第35回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年9月17日(火)10:30〜12:10
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員、森嶌委員
内閣府
 和田参事官 後藤企画官
経済産業省原子力安全・保安院
   中村首席統括安全審査官
  原子力発電安全審査課  佐藤統括安全審査官
経済産業省資源エネルギー庁
 総合政策課  保住企画官
 核燃料サイクル産業課  細川課長
 原子力政策課  佐藤課長補佐
環境省 地球環境局 塚本調査官
電気事業連合会 立地環境部  原田部長、北原副部長

4.議題
(1)国連持続可能な開発世界サミットについて(環境省など)
(2)原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について(原子力安全・保安院)
(3)プルサーマル計画について(資源エネルギー庁)
(4)遠藤委員長代理の海外出張について
(5)その他

5.配布資料
資料1−1 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)(概要と評価)
(追加資料) WSSDにおける再生可能エネルギーに関する提案
資料1−2 ヨハネスブルグ・サミットにおける日・米・欧三極共同意見書発表について
資料2−1 原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について
資料2−2 東京電力点検記録等不正の調査過程に関する評価委員会について
資料2−3 東京電力の原子力発電所における自主点検作業記録の不正等に係る調査対象29案件に関する暫定的な調査結果について
資料2−4 原子力安全規制法制検討小委員会の設立の趣旨について
資料2−5 原子力安全規制法制検討小委員会における検討事項について
資料3 プルサーマルに関する地域の情勢について
資料4 遠藤原子力委員長代理の海外出張について
資料5 第34回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
(1)国連持続可能な開発世界サミットについて(環境省など)

標記の件について、塚本調査官より資料1−1に基づき、保住企画官より追加配布資料に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(遠藤委員長代理)  先端的エネルギー技術に原子力が含まれないといったEUの一部の国はどこなのか。
(保住企画官)  具体的には分からない。しかし、EUの中で脱原子力を掲げている国もある。合意文を採択するにあたって、発言を求め当該国としてその部分を留保したり、先端的エネルギー技術に原子力技術が含まれているという解釈を当該国として支持した訳ではないという意思表示した国があるということである。
(遠藤委員長代理)  そのようなEUの発言があったということか。
(保住企画官)  そうである。一部報道で原子力についてサミットでは議論されていないということであったが、先端的エネルギー技術を途上国へ移転すべきエネルギー技術の対象に含めるかどうかということについては水面下で議論があった。準備会合段階で、既に合意文の19(e)以外のパラグラフにおいて、先端的エネルギー技術との記述は入っていた。しかし、それを取ろうとする国、入れようとする国、との間でやりとりがあった。
(遠藤委員長代理)  小さな島諸国からの発言はあったのか。
(保住企画官)  基本的にはEU提案を指示するということであった。ニュージーランドも同じようにEU提案を指示していたが、その主張の中で再生可能エネルギーの技術開発を行うには自国のマーケットが小さすぎる、先進国がリーダーシップを取り、このマーケットを大きなものにすることで再生可能エネルギーを普及してほしい、という論旨であった。

原田部長より資料1−2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(遠藤委員長代理)  電気事業連合会のステートメントは、意図的に原子力が強調されていないのか。
(原田部長)  これは要約版ということで、実際には環境面のところで原子力を入れている。
(木元委員)  原子力に関して日本以外の国の発言はどうだったのか。
(原田部長)  EUは、重要なエネルギーとしている国や廃止を含めて検討している国などがあり、廃棄物については、EU全体で取り組みたいとのことである。アメリカは、新規立地は難しいが当面は稼働期間の延長が考えられるとのことである。
(木元委員)  新しい原子炉についての発言はなかったのか。
(原田部長)  なかった。
(藤家委員長)  京都のCOP3の時には、京都で原子力委員会が会合を持ち、原子力の重要性を議論した。電事連に頑張っていただいていることは、その時の動きがつながっているものと考えている。今後も、電事連はNGOとしてこのような場に出ていくことを考えているのか。
(原田部長)  考えている。今回は、南アフリカでの開催、発展途上国が多く出席し、原子力を全面に出すということはなかったが、次回のCOPなどの場で原子力の有効性をアピールしていきたい。
(藤家委員長)  原子力については、原子力委員会では常々、現実を見て欲しいと言ってきたが、なかなか状況が付いてこない。今後ともよろしくお願いしたい。
(森嶌委員)  WBESD(持続可能な発展のための世界事業者協議会)のサイドイベントとして開かれた会合では、原子力を直接取り上げたわけではなかったが、リニューアルエナジーを進めるにしても、現時点で原子力に取って替わるものではない。環境面やコスト面から重要なエネルギー源として原子力があるというパネリストの発言があった。これに対してフロアから、それはおかしいというNGOの発言があったが、パネリストは原子力だけで行くというのではなく、エネルギー源の1つの重要な選択肢であると答えていた。また、やはり現実の上に立って、絶対的なものでなく、代替として原子力を支持するという発言もあった。
(遠藤委員長代理)  森嶌委員に聞きたいが、この会議を通じて原子力は、先端的エネルギー技術は入っているという点はよかったと思うが、ポジティブに原子力は役立つものだということにはならなかったという感触を持ったが、どうだろうか。
(森嶌委員)  この会議は、それぞれの国の国益や政治的思惑が大きく、リニューアルエナジーで言えば、EUの中ではドイツなどを中心に進めていきたいということがあり、2015年までに15%というのはEUの政策の推進にとって必要である。また、EUにとっては各国の緑の党との関係においても必要である。各国がそれを打ち出すことにより、自国にとってどのような意味があるのかを考えて行動しているので、多くの国では、原子力を表に出して事を荒立てることは国内的に好ましくないと考えているということである。そのようなことから、今の政治情勢を見て原子力について環境に役立つという発言が積極的には出てこないということだ。

(2)原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について(原子力安全・保安院)

 標記の件について、中村首席統括安全審査官より資料2−1〜5に基づき説明があり、以下の通り質疑応答があった。
(森嶌委員)  一般的に、内部告発の場合の東京電力社内の調査体制はどうなっていたのか。
(中村首席統括安全審査官)  今回の申告において、旧資源エネルギー庁では、全体としていろいろな業務がある中でこのような仕事をしており、必ずしも十分ではなかったのではないかと思うが、担当課が決まっていた。原子力安全・保安院の中では、内部の幹部クラスが入った委員会を開催して、調査の方針などを検討しながら行ってきた。東京電力では今年5月に調査チームを設置している。
(森嶌委員)  長期計画にも、原子力事業者は情報を公開していくことが必要となっているが、GEの報告を見ると東京電力の要請により記載しないこととしたとあるなど、東京電力の中で、きっちりした調査体制があれば早い時期にわかったと思う。通常の体制で調査が行われていたのでは、なかなか表に事実が出てこないと思う。今後、事実がどうすれば出てくるのか、早い時期に事実を出せるしくみをどのように考えるのかということが重要になってくる。東京電力に限らず、きっちり調査できる体制を作っておく必要がある。アメリカのように、申し出ればその人は処罰しないというようなしくみを作っておかないと情報が出てこないかも知れない。是非、検討が必要だと思う。
(藤家委員長)  規制の問題だけでなく、この問題は日本の持っている社会システムが関係していると思う。規制だけに焦点を当てて終わる問題ではないということで、原子力委員会において抱えている辛さがある。保安院で行われている検討委員会や評価委員会だけでなく、原子力委員会として何を行うのか、何を言ってゆけばよいのか、自主点検と法定点検の違いを多くの方々が理解していない中で、法定点検で起こったのであれば安全上の問題として相当議論が必要になるが、自主点検の中で出てきたものをどのように考えればよいのか、このままであればグローバルスタンダードにのっていかないなど、いろいろ言わなくてはいけない時期に来ていると思う。これから必要に応じて保安院から意見を聞きながら進めてゆきたいと思う。

(3)プルサーマル計画について(資源エネルギー庁)

標記の件について、細川課長より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(藤家委員長)  いろいろ厳しいご意見がある中で、それぞれで話が収まっていることは大変勇気づけられることで、信頼回復に向けて努力が必要だと感じている。ただ、同じような状況を何度経験したのかと考えるところもある。安全が確認されるまで当面凍結という判断をしている自治体に対して、大変心強く思っている。
(遠藤委員長代理)  プルサーマルの事前了解について、新潟県は白紙、福島県は凍結ということでよいのか。
(細川課長)  そうである。各自治体が、それぞれの判断により、考え方を表明されたということである。
(藤家委員長)  福井は事前了解されたままか。
(細川課長)  そうである。
(森嶌委員)  安全を前提として、とあるものの、繰り返し言われているが、今回の事件は客観的、技術的に安全が脅かされているということではないようである。問題は情報を隠したということであり、いくら技術的に安全と言っても、解決策にならないと思う。たまたまプルサーマルをどうするのかという場面でこの問題が出てきて、結果としてプルサーマル凍結となっているが、問題はそれにとどまらず、原子力発電で事実を隠しているということであれば、原子力発電そのものが信用できないということになる。今何が問題になっているのかということと技術的な問題と社会的な問題が峻別されないままである。ドライな言い方をすれば、今回はプルサーマル政策そのものが問われたのではなくて、メディアの論理は、安全を切り口として、今進めようとしているプルサーマルを止めるのは仕方がないと国民に思わせる方向に向けられている。国民が安全と受け止めるかどうかは非常に重大な問題なので、電気事業者や保安院もそうであるが、原子力委員会も何か問題があった時に透明性を持った調査ができるのか、ということを考えないといけないと思う。そうでなければ、技術的に安全だといっても、信用できないということになる。プルサーマルの論理、必要性に関わっているのではなくて、それを進めるための国民の受容性に大きな障壁が出来ているので、これからすべての情報がでるようにし、正しい記録が付けられるというしくみを作らない限り、プルサーマルは動かないと思う。このさいきっちり、対応しないかぎり動かないと思うので深刻である。原子力委員会としてもそこに集中しなければいけないと思う。
(遠藤委員)  私も深刻に受け止めている。技術的な安全性は、技術的にチェックすることで確認できる。一方、信頼や安心は数量化できる話ではなく、なにをすればよいのか、ということが明らかではない。これを解決しないかぎりプルサーマルも難しい。
(竹内委員)  国民や地元の方々に不信感を持たれており、不信感の払拭という問題とプルサーマルの必要性は別問題だと思う。不信感を払拭するにはどのようにすればよいのか、国民が原子力の安全を評価する上で、オーソリティー、先駆者である東京電力がこのようなことを起こしたことに、大きな不信感を持つことになった。この問題が発生してから、議論が出てきているのは維持基準である。これらの整理が遅れていたことは間違いなく、先日の原子力学会でも話題になった。これ自体も国民が信頼できるようなオーソリティーが作った維持基準を、規制当局、事業者が使っていることが大事だと思う。維持基準を早く作ることと、当面不安で止まっているものは、技術的に問題があるかどうか、国民の方々に公表し、不信と不安全の仕分けをする必要がある。プルサーマルについては、この事件と関係なく21世紀の日本のエネルギーの将来を考えてどのように進めるのか、進めるのは国民の方々の納得がなければ進まないので、納得してもらえるような説明を原子力委員会でも行っていかなくてはいけない。
(藤家委員長)  大事なことは今回の問題をどのように整理していくのか、原子力委員会として信頼回復に向けて何ができるのか、原子力委員会が言ってきた原子力政策を説明責任としてどのくらい再度国民の皆さんにわかりやすく説明できるのか、だと思っている。
 当面、大事なことは、この問題に関して、保安院や資源エネルギー庁、東京電力などとご相談しなくてはいけないことがでてくると思っているが、そのスケジュールを見ながら、原子力委員会でも行動しなくてはならないと考えている。核燃料サイクルの基本的な方針を再確認することも大事だと考えている。これからの活動方針であるが、今回の長期計画は理念的・課題解決型という点でよくできていると思っているが、具体的な意味など国民の方々が理解できるレベルまでにはブレークダウンされていないことは担当行政庁や事業者が具体化する、という言い方を行ってきた。それらに対応して行うべきことは、核燃料サイクルの必要性の再確認、グランドデザインの再確認、信頼回復のための具体策、せっかく始めた地域との関係をどのように再構築していくのか、などがあると思っている。原子力政策に責任をもつ原子力委員会として関係行政機関にどのように指示していくのか、市民との直接の接点を求めての市民参加懇談会からご提言をもらうということもあると思う。まず、最初に核燃料サイクルの方針について再確認する方法がなにかあるのかを聞きたい。
(竹内委員)  世代や地域が変わったりする場合、核燃料サイクルの必要性について疑心暗鬼の方やわからないという人が多くいる。長期計画がこの路線をたどってきて、その間に世代が変わってきていることからも、エネルギーが脆弱な日本において核燃料サイクルが必要である、ということを明確にすることが大事である。
(遠藤委員長代理)  グランドデザインの関係であるが、もんじゅは早く動かした方がよいと思うが、動かした後どのようにしていくのか、高速増殖炉の実用化を視野にいれる必要があるわけで、長期計画に何年までにどうすべきかということは書かれていないが、ある程度のタイムスケジュールが無ければいけないと思うので、やはりグランドデザインは必要である。また、核燃料サイクルは実際遅れているので、核燃料サイクルの再確認は是非必要である。
(藤家委員長)  今再確認するということと、タスクフォースなどでグランドデザインを検討してから確認する、ということでよいか。基本方針の再確認は、どのような方法があるのか。
(和田参事官)  委員長に語ってもらう、委員長談話がある。基本的な方向は長期計画で示されているので、委員会決定までは必要ないと思う。
(森嶌委員)  今回の事件は信頼の観点からは重大なことであるが、長期計画で打ち出している基本的な考え方そのものに対して大きな影響を与えるものではないと考えているので、プルサーマルの必要性について確認するまでもないと思う。今の時点で原子力委員会がプルサーマル計画は揺るぎないということを言うとなると、その受け止められ方を考える必要があって、福島県知事の意見に同調しているわけではないが、原子力委員会が声明を出すと、またブルドーザーであると受け止められかねない。私自身は長期計画に携わってプルサーマルの重要性を認識しているつもりだが、必ずしも皆さんに理解されているとは限らない。反対する人は、長期計画で十分に詳しく説明されていない点を突いてくるということがある。例えば、将来本当にエネルギーが不足するのか、コスト面で原子力は不利ではないのか、安全性はどうなのか、という点について長期計画の中で国民にわかりやすく説明されているわけではないので、きっちり説明することが必要だと思っている。例えば、コスト面で遜色がないと言っているが、どのような計算なのか、はっきりしておかなくてはいけない。また、核燃料サイクルはこのような想定のもとに動かそうと思っているというグランドデザインを示していく必要がある。
(藤家委員長)  関係している組織も地方自治体も多く、原子力委員会が基本方針を変えるかどうかということを今行う話なのか。ちょっと待ってください、今から考えますからということなのか。やはり、今大事なことは、長期計画に沿って何を具体化していくのかだと思っているので、やはり表現の仕方は考えるがメッセージは必要だと考えている。それと同時に長期計画についてわかっていただくためにタスクフォースを作ってすぐに検討に入ります、を加えてメッセージにしてはどうか。新しい原子力委員会になってから委員長談話を出していない、委員会決定だけでは固すぎるので委員長談話としてはどうかと考えている。
(遠藤委員長代理)  委員長談話は委員会の決定であることには間違いないが、委員長決定に比較するとやわらかい形ということで、委員長談話でよいと思う。
(藤家委員長)  メッセージは、東京電力の問題は大変な事であるが、しかしながら核燃料サイクルの重要性に鑑み、原子力委員会として信頼回復に向けて精一杯努力するということでいいのではないか。
(森嶌委員)  核燃料サイクルは長期計画どおりに進めていかなければいけないが、新たな問題が提起されているので、原子力委員会として国民や地域住民の方々に対してもっとわかりやすく説明し理解いただくということと、新たな問題の1つである東京電力の問題は、情報の迅速性・正確性についてどのようなしくみを作っていけばいいのか、原子力委員会として最大の力を注いでいくといったような言い方で、よいのではないか。このような言い方のほうが受け入れていただけると思う。
(藤家委員長)  少し文章を考える。タスクフォースの中身は次回定例会議で具体的な形でお見せできるようにしたい。

(4)遠藤委員長代理の海外出張について

標記の件について、後藤企画官より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(森嶌委員)  是非、委員長代理が言われていた原子力を巡るヨーロッパの感触を確かめてきてください。
(遠藤委員長代理)  わかりました。なお、フランスの邦人記者と懇談する予定である。

(5)その他

  • 事務局作成の資料5の第34回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、9月24日(火)の次回定例会議の議題は、平成15年度原子力関係経費等を中心に調整中である旨、発言があった。