平成15年度農林水産省原子力関係予算要求について

平成14年7月30日
農林水産省

1.基本的方針
(1) 農林水産省では、食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)に規定する食料・農業・農村基本計画に基づき、食料自給率向上のための麦・大豆・飼料作物等の品質向上や省力・安定栽培等農業生産の現場を支える技術、主要作物の画期的な品種開発を図るためのゲノム解析等の革新的技術等に関する研究開発を推進している。
(2) また、平成14年4月に公表した「食と農の再生プラン」において、「食」の安全と安心の確保に向けた改革に取り組んでいるところであり、研究開発プロジェクトを企画、総合科学技術会議に提案しているところである。
(3) このような中で、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の「国民生活に貢献する放射線利用」で示されているように、食料の安定・安全な供給に貢献するための放射線の利用や放射線利用技術開発を行っている。
(4) また、原子力関係試験研究分野は、当省においては独立行政法人が中心となって取組んでいることから、平成13年度に策定された法人毎の中期計画に基づき、放射線育種技術の開発等の先導的、基盤的研究開発を原子力試験研究費により実施している。

2.具体的事項
(1)特殊病害虫根絶事業
1)奄美群島におけるアリモドキゾウムシ根絶防除に必要な経費
 (平成15年度予算要求額: 調整中、平成14年度予算額: 67百万円)
2)沖縄県におけるウリミバエ侵入防止事業・イモゾウムシ等根絶防除経費
 (内閣府一括計上予算)
 (平成15年度予算要求額:調整中、平成14年度予算額:803百万円)
 国内の一部地域に発生しているアリモドキゾウムシ等特殊病害虫に対して放射線を利用した不妊虫放飼法により根絶事業を実施し、発生地における農業振興を図る。また、既に根絶が達成されたウリミバエについては、不妊虫放飼による再侵入に備えた対策を常時実施することにより、我が国の農産物の安全で安定的な生産に資する。

(2) RI研修施設の有効活用と管理
 (平成15年度予算要求額:調整中、平成14年度予算額: 42百万円)
 農林分野における研究領域は、バイオテクノロジー等の先端技術を中心としてますます拡大しており、産学官の連携強化や国際的な交流を通じて研究開発を効率的に推進することが必要となっている。このため、RI研修施設では研究交流の拠点として研修や共同研究等の利用に資する。

(3) 原子力試験研究費による研究(文部科学省一括計上予算)
 (平成15年度予算要求額:調整中、平成14年度予算額:262百万円)
 放射標識DNAを利用した昆虫集団の識別・同定法の開発や、突然変異体の作出による新農作物素材の創出技術の開発、「刺さないみつばち」品種の作成等を行う。

(4) 放射能調査研究費(文部科学省一括計上予算)
 (平成15年度予算要求額:調整中、平成14年度予算額:147百万円)
 食の安全性を確保していくため、放射性核種の農作物への吸収移行及び農林生産環境における動態の解明、家畜とその飼養環境、海産生物における放射能汚染状況の把握等を行う調査研究を実施するとともに緊急事態に備えた測定態勢の維持等に務める。


(参 考)放射線の利用について

1 植物の品種改良のための放射線利用

 ○独立行政法人農業生物資源研究所放射線育種場における新品種の育成

 ・ガンマ線等を利用して果樹、花き等農作物の30品種(別添参照)を育成
  (平成14年7月現在)

(例)なしの「ゴールド二十世紀」の育成

  • なしの重要病害である黒斑病に弱い「二十世紀」に耐病性を付与し、平成3年に品種登録された。
  • 全国で約292haの面積で栽培(日本なしの栽培面積の1.7%)されている。(平成10年産。農林水産省果樹花き課調べ)

2 食品照射への放射線の利用
 ○ばれいしょへの食品照射による発芽の抑制
  • 食品衛生法上の基準に従ったガンマ線の照射により、発芽を抑制し長期保存、周年供給に資する。
  • 照射実績数量は約8千トンであり、全国の生産量の0.31%を占める(平成13年産) 。


放射線育種場に係る品種登録・申請等一覧


「職と農の再生」研究開発プロジェクト