平成15年度文部科学省原子力関係概算要求について
平成14年9月
文部科学省
原子力研究開発は、国の存立基盤にかかわる研究開発を行うものであり、長期的な取組みが必要。
1.基本的な考え方
原子力二法人の統合に向けた先行的取組み等の組織・事業の合理化・スリム化を図りつつ、平成12年11月に原子力委員会が策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の着実な推進のため、高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめとした核燃料サイクルに関する研究開発や大強度陽子加速器計画等の加速器科学、ITER計画等の核融合研究開発、産学官の連携による革新的原子炉研究開発などの先端的な原子力科学研究等を確実に推進する。
また、原子力の研究開発を進めるには、原子力施設の安全確保や災害対策に万全を期し、周辺住民等の安心を得ることが不可欠であり、原子力の安全確保・防災対策及び保障措置の着実な実施や原子力に対する理解増進等の取組みを行う。
2.平成15年度概算要求のポイント
- ○核燃料サイクル技術開発
- 将来のエネルギー問題を解決する技術的選択肢を確保する観点から、高速増殖炉サイクルの実用化を目指した技術開発を重視し、実用化に向け戦略的な開発を行っていく。そのために、以下の2つのプロジェクトを中心に効率的な技術開発を行う。
なお、新型転換炉開発等の核燃料サイクル開発機構の整理事業については成果のとりまとめ等、円滑に事業の整理を実施していく。
- 高速増殖原型炉「もんじゅ」 104億円(120億円)
「もんじゅ」については、原子力長期計画を踏まえ、高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付け、発電プラントとしての信頼性の実証とナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成するべく、その準備を進める。平成13年6月に経済産業省へ原子炉設置変更許可申請を提出し、平成14年5月には、経済産業省原子力安全・保安院から原子力委員会及び原子力安全委員会へ諮問されたところ(2次審査)。今後、安全審査の終了を待って、地元の了解を得た上で、改造工事に着手する予定。
平成15年度予算においては、改造工事を行うための所要の経費を要求する。
- FBRサイクル開発戦略調査研究 34億円( 35億円)
高速増殖炉(FBR)サイクルを実現するためは、「もんじゅ」等、高速増殖炉の開発のみではなく、炉・再処理・燃料製造の整合性のとれた研究を行うことが重要である。
そのため、開発を効率的かつ戦略的に一層強力に推進すべく、FBRサイクル開発戦略調査研究を実施し、高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発を重点的に実施していく。
- ○原子力科学技術の推進
- (加速器研究開発)
- 大強度陽子加速器、RIビームファクトリーの建設
206億円(152億円)
世界最高レベルのビーム強度を持ち、原子核・素粒子物理学、生命科学、物質・材料科学、エネルギー工学など広範な研究分野に新展開をもたらす大強度陽子加速器の建設を着実に推進するとともに、全元素の同位元素(RI)を世界最大の強度でビームとして創製・利用し、幅広い研究を推進するRIビームファクトリーの建設を着実に推進するための経費を要求。
- (核融合研究開発)
(次世代の革新的原子力技術)
- 国内誘致を視野に入れたITER計画の推進 7億円( 4億円)
総合科学技術会議の結論を基に、閣議において、「我が国は、国際協力によってITER計画を推進することを基本方針とし、国内誘致を視野に入れ、協議のために青森県六ヶ所村を国内候補地として提示して政府間協議に臨むこと」を了解したことを踏まえ、ITER計画を推進する。
平成15年度は、国際的なITER事業体の発足及びITER建設開始に向け、必要な準備活動を行う。
- 国際的取組を視野に入れた次世代の革新的原子力技術開発
42億円( 54億円)
原子力長期計画及び科学技術基本計画において、高い安全性、経済性等を有する革新的原子炉等の原子力技術が期待されている。また米国においても第4世代原子力システム開発に係る取組が加速しており、これらを視野に入れ、産学官連携による革新的な原子炉技術や先進的な核燃料サイクル技術の研究開発(公募型研究)を、平成14年度に引き続き実施する。
- (原子力試験研究費)
- 原子力試験研究費 19億円( 22億円)
各省の試験研究機関等の原子力試験研究に係る経費を文部科学省に一括計上している。
原子力委員会による採択テーマの事前・中間・事後の評価を徹底し、原子力から発展して科学技術全般への波及効果を通じ、社会・経済の発展に寄与する先端的・先導的な研究を引き続き重点的に実施する。
また、このうち、複数の研究機関におけるポテンシャルの結集が不可欠な研究課題を総合的研究として位置付け、相乗効果による効率的、効果的な研究の推進を図る。
- ○原子力安全・防災対策
- 原子力艦の原子力災害にかかる放射線モニタリング体制の整備
8億円( 5億円)
平成15年4月23日に修正された「防災基本計画原子力災害対策編」を受けて、横須賀、佐世保、沖縄の3港周辺の事故時の放射線モニタリング体制を強化する。
- ○保障措置
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- 六ヶ所再処理施設に対する保障措置体制整備
22億円( 23億円)
六ヶ所再処理施設の平成15年度ウラン試験開始に伴う保障措置検査(査察)の実施及び六ヶ所保障措置分析所(オンサイトラボ)の運用等を行う。
- ○原子力やエネルギーに関する教育環境整備
- 原子力・エネルギーに関する支援事業交付金制度の運用
10億円( 10億円)
都道府県が実施する原子力やエネルギーに関する教育の取組みを支援する原子力・エネルギーに関する支援事業交付金制度の着実な運用を図る。
- ○放射性廃棄物対策
- 所管研究機関の放射性廃棄物対策技術開発 243億円(271億円)
所管研究機関から生じる放射性廃棄物の処理及び所要の技術開発等を進めるとともに、所管施設の廃止について、その廃止計画及びそれに伴い発生する放射性廃棄物の処理及び所要の技術開発等を進めていくことを検討中。
また、RI・研究所等廃棄物の処分システムの検討を継続して実施する。
- ○放射線利用
- 医療、工業、農業等の幅広い分野での研究開発を進めつつ放射線利用の推進 を図る。
- 放医研における重粒子線がん治療研究 57億円(51億円)
腫ようへの線量集中性に優れ、かつX線や陽子線よりも生物効果の高い重粒子線の有用性を実証しつつあり、この実証に基づいてさらに臨床試験を押し進めることにより、がんの新しい治療法の確立を目指す。
- ○大学等における取組
- 大学等における基礎研究 333億円(324億円)
大学等における原子力研究(加速器、核融合分野を含む。)は、個々の研究者の自由な発想を生かしながら、学術的な研究が進められている。これらの研究は学生の教育にも反映され、優れた研究者や技術者の養成に役立っており、引き続き推進するための予算の要求を行う。