第23回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年6月11日(火)10:30〜11:50
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 榊原参事官(原子力担当)、菊池主査
経済産業省原子力安全・保安院原子力発電安全審査課
 佐藤総括安全審査官、渡辺課長補佐
文部科学省原子力安全課原子力規制室
 倉田安全審査企画官
文部科学省研究開発局核融合開発室
 大竹室長

4.議題
(1)東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)
(2)立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(諮問)
(3)第4回ITER政府間協議の結果及びITER計画の今後の進め方について
(4)藤家委員長の海外出張報告について
〜ロシア原子力関係要人との意見交換及びロシアエネルギー技術研究所の会議報告について〜
(5)その他

5.配布資料
資料1−1 東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)(案)
資料1−2 東京電力株式会社 柏崎刈羽原子力発電所 原子炉設置変更許可申請(1号原子炉施設の変更)の概要について
資料2−1 立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(諮問)
資料2−2 立教大学原子力研究所の原子炉の設置変更の概要について
資料3 第4回政府間協議について
資料4 藤家原子力委員長の海外出張報告について
資料5−1 第21回原子力委員会臨時会議議事録(案)
資料5−2 第22回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の設置変更(1号原子炉施設の変更)について(答申)

 標記の件について、佐藤総括安全審査官より資料1に基づき説明があり、以下の質疑応答の上、平成14年3月25日付け平成14・01・25原第1号をもって諮問のあった標記の件に係る核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する同法第24条第1項第1号、第2号及び第3号(経理的基礎に係る部分に限る。)に規定する基準の適用については妥当なものと認め、経済産業大臣あて答申することを決定した。
(遠藤委員長代理)  この工事には、どのくらいの期間を要するのか。
(佐藤総括安全審査官)  資料1−2の4頁に記載しているとおり、数ヶ月程度である。
(遠藤委員長代理)  工事期間中は、原子炉を止めるのか。
(佐藤総括安全審査官)  定期検査の期間を利用して、工事を実施することになる。
(竹内委員)  今回の変更では、新しく開発された技術を古い施設に適用している。この変更により、機能が改善されて操作性が良くなり、その結果、信頼性の向上につながることになると思う。本件は、全く問題がないと考える。
(藤家委員長)  この工事は定期検査の期間中に行うので、実際に本件に関する工事を実施する期間は、それよりも短いはずである。
(佐藤総括安全審査官)  そのとおりだと思う。
(藤家委員長)  このような変更は、あと何基残っているのか。
(佐藤総括安全審査官)  起動領域モニターは既に16基で採用されており、全BWR(沸騰水型原子炉)のうち半分ぐらいで使われている。また、この交流電源は、既に10基で採用されている。
(藤家委員長)  MGセット設備のフライホイールがなくなるので、保守が楽になる。我が国では、予定外の原子炉スクラムはもともと少ないが、その実績をさらに高めることができると思う。また、工事に要する資金も8億円程度であり、特に問題はないので、妥当なものと認めることとする。

 (2)立教大学原子力研究所の原子炉設置変更[使用済燃料の処分の方法の変更]について(諮問)

 標記の件について、倉田安全審査企画官より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)  立教大学のみならず他の研究炉も同様だが、研究炉の燃料はもともと米国のものなので、使用済燃料を返還する必要がある。それには返還期限があったと思うが、返還計画はどうなっているのか。
(倉田安全審査企画官)  立教大学からは、早ければ今年末、遅くても今年度末までに米国に引き渡す、と聞いている。
(遠藤委員長代理)  資料2−1には、工事を伴わないので資金を必要としない、とあるが、輸送の費用は別なのか。
(倉田安全審査企画官)  そのとおりである。全体でおよそ5億7千万円かかる。そのうちのおよそ半分はキャスクの製作費用、残り半分は輸送や米国での保管にかかる費用だと聞いている。
(遠藤委員長代理)  商業炉から出た使用済燃料の海外への輸送は終わったと聞いているが、大学やメーカーの研究炉から出た使用済燃料の輸送は残っている。使用済燃料の輸送については、今まで問題になったことはなかったが、輸送経路の沿岸の国々が敏感になってきており、最近は輸送が難しくなってきている。そのため、どのようなタイミングで、どうしたら国際的なトラブルが起きないかについても考慮し、計画的に進める必要がある。今後、関係省庁とも連携を取りながら、使用済燃料ばかりでなく、MOX燃料や高レベル放射性廃棄物の輸送も考慮した中期的な計画を考えてほしい。
(藤家委員長)  原子力委員会としては、使用済燃料の返還輸送や、未臨界実験装置の使用済燃料をどうするのか、また、研究炉の将来をどうするのかについて、全体をとらえながら議論していきたいと考えている。本件は、原子炉等規制法に基づいたものであり、原子力委員会だけで審議する珍しいケースである。いずれにしても、社会的な要請もあるので、このような後始末の問題は、現時点で明確にしておく必要がある。
(倉田安全審査企画官)  遠藤委員長代理からご質問のあった米国への返還の期限は、2007年である。
(藤家委員長)  本件は廃炉につながる話でもあり、また、国内で処理しなければならない使用済燃料もある。こういうことも重要だと思う。引き続き審議していきたい。

 (3)第4回ITER政府間協議の結果及びITER計画の今後の進め方について

 標記の件について、大竹室長より資料3に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)  サイト選定では、どのような項目で評価することになるのか。
(大竹室長)  昨年、国内の候補地について、EDA(工学設計活動)の詳細設計報告書にまとめられた条件を用いて、サイト評価を行った。基本的には、国際的なサイト評価も、これと同じような条件で行われることになると思う。
(遠藤委員長代理)  それは、我が国の希望ではないか。
(大竹室長)  評価項目については、各極の合意がほぼ得られている。カナダは評価項目の追加を希望しているが、それは付加的な項目とすることで評価を進める予定である。さらに、どのような体制でどのように評価を進めるのかについては、サブグループにその検討を委任している。サブグループには、各極から数人の専門家と、EDAのときから設置している国際共同チームから何人か参加し、そういった混成チームで客観的な評価を行う。我が国としては、サイトへの訪問もしてもらい、納得のいく形で客観的な評価をしてもらうつもりである。そういった流れについても、各極の合意が得られると考えている。
(竹内委員)  評価の中立性や客観性を考慮すると、推進側の委員だけではなく、中立的な立場の委員にも入ってもらって、評価を行うべきだと思う。
(大竹室長)  これは技術的な評価なので、地盤や電力供給が大丈夫なのか、ITERは工学的に達成できるのか、といったことについて評価しなければならない。また、評価項目には、社会文化的側面という項目もある。日本国内のサイト評価では、地盤や電力供給について、原子力や核融合の専門家でない方に中立的に評価してもらい、社会文化的側面についても、人文系の専門家に評価してもらった。サブグループのメンバー構成については、これから検討していくことになる。
(竹内委員)  そのメンバーは各極でそれぞれ選出するのか。
(大竹室長)  そのとおりである。
(遠藤委員長代理)  この評価は、オープンにして行うのか。
(大竹室長)  国際的なものなので難しい。会議室でメンバーを集めてやるのか、テレビ会議でやるのかは分からない。この点についても、これから調整していかなければならない。基本的には、政府間協議でも議論があったが、評価は客観的に行うべきであり、例えば、交渉者が評価するのではなく、中立的な立場の方に評価していただくことになると思う。
(藤家委員長)  中立的な評価をしてくれる方がいるのかと心配している。
(大竹室長)  いると期待している。メンバーは各極から選ばれるので、ある極が自分に都合のいい評価をしても、他の極のメンバーがいるため、トータルでは中立性を保てると思う。また、サイト提案をしていないロシアや国際共同チームのメンバーも中立的に評価してくれると考えている。
(藤家委員長)  次第にオリンピックの誘致に似てきたように思える。今回の政府間協議で、なぜ仏国ペラ原子力庁最高顧問と英国キング政府主席科学顧問が出席したのか。青森で政府間協議を開催するときは、原子力委員も出席すべきか、お祭り的な要素を入れるのか。
(遠藤委員長代理)  サイト選定で中立的に評価することは、とても難しいことだと思う。
(大竹室長)  本質的な問題だと思う。サイトを評価した後に、費用分担や人事などとあわせて協議をしなければならないので、サイト評価ではなるべく中立的な評価になるように努力したい、と政府間協議で発言した。誘致については、その活動を派手に行うのかどうかは別にして、印象が重要だと思う。今回の協議では、会議支援を行ったフランスの準備が不十分だったようであり、フランスは本気で誘致するつもりがあるのか、といった印象をヨーロッパの方々も受けたのではないかと思う。ロジスティックスをしっかり行うことは重要なことだと思う。これを「他山の石」として、サイト訪問のときや青森で政府間協議を開催するときは、十分に配慮したい。
(藤家委員長)  原子力委員会では、このITER計画について、長い時間をかけて議論し、昨年、ITER計画への意欲を強く示す結論を出した。最近、ITER計画が非常に身近になってきたと思っているので、適宜報告してほしい。
(大竹室長)  また、定例会議や核融合専門部会で議論していただきたい。
(遠藤委員長代理)  原子力委員会として、今後ITER計画にどのように取り組んでいくのか、ということを議論したい。
 まず、ITER計画の交渉については、交渉団に相応の自由裁量権を与えて進めることになるが、交渉の都度あるいは必要があれば適宜に状況を報告してほしい。また、それと併せて、交渉に臨む前に、このような大きな問題がある、ということを報告してほしいと思う。交渉前は議論を公開できないと思うが、主要な点についてこのように交渉してきてほしい、というような議論をしたいと考えている。
 また、ITER計画は、原子力研究開発計画の一環なので、特に財政的に厳しい最近の状況の下では、原子力予算全体の中でのITER計画の位置付けを常に考えていくべきである。さらに、核融合の研究開発は、ITERで採用しているトカマク型だけではなく、ヘリカル型もあればレーザー型の炉などの研究開発もあるので、核融合の中でITER計画をどのように位置付けるのか、についても原子力委員会として十分に検討していく必要がある。また、これと関連することだが、原子力委員会で10年ぐらい前に第三段階核融合研究開発基本計画を作成したが、この基本計画の見直しのための検討が必要だと思う。
 それから、原子力委員会としては、ITER計画が厳密に管理されているのかどうかを把握しておき、必要に応じて、適切に関与していくことが必要だと思う。
 また、ITER計画については、国民の皆さんの理解が得られるように努力することが必要である。各行政機関が行うことだが、原子力委員会としても取り組んでいく必要があると思う。
 以上を整理すると、原子力委員会で主に議論していくべきことは、1つ目は交渉における原子力委員会の関与について、2つ目は原子力研究開発計画の中でのITER計画の位置付けについて、3つ目は核融合研究開発の中でのITER計画の位置付けについて、4つ目はITER計画の管理について、5つ目は国民の理解のための取組みについて、ということだと思う。
(竹内委員)  原子力関係予算との関係では、ITER計画の位置付けが大きな課題だと思っている。また、国民の皆さんに対しても、ITER計画はどのような位置付けになっているのかについて発信していかなければならない。これはITER計画に限ったことではなく、高速炉なども同様だと思う。
(藤家委員長)  各々の原子力政策の重要度をどのように見るのかが、原子力委員会として重要なことである。ITER計画の管理については、どのような管理ができるのか、といったことも議論の対象になると思う。それから、現在の財政事情を考えると、ITERの誘致を前提に原子力全体の予算を考える場合は、予算の効率化・重点化をしなければならないと思う。遠藤委員長代理の意見のとおり、第三段階核融合研究開発基本計画は10年前に作られたものであり、その後いろいろと核融合のコンセプトに対する状況が変わってきたり、システムに対する考え方もかなり進展したりしているので、今の時点でどのように評価するのか、といったように見直しが必要である。原子力委員会としては、文部科学省と双方向的に議論を深めながら進めていきたいと思う。
(大竹室長)  核融合専門部会では、これまでなかなかITER計画に関して十分なお話しをできなかった。文部科学省では、科学技術・学術審議会で核融合の研究開発体制について検討を進めているところであり、その内容についても核融合専門部会などでご報告し、ご指導いただきたいと思っている。

 (4)藤家委員長の海外出張報告について
 〜ロシア原子力関係要人との意見交換及びロシアエネルギー技術研究所の会議報告について〜

 標記の件について、菊池主査より資料4に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(藤家委員長)  資料に、「確認した」や「共通の認識が得られた」という表現があるが、これは、両方が納得した、という意味である。ロシア側が「述べられた」というのは、こちらからは何も述べず、ロシア側が期待を述べた、ということである。
(遠藤委員長代理)  資料に、「ロシア側より、核燃料の供給サービス、極東での原子力発電所建設等の産業分野での今後の日本との協力への期待が示された。」とあるが、これについて何か他に発言はあったのか。
(藤家委員長)  使用済燃料の中間貯蔵などについては、ロシアは以前から話していたが、我が国はあまり考えていないことを前の原子力省次官が来日したときに、すでに伝えている。今回の会談では、シベリアで発電所を建設して、日本に電気を送る、また、中間貯蔵施設を建て、そこで得た利益をもとに再処理工場を作り、MOX燃料に加工して日本に返還する、といった話もあった。こういった話は一筋縄でいくことではないと思っており、こちらからは軽々な発言をしていない。これから我が国にとって大切だと思うところは確認してきており、明確なメッセージが届いた段階で報告したいと思う。
 今、日米欧露は4つの極になって、一緒になって考えていこう、といったムードが非常に強くなっており、政府間ベースでもそのような動きが見え始めたと強く思っている。昨年、ブッシュ政権のエネルギー政策が示されており、原子力委員会がこれまで検討してきたことは、決して無駄ではなく、これからリーダーシップをとっていく上で大切なことだったと考えている。
(竹内委員)  米国やロシアの動きについて紹介してほしい。
(藤家委員長)  昨年の原子力産業会議年次大会で話したとおり、世界は核燃料サイクルに戻りつつあり、さらにその時点に比べ、かなり加速されてきている、といった印象がある。原子力は、高速炉と核燃料サイクルを確立することが最終的な目標であり、当面はプルサーマルを進めながら軽水炉のサイクルを確立する、といったステップアップが世界共通の認識になっている。米国においても、解体核については、かつては半分を埋めてしまうことになっていたが、やはり燃やすのだ、ということでプルサーマル路線が選択された。これには大きな意味があると思う。
 また、米国とロシアは解体核や革新炉の件で相当話を進めるのではないか、ということに強い関心を持っている。これに対し、一貫して核燃料サイクルの重要性を訴えてきた我が国が、逆に取り残されてしまうのではないか、ということを懸念している。この件については、具体化した段階でまた議論していきたい。
(遠藤委員長代理)  米国とロシアについては、今、動きが非常に早く、解体核ばかりでなく、民生の原子力分野でも非常に活発に動いているので、気を付けていきたい。

 (4)その他
  • 原子力委員会の当面の重要課題について、以下のとおり意見交換があった。
    (藤家委員長)  原子力委員会では、これまでいろいろなことを議論してきているが、このような場で、具体的な形で話をしていくことが、とても大事だと思っている。その中で重要なことは、今のように厳しい国家財政事情の下において原子力関係予算をどのように考えていくのか、ということである。原子力委員会としては、必要なものは必要だと明確に示していかなければならない。つまり、それは、原子力政策のどこをどのように効率化・重点化していくのか、ということに帰着すると思う。その件については、いずれ議論したいと思う。
     それから、核融合については、遠藤委員長代理から説明があったとおりだが、さらに、核燃料サイクルや革新炉、国際関係などについても重要である。日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合については、ご承知のとおり、すでに原子力委員会としての基本的な考え方を示しているが、あくまでも基本的な考え方なので、さらにいろいろな議論が必要である。これは、原子力委員会が検討していくのと同時に、担当行政機関としての文部科学省が具体的に対応していくことになるが、お互いの立場を明確にしながら、双方向的な議論を進めていくことになる。また、必要に応じて、原子力委員会で意見の陳述あるいは進捗状況を説明していただくこともあると思う。さらに、いろいろなところで議論になっている人材確保についても、とても重要なので、原子力委員会で議論を続けていきたいと思っている。ただ、時間的に余裕はないので、時間を限定してまとめていくようにしたいと思っている。特に財源問題については、何が必要で、どのような状況下であってもこれはやらなければならない、と言い続けなければならない。それから、対応が求められている問題としては、テロ問題などがあり、これについても議論していきたいと思っている。なるべく議題として事前に明確にしたいと思っているが、「その他」で取り上げる場合もあると思う。

  • 原子力の平和利用原則について、以下のとおり意見交換があった。
    (藤家委員長)  先週の定例会議でも議論になったが、原子力の平和利用原則について、もう少し議論を続けたい。かつて、原子力委員会は「原子力平和利用の番人」、とよく言われていた。もちろん、その役割は今も変わっていない。このような点を中心に引き続き議論したい。
    (遠藤委員長代理)  原子力の平和利用の枠組みについては、憲法上の問題やNPT(核兵器不拡散条約)などの条約上の問題、原子力基本法上の問題、国の政策上の問題等いろいろな側面から見なければならない。しかしながら、我が国としては、原子力基本法に書いてあるとおり平和利用に徹しており、それを守っていくことが原子力委員会の最大の任務だと思う。ここで重要なことは、我が国の原子力の平和利用について、どのように内外の信頼を確保していくのか、ということである。整然と分けられるものではないが、国内と国外に分けて考えたい。
     国内では、IAEA(国際原子力機関)の保障措置をきちんと守ることと、原子力利用が完全に透明になっていることが必要だと思う。具体的には、プルトニウムの利用や燃料の濃縮が問題になるので、最大の注意を払っていく必要がある。特にプルトニウムの平和利用については、どのように透明性を確保していくのかが重要であり、大きな課題である。
     対外的には、日本は平和利用に徹している、と言い続けることが最も大切であり、併せて、国際的に理解してもらうことが重要である。こういった観点から、IAEAの保障措置は国際的な身の証になるという要素が非常に大きい。国際的にこれをきちんと実施していき、それと併せて、国際社会が理解できる形で、我が国の平和利用を理解してもらう活動を行っていくことが非常に重要である。
     このように、平和利用の維持をあらゆる側面で進めていくことが、原子力委員会の任務ではないかと思う。残念なことだが、国内外で、それに対する理解にギャップがあるので、それを縮めていくことが必要だと思う。
    (竹内委員)  遠藤委員長代理の意見のとおりだと思う。プルトニウム利用は、日本にとって絶対に必要なことである。また、日本人が平和利用に徹していると言っても、国際的にそれを認めてもらわないと意味がないと思う。それに対して、どのように対応するのか。これまで議論してきたことだが、プルトニウム利用の透明性を向上させることと、精神的にも日本人は間違えることはない、ということを世界に発信していくことが重要であり、そういった点について、もっと力を入れて取り組んでいかなければならないと思う。
    (藤家委員長)  我が国は、原子力の平和利用を進める上で、核の問題に対する見解を明確にしておく必要があると思う。このような議論は、これまで何回か問題になっている。「あかつき丸」がプルトニウムを運んできたときもいろいろな議論があり、「もんじゅ」が臨界に達したときも、核武装につながるのではないか、といったような外国からの批判があった。国内の理解と国際社会の理解のギャップをどのように埋めて、どのように日本の立場を表明していくのか、が重要なことである。やはり、広島・長崎を経験した我が国の、核に対する国民的な悲願を大切にしなければならない。しかし、国際社会では、それだけですべてを割り切るわけにはいかない。むしろ、日本が国際的に信頼される必要がある。「信頼すれど検証す」という有名な言葉があり、それに耐えられるだけの信頼と透明性を確保していかなければならない。原子力委員会は、ご承知のとおり、原子力基本法に則って設置された委員会なので、確かに一方で憲法解釈や非核三原則の議論もあることは承知しているが、原子力基本法が原子力委員会に要求していることは、平和目的に限って原子力の研究開発及び利用があり得るのだ、ということであり、まさにこれが「原子力の平和利用の番人」と言われているところである。したがって、原子力基本法を改正しようといった動きが具体的に出てきたときは、原子力委員会は身を挺してこれと対決しなければならない。そういうことが、国民から期待されていると認識しており、原子力委員会はこれを常に念頭に置いてやっていく。また、このように原子力委員会が議論を行い、原子力委員会の姿勢が見える、ということで十分に意味があると思っている。幸いこの会議は公開しているので、皆さんがお聞きになって、各々の原子力委員がこのような考えを持ち、1つの方向を見ているのだ、ということをご理解いただけると思う。それから、この件についていろいろと議論になっているが、その反応を見ていると、健全な話だと思っている。いきなり非核三原則の改訂につながるようなことはない。原子力委員会は、今後も状況をきちんと認識していく必要があり、また、必要に応じ意志表明をしていかなければならないと思っているが、今の時点では、ここまでの議論にとどめておいても十分であると思う。
    (遠藤委員長代理)  私もそう思う。
    (藤家委員長)  この件については、前回の定例会議でも議論したし、個人的にもいろいろな形で触れている。さらに重要なことは、我が国の原子力の原点は何か、ということを議論し、広島・長崎での不幸な体験を踏まえ、原子力の平和利用に徹することを確認した上で現行の原子力長期計画を策定した、ということである。こうしたことを再度皆さんに明らかにしておく必要があると思っている。
    (遠藤委員長代理)  5月28日(火)の定例会議で、プルトニウムの利用は平和利用に限るのだと述べており、このような議論を通して再確認できればいいと思う。藤家委員長の提案に賛成である。
    (藤家委員長)  本件については、竹内委員も第19回原子力政策青森賢人会議で発言しており、また、5月28日(火)の定例会議でも、文書で発信している。これからも、平和利用に関することについては、原子力委員会は自ら判断し、メッセージを出していきたいと思う。

  • 福島県知事への意見交換の申入れについて、以下のとおり意見交換があった。
    (藤家委員長)  プルサーマルについても、これまでいろいろな形で議論を行い、メッセージを出してきている。最近の話題についても、前回の定例会議で議論を行った。これについて、もう少し検討を進め、原子力委員会としてどのように対応するのかについて議論したい。
    (遠藤委員長代理)  核燃料サイクルは、我が国のエネルギー政策上あるいは環境政策上必要であり、その第1歩としてプルサーマルの推進が必要である。プルサーマルは、これに加えて、平和利用の観点からも必要だと思う。プルサーマルや核燃料サイクルについていろいろなご意見があることは、いろいろな情報から承知しているが、実際はどうなのか、直接話合いをしたいと思っており、また、そうすべきだと考えている。
    (竹内委員)  ここ半月ぐらい、特に福島県の話題が多くなっている。原子力委員会としては、福島県知事のご意見を直接伺っていないので、直接意見交換をする機会を是非作りたいと考えている。資源の乏しい我が国は、やはりプルトニウムを利用したリサイクル社会に持っていかなければならない。核燃料サイクルは、国のエネルギーセキュリティの根幹となるものである。個人的には、核融合はさらにその先のものだ、と思っている。そういったことで、プルサーマルは序の口であり、それがここ2年間進展していないということは、国のエネルギー政策上大きな問題だと思う。是非とも皆さんにご理解いただき、プルサーマルを進めていきたいと考えている。
    (遠藤委員長代理)  六ケ所村の再処理工場は予定通り建設が着実に進んでいるので、この問題は先送りしないで、早急にそのような意見交換の機会を持つべきだと思う。
    (藤家委員長)  原子力委員会では、これまでもいろいろな形で対話を求めてきた。平成8年に「三県知事提言」があった後、原子力委員会では定例会議や専門部会を公開とし、透明性を高める努力をした。それから、政策決定過程における国民参加を促進するために、原子力政策円卓会議を2期にわたって開催した。さらに、原子力政策を明確にしてほしいというご要望があったので、現行の原子力長期計画を一昨年11月に策定した。このようないろいろな対応を通して、「三県知事提言」にお答えすることができたと思っている。しかし、報道による情報だけで意思疎通を図ることはとても難しいことなので、原子力委員会としては、何らかの形でまず福島県知事とお会いすることを考えたい。それをどのような形で実行するのかも含めて、事務方で検討し、早急に対応したいと思う。

  • 事務局作成の資料5−1の第21回原子力委員会臨時会議議事録(案)及び資料5−2の第22回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。

  • 事務局より、6月18日(火)に次回定例会議が開催される旨、発言があった。