第28原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年7月23日(火)10:30〜12:40
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員
内閣府
 永松審議官、榊原参事官(原子力担当)、後藤企画官
経済産業省原子力安全・保安院原子力発電安全審査課
佐藤総括安全審査官、渡辺課長補佐
外務省軍備管理軍縮課
 岡村課長
経済産業省
 資源エネルギー庁原子力政策課 佐藤課長補佐、和田課長補佐
 原子力安全・保安院企画調整課 八木課長補佐
文部科学省研究開発局
原子力課 中西課長、有林係員
核燃料サイクル研究開発課 西山係員

4.議題
(1)北陸電力株式会社 志賀原子力発電所の原子炉設置変更について(諮問)
(2)我が国の旧ソ連諸国向け非核化協力事業について
(3)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(文部科学省、経済産業省)
(4)原子力二法人統合準備会議の進捗状況について(文部科学省)
(5)福島県知事との意見交換について
(6)その他

5.配布資料
資料1−1 北陸電力株式会社志賀原子力発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)について
資料1−2 志賀原子力発電所原子炉設置変更許可申請(1号及び2号原子炉施設の変更)申請の概要
資料2 我が国の旧ソ連諸国向け非核化協力事業について
資料3−1 平成15年度経済産業省原子力関係予算概算要求に向けての考え方
資料3−2 平成15年度予算要求に向けての考え方
資料4−1 原子力二法人統合準備会議における審議の進捗状況について
資料4−2 第8回原子力二法人統合準備会議 有識者意見の概要
資料4−3 基本報告(案)
資料5 第27回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)北陸電力株式会社 志賀原子力発電所の原子炉設置変更について(諮問)

標記の件について、佐藤総括安全審査官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  不燃性の雑固体廃棄物をモルタルで固型化することについては、特に問題はないと考える。
(佐藤総括安全審査官)  六ヶ所村の再処理施設の受け入れが可能となったので、固型化して持っていけるような形に処理しておく、ということである。
(藤家委員長)  これまで固型化処理を行っていなかったのか。
(佐藤総括安全審査官)  志賀原子力発電所では行っていなかった。
(藤家委員長)  原子炉施設の変更を伴わないことについて、なぜ申請しなければならないのか説明してほしい。
(佐藤総括安全審査官)  固体廃棄物の処理の方法については、申請が必要である。以前の申請では、不燃性固体廃棄物を減容した後、貯蔵庫に貯蔵するということになっていたが、貯蔵前にモルタルでの固型化を追加する、ということで処理方法が変更になっている。
(藤家委員長)  雑固体廃棄物のうち、可燃性の廃棄物は固型化処理されていたが、不燃性の廃棄物はこれまで減容されただけだった。今回の変更で、不燃性の廃棄物の固型化処理を追加するということだが、これは原子炉施設の変更ではないので、工事計画や必要な資金について申請しなくて良い、ということも説明してほしい。
(佐藤総括安全審査官)  設置変更の申請は、ハードの変更を伴うことだけを対象としているわけではない。今回の申請は、処理方法が変わるということである。
(渡辺課長補佐)  変更申請の対象となる施設ではなく、今回の変更は、モルタルに詰めてから貯蔵するという処理方法を追加した、ということである。

 (2)我が国の旧ソ連諸国向け非核化協力事業について

標記の件について、岡村課長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(遠藤委員長代理)  2億ドルを支出するということだが、これまでの使い残しがある。この支出のうち真水(新規の支出)はどのくらいの額なのか。
(岡村課長)  小泉総理が示した額は2億ドル余であるが、そのうちの1億ドルは、余剰兵器プルトニウムの処分のためにG8で設立する多国間の国際機関に新たに拠出する。残りの1億ドル余は、従来の使い残しの分である。
(遠藤委員長代理)  主たる責任はロシア側にあったと思うが、どこに問題があったと考えているのか。
(岡村課長)  この問題については、ロシア側も強く危機感を感じており、やりたくないと思っているわけではない。特にウラジボストクの原子力潜水艦の問題については、その場に行ってみると良く分かるのだが、市民の方々も危機感を非常に強く感じている。実際に1980年代に大きな事故があったと言うことであり、地元の方々は、そういった原子力事故も起きる恐れがあることを良く知っている。しかし、地元の方々がどんなにプロジェクトの推進を望んでいても、モスクワの方で動いてくれないとプロジェクトは進まない。さらに、原子力潜水艦は海軍の所属であり、解体については産業省、原子力に関するオペレーションについては原子力省、安全性の確認は原子力・放射線安全監視国家委員会、地域の環境問題については環境省の所管であり、また、取り出した使用済み燃料を鉄道で輸送しなければならないが、その鉄道を修理しなければならない、そのためには鉄道省、といったように巨大な官僚組織を相手にしなければならない。日本でも官僚組織について批判されているが、旧ソ連が作り出した官僚組織はもっとすごいところがある。ロシア側も一丸となって取り組める体制であれば、プロジェクトは前に進むのだが、例えば、鉄道省は全く関心を示さなかったり、海軍が非協力的だったりしている。こういった問題と格闘しながら、なんとか進めようとしている、というのがこれまでの状況である。
(遠藤委員長代理)  我々は極東に関心を持っているが、北海の方にも退役潜水艦があると思う。ヨーロッパ諸国も同じような問題を抱えているのではないか。
(岡村課長)  そのとおりである。例えば、コラ半島には、極東以上に退役原子力潜水艦が危険な状態で存在しているので、ノルウェーでは早い時期からこの問題に取り組んでいた。そして、我々と同じような問題に直面している。同じように液体放射性廃棄物の処理が重要と考えて、低レベル液体放射性廃棄物処理施設「すずらん」と同じような施設を建設している。「すずらん」の建設は7年もかかったが、ノルウェーの方でも同じ時期に建設を始めた施設がいまだ完成していない。ヨーロッパにおいても、ロシアの官僚組織や、免税・免責保障などの一般的な措置が適用できないといった問題で、同じように苦労している。そこで、今回は「G8グローバル・パートナーシップ」で「指針」を策定し、それによって日欧の声を合わせることができた、ということである。
(遠藤委員長代理)  この事業に対し、技術的な面や人材の面でバックアップができるところは、おそらくJNC(核燃料サイクル開発機構)だと思うが、こういった事業は、現在のJNCの所掌業務ではないので、実施することができない。これについては、原子力二法人の統合を機に、新法人で対応できるようにした方が良いと思う。今後も議論していきたい。
(藤家委員長)  非核化協力事業については、とても重要なことであり、引き続き外務省と議論していきたい。
(木元委員)  我が国では、どこの組織が何を引き受けるのか。また、G8で実施したとしても、果たしてロシア側のこのような体制の中で可能なのかと思う。
(岡村課長)  非常に難しい事業だが、やらないわけにはいかない問題である。危険度の高い問題であり、また、日本海の向こう側のことなので、日本として何かをやらなければならない。できないということではなくて、できる体制を作っていかなければならないと思う。
 JNCでは、この種の国際協力の問題について理解を示してくれており、プルトニウム処分の問題についても技術的な面において支援してくれている。しかし、あくまでも研究開発だけであり、その後に続く事業については、今の組織では実施できない、と明言している。我々としては、国内で専門的な知見を持って対応できるのは、日本原子力研究所やJNCだけなので、これらの組織が、こうした問題にも取り組めるように変わることが最も大きなポイントだと考えている。
(木元委員)  次のステップに入ることになると思うが、事業主体について、どのようなイメージを持っているのか。
(岡村課長)  経済協力であれば、JICA(国際協力事業団)が主体となるが、ロシアは開発途上国ではないので、ODA(政府開発援助)の資金を使うことができないため、JICAは対象外となる。国際協力事業団法では、基本的には開発途上地域への経済開発を目的としているので、このような脅威削減を目的としては動くことができない、ということになっている。1つの案としては、JICAの組織自体が変わる、ということも考えられる。これについては新聞で報道されたが、そのような方向に決まった、ということではない。どのように対応していくのかについては検討中である。
(竹内委員)  「すずらん」の建設費用はどこが負担したのか。また、どこの技術を使って建設したのか。
(岡村課長)  日本が拠出した資金で、日本側で設計して建設し、それをロシア側に引き渡した。
(竹内委員)  我が国の技術で建設したのか。
(岡村課長)  技術が日本にないものもあり、日本の企業は部分的に入っていたが、基本的には米国や英国の技術を用いて建設した。建設は、ロシアの企業が行った。
(竹内委員)  原子力二法人には、この事業のための資金はないと思うので、この枠の中から資金を配分して、支援してもらったということか。
(岡村課長)  おそらく技術的なアドバイスは受けられると思うが、そういった事業を直接支援することはできないとのことである。
(藤家委員長)  現在の法の下では、動くことができないと思う。原子力二法人が統合して独立行政法人になることによって、どこまで対応できるようになるのか。あるいは、民間との協力で話が進むと思うが、そういった新しい状況の中で、どこが実施することになるのか。非常に重要なことだと思う。余剰兵器プルトニウムやウランについては、世界的にどうなっているのか見えてきているが、これからどのように進めていくのか。原子力委員会としても、原子力二法人の統合とこのような国際的な課題を、どのようにマッチングしていくのかについて検討していきたい。
(木元委員)  JICAも含めて次のステップの課題だと思うが、その青写真がなければ、どこがどのように動いていくのか分からない。どのように処理して、どのようにするか、といった青写真をだれが描くのか。
(岡村課長)  どのプロジェクトを優先すべきかについては、国際社会の議論の中で決まる面もある。最も優先度が高いとされていることは、プルトニウムの処分である。今、確認されている量だけでも34トンもある。これは「START I」という条約に従い、ロシア側だけで12,000発の核ミサイルを6,000発まで減らした結果、生じたものである。つまり、6,000発分のプルトニウムが存在しているということであり、これらすべてをこの世から消してしまわなければならない。先々月に米露の首脳会談があり、さらに核弾頭を減らすということになった。どこまで減らすのかは分からないが、ロシアの核兵器維持管理能力を考えると、おそらく2,000発ぐらいまで減らすことになると思う。解体後のプルトニウムをどうするかについて解決しないと、軍縮は進まない。実際に、6000発分のプルトニウムのうち1発分だけでも盗まれてしまうと、マンハッタンが消滅、といった恐ろしいことになるかもしれない。そこで、この問題を特に高い優先度で進めるべき、とG8で決めた。原子力潜水艦の問題については、地理的に最も近いところにある問題なので、日本が率先して解決していかなければならない。これらについては、皆さんからもご指摘をいただきながら、国としてのしっかりした判断の下で進めていけば良いと思う。
(木元委員)  その事業を進めるに当たっては、どのように資金が使われて、今どのように進捗しているのか、ということを国民の皆さんに分かるようにしていかなければならない。
(岡村課長)  資料の2頁のとおり、2つの問題がある。1つは、これまでの活動について、透明性が不十分で、国民の皆さんへの説明責任を十分に果たしていなかったことであり、深く反省している。企業秘密など公表できないものもあるが、それ以外については国民の皆さんにオープンにすべきである。もう1つの問題は、プロジェクト執行が停滞していることだが、抜本的に執行体制を変えていきたいと思う。ただ、政府開発援助を中心とした経済協力においても、最初はいろいろな問題があったが、徐々に解決され態勢が整っていったということであり、こうしたことを鑑みると、この事業は、まだ10年も経過していない事業であり、まだまだ発展途上のものである、ということをご理解いただきたい。いろいろなご批判やご意見を賜りながら、より良い執行体制を構築していきたいと思う。
(木元委員)  原子力委員会では、平和目的以外に利用されていないか、ということを見ていかなければならないので、引き続き責任を持って報告してほしい。公開できないものについては、その理由を示してほしい。こうすることが、国民の皆さんの理解につながっていくのだと思う。
(藤家委員長)  いろいろな点について明確になったが、それと同時に、これからどうなるのかと心配なところもある。木元委員の意見のとおり、原子力委員会では、平和利用を担保しなければならない。また、G8で実施した方が良いのか、昔のようにG7+1で実施した方が良いのか。一方で、ロシア側だけを考えれば良いのか、という考え方もある。また、以前の定例会議で議論していることだが、国益という観点から見て、我が国にどのようなメリットがあるのか、ということを社会に伝えていかなければならない。核燃料サイクル開発機構の所掌業務などについては、場合によって省庁間の調整が必要になると思うので、原子力委員会としても引き続き議論していきたい。

 (3)平成15年度原子力関係予算ヒアリングについて(文部科学省、経済産業省)

標記の件について、佐藤課長補佐及び和田課長補佐、八木課長補佐より資料3−1に基づき、経済産業省分の説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(木元委員)  「原子力に対する国民理解の促進」については、原子力を国民の皆さんに理解していただく、ということではなく、まず国民の皆さんを理解することから始めなければならない、つまり「広聴」「広く聴く」という姿勢で進めるべきであり、こうした考え方が「市民参加懇談会」につながっている。この政策についても「広聴」という姿勢で進めていると思うが、これだけの予算を使って広聴した結果、どのようなお声があって、それをどのように活動につなげて、そしてどのような効果があったのか、ということを見えるようにすべきだと思う。
(佐藤課長補佐)  これまでも、シンポジウム等を開催したときは、アンケートなどを行い、できる限り参加者の声を集めている。例えば、2月のシンポジウムでは、どのようなことに興味を持たれたのかについてアンケートを実施し、次回のシンポジウムで参考にするようにしている。こういったことをこれまで以上に拡充していきたい。例えば、小さな集いではあまり行っていなかったが、今後は幅広くやっていきたいと考えている。また、地域担当官事務所を、2月に柏崎市に初めて開設し、続いて5月・6月に福井県・福島県に開設した。柏崎刈羽地域担当官事務所では、20の集落を回り、地元の皆さんのお声を聞いたりしている。また、地域担当官事務所でイベントを開催したりして、できる限り地域の中に入っていき、その中でお聞きした声をフィードバックしていきたいと考えている。
(木元委員)  そのとおりだと思うが、市民参加懇談会を刈羽村で開催したときに痛烈なご批判・ご要望があった。プルサーマルや核燃料サイクルなどについて取り上げる場合は、10人や15人程度の小さめの規模で、お互いに意見交換ができるような会を開催してほしい、といったご意見があった。きめ細かく対応していくためには、地域の方々が勉強会を主催し、そこに専門家を呼びたいなら、それを応援する、といったような適材適所でやり方を変えていってほしい。盛大に広告を出して、大きなイベントを開催することでも効果はあるが、本当にご理解いただくためには、まず地元の方々のお考えを理解して、地元の方々が主催する、という方式も取り入れていかなければならないと思う。
(佐藤課長補佐)  今は、地域に溶け込もうといった段階であり、例えば、担当官事務所の所長が夏祭りに参加して、その中で地域の方々のお声を聞いたりして、地域に溶け込もうとしている。
(木元委員)  このような場合は、お祭りを一緒に楽しんだ方が良いと思う。田植えのときは一緒に田植えをする、といったように、一緒に地域のイベントに参加していくだけで良いと思う。
(佐藤課長補佐)  少しずつ工夫しながら進めていきたい。今年の5月には、柏崎のエネルギー体験館で担当官事務所の所長がインストラクターをやったりしている。地域の方々から見ると、まだ敷居が高いように感じていると思うが、そういったことから地域の方々と親しんでいきたい。予算措置は年度ごとになってしまって柔軟性に欠けるところはあるが、いろいろなご意見・ご要望を聞きながら、それにできる限りタイムリーに応えられるようにしていきたいと考えている。
(木元委員)  地域の担当官は、背広にネクタイではなく、いつもラフな格好でいる、といった雰囲気でいてほしいと思う。私もお手伝いしていきたい。そういった予算の使い方であれば納得できる。
(佐藤課長補佐)  PA活動の予算を増やしたいというわけではなく、内容を濃くしたいということであり、予算の検討では中身を精査している。
(藤家委員長)  「5.原子力立地関係」と「1.原子力に対する国民理解の促進」とは、どのような関係なのか。
(佐藤課長補佐)  「5.原子力立地関係」では交付金がある。これについては、地方自治体がより使い勝手が良いよう制度を改正し、地域の実情ニーズにきめ細かく対応していきたいと考えている。
(木元委員)  いわゆるPA活動とは少し違うということか。
(佐藤課長補佐)  PA活動もその中に入っている場合もある。例えば、地域の自治体が理解を深めるといったことである。
(木元委員)  PA活動は事業者も実施しているので、事業者の活動との整合性も必要である。頻繁にコンタクトをとっているのか。
(佐藤課長補佐)  コンタクトをとっている。例えば、電気事業連合会や電力事業者と協力して、インターネットのポータルサイト「原子力情報なび」(アドレスhttp://www.atomnavi.jp/)を7月に立ち上げた。また、大々的に実施できる状況ではないが、100万人見学キャンペーンについても着実に進めている。
(竹内委員)  「原子力立地関係」は、交付金の額がかなり大きいと思う。地元からは、その用途の条件を緩和してほしいという声がある。地方自治体への交付は、喜ばれなければ意味がないと思う。
(佐藤課長補佐)  発電所と地域が共生して栄えていくことが非常に大事だと認識している。財政的に厳しい折ではあるが、交付金については、少しずつ条件の幅を広げていくように取り組んでいる。
(竹内委員)  放射性廃棄物の処理・処分について、資料のように処分方法別に考えることは結構だと思う。しかし、いろいろな課題が残っており、対象によって難易度も異なるので、選別し重点化しながら課題をクリアし、放射性廃棄物対策が進むようにしてほしい。
(木元委員)  「原子力立地関係」に「中間貯蔵施設の立地支援の拡大」とあるが、中間貯蔵は使用済燃料がたまっていくことを支援する、と見られてしまうかもしれない。中間貯蔵を実施すると、地域の方々に満足してもらえるような予算が新しくつくことになる。そうすると、中間貯蔵していれば良い、地元にお金が来る、といった発想になってしまって、ますます再処理の方に回したくない、ということにはならないか。
(佐藤課長補佐)  「中間貯蔵施設の立地支援」は、あくまで核燃料サイクルやプルサーマルの推進というのが大前提である。中間貯蔵施設の支援だけを重点的に考えているわけではない。
(藤家委員長)  これについても、原子力長期計画を具体化していく、ということが大前提である。中間貯蔵は、核燃料サイクルの確立までに時間的余裕を持たせるためにある。おそらく再処理をやめて中間貯蔵を実施するとなると、そこが最終処分場になってしまうのではないかと疑われてしまう。そういった意味でも再処理は絶対に必要であり、また、併せてプルサーマルも必要だということを、回りくどくても常にセットで説明していく必要があると思う。
(佐藤課長補佐)  中間貯蔵は、核燃料サイクルの一連の流れの中の1つである、という位置付けを常に明確にしておきたい。
(遠藤委員長代理)  財政的に厳しい最近の状況の下では、効率化・重点化が必要である。来年度の予算では、今年度と比べて、どこをカットしているのか。
(佐藤課長補佐)  基本的に、すべての項目について予算の削減に取り組んでいる。これについては、今年度の予算要求のときにも考慮していることなので、ある分野の来年度予算を突出して削減する、ということは今のところ考えていない。
(藤家委員長)  予算については、引き続き議論していきたい。

次に、中西課長より資料3−2に基づき、文部科学省分の説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)  ITERについては、誘致の可否によって予算措置がかなり違ってくるので、2つのシナリオを考える必要があると思う。誘致場所の決定は、早くても今年度末ぐらいになると思うが、いつになるかは不確定である。我が国が誘致に成功した場合は、初年度に必要な建設費用は対応できるようになっているのか。
(中西課長)  例えば、立地場所が来年の3月に決まったとしても、それから条約を結んで国際機関を設置し、その国際機関が建設準備を始めることになるが、各国が国会で条約を審議して最終的に国際機関を設置するまでに1年程度はかかるので、平成15年度に建設のための費用は発生しないと考えている。来年度の予算では、共同評価活動のために必要な旅費等の経費を計上している。ITERの建設に必要な費用は、平成16年度から計上する予定である。
(遠藤委員長代理)  原子力軍艦防災については、既にモニタリングを行っているが、どのようなことをそれ以外に実施しようとしているのか。
(中西課長)  今は、それぞれの港でバックグラウンドレベルのサンプリング、つまり自然の放射線レベルを測定している。また、軍艦が入港したときに海水のサンプリングを行ったりしている。今回の防災基本計画の中では、万が一原子力災害が起きたときにどう対応すべきか、ということが盛り込まれている。万が一原子力災害が起きた場合は、放射線のモニタリングは、高レベルの放射線を検出できるようにしなければならない。また、軍艦は移動するので、モニタリングポストも移動できるようにしなければならない。このように災害を想定した対策を強化することとしている。
(遠藤委員長代理)  これは事前の対策ではなく、万が一を想定した災害対策ということか。事前の対策は既に継続して実施されているということか。
(中西課長)  そのとおりである。SPEEDIネットワークシステムでは、風向や風速を入力すると、放出された放射能物質の広がりをタイムリーに把握することができる。
(木元委員)  これは各省庁と協力して実施するのか。
(中西課長)  そのとおりであり、各省庁の役割分担の下、ポテンシャルを結集することで防災計画が成り立っている。
(竹内委員)  放射線のモニタリングだけなのか。
(中西課長)  その他に医療活動の支援も行っている。万が一放射線被ばくがあったときは、放射線医学総合研究所が協力することになっている。
(藤家委員長)  原子力委員会としては、核燃料サイクルの確立を最重要課題としており、経済産業省からは核燃料サイクルについて詳しく説明があった。この資料では、「高速増殖炉開発をはじめとした核燃料サイクルの実現のための研究開発推進」といった項目が、かなり重要だと見て良いのか。
(中西課長)  もちろん高速増殖炉の開発だけということではなく、再処理や燃料製造、高レベル放射性廃棄物の処分等についても実施する。それらの内からトピックとして高速増殖炉を挙げている。
(藤家委員長)  これまでもよく議論になっていることだが、放射線利用については、予算額が小さいので、こういった資料であまり見えてこない。ところが、ここに示されている項目だけが重要だと見られてしまう恐れがある。この点についてはどうか。
(中西課長)  放射線利用については、日本原子力研究所高崎研究所を中心にいろいろと研究開発が進められており、JRR3での中性子を利用した分析や、JRR4での医療照射、SPring−8での光の利用も放射線利用に該当すると考えるが、こういった事業も「原子力科学技術の研究開発の推進」という文言に集約している。
(藤家委員長)  傍聴されている皆さんにも、資料の1頁の「原子力科学技術の研究開発の推進」に放射線利用が位置付けられるということをご理解いただきたい。
(木元委員)  放射線利用については、「原子力・エネルギーに関する支援事業交付金制度」にも関係していると思う。学校教育の中で放射線を広く取り上げていってほしい。できれば、「原子力・エネルギーに関する教育」の中に「放射線利用」という項目を入れてほしい。有馬さんが文部大臣になられたときにも、この点について発言されていた。放射線利用については、教育の場で取り上げることによって、このように利用されているのだ、と分かってもらえれば良いと思う。
(中西課長)  「原子力」と「エネルギー」は、いつもペアで記載している。「エネルギー」と書けば、原子力も含まれるのではないか、「原子力」と書く必要はないのではないか、という意見がたくさんあったが、「放射線利用」は原子力利用の2本柱のうちの1本の柱なので、ここであえて「原子力」も「エネルギー」と並べて記載している。
(木元委員)  だから、エネルギー利用だけでなく、放射線利用についても取り上げなければならない。しかし、放射線利用に関して説明のある教科書があまりない。
(竹内委員)  この予算は、県単位で配分されるのか。
(中西課長)  県から申請していただいて、県に交付することになる。この交付事業には補助事業も入っており、市町村への補助も県が実施できることになっている。
(竹内委員)  県がアイデアを出して、国がそれを審査するのか。
(中西課長)  形式審査をすることになる。例えば、それが遊園地等への周遊ではないか、ということをきちんと確認する。
(竹内委員)  良いアイデアについては、雛型として水平展開したらどうか。
(中西課長)  そうしたいと思う。今年の夏から、原子力の教育に関する総合的なホームページを公開しようと思っている。このホームページでは、地方自治体に参考となるような実践例などを紹介したいと考えている。
(藤家委員長)  日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合に向けた取組が既に進められていることは、大変結構だと思う。

 (4)原子力二法人統合準備会議の進捗状況について

標記の件について、中西課長より資料4に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(藤家委員長)  資料4−2の有識者の意見は、資料4−3の基本報告(案)に反映されているのか。
(中西課長)  まだ反映されていない。
(遠藤委員長代理)  まず、新法人と原子力委員会との関係がどうなるのかについて明確でない。基本報告(案)では「原子力委員会の策定する原子力長期計画等に基づき」という点だけでつながりがあり、このままだと関係があまりなくなってしまうのではないか。今後どのような関係でやっていくのかについて検討すべきである。
 2点目は、放射性廃棄物の処理・処分や廃炉についてだが、新法人発足の前に方針を立てて身奇麗にしておく必要があると思う。
 3点目は、核不拡散の件についてだが、これを新法人の任務として考慮に入れることは大変良いことだと思う。
 4点目は、個人的な意見だが、「Center of Excellence」を目指すのであれば、また、現在の厳しい財政状況を鑑みれば、人文科学や社会科学の分野まで手を広げるべきではないと考えている。この分野については、重要でないということではなく、他に適当な機関があるのではないか。新法人は、原子力の科学技術の分野に特化していくべきだと思う。
(木元委員)  新法人は独立行政法人であるため、きちんと自ら責任を持ってやっていくことになる。新法人に対しては、違った方法で関与することになると思うが、原子力委員会はどの程度コメントができるのか。また、原子力委員会の考えを反映した上で新法人の予算などが決まっていくことになると思うが、こういった点が将来どうなるのかについて見えないところもある。
(竹内委員)  人文科学や社会科学の分野については、遠藤委員長代理の意見と同じであり、新法人で手がける必要はないと思う。また、累積欠損金については、国がほとんど支出することになるのではないか。国が腹を決めることで、新法人発足の前に身奇麗にすることが重要である。放射性廃棄物の処理・処分を具体的にどうするのかについては、技術的な課題もあるが、国で仕組みを考えなければならないと思う。
(藤家委員長)  原子力委員会から出した「基本的な考え方」とトーンが合っているかどうかが重要である。「基本的な考え方」では、原子力の全体像をきちんと示し、その中で「先進性」と「一体性」と「総合性」が非常に重要だとしている。当初のある組織の3分割論の延長線上では、原子力の順調な研究開発はできない。これについて報告書の初めに示してほしい。基本報告(案)の「原子力研究開発利用の必要性」では、エネルギー問題を取り上げているが、これだけでは原子力の全体像が十分に示されていない。この後の章で、エネルギー以外についても取り上げているが、フィロソフィを述べるところで全体像を示さないと、その後で引用しにくいのではないか。また、準備会議の有識者からも同じようなご指摘があるが、放射線利用だけについて追加するのではなく、「21世紀の原子力はどうなるのか」についてや、「新法人のレパートリーの広さ」についても触れておくべきだと思う。
 原子力委員会では、第2ラウンドの議論を始めたところであり、今日の各原子力委員の意見を念頭に置きながら、まとめていきたい。
(木元委員)  他にも独立行政法人はたくさんあるが、原子力の新法人には、原子力委員会という存在がある。この点を今後どのようにとらえていけば良いのか。
(中西課長)  基本報告(案)の7頁に「新法人は、原子力基本法に定められる唯一の「原子力の開発機関」として、」とあるように、新法人は、原子力基本法に位置付けることにしており、原子力基本法との関係はこれまでと変わらない。原子力委員会との関係に関しては、これまでの理事長や幹事の任免なども含め、独立行政法人通則法との整合性について法的に検討中である。
(藤家委員長)  本件については、また別に機会を作って議論したい。
(遠藤委員長代理)  これについては、形式論だけではなく、もう少し違った側面からも議論したい。

 (5)福島県知事との意見交換について

標記の件について、以下のとおり意見交換があった。
(遠藤委員長代理)  今日中に結論を出す必要があることではないが、原子力委員会からの出席者や意見交換会の進め方について意見を述べたい。まず、原子力委員会からの出席者についてだが、先方は、1つの行政組織体なので、知事が対応することになると思うが、原子力委員会は合議体なので、出席できる原子力委員は全員出席してはどうかと考えている。
 次に、意見交換の進行についてだが、事前に事務方ですり合わせが必要だと思うが、双方のあいさつの後、双方から基本的な意見を述べ、その後に自由な意見交換を行う、といった具合になると思う。また、効率良く議論を進めるためには、藤家委員長に交通巡査のような役割をしてもらえば良いのではないかと考えている。
(木元委員)  今度の意見交換会は、セレモニーのようなものではないので、腹を割って話し合うべきだと思う。まず、我が国のエネルギー行政や原子力について、知事のお考えを伺うことが重要だと思う。その後で、こちらからいろいろと意見を申し上げたり、どうして知事はそのようにお考えなのかとお尋ねしたりすることになるのではないか。まず知事の意見を伺うことから始めたいと思う。
 先方は知事お1人かもしれないが、知事は原子力委員全員が出席することを望んでいるのではないか。先方からのご要望はないのか。先日、サッカーの日本代表チームの表彰式で、佐藤知事に偶然お会いした。そのときに佐藤知事は「8月5日に来られるんですね」とお尋ねになり、その時点では私の予定の調整ができていなかったので、「なるべく調整しますが、伺えないかもしれない」とお答えしたら、「みんな来られるのではないのですか」とおっしゃっていた。知事は、このように原子力委員全員が出席することを期待されているのではないか。あるいは、そうあるものだと思っていらっしゃるのかもしれない。
(遠藤委員長代理)  木元委員と同じ意見であり、都合の付く方は全員出席すべきだと思う。
(竹内委員)  遠藤委員長代理の意見のとおりであり、時間が限られているので、議論の焦点がぼやけないように、交通巡査のような役割をする人が必要だと思う。
(木元委員)  福島県で開催している検討会とは違うので、例えば、相対して座るのではなく、机の配置を「ロ」の字型にしたり、隣り合わせに座ったりすると、雰囲気も変わってくると思う。
(藤家委員長)  その点についても事務方で調整してもらいたい。今度の意見交換会は原子力委員会にとって非常に大切な任務だと思っているので、出席できる原子力委員は出席すべきだと思う。意見交換会では、虚心坦懐に素直に話し合いをしたいと考えている。原子力委員会との意見交換を受け入れていただいたことは、大事に受け止めなければならない。
(木元委員)  私事であるが、本件について記事を書き、7月22日の電気新聞に掲載された。去年の8月に、原子力委員会は「神様の居ない神棚」、という警鐘があったからである。「神様の居ない神棚」が動き出した、動いていってほしいと願っている。

 (6)その他
  • 事務局作成の資料5の第27回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。