第2回総合企画・評価部会の結果について(案)

平成14年9月3日
原子力委員会
総合企画・評価部会

 総合企画・評価部会は、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成12年11月24日原子力委員会決定)(以下、「長期計画」という。)を着実に具体化し推進していくため、1)長期計画の実施状況の把握、2)原子力政策全般に対する事前・事後の評価等を行うため、昨年7月に原子力委員会の下に設置(別添参照)。
 第2回会合では、前回会合以後の長期計画の実施状況等について、参与及び専門委員の方々からご意見をいただくとともに、今後の方向性についてご助言をいただいた。

1.政策評価項目及び評価の視点
 (1)原子力予算について
1)原子力委員会がとりまとめた各省庁の原子力関係予算の要求方針について、長期計画に添って適切に実施されているか否かを評価。
2)また、長期的な資源配分の方向性について、近年の例をもとに評価。

 (2)核燃料サイクルについて
 長期計画において、「国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくこと」とされている核燃料サイクルについて、その進捗を原子力委員会が実施した福島県との意見交換を中心に評価。

 (3)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
 長期計画の実施に当たり原子力研究開発分野の実施主体として中核的な役割を担う両法人の統合に関して、原子力委員会の示した基本的な考え方をもとに評価。

 (4)ITER計画について
 原子力委員会の下に設置したITER計画懇談会の「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国となることの意義が大きい」とした報告等を踏まえ推進しているITER計画の進捗について評価。

 (5)革新炉について
 長期計画において、「国、産業界及び大学が協力して革新的な原子炉の研究開発についての検討を行うことが必要である」とされている革新炉に関して、その進捗を革新炉検討会での検討状況をもとに評価。

 (6)原子力を巡る国際情勢について
 原子力を巡る国際情勢を報告し、今後の方向性を評価。


2.各項目の評価の結果(主なご意見)
 (1)原子力予算について
【全般】
  • 原子力関係予算が年間3〜4%づつ減少しているという実状の中、将来的に核融合が非常に大きなシェアを占めるように思われるが、他の事業を圧迫する恐れがないよう、バランスをとっていくことが必要ではないか。
  • 大型研究施設整備の際には、イニシャルコストだけでなく、それを用いて研究開発する際に必要な実験研究のための費用への配慮が重要である。
【放射線利用】
  • 原子力への理解を深めるためにも、放射線の生物学的影響の研究が重要ではないか。
  • 医療分野の放射性廃棄物の対処方法の検討が必要ではないか。
  • 放射線の規制体系が複雑であり、これに対応する措置の検討が必要ではないか。
  • 医療分野の放射線利用を進めるために、例えば、医学物理士の定員化などが考えられるのではないか。
【人材育成・教育】
  • 日本のODAの予算は減少傾向ではあるが、ODAの効果を高めるために途上国における原子力人材養成事業は重要である。
  • 予算規模としては大きくないが、原子力・エネルギーに関する教育の環境整備及び人材育成は重要な項目である。
  • 点としての実施だけでなく、関係機関における人材育成のための支援サービスのネットワーク化が必要ではないか。

 (2)核燃料サイクルについて
  • 現行の規制法は、原子力の利用が始まる前にできたものの延長であり、原子力利用の現状に鑑みれば硬直している。何年もかかると思うが、原子力を推進するため、原子炉等規制法の抜本的な改正や、原子力に関する法律の一本化が必要ではないか。
  • プルサーマルは長期計画にも謳われた日本のエネルギー政策上の非常に大事な要素であり、原子力委員会自らが福島に赴いたことの意義は大きい。
  • 原子力委員会は核燃料サイクル全体を見る中で(特定の地域にこだわらず)、政策としてプルサーマルの必要性を説明していくことが重要である。

 (3)日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
  • 原子力全体の戦略の中での新法人のセンター・オブ・エクセレンスとしての位置づけについて、原子力委員会が適切なメッセージを適切な時期に発信することが重要。今後、議論が進んで行くにつれ、原子力委員会としてきめ細かく、対応や指示を出していくことが必要ではないか。
  • 新法人内の交流が重要であり、原子力委員会の示した基本的な考え方をどう実現するかが課題。
  • 統合により一つになるのだが、他方、複数の研究所を競争させることも重要。現状を十分踏まえた上で、統合による費用対効果を評価することが必要ではないか。
  • 日本原子力研究所の放射線リスク評価研究室が行っている低線量の放射線研究は、第三者機関の役割として重要であり、発展的に残した方が良い。
  • 統合によるシナジー効果を上げるため、当事者同士で早い時期に、検討を行う機会を多く設けることが必要。
  • 産学官の協力、特に産業界との協力強化が重要。その際、新法人に関連機関の意見を十分に尊重し、研究・開発の合目的的な運営に反映させるための仕組みづくりを考えた方が良い。


 (4)ITER計画について
  • 核融合は、長期的な視点で見た場合必要な技術。諸外国に先を越された場合、日本の将来に大きく影響する。世界的な動きにも着目しつつ取り組んでいくことが必要。
  • どのような主体がITERを担うのかにもよるが、総合科学技術会議の指摘にあるような「放射化物の処理費用の費用の必要十分な積み立て」は、国あるいはそれに準ずる主体が行う場合、当該年度に使うべき予算を後年度のために積み立てるということが適切か疑問である。
  • 原子力関係予算が減少しているのは、軽水炉に関する限り、技術が成熟したという認識によるものではないか。予算が増加するには、1)医療など他の分野への応用が広がること、2)ITERや革新炉など技術革新が行われていくことが必要である。

 (5)革新炉について
  • 革新的な原子力システムは、1)長期的にエネルギーセキュリティーの確保し、2)原子力産業の付加価値を高め、新しい市場を開拓するものとして考えていくことが必要。

 (6)原子力を巡る国際情勢について
  • 原子力損害賠償条約の加盟については、既に3年前の原子力損害賠償補償契約に関する法律の改正の際にも、必要性が指摘されており、また、既に国内法との問題点について専門家による検討報告書も提出されているので、原子力委員会は、早急に加盟推進に向けて方針を示していただきたい。