見出しを明確に記載することで将来に繋がると考えている。
 原子力委員会として重要な課題である法人統合については、本見積もり案にも関連する記載がかなり含まれており、例えば、核燃料サイクル事業をどうするのか、ウラン濃縮をどうするのか、「ふげん」をどうするのか、など統合の前段階で必要となる事項について記載されている。また、商業MOXとの関係、放射線利用などについても記載されている。
(森嶌委員)  一般に、原子力予算は不当に大きいのではないのかとよく言われるが、原子力委員会としては、どこに力点をおいているのか、また、将来にわたって、原子力の行く末をどう考えているのかといったことについて、国民に予算の面でも説明することが重要だと思う。予算の見方、概算要求の考え方を、これとは別にまとめることが必要だと思う。本見積もり案は、各省の取りまとめとは違ったものであることが分かるようにまとめていただきたい。数字だけで見るとそういった面がよく分からない。
(藤家委員長)  原子力長期計画の趣旨に添って予算の見積りを行ってきているが、これまでは技術そのものの重要性に焦点を当てていた。今は、説明責任を満足させることや社会との対話を増やすことに焦点を移していくことが重要かと思う。
(森嶌委員)  財務省に向けてというよりも、原子力長期計画を推進していく上で、原子力委員会として、どういった考え方で予算編成に取り組んでいるかについてまとめていただきたい。
 例えば、資料1−1の冒頭部分に記載されている「長期計画に沿った取組が着実に進められるよう配意した」とか「重点化・効率化を図りつつ」は、それ自身が説明になっていない。配意したとはどういったところに配意したのか、重点化・効率化を図る場合にどういうところに重点をおいたのか、どういうところで効率化を考えているのか、個別の項目でいくらいくらというのではなく、概算要求の見方が必要ではないか。
(藤家委員長)  例えば、実用化されている軽水炉に対する予算のウェイト付けは高くない。高速炉を含めた核燃料サイクルについて重点化を図っている。新しい問題としては、保守点検の問題がある。この問題は、これから広く見ていく必要があるが、この段階では、多くを記載する段階ではないと思う。もう一つは、原子力二法人統合の問題がある。何を重点化し、何を効率化するのかについて第二段階の議論に入ったところであるが、それに先だって、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構に対する予算をどうするのか、明確に記載されていると思う。日本原子力研究所が一般会計中心に、核燃料サイクル開発機構が特別会計中心になっているのは、実際行っている仕事の性格の違いによるものであるが、フィロソフィーをどうするのかという問題が残っている。
 大学については、大学に対する期待が高いことと同時に、重点化すべきところがあること、大学の研究炉に溜まっている廃棄物をどうするのかという問題も含めて考えていく必要があると思う。
 民間との接点については、技術移転と、実際の事業でのつながりの両方があると思う。予算ではあまり対応していないのは事実であるが、これから新しく始める、例えば、大間のフルMOXような技術開発には多少予算を付けている。
(森嶌委員)  普通の予算の概算要求であれば、責任者と事務局が、予算についてきちんと頭の中に入れておけば、ことが足りると思われ、本見積もり案のような記載方法でも良いと思うが、原子力予算の場合、原子力に対する世間の目が異なる。本見積もり案を何らかの形で見る国民からすると良く分からないし、原子力長期計画との関連、あるいは、二法人との関係も良く分からないと思われる。先程、委員長が言われた話の道筋を、原子力委員会が世間に提示する予算として記載する配慮が必要ではないか。そのことが国民の信頼回復に繋がることになると思う。
(藤家委員長)  社会に対し、どういった形で伝えるのが良いのか。原子力委員会が方向性を示し、それに対して各省庁が提案して、原子力委員会で議論し、結果を出した。それをどういった形で伝えるのか、という問題であると思われる。また、次の機会に議論したい。
(竹内委員)  原子力関係者と原子力関係者以外の者との見方が違う。原子力関係予算に入る範疇は非常に大きい。その辺が最初勘違いされる場合が多い。原子力には加速器や放射線利用もある。一般の方にはあまり認識されていない。
(藤家委員長)  原子力長期計画が読まれていないことが最大の原因である。
(森嶌委員)  折に触れていろいろなところで話していくことが必要である。
(藤家委員長)  本見積もり案について、概略は承知していただけたと思う。


(2)東京電力、東北電力及び中部電力の原子力発電所再循環系配管における新たな事案の発表について(原子力安全・保安院)

標記の件について、山下課長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(森嶌委員)  法律家の立場から見ると、これからどのように対応するのか、といった原子力安全・保安院の技術的な対応は理解している。しかし、新聞などを見ると、ひび割れの兆候があったということが、あたかも点検すべきことをしなかった、報告しなければならなかったことを報告せずに放置していた、といったように報道されているように思える。理解していただけるかどうかは別として、法律上、事業者がやらなければならなかったことは何なのか、やるべきことをやらなくて起きたことは何か、を伝えることが重要である。例えば、不正記録と不実記録では、意味が異なる。不正というのは、やってはいけないことを記録することであり、不実記録というのは、原因は何であれ、事実と異なる記録のことを言う。これまで新聞などでは、不正記録と報道されており、事業者は誤魔化しをしている、と受けとめられているところがある。この点について、法律を執行する機関としては、情報を発表する際にきちんと峻別する必要がある。これまでの企業の不祥事と同じような印象を与えているのではないかと心配している。これは、決して事業者が弁解できるようにしてほしい、ということではない。法律で何を要求されていて、どこでどのように実行されなかったのか、故意によるものなのか、手違いによるものなのか、といったことを含め、法律との関係を明示していってほしい。
(山下課長)  原子力安全・保安院としては、法律に基づいて、報告義務や記録保存義務などについて多面的に検討を行っている。自主点検記録に不正等の可能性があるとして東京電力から報告があった29件については、13日に調査結果を公表したが、法律との関係で問題があったのかどうかについてまとめている。その調査結果では、報告しなかったことについては法律上の問題がなかったが、異常なしとしてしまったことについては、トレーサビリティ上は問題があった、といったように評価し、きちんと書き分けて公表している。原子力委員会へのご説明が不足だったのであれば、再度説明させていただきたい。総論的に原子力安全・保安院が法令の認識がなくやっている、ということは誤解であるので、認識を改めていただきたい。ただし、先般の女川原子力発電所のシュラウドの問題については、たまたま時期が重なった福島第二原子力発電所3号機のシュラウドにひび割れがあったことをもって、点検するよう指示文書を出した結果、報告があった。これは東京電力の29件とは全く関係のないものであり、十分に注意してこの件を発表したつもりだが、今後とも十分に認識した上で対応していきたい。東京電力の29件については、十分に気を付けて公表している。事業者の社内調査の結果と我々の評価結果は異なっているところがある。我々の報告は、法令や安全規制の観点から、問題がなければ「D」、法令に違反している恐れがあれば「A」といったように分類しているが、社内調査の方は、社会通念に照らした観点からまとめられたところもある。
(森嶌委員)  原子力安全・保安院は法律との関係を考慮せずにやっている、ということを言いたいのではない。実際に報道されるときは、規制する側として法律との関係をかなり意識して発表してほしい。そうでないと、外側から見ると、これまでの規制体制については全く問題がなく、すべて事業者がいい加減なことをやったという印象を受けかねないということである。
(山下課長)  案件の処理に2年間もかかったのは長すぎる、といったことについては、評価委員会を設けて、議論しているところである。具体的な法の運用については、明確さに欠けるところがあるのではないか、といったご指摘もあり、そういったことも含め、我々の規制が完全だという認識ではなく、原子力安全・保安院としても反省すべきことがあれば、法律活動も含めて小委員会で検討しているところである。委員がご懸念のようなことは全くないと考えており、よろしくお願いしたい。
(竹内委員)  事業者による自主点検・保安については、守っていかなければならないと思う。自己責任で検査し、自主保安をしていくことで、安全が保たれる。ここでは、報告と国との関係が問題になる。国民の皆さんに安心してもらうことも考え、公的なルールを明確にすべきである。原子力施設の維持基準については、ほとんど手を付けていない状態であるので、検査する側もこれまで悩んできたと思う。維持基準を作ることは、国民の皆さんの理解にもつながることであり、将来再発しないようにするために判断の基準となる公的なルールが必要である。
(山下課長)  透明性については、報告基準の明確化も含めて、小委員会で検討しているところであり、いろいろな問題があると思うので、いろいろとご指導いただいた結果を踏まえながら対応していきたい。
 維持基準については、何を指して維持基準とするのかが非常に難しい問題である。現行の基準では、構造設計にあたって必要な設計方法を定めており、基準で担保しているものと実際に作られているもの間にはマージンがあり、そういったものの取り扱いをどうするのかといったこと、あるいは、欠陥があった場合の評価手法のスタンダードはないが、補完できるものがあるので、これらをどうするかなど、いろいろと学識者に検討いただいている。ただ、建設時に10ミリメートルであったものが、運転中は8ミリメートルでも良い、といった維持基準のイメージで考えると、必ずしも全体体系はそうではないことが多いので、慎重な検討が必要だと考えている。原子力委員のご指摘も踏まえて、小委員会や保安部会・学会などで検討いただいた結果を総合的・体系的に組み上げていきたいと考えている。
(竹内委員)  報告や記録の保管についても見直してほしい。電気事業者は、自分で不安だと思っている施設を運転するわけはない。この事案が発生したときは、原子力安全・保安院と事業者は、安全性に問題はないことを同時に発表している。そのバックグランドとなるものとして、維持基準のようなものを作っておくべきだと思う。
(藤家委員長)  この種の事案に対し、原子力委員会としては、どこまで専門性を持って対応していけば良いのか、ということの判断は難しいところだが、「規制緩和・合理化・自己責任」という原則が重要。おそらく、一般の方々には、原子炉等規制法や電気事業法や保安規定の内容をご存知の方はあまりいらっしゃらないと思う。我々は、そこまで入り込まないと議論できないようなことをやろうとしているのか。安全を守る基本は事業者であり、原子力安全委員会や原子力安全・保安院は、最低限の直接的に安全性の問題となるものについてはきちんと責任を持って規制することが重要である。それ以外についてまで、すべてドキュメントに残していくのは不可能ではないか。そういった観点から何か判断できるところまでまとまってきているのか。
(山下課長)  法的な位置付けも明確にするべく作業しているところである。もう少し時間をいただきたい。
(藤家委員長)  まだBWR(沸騰水型原子炉)で調査中の事業者も残っている。また、PWR(加圧水型原子炉)はこれからになる。これらを踏まえ、安全性の面からの検討をお願いしたい。

(3)核燃料サイクル政策について

標記の件について、榊原参事官より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(森嶌委員)  以前タスクフォースを設けると聞いたが、この資料の「特別会合」とは違うのか。「特別会合」と言うと、円卓会議のようなものにも聞こえる。
(藤家委員長)  私個人としては、この「特別会合」をタスクフォースと考えている。グランドデザインをどう見せるのか、といった作業も伴うものと思っている。
(森嶌委員)  福島県エネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」にあるような疑問が出てくることも考える必要がある。また、国民の皆さんの目線に合わせた説明をする責任があると考える。例えば、コスト問題についても、原子力委員会としてどのように説明していくのか。また、資料中、「信頼回復に向けて」については、市民参加懇談会などで議論をしていくことが考えられる。原子力委員会として、疑問に答えられるような仕組みをきちんと作っておくことが重要。
(藤家委員長)  森嶌委員のご意見のとおり、グランドデザインを再度明確にすることがポイントと考えている。担当の委員を決めて、キーパーソンに集まっていただいて議論を進めたい。
(森嶌委員)  時間をかけるわけにはいかないので、あまり大規模なものとしないで、議論していくような仕組みを考える必要があると思う。
(藤家委員長)  年末までにまとめたいと考えている。森嶌委員の指摘された福島県エネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」については、また別に議論する必要があると思う。原子力委員会から申し上げたいことは、相互理解のためには対話の継続が必要ということであり、こちらから説明できること、説明しなければならないことについて、聞いていただきたいと考えている。

(4)尾身大臣の第46回国際原子力機関(IAEA)総会出席及び要人会談の概要について

標記の件について、榊原参事官より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(藤家委員長)  ロシアが使用済燃料を受け入れることができる、というロシアの提案については、原子力委員会としては関心を持つわけにはいかない。また、IAEAからミッションを派遣する、という提案は受ける必要もないとも思われるが、回答しているのか。
(榊原参事官)  対談の中で先方より伝えられたというところまでであり、これに対し、特に明確に意思表示していない。

(5)第3回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について

標記の件について、榊原参事官より資料5に基づき説明があった。


(6)その他
  • 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について、以下のとおり議論があった。
    (藤家委員長)  これまで議論してきたことだが、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の廃止・統合については、原子力委員会は4月2日に「基本的な考え方」を出して、続いて文部科学省が報告書を出した。また、日本学術会議とも議論を行い、特に大学と新法人の関係について意見交換を行った。そして、文部科学省から原子力二法人統合準備会議の状況報告があり、そこの取りまとめに織り込む内容について原子力委員会との間で議論を行った。その後、今後の進め方についていろいろと議論を進めてきたところである。もう少し時間をいただいて、具体的な今後の取組について示したいと思う。
    (竹内委員)  原子力委員会も文部科学省も包括的・総論的な方針は示しており、そこでいろいろと大きな課題が挙げられている。私個人としては、これから実施段階に入るので、これまで出した方針を実際に具現化できるのかどうか、当事者の意見を聞く必要がある。産学官の連携の中で、Center of Excellenceという新法人の役割が強く望まれており、具体的にどうすれば良いのかが重要である。また、核分裂の分野については、いろいろな研究が進められており、この分野は特にシナジー効果を考える必要があり、併せて重点化していかなければならない。また、どのように放射性廃棄物処理・処分を行っていくのか、ということが両方人に共通した大きな課題である。今後は、実施面を重視した議論を進めなければならない。
    (藤家委員長)  これまでの議論の中身を見てみると、中身をどうするのかという点と、原子力の独立行政法人は他の法人と違うものと見て検討すべきかどうか、という点がまだ整理しきれていない。行政改革の趣旨が現段階でも生きていなければならない。二法人が持つ「専門性・先端性・総合性」を、これから具体化していく中でどのように出していくのか。原子力委員会としては、非常に重要な仕事だと考えており、負の遺産を片付けるだけでは済まない。また、先行きを明確にしなければならない。定例会議で議論するばかりでなく、担当する委員を決めて対応していきたいと思う。

  • 事務局作成の資料6の第35回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、10月1日(火)の次回定例会議の議題は、「英国LMA(債務管理機関)について」等を中心に調整中である旨、発言があった。