平成15年度原子力関係経費の見積りについて

平成14年9月10日
外務省

1.基本方針
 IAEAを中心とする国際機関が行っている原子力の平和かつ安全な利用のための国際的取組みに対し、国際社会の一員として期待される負担のあり方を考慮しつつ、分担金・拠出金という形で財政支援を継続していく。それと同時に、各関係国際機関に対しては、資金の効率的・効果的な活用、我が国人材の活用の促進を働きかけていく。
 原子力長期計画の第6章「国際社会と原子力の調和」においては、核不拡散の国際的課題に対する取組としてIAEA包括的保障措置の強化・効率化の積極的な推進や、原子力安全・研究開発分野における国際的な協力の必要性が唱えられると共に、IAEA、OECD/NEA等の国際機関の活動への積極的支援・参画が唱えられている。上記の支援は、こうした原子力長期計画の趣旨に沿ったものである。


2.具体的事項

1.IAEAとの関係
 国際原子力機関(IAEA)は、(1)平和的利用のための原子力の研究、開発及び実用化の奨励・援助、(2)核物質・関連施設等の軍事目的助長への利用防止(保障措置の実施)及び(3)安全上の基準の設定・採用、当該基準適用に向けた措置の実施をその任務とする。その活動は、NPT体制を核物質管理の側面から支えることにより今日の国際的核不拡散体制に不可欠な役割を果たしつつ、原子力の平和利用の推進するものとして極めて重要。したがって、IAEAの活動に対して積極的な役割を果たすことは、国際社会はもとより、我が国自身にとっても大きな意義がある。
 なお、IAEA予算全体の8割強をしめる通常予算は過去10年以上実質ゼロ成長。我が国は、IAEAの予算審議では、名目ゼロ成長を主張しつつ事務局に対し一層の業務合理化と経費削減を求めてきており、近年一定の成果が見られる。他方、IAEAの保障措置関連業務は拡大する傾向にあり、核テロ対策等、新たな脅威に対する取組みにも資金的裏付けが必要となっているという事情もある。
 また、8月現在、原子力安全担当事務次長を筆頭に24名の邦人職員がIAEAで勤務しているが、より一層の邦人職員派遣に向け我が国はIAEAに対し累次働きかけを行っている。

 (1)原子力の平和利用促進
(イ)技術協力基金
 技術協力基金事業(活動)は、IAEA加盟開発途上国の要請に基づき、原子力発電・研究炉、核燃料サイクル、放射性廃棄物、原子力物理学、原子力化学、原子力安全、並びに農業、健康、環境等における放射線及び放射性同位体利用の分野で、専門家派遣、機材供与及び研修員受入れの形で技術援助を行っている。さらに、各種報告書の出版、各種会合の開催、データベースの整備等原子力の平和利用に関する情報交換の促進にも貢献している。

(ロ)原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)
 アジア・太平洋地域の開発途上国を対象とした原子力科学技術に関する共同の研究、開発及び訓練の計画を、締約国間の相互協力及びIAEAとの協力により、適当な締約国内の機関を通じて促進及び調整することを目的とする。

 (2)保障措置の強化
 イラク・北朝鮮における核疑惑を契機として導入された、締約国の未申告の原子力活動をIAEAが検知する能力を高めるための「追加議定書」の締結促進は、IAEAの保障措置を強化するとの観点から極めて重要である。かかる重要性に鑑み、我が国は、99年12月に「追加議定書」を締結し、一昨年のIAEA総会にて、IAEAの追加議定書締結促進のための行動計画のとりまとめに指導的役割を果たした。現在、発効は25ヶ国にとどまっているところ、より多くの国々が「追加議定書」を受け入れることが重要との観点から、我が国は、アジア・太平洋諸国を対象とした普遍化促進セミナーを東京で開催(別添参考。)、また中央アジア、中南米及びアフリカでの追加議定書普遍化セミナー開催に協力するなど、「追加議定書」の普遍化に向けた取組みを積極的に推進。この取組みは、米国をはじめとする関係国からも高く評価されいる。
 また、本年12月には、これらの努力を総括するため、全世界規模の「追加議定書」普遍化のための国際会議を東京で開催する予定。

2.OECD・NEAとの関係
 経済協力開発協力機構(OECD)の下にある原子力機関(NEA)の目的は、参加国政府間の協力を促進することにより、安全かつ環境的にも受け入れられる経済的なエネルギー資源としての原子力の開発をより一層進めることである。原子力先進国間の協議の場として、大規模な原子力開発利用計画を有している国々との協力を通じて原子炉等の安全性研究・評価を実施するもの。NEAの下には参加国からの専門家により構成される7つの常設技術委員会が設けられており個々の課題について運営委員会を支援している。主な業務は、1)原子力施設の安全、放射性廃棄物管理等に関連した各国の規制方針・運用の調和の促進、2)全エネルギー供給における原子力の役割の評価のための、技術的・経済的側面からの検討、3)科学的・技術的情報の交換の促進、4)国際研究開発計画及び共同事業の設立。
 我が国は、NEAの活動のための資金として、米国に次いで2位の分担金を負担していることに加え、専門家の派遣等を通じて常設委員会の議論等のNEAの活動に参画。また、人事面においては、事務次長を我が国より派遣している。

3.原子力安全関連(チェルノブイリ石棺基金への拠出)
 86年4月に爆発事故を起こしたチェルノブイリ4号炉については、放射能の拡散を防止するため、事故直後の応急措置として、ソ連政府(当時)がコンクリート等で塞ぎ「石棺」化。この石棺の老朽化を踏まえた状態改善のため、97年6月、G7のイニシアティヴにより同炉の現石棺の補強及び新たな石棺建設を主な内容とするチェルノブイリ石棺計画が策定され、同年12月には、同計画実施のための「チェルノブイリ石棺基金」が欧州復興開発銀行(EBRD)に設立された。
 我が国は、本件プロジェクトの国際的な原子力安全確保における重要性に鑑み、本件計画の一環で、基金設立時に2,250万ドルの拠出を表明した。また、99年のケルン・サミットを受けて開催されたベルリンにおけるプレッジング会合において、更に2,250万ドルの拠出を第二次プレッジ分として表明した。チェルノブイリ石棺建設の意義については、ジェノバ・サミットにおいても、G7諸国の認識が確認されており、我が国としても、表明済の資金については、事業の進展を踏まえつつ適時に適切な支払を行っていくことが重要。


原子力関係事業の進捗状況