第33回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年9月3日(火)10:30〜12:00
2.場所 中央合同庁舎第4号館2階 共用220会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員
内閣府
 大熊統括官、永松審議官
 榊原参事官(原子力担当)
文部科学省 研究開発局原子力課 中西課長
経済産業省原子力安全・保安院
  中村首席統括安全審査官
 原子力発電安全審査課  佐藤統括安全審査官、小原統括安全審査官
 企画調整課  八木課長補佐
経済産業省資源エネルギー庁
 原子力政策課 和田課長補佐
東京電力株式会社
 南  取締役社長
 服部 原子力本部副本部長

4.議題
(1)東京電力の原子力発電所における自主点検作業記録の虚偽報告について(原子力安全・保安院)
(2)プルサーマル計画について(東京電力からの報告を含む)
(3)各省庁概算要求ヒアリング(文科省、経済省)
(4)東北電力株式会社女川原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)
(5)日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(答申)
(6)総合企画・評価部会の結果について
(7)核燃料サイクル開発機構大洗工学センターの原子炉の設置変更[高速実験原子炉施設の変更]について(一部補正)
(8)その他

5.配布資料
資料1−1 原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について
資料1−2 原子力発電所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について(8月29日プレス発表資料)
資料2−1 平成15年文部科学省原子力関係概算要求について
資料2−2 平成15年原子力関係経費の見積もりについて
資料3−1 東北電力株式会社女川原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)(案)
資料3−2 東北電力株式会社女川原子力発電所原子炉設置変更許可申請(1号原子炉施設の変更)の概略について
資料4−1 日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(答申)(案)
資料4−2 日本原子力発電株式会社東海第二発電所原子炉設置変更許可申請(原子炉施設の変更)の概略について
資料5 第2回総合企画・評価部会の結果について(案)
資料6 核燃料サイクル開発機構大洗工学センターの原子炉の設置変更[高速実験炉原子炉施設の変更]について(補正の通知等)
資料7 第32回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)東京電力の原子力発電所における自主点検作業記録の虚偽報告について(原子力安全・保安院)

標記の件について、中村首席統括安全審査官より資料1−1および資料1−2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(遠藤委員長代理)  資料1−1の2.安全性への影響のところで「国民の信頼を大きく損ないかねず」とあるが、極めて弱い表現ではないか、と感じている。既に信頼を損なっており、認識が甘いと思う。また、その他のところであるが、原子力関係事業者への総点検は徹底的に行ってほしい。もし、同じようなことがあれば今出してほしい。もし、仮にさみだれに出てきたならば、日本の原子力がお終いになるというのは言い過ぎかも知れないが、それほど重大なことなので、行政指導の下、点検を精力的に行ってほしい。
(中村首席統括安全審査官)  全くそのとおりであり、非常に重大な案件であると認識している。本件について、内容を確定してから総点検を行うというのが筋とは考えているものの、直ちに今の段階で総点検に入っていただく指示をして、同じようなことがあるのかないのかを、もしあったならば直ちに公表、通報していただく、という形で対応したいと考えている。
(木元委員)  資料1−1の1.事案の概要のところで「なお、これらの事案は、直接原子炉の安全性に重大な影響を及ぼすものでないため、定期検査において国が直接立ち会って確認を行う対象には含まれず、事業者が自ら検査を行うもの」とあるが、自主点検の項目は定期検査の項目には入っていないもので、自主的に行っている。今回のように摩耗やひびわれが入っていた結果は、自主点検記録に記載しなければいけないことが義務づけられている。この自主点検記録は報告義務があるのか。
(中村首席統括安全審査官)  自主点検は記録の保存義務がある。たとえば、トラブルが発生した場合に、原因追及のために記録を遡っていくことが必要になってくる。中身、行為、重要性によって、記録の保存年限が定められているもので、そういった主旨で記録を保存することが定められているので、必要があれば報告を求めることができるものである。
(木元委員)  都度、定期的に提出するものではなく、決められた保存年限で当該事業所が保存しておくものということか。
(中村首席統括安全審査官)  保存年限は機器や行為の種類によって決められているが、報告の対象ではない。報告については別途定めがあり、例えば、定期報告というものでは、放射線の管理などがこれに含まれ、また、トラブルについても報告対象の詳細が決められている。
(木元委員)  今回の場合は、報告が必要なものではなかったし、要望をしてもいなかったレベルのものであった。2年前にGEII社から内部告発により経済省へ話があった。その時に東京電力へ問い合わせるなどいろいろな経緯はあったと思うが、東京電力の南社長によると「これは数字の勘違いかなと思った」と軽く思われた節がある。不正記述の問題はあるまじきことだが、資料に「東京電力本年8月まで申告に係る疑惑の存在を認めず」とある。これは、東京電力が自主点検の記録を持っていたが、この数値がGEII社の持っていた数値とちょっと違っていたというだけの認識の感触であったのか。
(中村首席統括安全審査官)  その点は、今まさに過去の経緯を含めて事実関係を調査しているところである。今の段階で結論を持っていないが、事実関係がわかった段階で説明したい。
(木元委員)  仮にGEII社の内部告発がなかった場合、点検記録はこのままで何ら問題にされることもなかった、つまり、「直接原子炉の安全性に重大な影響を及ぼすものでない」ということで、そのまま見過ごされてしまった、ということなのか。
(中村首席統括安全審査官)  その可能性を否定するわけではありませんが、事実を確認していきたいと考えている。
(木元委員)  もちろん不正事実は問題だと思う。もう一点は、昨日の南社長の会見で「言い訳になりますが」と断った上で、部門間の風通しの悪さについてご発言があり、南社長を始め、企画部門などの人には知らされていない事実だったと認識した。原子力部門というのは、聖域という表現が妥当かどうかわからないが、特殊な部門だという、甘え、おごりがあったように思う。点検の結果、このレベルのことであれば安全性に全く問題がないから、このような記述をしようということで、原子力ムラの合意があって、お互いその中の人達だけが知っていればいい、別の部門の人達は知らなくてもいい、ということがあったのではないかと感じ、これは問題であると思った。もう一点聞きたいのは、たとえば原子炉の施設の点検、メンテナンスに関して、どのような傷があってもならないという技術基準はあるが、たとえばアメリカの技術基準であれば、建設時の基準、新しい発電所の設置基準、発電所が稼働している時に安全にかかわらないレベルの摩耗やきずであれば問題ないという維持基準があると聞いている。事業者としても、傷があるからすぐに取り替えるというのは大変なことだと思う。私たちの日常生活の中では、ここまでは安全性が担保できるといった場合は認めようではないか、などといった、運転中の維持基準というものが諸外国であるのであれば、なぜ日本にないのか。事業者が維持基準のようなものを作ってください、と原子力安全・保安院に言っていたと思うが、それをあえて作っていなかったというのはどのようなことか聞きたい。
(中村首席統括安全審査官)  最初のご質問については、今後、調査を進めて行く中で頭にいれておかなければいけない重要なことだと考えている。維持基準については、維持基準の問題と今回の問題がどのように関係しているのか、今の段階ではわからないが、仮に虚偽や不正な記載があったとすれば、それ自体は問題であり取り上げていかなくてはいけない。維持基準に関して言うと、誤解があるのではないかと思うが、傷があればすぐにでも取り替えろということになっているわけではなく、今の法体系では維持基準として最初に作ったものが原則的に基準となるということにはなっているが、たとえば、実際には安全余裕の中で減っていくということもあって、もし工事計画認可が必要であれば、基準がない場合でも特別な工事計画認可で新技術などを採用していくことができることとなっており、特別な工事認可の工事の実績は多くある。ただ、我々はそれでよいと思っているわけではなく、そのような道があると説明したわけである。レベルがどこまでであればよいかはっきりさせるという維持基準があればよいと思っている。これに関しては、保安院として原子力安全保安部会において議論し、今年の7月に維持基準も含めて国の基準体系を、学協会の規格をもっと活用しながら、充実していこうという指摘をいただいている。そこで、早速、担当の管理職を設けて、維持基準も含めて整備していくことの宣言をしている。したがって、維持基準は必要であるという認識は持っており、今まさに始めようとしていたところである。
(藤家委員長)  今の話を個別具体的な問題だけに矮小化することは、いい解決につながるとは思ってはいない。グローバルスタンダードと日本の独自性というか日本の考え方が上手く整合するような方向を見つけられるのかどうか、これまでも品質保証の話なのか安全の話なのか、なかなか整理しきれなかった。特にこれからの日本が原子力先進国として生きていくためにはグローバルスタンダードに合わせるといってもどこまで可能なのか、日本の独自性は地域との関係でかなり優先されている部分もあると思う。今すぐにとは言わないまでも、そのような広い視点から見ることが必要である。
(中村首席統括安全審査官)  IAEAの方でも基準作りが進められおり、それとの整合性の問題などに精力的に取り組んでいきたい。
(木元委員)  つまり、全ては安全をどう確保するのかということに関わってくると思うが、国民もそれに対して非常に疑問を持っている。今回の事は誠に残念であり、悲しいことであるが、自分たちでこれぐらいであれば安全だという認識があって、それを正直に出せばよかったのだが、隠してしまったという甘えがあったということは事実である。我々一般国民が原子力発電所から電気を送ってもらっている現状で、原子力発電所の安全性というものを、どのレベルで認知するのか、ちょっとの傷やひびがあってもいけない、というのだろうか。このレベルならといろいろ検討し合って国民も納得をし、許容基準を作っていこうという合意ができるのか、そこまで話がいくと思っている。この問題は、安全性をどう捉えるかということを論議する場も提供していると感じている。
(藤家委員長)  日本のエネルギー自給分で原子力が占める割合は3/4にまでになっている。現場の技術者や従業員が、日本のエネルギー供給を行っているという生き甲斐を感じ、社会に貢献しているのだという誇りを持てるようにするにはどうすればよいかである。何かあれば、社会から批判だけを浴びるというのでは、彼らのモラルを維持することはできない。原子力は既に社会的な存在になっているのに、そこの部分だけを切り出す難しさを感じている。何か起こるたびに現場の若い技術者は何を考えているのかという心配をしている。原子力委員会はいかに政策を作り、遂行するかという観点より、広いところまで見ていきたい。
(竹内委員)  起こったことは非常に残念に思っている。原子力に限らず、機械というのは全て経年的に傷や摩耗が発生するのは当たり前である。一方、原子力の場合は、世間から神聖視されており、理想論、あたかもいつでも新品でなければいけないといった面で、現場の人間は、傷や摩耗など発見したときは、その状態によって判断に非常に苦労している。維持基準までいかないまでも、判断、手順、手続きを含め、全部、透明性を持ち、世間に見えるようなもので、彼らが持っているストレスを解き放っていかなければ上手くいかないと思う。今回の場合も、この程度の傷であれば問題はないと原子力安全・保安院も東京電力も発表したが、問題になっている。やはり、運転に入ってからの維持基準についての遅れがあり、これが現場に対して大きな負担になっていると思う。原子力は地球環境やエネルギーセキュリティの観点から大事なので、これを機会に原子力再生の道につなげていってほしいと思う。
(藤家委員長)  今日は内容がはっきりしていない状況で説明いただいたが、これからも調査の段階に応じて、新しい判断を経済省がした段階で報告していただきたい。
(中村首席統括安全審査官)  承知しました。

 (2)プルサーマル計画について(東京電力からの報告を含む)

標記の件について、以下のとおり、南取締役社長の発言の後、意見交換があった。
(南取締役社長)  この度、当社原子力発電所の設備点検・補修作業において、検査結果や修理記録などで事実の隠蔽や虚偽の報告が行われた件につきまして、国民の皆さま、とりわけ立地地域のみなさま、藤家委員長はじめ原子力委員会ならびに原子力にいろいろ推進をいただいている方々に本当に申し訳なく心からお詫び申しあげる次第でございます。前々から原子力の推進は国民の皆さまからの信頼が第一でありそれがベースであると申し上げて努力してきたつもりでおりましたが、それにもかかわらず、自ら信頼を損ねることとなって本当に申し訳なく思っています。当社では、この事実の徹底解明のため調査委員会を組織して徹底的な全容解明に努めておりますが、9月中旬までにはその全体を報告させていただきたいと考えております。それを待たないまでも昨日申し上げたようにこれまでの調査でも当社社員が関与している、関与しているというよりも結局全体の点検補修の計画全体を最終判断するのは当社ですから、当社が関与というものではなく、当社の責任と判断の下に進めてきた仕事の中にこのような事実があったということですから、これは当社としての責任はあることは間違いない。安全はいくら大丈夫であっても、事実を偽った、虚偽があったという、例え手続きであれ仕事のやりかたの問題、情報の問題、これについては逃れようもない、ということがわかってきましたので、この事実を厳粛に受け止めて私自ら責任を取ることにして、先日の会見をしたわけでございます。今後、早急に全体の事実を解明して原因を追求するとともに、関係者のどこがどう悪かったのかを明確にして責任追及と同時に今後の再発防止、信頼確保に立ち上がる策を講じていきたいと考えています。今回、なぜこのようなことが起こったのか、もう一つ掴みきれないところがございますが、先程来、話題になっていました、いわゆる維持基準のようなものがあれば、大分プレッシャーが違って、つまらない未報告や虚偽の記録をしなくてもよかったのではないかと思います。私個人的な考え方ですが、原子力に限りませんが、設備の保安が自主保安の方向に多く流れてきていると思います。電気事業の電気設備の保安確保について、数年前に原子力の保安部会の委員を務めさせていただきましたが、一貫して、その方向は自ら事業者が保安責任をとる、それが根底にあるのが一番いい保安ができる、それを監督官庁等が随時、必要と思うときは立ち入りし、チェックするシステムが出来上がりつつあります。それから、技術基準にしても、従来は細かく全て決めていたものを、機能基準に変えるという、この機能をこのような基準で守って見るべきだ、という基準だけで電線の太さや離隔距離など細かいことはできるだけ法令体系では決めずに最新の民間基準に委ねる、という流れになっていると思います。今、原子力については、まさにその方向で検討が進められている最中、このような事態を引き起こしました。自主保安というのは、ますます責任は強くなるし、事故を起こしたり、トラブルの回数が増えますとこれは企業経営そのものにも大きな損害を与えるわけですから、経営自らとしても自分の判断で決められている基準をしっかり守りつつ、自主保安を行う。これを原子力においても進めつつあることを大歓迎しています。その中の1つが維持基準の考え方であり、当然必要なことだと思います。マスコミ等で、今回の不祥事、不始末が報道される中で、むしろ自主保安というのはこのような会社があるから進めるべきではない、という論調も散見されますが、その意味でも誠に申し訳ない。むしろ今回の事態は、自主保安という中で行われたとしたら原子力で一番大事な安全を絶対確保するという点においては、今のところ私は現場を含め確信を持っていますし、いささかも安全への考え方、安全第一というモラルに後退は一切ないと思っていますが、これについても全貌を明らかにした上で報告させていただきます。いずれにしても、今回の件については、原子力を信じ、当社を応援してくださっている皆さまの信頼を傷つけたことに繰り返しお詫び申し上げるわけでございます。それから、並行しておこなわれてきましたプルサーマル等の問題ですが、福島第一原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所のプルサーマル計画につきましては、本当にご努力によって、柏崎刈羽地区につきましては、いろいろな努力が相まって何らかの形でご判断を仰げるかなと今回の定期検査期間中にと思っておりましたが、そのご理解の大前提にある信頼を自ら損ねたこの状況の下では残念ながら当社からは何も申し上げるわけにはいかない、と考えております。しかし、日本にとって、サイクルを含めました原子力というのは、地球温暖化防止とかエネルギーセキュリティ、日本の中長期を見通した安定確保のためには、なくてはならないもので、今後とも着実に推進していかなければいけないという使命は変わりありません。それだけに、今回のような深刻な事態を引き起こし、他の電力会社に対しましても大変重い枠を呈することになってしまいましたが、日本にとってプルサーマルをサイクルの大事なスタート点として始めるという必要性は変わりませんので、是非とも前に進めていただくようにお願いしたいと思いますし、私どもも再びMOX燃料装荷をお願いできる状況を1日も早く作りたいと今月中旬のまとめた報告の後、再び励みたいと思います。今回の事態が日本のエネルギー政策全体にそのような意味から重大な影響を与えているということに深く反省しながら、今後全体の究明、再発防止策、地域の皆さま、国民の皆さまにご理解、信頼をいただけるような方策についてご協力を得ながら一生懸命推進してまいるつもりでございます。最後にあらためまして、心からお詫び申し上げまして冒頭の話とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(遠藤委員長代理)  日本のエネルギー事情における原子力の重要性は揺るぎのないところであり、特に原子力政策の中でプルサーマルを含む核燃料サイクルは、エネルギー需給の観点、環境負荷の観点からも絶対に必要なものと確信している。しかし、残念なことに、今回の一件によって核燃料サイクルばかりではなく、日本の原子力政策そのものに対して大変な打撃があったことは、残念ながら認めざるを得ない。ただ、問題を嘆いているだけではなく、これからどうすればよいのか、ということであるが、1つは、どうすれば再発防止確保ができるか、ということと、もう1つは、国民、特に立地地域の県、市町村の方々に対して、失われた信頼をどう回復するのか、という点に尽きると思う。特に信頼回復の点については、信頼は極めて簡単に失われるものだが、信頼を回復するには、10倍、100倍の努力が必要である。いかにして信頼を回復するかであるが、こうすればよいという答えは持ち合わせていないが、行政庁、事業者が一緒になって早急にどうすればよいのか方策を考えていくべきである。それにはかなり大胆な方策が必要と思っている。最後に、電事連南会長としてお願いしたいことであるが、今回は東京電力だけの不祥事ということに留まらず、他の原子力関係事業者に同様のことがないのかどうか、是非、総点検をして、もし不適切な点があれば、今、出して欲しい。そして、再出発しようということである。バラバラとさみだれに出てきたならば、日本の原子力は終わりだと思う。大変な危機感を持っている。是非、電事連会長として、関係者に思い切った総点検をお願いしていただくことを強く希望する。
(木元委員)  本当にショックだった。動燃、JCOの事故以降、何度か南社長ともお話をさせていただいて、このようなことを十分認識し、改革に努力していらっしゃることをよく知っていた。その中でこのようなことが起こったので、大変悲しかった。社長も言われていたが、部門間の風通しがよくなかった、巨大企業で、原子力部門は大事なセクションであり力を持っていたと思うが、部門間の交流が上手くできていなかったことで報告が上手く上がらなかったことだと解釈している。部門間の風通しをよくすると同時に、これから東京電力はどうするか、日本の原子力行政をどうするかに関わってくると思うが、外からの風を中に入れないと駄目だと思う。外から見ると東京電力のどこに問題があって、どこがおかしいのかが見える。内部の調査委員会もあると聞いているが、外の人がどのように見ているのか、何を疑問に思っているのか、どうしてもらいたいのか、外部の意見を積極的に聞いて欲しいし、今後の東京電力に新しい風を是非入れて欲しい。自主保安については、経済省の審議会委員の時に話をしたが、NASAの発想から出て、厚生労働省も取り入れているハサップ(Hazard Analysis Critical Control Point)の考え方がある。自主的にこことここは点検する。その代わり、そこには自己責任を持つと言うことを強力に出して欲しい。その上で、維持基準の話が出てくると思う。今回、不正な記述があり、安全性に問題があるという論調があるが、自分の事業なので、原子力部門の方々も技術的なリスクは100%わかっていると思う。その上で甘えたというのか、思い上がったというのか、このような行為に出たのではないかと考えている。技術的なリスクについて自分たちは満足しているが、社会的なリスクとしてみた場合にどのようなことが起こりうるのかという視点が欠けていたのだと思う。是非、この点も検討してほしい。差し障りがあるかも知れないが、昨日の記者会見の中で社員の中で何人かの社員が関わっているかも知れないと言われ、そこで、5人の役員の方が退任ということを表明されたが、私たちとしては、5人の方がお辞めになったということだけでは納得いかない。当時、善意であったかもしれないが、甘え、おごり、思い上がりで改ざんしたという方もいると思う。関わりのあった方への処分は企業として考えているのか。その部分は国民として納得のできない部分なので見えるようにしてほしいと思う。
(竹内委員)  自主保安、自己責任、これは原子力を進めていく上で大事な方向だと思う。自己責任を事業者が持たないかぎり、一番よい状態で保全できないと考えている。今から、6〜7年前になるかと思うが、当時の通産省が電気事業法の保安規定の改正を行ったときに、とても話がまとまらないので原子力だけ外してしまった。このように原子力を特殊視してきて、機能基準化も進んでいない。これを機会に、原子力も一般の機械と同じように扱えるように、原子力再生のきっかけとしてほしいと思う。
(南取締役社長)  ご意見ありがとうございます。順を追って、私の考え方を説明したい。再発防止対策はまとめ終わってから全てを説明させていただきますが、立地市町村の信頼回復をどうするか非常に大事で、まずは全容を解明し実態を知っていただくことが信頼確保の第一歩だろうと思っています。私が現状で把握しているところでは、信頼を裏切ったということは大問題ですが、原子力安全という点では大丈夫ですし、維持基準や自主保安という体制の中で考えた場合、何がおかしかったのかと考えた場合、おかしかった部分は重大なところではなく、なんでそのようなつまらないことをやってしまったのだという軽蔑非難されるかもしれませんが、お前ばかだったのだなというふうに終わる実態であればという感じでおりますが、その辺をはっきり示すことが第一歩だと思います。他電力でも同じようなことがあるかないかですが、これは保安院からのご指示もあって総点検していると聞いておりますし、先週、各電力社長が集まった時にお詫びを兼ねて、この機会に徹底的に調べてくださいと主旨をお願いしておきました。たぶん東京電力と違ってそのようなばかなことをしてはないだろうとは思いますが、これは電力全体で原子力の信頼確保のために行う必要があると思っています。外の人がどのように見ているか、外の人の考え方、外からのチェックを、社内間の風通しだけではなく、社内の中に入れる、これは全くご指摘のとおりかと思いますので、是非具体的な検討をしていこうと思います。自主保安に関係したハサップの話、これは雪印が使っていて、その時の一番の問題は、ありのままの事実、データをそのまま使わなかったことに問題があると思います。伝わるべき情報を前提にこのしくみが出来ているのに、そのデータに意図的誤りがあったとしたら全くナンセンスである。そのようなものですから、今回の私たちの経験はまさにこういった偽りのデータを使う必要がない形であれば、真実のデータで仕事をして何ら虚偽の報告とかなくても最大目的である安全確保ができるというそういうしくみの中で、このような手法はご指摘の通りかと思いますから、十分これを活用したいと思います。関わりがあったものへの処分等の考え方ですが、今までのところで昨日も申し上げたとおり、結局、経営管理の責任は逃れがたい事は明らかなので、私どもの辞任等を申し上げたわけですが、直接関わりのあった方はかなりの数になるかもしれません。その人達は当然厳しい、思い違いのそこをしっかり認識させるという教育も含めて、いろいろな処分が考えられると思います。処分というのは、間違っていたこと、思い違いしていたこと、足りなかったことをしっかりと自覚するための手段としても必要だと思っています。ただ、大きな方向としては、全容解明してからでないとなんとも言えませんが、処分のしかたについては、十分慎重に考えて実施したいと考えています。最後に、一般のものと原子力のもの、原子力が特別な扱いにならないようになるのが望ましいという主旨の話がありましたが、これについては、私も総合エネルギー調査会の総合部会の委員を務めさせておりました体験を踏まえまして思いますが、時々言っていただきますが、原子力というものをあまりにも特殊な目で見られすぎているのではないか、日常の社会生活の中でその辺に危険を含んだいろいろなものがある。それらと相対的に比べて、理解できるようなものをもっとお前達努力して知らせるべきではないか、いわゆる、原子力が社会の中の他のものと同じようなレベルで考えて、原子力の特別な安全上の大事さとか、怖さというもの認識していただき、その怖さはこれと比べて、ここさえ気を付ければ大丈夫という努力を一段としなさいということをよく聞いています。努力を重ねてはいますが、まだまだ不十分ですが、原子力と社会の関わりについて認識いただく、社会の中に存在しているわけなので、もっともっと私たちがその本質を理解し、ご理解していただくよう努力していきたいと思います。
(藤家委員長)  8月5日に福島県に行った時に、原子力委員会は国民社会を背にしながら、行政庁とも事業者とも地方自治体とも相互理解を持ちながら同時に緊張感を持続していく関係が必要だろうと申しました。早速、その機会が今日現れたかと思っている。恐らく、今回一番無念の想いをしておられるのは南社長だと推測している。しかし、今まで南社長が原子力政策を大変理解され核燃料サイクルの重要性を認識されると共にプルサーマルの遂行に随分努力していただいたことを我々は多としている。しかし、残念ながら辞意を表明されて、残り1月半、その間にやれることをやると言われた。その中で是非お願いしたいことは、信頼回復に向けての路線を引いていただくことと、核燃料サイクルの重要性を企業カルチャーの中に植え付けていただくことが大事かと思っている。原子力委員会は核燃料サイクルの重要性を政策順位第1と考えて努力しているところである。同時にこのような話をお願いするだけではなく、是非、機会を得て原子力委員会に何を望むかを同時に言っていただければ、我々も努力したいと思う。原子力委員会は目に見える形で動きたいと思っている。今日は、お忙しいところ本当にありがとうございました。
(南取締役社長)  お言葉の方向で精一杯努力したいと思います。最後に余計な一言かもしれませんが、核燃料サイクルの重要性につきまして、原子力を扱っている立場からすれば、ワンススルーで数十年、たぶん化石燃料に比べて何分の1かのシェアだと思いますが、それを使うだけであれば、one of themのエネルギーを付け加えただけである。原子力の特徴というのはそれをリサイクル利用することによって、超長期のオーダーで活用しうる可能性があるエネルギー、この地球上に存在するエネルギー、これをなんとか使うべきだということであります。まだ、研究開発すべき事があるわけですが、是非、私が退任しましても、その信念については何らかの形でお役に立てるならば、お役に立ちたいと思っています。その矢先にこういったことを起こしたということは誠に慚愧の念どころか痛恨の極みでございまして、しっかりと信頼回復をやらしていただこうと思っています。よろしくいろいろご指導いただければと思っています。本日は本当にありがとうございました。

 (3)各省庁概算要求ヒアリング(文科省、経済省)

標記の件について、中西原子力課長より資料2−1に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。

(遠藤委員長代理)  もんじゅですが、「平成15年予算においては、改造工事を行うための所要の経費を要求する。」とあるが、今後ということでよいのか。
(中西課長)  平成14年度も要求しましたし、平成15年度も要求に入っております。
(遠藤委員長代理)  要求が入っているというが、平成14年度は120億円、平成15年度は104億円で、改造にはお金がかかるのではないか。
(中西課長)  改造にはお金はかかるのですが、12ページにもんじゅの研究開発費として維持管理費を節減し、改造工事は19億円あり、今年度は使っていないので、これを繰り越しまして、10億円の新規要求と合わせて平成15年度に使っていきたいと考えている。改造工事自体は180億円くらいかかると考えております。
(遠藤委員長代理)  予定は何年くらいかかるのか。
(中西課長)  4年くらいです。
(藤家委員長)  大強度陽子加速器を原研と高エネルギー加速器研究機構と分けているのは、持ち分が違うということか。
(中西課長)  中性子科学研究のような原子力分野に相応しいところは原研で、素粒子科学のような分野は高エネルギー加速器研究機構と分けている。
(竹内委員)  原子力船の放射線モニタリングはシステムを作るのか。
(中西課長)  モニタリングに必要な可搬式のモニタリングポストの経費などを計上している。

和田課長補佐および八木課長補佐より資料2−2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(木元委員)  原子力立地関係経費で個々の立地地域の実情・ニーズにきめ細かく対応とあり、電源三法交付金における使途の弾力化や対象事業の拡大とある。私たちはもっと拡大してほしいと思っているが、具体的なニーズは地域ごとに違っていることもあり、許容範囲はかなり広げるのか。
(和田課長補佐)  例えば、箱ものに対する施設整備が認められているものが、維持管理費については見られないといった制約があるので、それに関する維持管理経費を見られるようにしてほしいということもあり、なんでもかんでもというのは財政当局との関係もあり難しいので、具体的なニーズをいただいたものから拡充していきたいと考えている。
(木元委員)  できるだけ柔軟性を持たせるようにお願いしたい。
(藤家委員長)  いろいろな評価手法を高度化するのは結構だが、実際の審査に使うことを考えるとどれぐらい時間がかかるのかということが重要である。例えば、耐震設計を以前から取り組まれていて、今行っている見直しはいつ頃目処に行っているのか。
(八木課長補佐)  この耐震設計については、17年度に安全委員会の方で検討をするということなので、それに間に合わせる形で16年度中にはあらかたかの結論を出したいと考えている。
(藤家委員長)  中間貯蔵ですが、使用済み燃料ピットやドライキャスクの違いをどれだけ大きく取り上げるのか、評価手法はどうするのか。
(八木課長補佐)  評価を実際に行ってみなくてはわからないと考えている。

 (4)東北電力株式会社女川原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)
 (5)日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(答申)

 標記の件について、小原統括安全審査官より資料3−2、資料4−2に基づき説明があり、平成14年8月5日付け平成14・06・21原第1号をもって諮問のあった東北電力株式会社女川原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)の件に係る核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する同法第24条第1項第1号、第2号及び第3号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については妥当なものと認め、経済産業大臣あて答申することを決定した。
 同じく、平成14年8月5日付け平成14・07・10原第1号をもって諮問のあった日本原子力発電株式会社東海第二発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)の件に係る核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する同法第24条第1項第1号、第2号及び第3号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については妥当なものと認め、経済産業大臣あて答申することを決定した。

 (6)総合企画・評価部会の結果について

標記の件について、榊原参事官より資料6に基づき説明があった。

 (7)核燃料サイクル開発機構大洗工学センターの原子炉の設置変更[高速実験原子炉施設の変更]について(一部補正)

標記の件について、榊原参事官より資料7に基づき説明があり、了承された。

 (8)その他

  • 事務局作成の資料7の第32回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、9月10日(火)の次回定例会議の議題は、各省庁の原子力関係経費の概算要求ヒアリング、英国大使館レイナー参事官のLMAの説明等を中心に調整中である旨、発言があった。