ヨハネスブルグサミットにおける
日・米・欧三極共同意見書発表について

2002年9月17日
電気事業連合会

先般開催されたヨハネスブルグサミットにおいて、電気事業連合会は、欧州電気事業者連盟(EURELECTRIC) および米国エジソン電気協会(EEI)と共に、持続可能な開発に対する電気事業者の主張を取りまとめた三極共同意見書を発表いたしましたので、その概要をご紹介いたします。

  1. 日時 :2002年8月31日(土) 18:30〜20:00(現地時間)

  2. 場所 :日本パビリオン(ヨハネスブルグ・ウブントゥ村)

  3. 主な出席者:
    • デール・ヘイドラフ(アメリカン・エレクトリック・パワー副社長)
    • J・P・ブルディエ(ユーロエレクトリック環境・持続可能な開発委員会委員長)
    • 桝本 晃章 (電気事業連合会 環境委員会委員長)
      (代理:原田 正人(電気事業連合会 立地環境部長)) 
    • Dr W・S・カイト(英国パワージェン社・持続可能な開発部長:司会)

  4. 入場者:約70名

  5. 概 要
    (1)共同意見書概要説明(別紙1参照)
    • 持続可能な開発および環境に対する責任ある行動に向け、電気事業者が共通の目標を明言したもの。
    • 人々(社会)、地球(環境)、繁栄(経済)それぞれの分野における電力の貢献、今後の取組についての提言を取りまとめた。
    (2)各極意見発表
    〔FEPC〕桝本環境委員会委員長(代理:原田立地環境部長)(別紙2参照)
    • 日本の電力における社会・経済発展への貢献及び公害問題克服への取組を紹介し、これらの知見、技術を活用して途上国の発展に寄与していくことを主張。
    • 省エネルギー技術を中心としたエネルギー寡少消費社会への取組と、電力による技術貢献について提案。
    • 地域に応じたエネルギー資源の活用と、将来に亘るエネルギー多様性の確保の重要性を主張。
    〔EURELECRIC〕J・P・ブルディエ環境・持続可能な開発委員会委員長
    • ヨーロッパにおける持続可能な開発に対する電力の取組を紹介。
    • 地球温暖化への取組として、再生可能エネルギー、排出量取引等の重要性を主張。
    〔EEI〕デール・ヘイドラフAEP副社長
    • 持続可能な開発における電気の必要性、有効性を主張。
    • 地球的な課題に対して、世界協力による問題解決の必要性を主張。
    (3)主な質疑応答事項
    • 核廃棄物処理を含めた原子力の取組について
    • 再生可能エネルギーの目標設定に対する考え方について
    • 企業のアカウンタビリティー(説明責任)に対する考え方について
    • 京都議定書の批准推進に対する考え方について
    (4) 司会者集約
    • 電力は持続可能な開発の基礎となるものであり、どこでも、いつでも、経済的に提供されることが必要である。
    • 電力の生産、消費に伴う環境へのインパクトは最小限にコントロールされなければならない。
    • 再生可能エネルギーは今後増加させなければならないが、従来の発電方式にも依存せざるを得ないことを認識する必要がある。

以上


<別紙1>

ロゴ

持続可能な開発:
環境に対する責任ある行動に向け、電気事業者が共通の目標を明言


「電気事業者は、世界各国の人々が抱いている生活の質向上に対する当然の願望を満たすため、信頼性が高く、適切な価格で、さらに環境に対して責任を担いながら電気を供給することが、我々の共通の目標であることを明言する。」
−これが、電気事業連合会、欧州電気事業者連盟(EURELECTRIC)、米国エジソン電気協会という日本、欧州、米国それぞれの電力業界を代表する主要3団体が採択した共同意見書の中核となるメッセージです。
8月31日にヨハネスブルクでの持続可能な開発に関する世界首脳会議に並行して公表される予定のこの共同意見書において、「電気事業者は持続可能な開発という大きな課題を達成するために協力する」ことを強調するとともに、「電気事業者は、持続可能な開発を単独で達成することは不可能だと認識しており、開かれた議論を通じ、他の利害関係者との幅広いパートナーシップを築きたいと願っている。」と述べています。

ヨハネスブルクにおけるサイドイベントで発表されるこの共同意見書は、リオ地球サミットで10年前に合意された持続可能な開発に対する世界的な誓約を、政府首脳レベルで再び鼓舞するというサミットの目的に対する電気事業者の支持を確認しています。増加しつつある世界人口に対する、社会的責任、環境への責務および経済発展という、持続可能な開発の諸目標を達成する上で、電気が独自の役割を担っていることを強調しつつ、意見書はサミットのモットーに沿って、人々(社会の要)、地球(環境の要)そして繁栄(経済の要)という3章から構成されています。3団体は、共通の目標を確実に達成するために電気事業者、政策立案者、規制機関および社会が認識すべき主な方針をまとめました。

人々:電気は、持続可能な開発を社会的側面から達成するために不可欠な要素である。電気事業者は、それぞれの従業員や広範囲に渡る社会のニーズを尊重し、敏感に対応する。発展途上国では、電気へのアクセスが、経済成長を実現し生活水準を引き上げるために極めて重要である。未だ20億以上の人々が、貧困や社会的疎外を緩和するための決定的な要因である電気の恩恵を受けていない。

地球:電気事業者の活動は環境に少なからず影響を与える。しかし、電気事業者は供給側と需要側の両方において、環境への影響を大幅に軽減するため、多様な技術や戦略を活用してきた。使用時にクリーンな技術や、環境改善をもたらす除去技術に電気は利用されている。従って、電気は、持続可能な開発を実現する手段の一つとして重要である。

繁栄:電気事業者の務めは、電気を発電し、お客さまに届けることである。電気事業者はインフラ整備、技術、研究開発および人的資源に莫大な投資を行い、事業を展開している地域社会や国の経済成長、生産性向上、そして繁栄に貢献している。従って、電気事業の運営に明確な枠組みや動機を与える政策や方策を策定する必要がある。


<別紙2>

日本の電気事業からの持続的開発への提案:
日本の経験、学んだことと成果【要旨】
A proposal by Japanese electricity industry toward sustainable development:
Japanese experience, lessons and achievements

電気事業連合会 環境委員長
東京電力 副社長 桝本晃章

 現在、地球上の人間の約三分の一に相当する20億人が未だ電気エネルギーの恩恵にあずかっていないといわれる。私は、こうした地域の人たちが全て、「文明」をもたらす電力の供給を受ける日ができるだけ早く来ることを希望すると同時に、そうした動向に貢献したいと考えている。

 日本は、1960年代、70年代において「高度経済成長」を遂げ、現在の豊かさの基礎を作った。高度経済成長期、日本の電気事業が社会から期待されていたのは、伸びる需要に応じた電力の量の確保であった。今から、四半世紀ほど前の二度に亘る石油危機以降は、エネルギーのセキュリテイ確保と省エネルギーの推進が日本にとっての時代の要請となった。現在の社会的な要請は、市場化と地球温暖化への対応、そして、持続的開発に如何に貢献できるかである。

 高度経済成長の裏側で電気事業も含め重化学工業をはじめとする日本の産業は、あたかも、光と影の関係のように、幾つかの大きな社会的課題を生み出した。代表的事例が粉塵や硫黄酸化物などの排出による大気汚染や産業排水による近海や河川などの水質汚染であった。現在の地球温暖化問題が、地球規模の問題であるのに対比して言えば、地域的な環境問題である。

 電気事業は、先見的、自主的に、懸命な対応をした。具体的には、硫黄分の含有率の高い石油から低硫黄石油への転換、脱硫装置や脱硝設備の設置、天然ガスへの転換、石油代替としての原子力開発であった。制度的には、各地域の地方自治体と十分に意見交換の上、「公害防止協定」を結び、主要発電所の排煙状況の主要要素を自治体にリアルタイムで送信、大気の状況に応じて発電所の運転を変動させたりすることとした。

 一方で、医学的に大気汚染によると認定された呼吸器などの疾患患者の救済のため、主要産業企業が国と共同して、医療措置費用のための「公害健康被害救済基金」を作り、健康被害者への実質的な補償を行うこととした。

 20世紀が資源の大量生産、大量消費の時代であったとすれば、21世紀は、資 源の生産性を極限まで高めて、省資源、省エネルギーを進める時代だと認識している。21世紀、地球上の人口は、さらに増加すると予想されている。貧困撲滅、清潔な社会環境づくり、健康増進と乳幼児死亡率減少などの課題を解決するには、どうしても経済発展は必要である。一方で、地域の、そして地球規模の環境への悪影響は最小限にしなくてはいけない。更に現実を難しくしているのは、地球上の地域と国の経済発展段階が異なっていることである。

 構想として検討すべきは、地球全体としてのあらゆる資源の最適配分、最適利用ではなかろうか。問題は、過去のような収奪ではなく、多様性を認め合い、地球環境への影響を最小にすべく、資源最適配分を各国各地域の多様性の認識の下に、現在のシステムに組み込むことではなかろうか。

 電気事業の現在とこれからの課題、取り組みの方向性を考えてみると、ひとつの方向性が浮かび上がる。投入資源の徹底した生産性向上を図ることである。産業全体で見ると、既に、ファクター4やファクター10などの構想が言われている。電気事業、特に日本の電気事業として、できることを考えると、大きな方向性は、石炭、石油、天然ガスなど化石燃料の寡少消費社会の構築である。

 私たちは、温暖化問題に真っ向から取り組むことが、持続可能な開発のために重要だと認識しており、発電と消費の両段階において温室効果ガスの低減に努めることが、地球企業市民(グローバル・コーポレート・シチズン)としての我々の使命と認識し、多様なエネルギーの適切な組み合わせ、その中での原子力、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーの拡大、省エネ、高効率化、技術対策、技術革新を進めている。一方、過去の経験、知見を活かして、このような技術の途上国への移転、専門家派遣や研修生の受け入れによる能力向上にも努めている。総合的な対策と技術、それを適正に運転するための人材、そして地球規模での取り組みが求められている。

 持続可能な開発は、地球規模の課題であり、この課題に向かって世界の電力が共同歩調をとることの重要さを強調させていただくとともに、広範な対話やパートナーシップを通じて、様々な主体と共に持続可能な開発に向けて進んでいけることを期待する。

以上