第25回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年6月25日(火)10:30〜:11:15
2.場所 中央合同庁舎第4号館6階 共用643会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)
文部科学省原子力安全課原子力規制室
 倉田安全審査企画官
経済産業省原子力安全・保安院原子力発電安全審査課
 佐藤総括安全審査官
 渡辺課長補佐

4.議題
(1)立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(答申)
(2)中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(諮問)
(3)その他

5.配布資料
資料1−1 立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(答申)(案)
資料1−2 立教大学原子力研究所の原子炉の設置変更の概要について
資料2−1 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(諮問)
資料2−2 中部電力株式会社 浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請(1号原子炉施設の変更)の概要について
資料3 第24回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(答申)

標記の件について、倉田安全審査企画官より資料1−2に基づき説明があり、以下の質疑応答の上、平成14年6月3日付け14校文科科第10号をもって諮問のあった標記の件に係る核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する同法第24条第1項第1号、第2号及び第3号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については妥当なものと認め、文部科学大臣あて答申することを決定した。

(遠藤委員長代理)  研究炉から発生した使用済燃料の米国への返還輸送については、立教大学の他に、京都大学などの研究炉も同様である。したがって、研究炉の使用済燃料やMOX燃料、ガラス固化体などの輸送についても総合的に考慮して、できるだけスムーズに進めてほしい。
(藤家委員長)  遠藤委員長代理の発言のとおりであり、全体をどのように見るのかについて議論していきたい。これについては、主に文部科学省が所管していることなので、後で報告してほしい。
(倉田安全審査企画官)  この件については、近日中に報告する予定である。
 先々週の定例会議において、遠藤委員長代理から使用済燃料の返還期限についてご質問があり、その場では2007年とお答えした。これは、京都大学の研究炉の使用済燃料(高濃縮)の搬出完了予定時期が2007年ということである。DOE(米国エネルギー省)の引き取り期限は2009年である。
(藤家委員長)  本件に関し、特に問題はないので、妥当なものと認めることとする。

 (2)中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(諮問)

標記の件について、佐藤総括安全審査官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  本件については、半年以上も議論してきており、佐藤総括安全審査官の説明のとおり、蒸気凝縮系の機能上の必要性はないと思う。引き続き審議するが、早く対応することで、原子力の安全性について世間に見えるようにしたい。
(遠藤委員長代理)  浜岡2号機〜4号機についてはどうなのか。
(佐藤総括安全審査官)  原子力安全・保安院は、事業者に対し、2種類の再発防止対策を指示している。1つは、蒸気が入ってこないように蒸気凝縮系の入口に弁を設置することであり、もう1つは、蒸気凝縮系の配管を撤去することである。現在、蒸気凝縮系を設置しているプラントの数は15基である。浜岡原子力発電所では、1号機〜3号機で蒸気凝縮系を設置しており、1号機では、原因究明の過程で金属調査を行うために、既に当該部の配管を切断しているので、この申請のとおり蒸気凝縮系の配管を撤去することにしている。また、2号機及び3号機では、既に弁が設置されているので、蒸気凝縮系を撤去しないで運転を続けることにしている。
(竹内委員)  他の電気事業者のプラントについてはどうなのか。
(佐藤総括安全審査官)  他の電気事業者のプラントでも、対策が必要なプラントでは基本的に定期検査の期間中に弁を設置する、と聞いている。今のところ、蒸気凝縮系を撤去する予定のプラントは、浜岡原子力発電所1号機及び東北電力の女川原子力発電所1号機だけである。先週、東北電力からこの件について申請があった。
(藤家委員長)  使用済燃料輸送容器のデータ問題のとき、原子力委員会は、規制緩和・合理化・自己責任の観点から、規制を見直すための検討が必要ではないか、というメッセージを出した。これまでの実績を鑑みて、何を合理化し、どのように自己責任を確立していくのかが重要である。蒸気凝縮系は、当初必要と考えられていたが、それは盲腸のようなものだった、ということだと思う。盲腸だから病気になってから切り取れば良い、という考え方もあると思うが、盲腸を予め切り取っておこう、という考え方もあると思う。
 この他にもそういったものはあるのか。
(佐藤総括安全審査官)  藤家委員長のご発言のとおりであり、そういった問題意識については良く理解している。そういったことをそのまま当てはめられるものかどうかが重要だと思う。当初は、蒸気凝縮系は必要だと考えられていたが、1980年代以降に建設されたプラントには設置されていない。これは、そういった問題意識があったからであり、実際に合理化されてきた。他方、今回の事故は、既に設置されているものが事故の原因となった。建設の時点では、蒸気凝縮系の役割が全くなかったわけではなかったので、それを撤去し、合理化するところまでは至らなかった。藤家委員長のご意見のとおり、大きくとらえていれば、合理化していたのかもしれない。
 この他に該当するものがないのかどうかについては、今後詳細に検討していかなければならないが、非常に難しいことである。例えば、アクシデントマネジメントは、その対策の実施を電気事業者に指示しているところだが、これも本当にいざというときの対策であり、設計上は必要のないものである。これについては、それぞれの役割を慎重に議論した上で整理していかなければならないと思う。
(藤家委員長)  我が国では、古い設備への新しいスペックの適用をあまり積極的に実施してこなかった。これまでは、何らかの理由があれば、次の新規プラントから新しいスペックを適用する、という流れがあった。そこで、原子力委員会は、これまでの実績を考慮し、再度見直してはどうか、というメッセージを出した。本件についても、それが盲腸であれば、病気になったときに対処すれば良いのかもしれないが、そうなったときの影響の大きさを考慮して、これからどのように考えていけば良いのかを検討していく必要があると思う。
(佐藤総括安全審査官)  今回の事故は、まさに盲腸が残っていて、それが結果的に事故の原因になってしまったわけだが、それまでは必要性は低いものの、設置されていても害になるものでもない、という考えだったと思う。
(藤家委員長)  これまで積み上げてきた安全実績の知見を持ってしても、今回のような事象を想定できなかった、ということか。
(佐藤総括安全審査官)  そういうことである。
(竹内委員)  原子力発電所は、リスクマネジメントを取り入れて、いろいろなケースを考慮した設計となっている。しかし、システムが複雑になると、新しい事象の要因を作ってしまう場合もある。そのため、新しい事象を発見した場合は、それへの対応が必要だと思う。使用済燃料輸送容器のデータ問題のときは、レジン(中性子遮へい材)の組成が問題になったが、重要なことは、物質の組成ではなく、容器としての機能である。本件と直接関係することではないが、機能という観点で評価することが重要だと思う。
(佐藤総括安全審査官)  検査のあり方については、原子力安全・保安院で検討会を設置し、具体的に議論を進めているところである。
(藤家委員長)  これまでの安全設計の考え方の変遷を見ると、初めのうちはデザイン・セーフティが中心であったが、スリーマイルアイランド原子力発電所事故の後は、オペレーショナル・セーフティも重視されるようになった。これとデザイン・セーフティとの関係をどうするのか。チェルノブイリ発電所事故の後は、さらにアクシデント・マネジメントも重視され、JCOの事故の後は、原子力防災についても考慮されるようになった。これらをつなぐことができる1つのフィロソフィを作っていかなければならない。その一環としてこのような課題がある。これまで原子力発電所を50基以上も建設しており、こういった実績を鑑みれば、21世紀の新しい安全の原則を作ることができるのではないかと期待している。
 (3)その他
  • 原子力関係二法人統合について、以下のとおり意見交換があった。
    (藤家委員長)  今朝、文部科学省で第7回原子力二法人統合準備会議が開催された。本件については、具体化する段階になってきており、さらに議論を進めたいと思う。
     特に具体化の必要な項目としては、組織横断的なマネジメントや産学官の連携強化、効率化・重点化の具体的な方策について、また、それをどのように評価していくのか、といったことが挙げられると思う。
    (竹内委員)  具体化の方向性が重要であり、組織横断的なマネジメントや産官学の連携、放射性廃棄物の処理・処分などについて、今後も原子力委員会で議論していきたい。特に、新法人は将来の原子力研究開発を担う中心となる組織であり、活力ある組織となるための仕組みや、そのための予算編成が重要である。シナジー効果という言葉が良く使われているが、機能化・重点化についても各論的に議論を続けていきたいと思う。
    (遠藤委員長代理)  竹内委員と同じ意見だが、原子力委員会が示した「基本的な考え方」や文部科学省からの報告、準備会議の委員のご提言を見比べると、それらの方針は基本的に同じである。今後どのように進めていくのか、こういった考え方や提言をどのように新法人に反映させていくのかが重要である。また、重点化と同時に切るべきものも考えていかなければならないが、まだ十分に議論されていないと思う。今後、より具体的に議論していく必要がある。
    (藤家委員長)  原子力委員会としては、「基本的な考え方」を示すだけではなく、これからも具体的な議論を進めていかなければならない。今後、関係者の話を聴くことから始めるのか、引き続き原子力委員会として意見を述べていくのか。今後の進め方としては、おそらく両方が必要だと思う。原子力委員会にとって原子力関係予算を審議し決定することも重要な任務であり、原子力二法人の統合は、予算を審議する上でも非常に重要である。また、産学官の連携や役割分担においても重要である。新法人は、我が国の原子力研究開発を中心的に担うことになるので、一方で大学とのつながりを、他方で技術移転などを含めて民間とのつながりをどうするのかについて考えなければならない。具体的には、放射性廃棄物の処理・処分や原子炉の解体における産官学の連携・役割分担についてである。これらは、見方を変えると、原子力において新しい分野と見ることができるかもしれない。今までJPDR(動力試験炉)の解体などのサンプルはあるが、我が国だけで済まない新しい領域が出てくるのかもしれない。そのような場合、原子力委員会が取り組むべきことだと思うので、さらに議論を進めていきたいと思う。
    (遠藤委員長代理)  今後は、当事者である日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構からも意見を聴いた上で議論を進めた方が良いと思う。
    (藤家委員長)  「基本的な考え方」を作成する際、いきなり当該法人から意見を聴くと、現状に流されるのではないかと考慮し控えていたが、これからは当該法人からも意見を聴いていくべきだと思う。本件についての議論は、第2段階に進むべきであり、関係行政機関や当該法人との意見交換の場を設けたいと思う。

  • 原子力白書について、以下のとおり発言があった。
    (遠藤委員長代理)  前回の原子力白書の発行は4年前だったので、なるべく早い時期に今年度の白書を発行したい。6月中に発行する予定だったが、今いろいろなことが動いているので、もう少し様子を見たいと考えている。10月頃までには発行したい。
    (藤家委員長)  今動いているものの中で最たるものは、プルサーマルを中心とした核燃料サイクルである。ITER計画については、時間的に話がまとまるかどうか明らかではないが、少なくともプルサーマルについては、ある段階において、白書にまとめなければならないと思っている。
    (竹内委員)  10月26日は「原子力の日」なので、それまでには発行したい。
    (藤家委員長)  白書の骨子やそれ以外の部分については、引き続き作業を進め、定例会議でも議論していきたい。そして、今動いていることがまとまり次第、白書を発行したいと思う。遅くとも「原子力の日」までに発行できるよう努力したい。

  • 専門部会関係について、以下のとおり意見交換があった。
    (遠藤委員長代理)  第3回核融合専門部会は、7月12日(金)に開催し、最近のITER計画の動きや核融合研究開発の今後の進め方について議論する予定である。
    (竹内委員)  第6回革新炉検討会を6月18日に開催し、報告書(案)について議論したところである。検討会では、革新的原子力システムとは何か、今なぜ求められているのか、といったことについて議論した。また、研究開発を進めるにあたって、産学官の連携はどうあるべきか、何を重点的に開発を進めるのかについて整理した。その上で、主要な革新的原子力システムをリストアップし、整理したところである。
     今後のスケジュールとしては、検討会の委員から再度ご意見をいただいた後、最終的に整理する予定である。その後、検討会の座長から原子力委員会にご報告していただくことになるが、その前に、どのように進んでいるのかについて定例会議で紹介したいと思う。8月下旬からから9月頃を目処に第7回検討会を開催し、現段階での報告書を取りまとめる予定である。
     報告書を取りまとめた後に、どのように重点化していくのかが課題であり、今後どのように議論を進めていくのかについても検討していきたい。
    (藤家委員長)  これからは国際的な視野がとても重要であり、いろいろとウォッチしながら進めていきたい。また、平和利用に専念してきたことも含め、どのようにリーダシップを発揮していくのかについても重要である。また、革新炉の検討では、核燃料サイクルを同時に考えることも重要である。
    (竹内委員)  藤家委員長の意見のとおり、核燃料サイクルも含めて、革新炉の検討を行っている。検討会では、これまで2つの点で議論をしている。1つは、原子力産業の活性化についてであり、発電だけを目的とするのではなく、どうすれば原子炉を汎用的に使えるのか。もう1つは、エネルギーセキュリティの確保についてである。

  • 福島県知事との対話について、以下のとおり意見交換があった。
    (藤家委員長)  先週の定例会議で、福島県知事への意見交換の申し出について報告したが、今朝の新聞によると、それに対し福島県知事が対話を受け入れる、とのことである。本件について、来週の定例会議で議論することにすると、それまでに状況が変わってしまうかもしれないので、今の時点で議論したい。
    (竹内委員)  テレビや新聞から間接的に知ったことだが、福島県知事は、原子力委員会から原子力政策の決定プロセスについて聞きたい、という情報がある。私個人としては、最も重要なことは、将来のエネルギー政策の中での原子力の役割についてだと思う。そういうことについて早い時期に意見交換をしたいと思っている。
    (遠藤委員長代理)  竹内委員と同じ意見である。原子力委員会から手紙を出しているので、その返事を待った方が良いと思う。
    (藤家委員長)  昨日の話では、福島県知事が県議会でその旨発言したと聞いている。いずれにしても、話が前に進んでいるようであり、大事にしていきたい。我々の意見を述べることも大事であるが、相手のご意見を伺うことも非常に大事であり、きちんと対応していきたいと思う。


  • 事務局作成の資料3の第24回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。

  • 次回の定例会議について、以下のとおり発言があった
    (榊原参事官)  7月2日(火)の次回定例会議の議題は、IAEA理事会の結果及び原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)についての報告等を中心に調整中である。
    (遠藤委員長代理)  次回の定例会議では、原子力の平和利用と原子力委員会の役割について意見を述べたいと思う。
    (藤家委員長)  原子力委員会は政策を中心に議論するところであるので、原子力の平和利用についてもきちんと議論しておきたい。また、海外の核燃料サイクル政策についても今後取り上げていきたい。