第29回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年7月30日(火)10:30〜12:30
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員
研究開発専門部会 原子力試験研究検討会
 岩田座長(東京大学人工物工学研究センター教授)
内閣府
 榊原参事官(原子力担当)、渡辺参事官補佐
原子力安全委員会事務局
 総務課 長野課長補佐、細坪係長
経済産業省 原子力安全・保安院
 原子力発電安全審査課 佐藤総括安全審査官
文部科学省 研究振興局
 量子放射線研究課 関課長
総務省 消防庁
 特殊災害室 佐藤課長補佐、渡邉係長
厚生労働省
大臣官房厚生科学課 浅見課長補佐、河田係長
 大臣官房地方課 窪谷事務官
農林水産省 農林水産技術会議事務局
 研究開発課 下方課長補佐、山本係長
国土交通省 総合政策局
 技術安全課 山尾技術開発推進官
外務省 総合外交政策局
 科学原子力課 馬越課長補佐、松林課長補佐、森田事務官

4.議題
(1)中部電力株式会社 浜岡原子力発電所の原子炉設置変更について(一部補正)
(2)原子力試験研究の事前及び中間評価結果について
(3)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(原子力委員会、原子力安全委員会、総務省、外務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)
(4)市民参加懇談会in東京の開催結果について
(5)原子力委員会へのご質問・ご意見について
(6)人事案件について(非公開)
(7)その他

5.配布資料
資料1−1 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(一部補正)
資料1−2 中部電力株式会社浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請(1号原子炉施設の変更)の一部補正の概要について
資料2 原子力試験研究の事前及び中間評価結果について
資料3−1 平成15年度原子力関係予算について(総務省)
資料3−2 平成15年度原子力関係予算について(厚生労働省)
資料3−3 平成15年度農林水産省原子力関係予算要求について(農林水産省)
資料3−4 平成15年度国土交通省原子力関係予算概算要求について(国土交通省)
資料3−5 外務省関連原子力予算について(外務省)
資料3−6 平成15年度予算要求に向けた考え方について(原子力安全委員会)
資料3−7 平成15年度原子力関係予算について(原子力委員会)
資料4−1 「市民参加懇談会in東京」の概要
資料4−2 市民参加懇談会in東京
資料5 原子力委員会へのご質問・ご意見について(集計結果)
資料6 第28回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)中部電力株式会社 浜岡原子力発電所の原子炉設置変更について(一部補正)

標記の件について、佐藤総括安全審査官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり発言があった。
(藤家委員長)  今回の補正は、品質保証グループを設けるなど組織を改善するという補正なので、特に問題はないと思う。設置変更の申請については、引き続き審議することとする。

 (2)原子力試験研究の事前及び中間評価結果について

標記の件について、岩田座長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)  中間評価で「C評価」という結果の課題が2つある。これらの課題についてはどうするのか。中断させることになるのか。
(関課長)  資料の2頁「3.評価の実施方法」のとおり、中間評価で「C評価」の場合は、その課題は継続中止となる。
(遠藤委員長代理)  それまで使った費用が無駄となるかもしれないが、仕方がないことである。
(藤家委員長)  これから使う費用を節約できた、と考えることもできる。
(岩田座長)  研究は、うまくいく場合もそうでない場合もある。研究の結果を整理し、なぜうまくいかなかったのかについて、情報としてきちんと残すことが重要である。
(藤家委員長)  評価委員のコメントはきちんと研究者に伝達されているのか、というご指摘があった。きちんと対応していきたい。
(竹内委員)  予算は限られているので、どうすれば効果的に使うことができるのかについて議論していきたい。
(木元委員)  17頁の番号11「放射性同位元素を用いた異常プリオン蛋白質の動物体内浸入機構及び体内動態の解明に関する研究」については、BSE(牛海綿状脳症)が問題になっているところなので、時宜を得ていると思う。ただ、厚生労働省でも、関連した研究を実施すると聞いている。こういった原子力試験研究以外の研究との交流はあるのか。
(岩田座長)  評価を実施した先生方は、それぞれの分野の専門家なので、例えば、あの先生とコンタクトするように、といったご提案をしていただいており、こういったことを通して連携が取れると考えている。また、本当の意味で研究交流をするためには、いろいろな方に見ていただけるよう学会やホームページで公開していくことが重要である。全体的な印象としては、原子力の研究者は、外に対してあまり積極的に働きかけないといったような雰囲気があるのではないか、と評価委員からコメントがあった。そういった機会をなるべく作れるように努力することが重要である。
(木元委員)  資料の「1.基本的な考え方」の「4.国民に研究開発の実体を公開し、研究開発に対する国費の投入について、広く国民の支持と理解を得る」についても充足していってほしい。
(藤家委員長)  原子力委員会としては、この評価ワーキンググループの先生方のご努力を高く評価している。専門領域が少しでも異なると、評価は非常に難しくなる。原子力試験研究検討会では、どのように先進国としての原子力の研究開発を評価していくのか、ということを継続して検討されてきた。原子力試験研究検討会でいただいたコメントについては、重く受け止め、改善できるよう努力していきたい。

 (3−1)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(総務省)

標記の件について、佐藤課長補佐、渡邉係長より資料3−1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  「大深度地下等における消防隊員の位置特定システム」では、高レベル放射性廃棄物の地層処分を想定しているのか。
(佐藤課長補佐)  大深度地下とは、地下40メートルより深い空間のことであり、これには地下鉄の駅なども含まれている。原子力に限られたものではない。
(木元委員)  「製品の実用化」とあるが、製品とはどのようなものか。「リングーレーザージャイロ」とは何か。
(渡邉係長)  今までのシステムは、施設に設置した電波を発信する基地局を利用するPHSを応用したものだったが、これは施設に電波基地局を設置しなければ利用できないものであった。そこで、平成14年度から、自律型で持込みが可能なシステムの開発を始めている。そこで、中心となるものが「ジャイロ」であり、飛行機やカーナビに利用されている。ジャイロで方向を測定し、加速度計で移動距離を測定することによって、出発した地点からの軌跡を計算し、それと立体的な地図情報を組み合わせることで、現在の居場所を把握することができる。
(佐藤課長補佐)  カーナビでは、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)とジャイロ等を使っている。トンネルの中では、GPSは使えないので、このジャイロで現在位置を計算している。このジャイロと同じような装置を開発しているところである。
(木元委員)  このようなシステムは、外国にないのか。
(渡邉係長)  災害等に活用できるものとしては、世界に例がないと聞いている。
(木元委員)  そうであれば、早く特許を取っておいた方が良いと思う。
(佐藤課長補佐)  この装置を1人1人に持たせて、将来的には、心拍数や血圧など体の状態についても指揮本部で把握できるシステムを考えている。
(竹内委員)  今までにこのシステムを使ったことはあるのか。
(佐藤課長補佐)  ジャイロを使ったシステムではないが、昨年テストを実施した。
(渡邉係長)  このシステムはある程度出来上がっているが、小型化・軽量化がまだ進んでいない。今のシステムでは、20〜30キログラムにもなってしまうので、ジャイロ方式による位置特定機能などの要素技術の開発を進め、将来は携帯電話ぐらいの大きさのものを開発したいと考えている。
(藤家委員長)  原子力においても、JCOの事故を契機に、防災対策を充実させてきたが、消防庁では、この3つの枠組み「原子力災害対策の指導等」と「消防活動支援システムの開発」と「教育訓練」でカバーすることができると考えているのか。
(佐藤課長補佐)  形式的には、地域防災計画作成マニュアルの作成などの行政的な計画に関する指導から始まり、それに伴う訓練の実施、実際の消防活動に至るまで、一連の流れに対応する施策を講じているところであり、予算的には不十分であるかもしれないが、内容的にはカバーできていると考えている。

 (3−2)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(厚生労働省)

標記の件について、浅見課長補佐より資料3−2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(木元委員)  原子力試験研究費要求課題の18番「突然変異の誘発を促進する蛋白質の構造と機能に関する研究」では、具体的にどのようなことをしているのか。ガンやアルツハイマーでも蛋白質が関係していると聞いているが、こういったものや異常プリオンについての研究なのか。
(浅見課長補佐)  この研究では、放射性同位体を用いて蛋白質の構造的機能や体内での挙動などを調べている。異常プリオンに特定したものではない。議題2でご質問のあった研究は、厚生労働省で別枠で行うことになっているもので、研究の視点が異なっている。
(木元委員)  放射線調査研究費要求課題の2番「輸入食品の放射能に関する調査研究」では、放射線照射を受けた食品も対象となっているのか。例えば、香辛料については、放射線照射を受けたものが輸入されているのではないか、と民間では推測している。
(浅見課長補佐)  この研究では、チェルノブイリの事故以降、欧州の輸入食品について、放射能レベルに問題がないか長期的な調査を行っている。放射線照射を受けた食品を対象としているわけではない。
(木元委員)  これは、セシウムが検出できるか、できないかというレベルなのだ。
(遠藤委員長代理)  新規の課題がたくさんあることについては、とても結構だと思う。
(浅見課長補佐)  終了になる課題があって、その代わりに新規の課題が開始される。また、継続中止となる課題もある。
(遠藤委員長代理)  新規の課題と終了する課題の数は、同じくらいなのか。
(浅見課長補佐)  14年度で8課題が終了し、15年度新規は6課題の予定である。
(遠藤委員長代理)  その場合、予算についてはどう考えているのか。
(浅見課長補佐)  文部科学省で一括計上している原子力試験研究費及び放射能調査研究費の枠の中で行っている。また、研究の額は、毎年一定というわけではなく、継続でも額が減るものもある。
(榊原参事官)  議題2でご説明いただいたが、厚生労働省の原子力試験研究は、「生体・環境影響基盤技術分野に該当しているが、平成15年度の新規課題としては20課題が事前評価を受けている。
(藤家委員長)  原子力は、エネルギーとしてだけでなく、放射線をどこでどのように利用しているのかということも重要であり、特に厚生労働省が関係する分野は広がりを持っている。それにもかかわらず、原子力試験研究だけで本当に良いのか心配している。今の原子力試験研究に満足しているかどうかなど、厚生労働省から原子力委員会に対してご要望があれば話してほしい。
(浅見課長補佐)  厚生労働省では、主に医療や医薬品、食品を所掌しているが、特に安全性が重要だと認識している。医療法や薬事法の下で、放射線を用いた医療や医薬品が開発されてきており、その安全性に関する試験研究や調査も重要である。また、原子力安全委員会とも協議しつつ災害対策や医療事故対策を実施しており、これらも重要だと考えている。
(藤家委員長)  今の評価システムでも、重要な研究課題があまり高く評価されない、ということが全くないわけではないと思う。1つの評価基準がすべてだとは思っていないので、全体としてこれで良いのか、といったことがあれば、原子力委員会に直接意見を言ってほしい。

 (3−3)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(農林水産省)

標記の件について、下方課長補佐より資料3−3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(木元委員)  特殊病害虫根絶事業について、ウリミバエはもう根絶したけれど侵入防止事業を引き続き実施するとのことだが、現状はどうなっているのか。
(下方課長補佐)  沖縄県は、地理的な条件から、再度上陸する可能性が高いため、万全を期して、不妊虫の放飼を続けている。今のところ、ウリミバエの発生は確認されていない。
(木元委員)  どのように水際で侵入を防止して、どのような成果をあげているのかについて、あまり良く見えていない。
(下方課長補佐)  根絶しても不妊虫を放飼することを続けている。これは、仮に侵入してきても、次世代が増えないようにするということである。
(木元委員)  沖縄県で1〜2匹見つかった、ということだと、やはり事業は必要だと言えると思うが、実際侵入してきているのか。
(下方課長補佐)  その可能性は高い。
(藤家委員長)  ウリミバエは、アジアから飛んでくるのか。
(下方課長補佐)  そうである。
(木元委員)  今後もこの事業を続けるのか。
(下方課長補佐)  現時点の計画では、平成16年度以降も続けることとしている。
(木元委員)  2頁の「食品照射への放射線の利用」についてだが、これは、北海道の士幌農協だけが行っている。他の地域では、反対があったりして実施されていないが、要望の声は強い。
(下方課長補佐)  要望の声は強いが、士幌農協のように「ばれいしょ」の生産がまとまった量になるところでないと事業化できない、といった現実がある。
(木元委員)  全日本スパイス協会などから要請が来ているはずである。
(下方課長補佐)  香辛料については、細菌などが増殖しやすいので、そういった要請があることは聞いている。
(木元委員)  消費者の皆さんは誤解しているところがある。この事業を応援しよう、ということはないのか。
(下方課長補佐)  技術的には確立しているが、消費者対策については、今のところ強化する予定はない。今、食の安全性の要請が強くなっており、このような解決方法を提案できるのではないかと考えている。
(木元委員)  是非お願いしたい。日本では、1972年に世界に先駆けて士幌で「ジャガイモ」への放射線照射を行ったが、反対運動が起こり、その後士幌以外はできないでいる。しかし、外国では、香辛料をはじめかなり実施されており、O−157などの対策として、牛肉やトリ、豚、冷凍食肉、魚介類、野菜、果物に対しても実施されている。こういった世界の様子からも、やはり食品の安全という見地から食品照射を実施したいと思う。先日もピスタチオのカビ、アフラトキシンの問題があったが、これも放射線を照射すれば解決すると聞いている。こういったことを具体的に発信していってほしい。
(下方課長補佐)  努力したいと思う。
(竹内委員)  せっかくの研究開発の成果も使われないともったいないので、PAもしっかりやってほしい。青森では、ニンニクの芽止め剤が問題になっていると聞いている。放射線照射を実施してみると、良いヒントを得ることができるのではないか。
(木元委員)  青森の「ジャガイモ」も一部士幌に運んで照射している。
(藤家委員長)  原子力委員会に一緒に考えてもらえれば、前に進むのではないか、といったことがあれば、是非提示してほしい。
(下方課長補佐)  消費者に向けたPAは難しいことであり、また機会を作って相談させていただきたい。
(木元委員)  農林水産省は、理解されている方である。厚生労働省の方は、少し難しい状況である。
(下方課長補佐)  食品衛生法に基づいてやらなければならないところがある。
(木元委員)  それで逃げてしまっている。そこを踏み込んでほしいと思う。小泉さんが厚生大臣のときに食品衛生法の一部改正がされたが、私はその委員をやっており、食品の安全のために放射線照射をする方法がある、ということをきちんと書き込んだ。
(藤家委員長)  農林水産省の資料は、きちんと整理されている。資料も非常に見やすくなっており、説明が非常に分かりやすい。他の省庁も農林水産省に倣ってほしい。
 (3−4)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(国土交通省)

標記の件について、山尾技術開発推進官より資料3−4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(藤家委員長)  原子力試験研究や放射能調査研究では、お互いに連携して研究することが重要である。先ほど岩田座長から話があったとおり、従来、舶用炉の研究を総合的にやってきたところが、次第に部分的な研究に変わってきており、心配している。そのような方々のアクティビティを確保するためには、他の研究機関との交流を深めることも重要だと思う。
(山尾技術開発推進官)  舶用炉の研究については、これまで継続して取り組んできた。この中で最も高い技術力を有していると考えていることは、原子炉本体の研究もさることながら、放射線防護、遮へいの研究である。この研究については、海上技術安全研究所でたくさんの方が携わっている。これまで得られた放射線防護の知見や技術は、もちろん陸上施設への転用も可能である。それ以外にも、例えば、使用済燃料の運搬船の耐衝突構造では、万が一異変が起きたときに漏えいをできるだけ最小限にする、といったところで活かされている。
 また、他の研究所との連携については、東海村に海上技術安全研究所の支所があり、そこで日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構からいろいろとご指導を受けながら、共同で研究に取り組んでいる。
 舶用だけと思われやすいが、それだけでなく、新しい放射性物質の輸送ニーズに対応するため、積極的に多方面と協力しながら進めている。引き続きご支援をお願いしたい。

 (3−5)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(外務省)

標記の件について、馬越課長補佐より資料3−5に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(馬越課長補佐)  先日の定例会議で、RCA(原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定)とFNCA(アジア原子力協力フォーラム)の関係についてご指摘いただいたが、これについては、外務省から事務局に対し、いくつか質問をさせていただいて原子力委員会の事務局と調整しているところである。本日の定例会議では、RCAについての説明の準備はしていない。
(榊原参事官)  FNCAとRCAの関係については、昨年から外務省と相談させていただいており、実質的にはご理解いただいているはずだと思う。
(藤家委員長)  RCAについては、原子力委員会から質問していることなので、できる限り早急に回答してほしい。
(遠藤委員長代理)  IAEAの分担金はゼロ成長とあるが、どういうことか。名目か実質か。
(馬越課長補佐)  我が国の基本的立場は、名目ゼロ成長である。ただし、物価高等を考慮した実質ゼロ成長でも、我が方は受け入れてきている。
(遠藤委員長代理)  ゼロ成長は、なかなか難しいと思っている。保障措置の予算が増えていっているので、どんなに効率化・スリム化しても、実質ゼロ成長は難しいはずである。保障措置は、広い目で見てみると、我が国の安全保障に関わることなので、すべての国際機関を一律にゼロ成長とするより、機関によっては弾力的に対応して良いと思う。
 また、追加議定書については非常に重要だと思うが、すぐに結果が出ることではない。成果はあがっているのか。ここ数年間で締約国は増えているのか。
(馬越課長補佐)  増えている。追加議定書については、現在25カ国が締約しているが、まだまだ少ない。我々としては最大限に努力し、セミナーも開催している。
(遠藤委員長代理)  セミナーの開催も重要だが、他の方法も考えられる。まず、国際社会では米国の存在が非常に大きいので、米国が取り組むようにならないと物事が進まないと思う。米国はまだ締約していないので、対米交渉を進めるべきだと思う。また、アジアについても、原子力が盛んであるにもかかわらず、締約している国は、中国とインドネシアだけである。常にフォローアップをしていかなければならない。
(馬越課長補佐)  これについては、総理を始め政府の要人が多くの国に働きかけているところである。
(遠藤委員長代理)  アジアの原子力関係の大臣会議(FNCAなど)でも言っているが、残念ながらあまり成果があがっていない。我々も働きかけるが、多面的に進めてほしい。
(藤家委員長)  この説明資料では、中身が良く分からないところがある。
(木元委員)  こちらの不勉強なところもあるが、見えないところがある。先日も申し上げたことだが、成果についての報告がない。だから、理解しにくいのだと思う。具体的な例を付けてほしい。
(藤家委員長)  次にRCAの説明をしてもらうときに、併せてクリアにしてほしい。以前から難しいことだとお互いに認識していることだが、この資料だけでは、原子力委員会として、外務省は非常に重要な仕事をやっていると説明できない。もう少し分かりやすく説明してほしい。
(馬越課長補佐)  了解した。

 (3−6)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(原子力安全委員会)

標記の件について、長野課長補佐より資料3−6に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。

(遠藤委員長代理)  来年度に新規で行うものは何か。
(長野課長補佐)  新規または拡充するものについては、平成15年度としての重点実施項目としている。新規のものは、「1.原子力安全に関する国民との対話の促進」では「リスク・コミュニケーションの手法等に関する調査」「安全目標策定に対するリスク・コミュニケーションの積極的活用」で、「2.原子力の安全確保に関する知的基盤の整備」では「国際的な放射線障害防止への取組み」である。他に資料で挙げているものは拡充するものである。
(竹内委員)  「3.原子力施設の安全確保」に「原子力施設の耐震安全性の向上」とあるが、これを改めて実施するということか。
(長野課長補佐)  昨年の7月から耐震指針の見直しのための作業を進めており、原子力安全委員会の分科会での審議に資するような調査を実施する予定である。
(遠藤委員長代理)  「国際的な放射線障害防止への取組み」では、具体的にどのようなことをするのか。
(長野課長補佐)  国連のUNSCEAR(国際連合原子放射線の影響に関する科学委員会)などで国際的に放射線障害防止について取り組んでいるが、国内では組織的に取り組むことがされていなかった。そこで、研究者レベルでされていたことが多かったことを反省し、原子力安全委員会でも積極的に取り組もうとしていることである。
(木元委員)  「1.」については、非常に良いことだと思う。その中で重点的に行おうとしている「リスク・コミュニケーションの手法等の調査」とある。リスク・コミュニケーションについては、今大変はやっており、私も取り組んできた。ただ、リスク・コミュニケーションの方ばかり目が向いてしまっているが、ベネフィットによるコミュニケーションというものも、それと対峙して存在しているのではないか。ベネフィット・コミュニケーション的な手法で、リスク・コミュニケーションを見ることはできないか。両者は全く異なるものではなく、根の部分は同じである。リスクばかりを見ていると、恐怖心や不安感、不信感ばかりになってしまう。ベネフィット・コミュニケーションも一方にあって積み重ねていくような手法であれば良いと思う。リスク・コミュニケーションだけでは、我々が予期しない結果を生み出すことがある。
(長野課長補佐)  リスク・コミュニケーションは、もともとベネフィットが存在するが、そのような良いことばかりを伝えるのではなくて、必ずデメリットもあることを率直に伝えることである。そういったことを十分に注意したい。
(藤家委員長)  良いところも伝えるということか。
(長野課長補佐)  そうである。資料に安全目標とあるが、安全目標は、そもそもベネフィットの享受に伴うリスク、例えば、他のエネルギーシステムと比較する、といった観点が重要である。そういった観点を踏まえて、リスク・コミュニケーションを活用していきたいと考えている。
(藤家委員長)  その点では、両委員会がどのように関係していくのかが重要である。
(木元委員)  「ベネフィット・コミュニケーション」という言葉は存在していないのかもしれないが、厳然としてそれがあって、その上でリスクも考えていこう、という形であれば良いと思うし、原子力委員会やいろいろな部署が関わっていけると思う。
(藤家委員長)  原子力安全委員会としては、そこまで割り切ることはなかなか難しいと思うが、いずれ取り組まなければならない。
 「2.」で気になるところがある。データベースの蓄積はこれまで何十年も行ってきている。それをどのように扱われているのかについては今まで聞いたことがない。例えば、新しい規制の考え方に反映した、といったように具体的な成果を見せていくことが重要である。安全の考え方は、これまで変遷してきているが、原子力安全委員会がこのような形でものを見る、というところまでは、まだまとまっていないと思う。

 (3−7)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(原子力委員会)

標記の件について、榊原参事官より資料3−7に基づき説明があった。

 (4)市民参加懇談会in東京の開催結果について

標記の件について、渡辺参事官補佐より資料4に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(木元委員)  資料4−2にご意見を伺った方を記載している。8名の方のうち、全国漁業協同組合連合会の宮原さんは、WTO(世界貿易機関)へのご出張のためご欠席だったが、ご意見をペーパーでいただいた。今回、開催時間は3時間も取っていたが、7名の方からご意見を伺うと時間が足りなかった。もちろん市民一人一人に参加していただくのが最も望ましいのだが、団体も市民の構成団体なので、各団体はどのようなご意見を持っていらっしゃるのか、ということで、こういった各団体の代表の方からご意見を伺った。
 懇談会の進行は、あまり良くなかったと思っている。市民参加懇談会では「広く聴く」こととしており、ご意見を述べていただいた後に、なぜそのようなお考えをお持ちになったのか、例えば、「原子力に対してイエスだけれども・・・」、あるいは、「ノーだけれども・・・」、といったように「but(しかし)・・・」がその後に続く、その「but・・・」の中身を深く掘り下げていきたかった。「懇談会は広聴するところであり、議論の場ではない」と司会の中村さんが市民参加懇談会の基本姿勢をおっしゃってくれたが、それが逆に気を使う結果になり、こちらから深く聴くことをしなかった。そのため深い中身まで見えなかったところがある。それから、懇談会はコアメンバーが独自の見解を述べる場ではなかったのだが、独自の意見を述べてしまう方もいらっしゃった。こちら側が勉強不足だったところは否めなく、反省材料はたくさんある。会場からも、もっと懇談をしてほしい、対話をしてほしい、話し合いをしてほしい、といったご要望もあり、これらについては大いに反省し、次回に向けて改善していきたいと思う。
 また、懇談会でとったアンケートを見ると、「懇談会の内容・雰囲気に満足した」という方は、全体の30%強であったが、「今後の懇談会の活動について大いに期待している」及び「期待している」という方は60%以上いらっしゃった。この結果は、私たちにとって大いに励みになる。やはり、会場でのやりとりでは、コアメンバー同士のやりとりがあっても良いし、ご意見を述べてくださる方々同士のやりとりの時間の方をもっと長くして議論を深めていくことができれば、お集まりいただいた市民の皆さんからも生のご意見を聴くことができたのではないかと思う。また、渡辺参事官補佐の説明のとおり、今後他の地域でも懇談会を開催していくが、どのように市民の皆さんのご意見を反映させていくのか、どのように原子力委員会に報告するのかについて整理していきたい。また、政策に反映する場合、どのような形で反映することができるのか、その意味はどういうことなのか、についてもコアメンバー会議で話し合いたいと考えている。
 一般の方々からもこんなに期待していただいているので、乞うご期待、と思っている。
(遠藤委員長代理)  私も同感であり、少し対話が足りなかったと感じた。
(木元委員)  こちら側の意見ばかりで、逆にお聞きしても、実はあまりお声があがらなかった。
(竹内委員)  刈羽、東京と2回開催したが、2回とももう少し時間があれば良かったと思う。
(木元委員)  懇談会では、7名の方々から、3つのテーマについてそれぞれご意見を伺ったため、時間が足りなくなってしまった。これと違った進め方を考えなければいけない。こういう点を踏まえると、テーマを1つに絞った方が良かったと思う。また、今回は、東京だったので、大上段に振りかぶってしまったのかもしれない。
(藤家委員長)  こういうことに特効薬はないので、1つずつ確認しながら、実績を作っていけば良いと思う。
(木元委員)  コアメンバーから、意見を述べて下さる方に対して、それはなぜですか、どうしてですか、といったことがもっと出なければならない。
(竹内委員)  今日これから青森に出張に行くが、青森での開催を提案したいと思っている。
(木元委員)  是非お願いしたい。

 (5)原子力委員会へのご質問・ご意見について

標記の件について、榊原参事官より資料5に基づき説明があった。

 (6)人事案件について(非公開)

人事案件を審議することから非公開とした。

 (7)その他
  • 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合について
    (藤家委員長)  日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合については、来週文部科学省の原子力二法人統合準備会議で基本報告がまとまるところである。第2段階の議論を始めるにあたり、今後の進め方などについて議論したいと思う。
    (遠藤委員長代理)  最も気になっていることは、参与や準備会議の委員からもご意見があったことだが、いわゆる「負の遺産」をどうするのか、ということである。この「負の遺産」には、累積欠損金や放射性廃棄物の処理・処分、廃炉が挙げられる。1つ目の累積欠損金については解決できると思っているが、放射性廃棄物の処理・処分や廃炉については難しい問題である。少なくとも、どうするのかということを決めておく必要がある。これらの「負の遺産」を抱えたままでは、新法人はつぶれてしまうのではないか。この問題については、次の段階に向けて取り組んでいく必要がある。
     また、大学の研究炉でも、これと同じような問題を抱えている。大学の場合はもっと条件が悪いのかもしれない。東京大学や京都大学のような国立大学だけでなく、立教大学のような私立大学も研究炉を持っており、私立大学については知らない、と言うわけにはいかない。また、民間の研究炉についても同様である。さらに、国立大学もいつか独立行政法人になるのかもしれない。そうなると、このような負の遺産は必ずお荷物になってしまうと思う。この問題については、新法人ばかりでなく、大学についても併せて解決していかなければならない。また、大学から、そういった問題があがってきていない。少し無責任なところがあるのではないか。誰がこの問題を取り上げるべきなのか。いずれにしても、時間もないので、誰かがこの課題を取り上げていく必要がある。
     また、新法人と原子力委員会との関係がはっきり見えていない。原子力長期計画は、1つの接点になると思うが、それだけになってしまうかもしれない。両者の関係をどうするのかについても、次の段階で正面から取り上げていきたい。
    (藤家委員長)  民間では引当金を積んだりして対応してきているが、国は対応できていない。
    (竹内委員)  この問題については、遠藤委員長代理と全く同じ意見である。いずれにしても、方法や場所、クリアランスレベルなど、いろいろなものが揃っていない。まず何が問題かということを早く整理する必要がある。
    (藤家委員長)  竹内委員のコメントは、これまでの原子力バックエンド対策専門部会や高レベル放射性廃棄物処分懇談会では対応が不十分ということだと思う。遠藤委員長代理のコメントにもあったが、こういったことを最初に検討するところは、原子力委員会だと思う。
     イギリスには、LMA(原子力債務管理機関)があるので、これを参考にしたい。
    (遠藤委員長代理)  LMAについては、英国の関係者から、その概要を定例会議で説明してもらおうと思っている。
    (藤家委員長)  これを第2段階の議論の出発点としたい。
    (木元委員)  小泉内閣で構造改革を行っているが、この改革は基本的に民営化の精神で進めていかなければならない。しかし、新法人の場合は、原子力という特殊性があるので、原子力委員会が厳然として介入することになる。こういうことで、前回の定例会議で遠藤委員長代理は文部科学省に質問した。少し難しいことだが、基本はこうであり、その上で特殊性を積み上げていき、なおかつ独立性も確保する、といったように、原子力委員会としての考え方もまとめなければならないと思う。
    (藤家委員長)  前回の定例会議の中で議論したことだが、原子力委員会から出した「基本的な考え方」と準備会議の報告書案にはずれがあった。原子力の長期展望と全体像や、原子力の「先進性・一体性・統合性」といった基本的なことが入っていない。原子力委員会としては、これらの点についてもこれから具体化していく必要があると思う。また、「基本的な考え方」については、当事者がいない方が良いということでまとめたが、第2段階の検討では、当事者の意見を聴かなければならないと考えている。
    (木元委員)  当事者は、負の遺産を抱えているといった意識を持っているのか、抱えていてもこれをやらなければならないという理念を持っているのかについて、当事者から直接伺う必要がある。
    (藤家委員長)  この問題については、今後、定例会議で正面から取り上げていきたい。まず、各委員が気になっていることを整理し、議論を進めていきたいと思う。

  • 事務局作成の資料6の第28回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 藤家委員長より、定例会議終了後にプレス説明を行う旨、発言があった