第22回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年6月4日(火)10:30~12:00
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、木元委員、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 嶋野企画官(原子力担当)、渡辺参事官補佐
日本学術会議
 原子力工学研究連絡委員会 木村委員長
 原子力基礎研究専門委員会 田川委員長

4.議題
(1)市民参加懇談会の今後の活動について
(2)大学との連携のあり方に関する日本学術会議との意見交換について
~原子力関係二法人の統合に関して~
(3)その他

5.配布資料
資料1-1 市民参加懇談会の平成13年度の活動について
資料1-2 平成14年度における「市民との懇談会」地域開催について(座長報告)
資料2 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合と我が国における原子力研究体制について
資料3 第20回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)市民参加懇談会の今後の活動について

 標記の件について、渡辺参事官補佐より資料1に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(木元委員)  6月3日(月)に、市民参加懇談会のコアメンバー会議を開催した。渡辺参事官補佐から報告があったとおり、市民参加懇談会では、これまでいろいろな経緯があった。コアメンバー会議では、現段階でやらなければならないことや、期待されていることなどを踏まえて議論を行った。現状については報告のとおりであるが、柏崎市での開催については、柏崎市の方々のご要望があり、刈羽村についても継続開催のご意志があるので、開催しなければならない。但し、我々の主導で開催するのではなく、その地域の方々のご意見を伺いながら開催していく、という方法で進めていきたいので、私も柏崎市に何度もお伺いしている。推進派をはじめ、反対派の方々にも個人的にお会いしたし、共産党系の方のお宅にもお伺いした。その後、共産党系の方には懇談会にご出席いただける、との報告を受けた。ただ、それには具体的な条件があって、例えば、プルサーマルの安全性などの質問に答えてくれるのであれば出席する、ということであった。市民参加懇談会としては、もっと基本的なご意見を伺いたい、と思っているので、その点については、再度コアメンバーの方々や地元の方々と相談しながら進めていきたいと思う。柏崎市や刈羽村には、今、国や電気事業者の方々がプルサーマルの理解活動をしているので、市民参加懇談会がその一部だと見られているところがある。そういったことがあるし、時期的な問題もあるので、少しスタンスを置いて、もう少し先に開催した方が良いのではないか、といったご意見が、地元の方々からも出ている。柏崎市とはこれからもコンタクトを取り続けていくが、開催は先になると思う。そこで、以前からご要望のあった電力大消費地で開催しよう、ということになっている。住民投票の後、刈羽村からの呼びかけもあったので、ホットなイシューを持っているところから開催させていただいたが、電力消費地での開催も考えており、今後日本はどう生きていくのか、エネルギー政策をどうしていくのか、を広く聴きたい。そこで、まず最も身近な東京ではどうか、といった話が出ている。コアメンバー会議でも賛成いただいたので、東京で開催しようと思っている。開催時期は、7月の終わりから8月の頭を予定しており、コアメンバーの方々のご都合を伺い、また、ご出席、ご発言いただく方をどのように選ぶのか、などについて再度議論したいと思う。それと並行して、例えば、ご要望のある福島など、いろいろな場所、いろいろな方法で市民参加懇談会を開催したい。
 それから、10月26日の原子力の日に開催する件についても、コアメンバー会議で議論した。原子力の日に開催する懇談会では、もっとマクロ的な意味で、原子力委員会はこういうことを皆さんに訴えたい、また、皆さんからご意見を伺いたい、といった形でも開催したいと考えている。
 また、私は、3月8日(金)に、柏崎市で評論家として講演させていただいたが、同じ日に反対派の方たちが別に集会を開催した。その集会に、市民参加懇談会のコアメンバーの吉岡委員が招待されていた。私が出席したのは、商工会議所や原子力発電に理解のある方々が主催した会であり、私は「日本のエネルギー自立を考える」というテーマで講演した。一方で、吉岡委員は反対派の集会に参加されて、自分は原子力に対してどのような考えを持っているのかについて講演された、と聞いている。その後柏崎市で、コアメンバーの方といろいろな方にお会いした。「原発反対地元三団体」や「プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク」の方々など批判的な方々にも積極的にお会いした。そのときは、吉岡委員もご都合が良かったのだが、反対派の方から、そのような場に行くと吉岡委員の主張が曲がってしまうのではないか、といったご批判があったので、吉岡委員は柏崎市に行かなかった、ということであった。市民参加懇談会は、どのようなご意見でも主張していただける場であるので、こういったことは非常に残念なことである。市民参加懇談会の趣旨がまだ正しく認識されていないことを痛感した。市民参加懇談会とはこのようなものだ、また、私達は、原子力ありきではなく、なぜ原子力なのか、なぜ核燃料サイクルなのか、といったことに対する意見を常に広く聴いていきたいと思う。また、例えば、刈羽村の住民投票でプルサーマルを受け入れないという意思を表明された方は、なぜそのようにお考えになったのか、その場合、日本のエネルギー供給はどうあったら良いのか、といったことなどについて、市民の方々のお声を伺っていくことが、とても重要である。そういった根源的なことについて話し合っていく、という姿勢を貫いていきたいと思う。原子力発電所の立地地域に行くと、どうしても現実の問題として、プルトニウムは安全なのだろうか、といったお声があるので、そういったお声を聴きながら、懇談会を進めていきたいと思う。
 このように一生懸命取り組みたいと考えているが、7月か8月に東京で市民参加懇談会を開催することについては、いかがであろうか。ご賛同いただければ、再度コアメンバーと議論して進めていきたいと思っている。その場合、発言いただく方を公募するかどうか。円卓会議のように、例えば10人の方に発言いただくとした場合、5人ぐらいをいろいろな立場の方からこちらで選び、あとの5人を公募する、という方法もあるのではないか、と考えている。市民参加懇談会は、できるだけ「市民参加懇談会inかりわ」と同じように、フラットなフロアで、ロの字型あるいは円卓のように座席を配置して、その周りを皆さんが囲み、お互いに顔が見え、声はマイクを通さなくても聞こえる、といったような会場で開催したいと思っている。
(竹内委員)  市民参加懇談会は、まだ型が固まっていないので、いろいろなスタイルで行うことができると思う。なぜ今プルサーマルが必要か、ではなくて、幅広く皆さんのご意見を聴く、という形で育てていけば良いと考えている。
 柏崎市などで、プルサーマルの安全性についてご質問がある場合には、別の会を開催して説明させていただく、というのはどうか。市民参加懇談会では、やりにくいのではないか。
(木元委員)  それは、今回ご出席する方々の条件でもあり、なるべくご要望に応えたいので、目下、考えているところである。共産党系の方々のご要望は、プルサーマルの安全性について、国や電気事業者に質問したが、きちんとした回答が返ってこないので、市民参加懇談会の場で再度質問させてほしい、ということであった。市民参加懇談会には、立場の異なる方々が出席するので、それだけにこだわることもできない。では、そのような質問に対し回答できるような体制を整えておくのか、それとも一切回答しないのか。私は、答えられるところまで答えて、それ以外のことはあらためて回答した方が良いと思う。1度は受け止めなければならないと思っている。その点についても相談したい。
(遠藤委員長代理)  東京では、これまでいろいろな会合が開かれている。市民参加懇談会を東京で開催するときは、ぜひ独自のスタイルで開催してほしいと思う。
(木元委員)  コアメンバーの方々からも、他の会合と同じようにやったのでは意味がない、といったご意見があった。市民参加懇談会はかくあるべき、といったような手法のマニュアルはないので、自由に考えて、その場その場で最もふさわしい形を作りたいと思っている。
(藤家委員長)  市民参加懇談会には、何か新しいものが出てくることを期待している。ただし、特効薬がないことも事実であるので、やりながら直すべきところは直していく、といった具合で進めていけば良いと思う。

 (2)大学との連携のあり方に関する日本学術会議との意見交換について
 ~原子力関係二法人の統合に関して~

 標記の件について、木村委員長及び田川委員長より資料2に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(木元委員)  この報告は、どこに出しているのか。
(木村委員長)  この報告は、すべての関係省庁に見てもらうことになる。まず、先日の文部科学省の原子力二法人統合準備会議で報告をした。経済産業省にも報告する予定である。
(木元委員)  日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合については、国民の皆さんの関心が低く、ひとごとのように感じられているところがあるが、とても重要なことである。ご報告の中で「なるべく国民の信頼を得て」とあったが、やはり国民の皆さんに分かりやすく示すと、「よし、やるぞ」という気持ちが若い人に出てくると思う。そういったことをアピールするようにまとめると、違ってくるのではないかと思う。
(田川委員長)  この報告書は、日本学術会議のホームページで公開している。木元委員のご指摘のとおり、もう少し積極的に、国民の皆さんに知ってもらえるような方策を考えていきたい。
(木元委員)  分かりやすく、明るく。アカデミックなものなので、どうしても日本学術会議というのは地味に見られてしまう。
(木村委員長)  先ほど言い忘れたことであるが、この報告書を出した日に記者会見を行い、新聞記者の方にたくさんきていただいた。しかし、あまり記事にはならなかった。
(遠藤委員長代理)  現在も日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構と協力関係があると思うが、それは、二法人の統合の後、どのような点を新しく重点的にやれば良いとお考えか。
(木村委員長)  日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構と大学との連携の現状については、報告書の9頁に記述している。日本原子力研究所が創設された後、早い時点から、設備を大学との共同利用に開放していただいており、連携はいろいろな形で進んでいる。ただ、法律には、大学との共同利用を行う必要がある、とは書かれていない。これから独立行政法人の法律を作ることになると思うが、大学や民間と協力する、といったことを法律に明記してほしいと思っている。法律に書いてあればできるのか、ということはまた別の問題としてあるものの、法律に明記することにより、国として進めるべき研究により本格的に参加したり、人材育成でさらに連携していくことができると思う。
(藤家委員長)  今、木村委員長はとても大事なことをおっしゃったと思う。そういった点を法律に明記することを提案されたが、従来、大学における原子力研究は、その自由度を確保するために、原子力委員会で見るものの中に入っていない。しかし、明らかに時代は変わってきており、行政改革により文部省と科学技術庁が一緒になったこともあるので、そういったことも議論の対象になるのかもしれない。
(遠藤委員長代理)  今、具体的な提案をいただいたが、それはこの報告書のどこに書かれているのか。
(木村委員長)  報告書の5頁以降に提言をまとめている。大学と新法人は、その設立理念が違うので、何でも一緒に、というわけにはいかないが、その点に留意しながら連携を強化すべきだ、とまとめている。その後に、原子力エネルギーの場合、放射線・加速器利用の場合及び人材育成についてまとめている。
 原子力エネルギーに関しては、国として推進していく研究開発に大学からも積極的に参加できたら良いと思うが、特に新しい原子炉の基礎研究には、もっと新法人と大学が、人材の交流も含めて、提携を強化したらどうかと思う。
 放射線・加速器利用については、現在も連携して研究を行っているが、単に研究に参加するだけではなく、大学を含む研究者コミュニティで運営に関する諮問的な委員会を作り、その下で運営そのものについても一緒に検討していく、といったことを提案している。例えば、米国のブルックヘブン国立研究所などでは、大学連合が独自に諮問委員会を持っているので、そういった形もありうるのではないかと思う。
 人材育成については、共同実験や学生の研究などでお世話になっているが、新法人では、連携大学院などもっと本格的に踏み込むことが考えられる。そのときは大学からも積極的に参加したい。
 また、研究設備については、大学では大きな設備を持つことが難しい状況にあるので、新法人の設備を使わせていただき、共同で研究を行い、併せて学生も育てていく、といった提言を報告書にまとめている。
(田川委員長)  原子力委員会でここ数年間サポートしてきたSPring-8や中性子科学が、今、大きな流れになっているのだと思う。二法人の統合の後で、そのような流れが止まらないように、きちんと担保していただきたい。
 木村委員長のご意見のとおり、法律に反映されると、かなり違うのではないかと思う。時代としては、そのようになってきているのだと思う。大学と新法人の役割は全く異なるものの、その接点では連携・協力する、ということが非常に重要だと思っている。
(藤家委員長)  新法人は特殊法人から独立行政法人になるので、国の関与は減ることになる。そこが大きな特徴である。どのように連携を保っていくのか。
 この報告書の(1)から(4)の提言については、原子力委員会でもそれぞれに考えている。特に、(4)の大学等で発生した放射性廃棄物の処理・処分については、大きな課題であるが、きちんと処理しなければならないと考えている。
 二法人の統合については、これから3年かけて具体化していくことになるが、まず原子力委員会で基本的な考え方を示し、そして、関係行政機関で実際に具体化することになる。この報告書には、基本的な考え方はすべて盛り込まれているが、遠藤委員長代理の意見のとおり、これを具体化するときには、具体的な中身がもう少し見えた方が良いと思う。
(遠藤委員長代理)  文部科学省の原子力二法人統合準備会議についても、一般論だけでなく、具体的なものが盛り込まれるように見ていかなければならない、と思っている。日本学術会議でも、ご提言にあるような具体的な点が盛り込まれるように見ていかなければならないと思う。
(藤家委員長)  場合によっては、懇談会を開催しても良いと思う。ぜひその点を考えていただきたい。
(竹内委員)  人材の育成や産学官の連携、放射性廃棄物の問題などについては、原子力委員会としても検討してきたところである。産学官の連携については、例えば、資格認定制度など、最近の問題も具体的に検討してほしいと思う。
 それから、原子力の技術者の育成については、昔に比べると、かなり変わってきた。質や人数の問題もあるが、産学官で人が動くことができるような仕組みを作っていってほしい。特に独立行政法人になった後は、国の関与よりも自主的にやることが多くなると思うので、この仕組みを積極的に作った方が良いのではないかと思う。
 放射性廃棄物の問題については、とても大きな問題であると思う。これは二法人だけの問題ではなく、大学等の研究施設も同様であると思う。
(木元委員)  先ほど田川委員長のご発言の中で、SPring-8といった具体的な言葉があった。そういった言葉があると、なるほど、このようなことをやっている、それでは次に何が考えられる、といったように、次のステップに向けて関心を持つことができる。申し訳ないが、この報告書はお題目が書いてあるだけ、枠や手法が書いてあるだけのように見える。例えば、報告書に「大学と新法人の連携を強化する」とあるが、そうすると何が生まれ、どのようなことができる、独立行政法人になれば自主的にこのようなことができる、といったことを示してほしい。そういうところが分かりにくい。もう少し目に見える形でシンプルにまとめると良いと思う。
(田川委員長)  そのような具体的な検討も行っているが、対外報告という形になると、かなり抽象的な報告になってしまう。
(木元委員)  サブの資料でも良いと思うので、分かりやすいコメントでまとめてほしい。
(木村委員長)  原子力エネルギー関係であれば、新しいタイプの原子炉の研究などで、今まで以上に新法人と大学が連携して研究開発ができるのではないかと思っている。
(田川委員長)  放射線や加速器については、放射線医療などでかなり利用されているが、最先端の放射線やビームの技術を国民生活に寄与する形に持っていく、といった研究開発は欠けていると思う。これは日本だけの課題ではないが、そうした点について、とても心配している。SPring-8や中性子科学について、本当に国民生活に寄与できるのか、ということをきちんと考える必要がある。
(藤家委員長)  産業革命の頃は、大学で研究されたものが、すぐに社会に還元され広がっていった。原子力は、まさに今、そのような時代になっているのだと思う。そういった意味で、産学については、これからどうあって、それと新法人がどのように絡んでいくのか。その点についても議論することにすると、面白くなるのではないかと思う。
(木村委員長)  二法人の統合については、日本学術会議でも検討を続けていくので、また別の形で議論させていただきたい。
(藤家委員長)  アカデミアと我々とでは、ターミノロジー(用語)の中身が少し違っているのかもしれない。この報告では、「基礎基盤研究」と「目的研究開発」といった表現を使われているが、原子力委員会では目的のない研究はあまり扱っていないので、ほとんどの研究開発が「目的研究開発」に分類されてしまう。原子力委員会では、大型のものも想定しているので、そういうものは「プロジェクト型」といった言い方をしている。1つの例であるが、そういったターミノロジーの中身についての議論も必要かと思う。いずれにしても、新法人の発足まで2~3年の期間があるので、また議論させていただきたいと思う。
(木元委員)  やはり地味すぎると思うので、もっと明るく、夢がある、といったアピールができると良いと思う。

 (3)その他

  • 研究開発専門部会革新炉検討会の検討状況について、以下のとおり意見交換があった。
    (竹内委員)  5月29日(水)に第5回革新炉検討会を開催した。革新炉とは、一般的な軽水炉とは異なる、将来を担う原子炉のことだが、これからの原子炉は、燃料の製造や再処理などについても一緒に考慮すべきであり、「革新炉」という言葉よりは、「革新的原子力システム」と呼んだ方がふさわしいと思う。現在、革新炉検討会では、中間的なとりまとめを行おうとしているところである。
     この革新炉検討会の目的の1つは、少資源国である我が国において、エネルギーセキュリティをどのように確保するのかを検討することであり、必ずしも現在の軽水炉が理想的だとは言えない。こういった点について、軽水炉とセットで議論している。また、原子力産業の活性化や新産業の創出も必要である。革新炉は、必ずしも電力を作ることだけが目的ではない。このようなことが実現可能な仕組みを革新的原子力システムに求めたい。
     現在、そういったことについて整理し、コンセプトブックとしてまとめているところである。
     次回の革新炉検討会は、6月18日(火)に開催する予定であり、そこでコンセプトブックの最初の案を出したいと思っている。
    (遠藤委員長代理)  この検討は、誰を対象にして発信するのかが大きなポイントであると思う。その対象として2つのグループが考えられる。まずは国民全体であり、次は原子力関係者である。一般向けと専門向けを一緒にすることは難しいことだが、この両者に対して発信することが大切である。
     また、結果をまとめたからには、実現できるように動かなければならないが、こういうことは、これまでの原子力委員会に少し欠けていたことかもしれない。
    (藤家委員長)  革新炉については、我が国が国際的にリーダーシップをとる原子力システムはどのようなものなのか、どのようにリーダーシップをとっていくのか、が重要である。
    (竹内委員)  日本がすでに持っている革新炉のコンセプトはとても豊富なので、対外的にもっと使っていかなければならない。
    (木元委員)  そのように狼煙をあげると、足の引っ張り合いになることはないのか。
    (藤家委員長)  革新炉については、どれだけの時間を見るのかによってかなり違ってくる。大型か小型か、によっても違ってくる。ここで重要なことは、文部科学省や経済産業省で革新炉研究開発について公募を行っており、競争的な資金をかなり用意していることである。これは、米国のGEN-Ⅳ(第4世代原子力発電システム)の研究開発経費よりもかなり大きい。これには、アイデア次第で、アカデミアの方々も参加できる。このような時代が来ていることについては、木元委員の指摘のとおり、アピールが不足しているのかもしれない。
    (竹内委員)  その通りであり、国民の皆さんに対し、原子力の魅力をもう一度知ってもらう、ということが必要であると思う。
    (木元委員)  国民はどのようなところに魅力を感じるのか、ということについて、まず確認しなければならないと思う。

  • ITER計画について、以下のとおり意見交換があった。
    (遠藤委員長代理)  ITER計画については、先週の臨時会議で取り上げたが、今後、原子力委員会としてITER計画にどのように関与していくべきか、引き続き議論したい。検討すべきことは2点ある。1つは今後の政府間協議について、もう1つは原子力予算の中の位置付けについてである。
     1つ目の政府間協議については、今週第4回目の協議が行われており、これは年末まで続くことになると思う。この協議に原子力委員会が直接参加するわけではないが、肝心なことについては、原子力委員会としても意見を述べ、交渉方針に取り入れてもらう、ということが必要である。この交渉は決して容易なものではないが、原子力委員会としても、参加するからには勝つつもりで努力をしていきたい。
     2つ目の予算については、現在のように財政的に厳しいときに、原子力全体の中で核融合をどのように位置付けるのか、さらに核融合の中でITER計画をどのように位置付けるのか、ということが重要である。核融合は、ITERで採用されているトカマク型だけではない。これについては、核融合専門部会でもいろいろな意見が出ている。
     原子力委員会としては、こうした点について、たえず確認しながら、意見を表明していきたい。これは原子力委員会の権能だと思う。より積極的に発言し、発言したからには、それが実現されるように、ウエイトをかけて進めていくべきだと思う。
    (木元委員)  ITERの国内候補地が六ヶ所村に決まったが、やはり青森には、放射性廃棄物の件で反対派の方々がいる。こちら側が対外的に進めていっても、現地の方々が受け入れたくないとなると、モヤモヤとしてしまう危険性がある。そうした点についても、原子力委員会としてどのように対応していくのか、という視点が必要である。市民参加懇談会の視点から見ると、住民の皆さんはどのように理解しているのか、それを理解した上でこのようなことが考えられる、といったことを並行して考えていかないと、住民を無視して計画を勝手に進めているように見えてしまう。そういったことに対し、原子力委員会としてはどのように対応していくのかが非常に重要なことだと思う。一人一人が説明に行くこともとても大切なことだが、違った視点で広聴を行うことも必要かもしれない。ITER計画が具体化すると、そういった声がもっと強くなることもありうる。
    (遠藤委員長代理)  総合科学技術会議では、予算について一応結論が出たわけであるが、資源配分については、今後も総合科学技術会議と意思の疎通を図りながら進めていくべきだと思う。
    (木元委員)  原子力委員会としては、一方でそういったことを国のレベルで行い、他方で地元との話合いをどのように進めていくのかについて検討し実行する、ということをしなければならないのかもしれない。
    (遠藤委員長代理)  木元委員の指摘の通りである。名古屋は、かつてオリンピック開催候補地として立候補したが、負けてしまった。そのときの経緯をよく知っている。
    (木元委員)  否定的に考えている方々は、私たちの知らないところで、静かに輪を広げている、ということもあるようなので、それを考えておきたい。
    (遠藤委員長代理)  このITER計画については、次回も引き続き、原子力委員会としての関与の仕方や、どのように進めていくべきか、もう少し議論していきたいと思う。
    (藤家委員長)  原子力委員会としては、積極的に対応していきたいと思う。このITER計画については、原子力分野の中で見ていくことが決まったので、核融合ばかりでなく原子力全体の中で見ていく必要がある。今後も議論を続けていきたい。

  • 原子力の平和利用について、以下のとおり意見交換があった。
    (木元委員)  原子力委員会を外から見ると、原子力委員会はこのような場合にどのような考えを持っているのか、どのような発言をするのか、あるいは黙っているのか、そのように原子力委員会の存在を問う方がたくさんいる。最近では、福田官房長官があのようなご発言をされている。今は、非核三原則を見直すわけではない、とご発言しているが、その前に安倍官房副長官が、プライベートの講義の中でご発言している。そういったことを踏まえて、テレビや新聞で、「非核三原則」という言葉だけが踊っている。しかし、原子力委員会としては、「非核三原則の前に、原子力基本法があるのです、非核三原則は1967年に佐藤栄作総理が国会にかけて国是としたわけですが、その前に原子力基本法が制定されており、その第2条で、『原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、』とされています。ご発言する場合は、それを踏まえて発言していただきたい」と言って良いと思うし、言うべきだと思う。
     6月3日(月)に、福島県の佐藤知事から、プルサーマルについてご発言があった。これは、インターネットの情報であるが、「福島県の佐藤栄佐久知事は3日、東京電力が福島第一原発で今夏にも燃料を入れたいとしているプルサーマル計画について「凍結も含めて検討していきたい」と述べ、国の原子力政策の最大課題の推進に消極的な姿勢を示した。県内の原発立地地域の自治体の首長らとの会談で発言した。」とあり、知事は公的な場でご発言されている。地元の首長らは計画を早く実施してほしいと求めたが、佐藤知事は「テロや非核三原則が話題になっている今、プルサーマルを推進しろという理由が分からない。」とあり、非核三原則とテロをプルサーマルにリンクさせたご発言なので、原子力委員会としては、黙って見過ごすのはいかがなものかと思う。ペーパーを出す必要はないかもしれないが、プルトニウムに関してはそのような使い方はしない、目的のある使い方をすることが決まっている、ということを原子力委員会として主張する必要があるのではないかと思う。黙っていて、何のコメントも出さない、議題としても取り上げない、ということでは、原子力委員会は寂しいと思う。つまり、そういったことを議題にすることも原子力委員会であるし、それを外に向かってアピールするのも原子力委員会であると思う。
    (竹内委員)  この件については、地元の新聞でもたくさん取り上げられている。感想を述べると、原発立地地域の自治体の首長から県知事に対して、プルサーマルを早く実施してほしい、とご進言いただいたことについては心強く思っている。ただ、指摘の通り、非核三原則との関係が良く分からない。佐藤知事は、プルサーマルの意義・必要性について、あまりご理解いただいていないのではないかと思う。原子力委員会としては、機会を作っていただいて、直接いろいろとお話しをしたいと考えている。
    (木元委員)  内輪で議論するばかりでなく、そのようなメッセージを出せば良いと思う。私も対応したいと思う。それが原子力委員会の役目だと思う。
    (遠藤委員長代理)  憲法的な観点から見ると、福田官房長官のご発言の通りだと思う。しかし、問題はそういうことではない。我が国の原子力利用は平和に徹する、ということは原子力基本法に書いてある通りであり、非核三原則、これは国の政策であるが、平和利用しかしないのだと言明している。私は、それだけでは足りないと思っている。海外には、非核三原則というのは日本国内の政策であり、また法律も日本の国内法であるので、変えるつもりがあれば変えることができる、といったような見方がある。ここで、私が訴えたいことは、核武装しないことは日本の国益にかなうことであり、日本にとって1番得なのだ、ということであり、併せてなぜ得なのかという理由についても説明し、したがって原子力の平和利用に徹しているのだ、といったことを理屈でもって説明しない限り、国民感情のような情緒的なことだけでは、対外的な信頼は得られないと思う。そのような理屈とプルトニウム利用の透明性を示さない限り、だめだと思う。そういうことを合わせて、繰り返し国際的に発信していかなければならない。
     それから、プルサーマルは、そのような観点から余剰プルトニウムを持たないようにするため、つまりプルトニウムをなくすためにやっていることである。福島県知事の発言は少しどうかと思う。
    (木元委員)  だから、言う必要があるのだと思う。きちんとしたメッセージを伝えたい。ただ、遠藤委員長代理の発言については、誤解されては困るので言っておきたいが、我が国は損得で核兵器を持たないのではない。
    (遠藤委員長代理)  理屈で説明しない限り、外国の方は理解してくれないと思う。情緒的なことを言うのも大切であるが。
    (木元委員)  非核三原則や原子力基本法に則っとるのは、情緒的なことではない。なぜ私達は原子力基本法を策定し、「作らず、持たず、持ち込ませず」ということを国是としたのか。それは、日本は被爆国であり、核兵器がいかに悲惨なものかを分かっているからである。本当に誠心誠意平和利用以外はしないのである。だから、損か得かといった話ではない。
    (遠藤委員長代理)  「損か得か」ではなく、「理屈」と言った方が良いのだが、理屈でもって説明しない限り、日本のことだから、国民感情はいつでも動いている、また変わるぞ、と外から見られている。そうではないのだ、これが正しい方針だ、という説明が必要である。
    (木元委員)  非核三原則の精神は、ゆるがしがたい規範である。
    (遠藤委員長代理)  それは国内の規範であり、国際社会において常に通用する規範ではない。
    (木元委員)  私は、世界に通用するものだと思う。そこが少しちがうのか。「損得」で言うと、逆に誤解されると思う。
    (遠藤委員長代理)  それがない限り説得できない。理屈が大切である。
    (木元委員)  それは、対外的に、という意味か。
    (遠藤委員長代理)  そうである。
    (木元委員)  しかし、一般の国民の方にも聞こえる。
    (遠藤委員長代理)  情緒的なのが悪いと言っているわけではない。
    (木元委員)  「情緒的」というのは、「かわいそう、気の毒だ。」ということであるのか、これはルールであり、日本人の世界への誓いだ。
    (遠藤委員長代理)  外から見れば、変えることができるのではないか、となる。
    (木元委員)  変えないのである。平和を守る精神を日本人は持っている。それを強調しなければならない。ルールがあるからやらない、というだけではなく、なぜこのようなルールを作ったのか、といったおおもとの精神が存在している。
    (遠藤委員長代理)  それは否定しない。それだけでは足りない、ということを言っているだけだ。
    (木元委員)  それは分かるが、「損得」と言われると、そんなレベルの話ではないと思う。
    (藤家委員長)  憲法解釈については、これまで何度か議論してきたことである。原子力長期計画を策定する際にも、原点に戻って、広島・長崎が何であったのか、平和利用は何であるのか、を考えた。しかし、外国人が良く質問してくることは、そういうことではない。本当にそれは確かなのかと聞かれる。
    (木元委員)  やるわけがないのだから、「確かだ。」と言えば良い。
    (藤家委員長)  「確かだ」と言っている。例えば、我が国にとって核兵器を持つことの意味がいかにないか、ということを。
    (木元委員)  外国の方々は疑うかもしれないが、我々はこのような精神に則って、地球を守るためにやらないのだ、と言えば良い。それは少しもおかしくない。
    (遠藤委員長代理)  それはそれでいいと思う。それだけでは不足だと言っている。
    (木元委員)  誤解されないようにしてほしい。
    (遠藤委員長代理)  「理屈」である。
    (木元委員)  「理屈」のレベルの1つの考え方としてはあると思う。
    (遠藤委員長代理)  それだけでは、説得力がないと思う。
    (竹内委員)  今の議論を聞いていて、透明性があって良いと思う。
    (木元委員)  これについては徹底的に。同じ方向を向いているのだが、手法としては、私から見ると、「損か得か。」と聞いただけでその方が情緒的で、「えっ」と思ってしまう。それが国民感情だと思う。
    (藤家委員長)  どこを対象にして見るか、だと思う。いずれにしても、今度の話も、どこまで正確な情報に基づいてリアクションが起こったのかは別にすると、非常に健全である。
    (木元委員)  福田官房長官は、テレビ報道の中でそれに類することを、憲法に照らしても核兵器を作れないことはない、というようなご発言をされている。疑わしく思われる言動は、厳に慎んでいただきたいと思う。
    (藤家委員長)  TPOに関しては、良くなかったと思う。どのように対応したら良いか、私も先週から悩んでいる。
    (木元委員)  原子力委員会は、「これだけは分かっていただきたい、現にそのように疑惑を持たれてしまうような発言は慎んでいただきたい」、といったことを発言できる権限を持っている。そのようなときしか、原子力委員会は見えないと思う。
    (遠藤委員長代理)  私もTPOについては問題があったと思う。それを除けば、新しいことは何もない。法律解釈はこれまで通りのものである。
    (木元委員)  しかし、時機がこういった時機なのでまずい、ということが分からないのでは困る。非核三原則の問題だけではなく、原子力委員会は原子力基本法に則って存在しているので、原子力基本法についても申し上げなければならない。
     このような議論は、今後もしていった方が良い。
    (藤家委員長)  平和利用に限る、というのは5月28日(火)の定例会議で、プルサーマルに関連して声明を出している。
    (木元委員)  でも、福田官房長官はそれを読んでいらっしゃらないのだと思う。ここで議論するだけではなく、外に向けて発信していくべきだと思う。
    (遠藤委員長代理)  佐藤知事は、あまり理解されていないのだと思う。もちろんエネルギーセキュリティもあるが、プルトニウムを持たないための施策である。核燃料サイクルの中枢である高速増殖炉サイクルを回すための第1歩がプルサーマルである。
    (藤家委員長)  福島県知事がどのようなTPOで話されたか、1つは、「テロや非核三原則が話題になっている今、プルサーマルを推進する理由がない」ということであるが、もう1つは、核燃料サイクルを行うとプルトニウムが増えてしまう、これについてどうか、ということで各委員から意見があった。テロについては、IAEA(国際原子力機関)のフルスコープの保障措置を受け入れて、厳格な核物質防護措置を取っている。ここが違っている。非核三原則については、議論があったとおりで、昭和30年に制定された原子力基本法により、原子力の研究開発利用は平和の目的に限られる、原子力委員会はそのためにある。
    (木元委員)  その役割を発揮しなければならないのではないか。
    (藤家委員長)  それから、プルトニウムが増加する、というのは誤解だと思う。利用目的のない余剰プルトニウムは持たない、といった原則にたって、できたプルトニウムを燃やしてしまう、世界がその方向に動いている。アメリカは、核解体から出てくるプルトニウムを、半分は燃やして、半分はそのまま埋める、ということであったが、全部燃やすことになった。世界がその方向に動いている、という事実を分かっていただければ、このような発言はなかったと思う。
     どのように対応するかについては、時間が不十分でもあるので、再度議論したい。
    (木元委員)  佐藤知事は、こちらがいくらオファーしてもお会いになりたくない、とずっとおっしゃっているようだが、それは仕方のないことだ。しかし、これだけは理解してほしい、という主張は何らかの形でしていかなければならないと思う。
    (遠藤委員長代理)  私も賛成である。
    (藤家委員長)  1つ手配してほしいことがある。IAEAのRCA(原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定)が自動延長となる。原子力委員会としては、関心の強いところであり、FNCAとも関係してくるので、きちんと聞いておく必要がある。
    (嶋野企画官)  外務省に説明をお願いしたいと思う。早急に手配したい。

  • 事務局作成の資料3の第20回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。

  • 事務局より、6月11日(火)の次回定例会議の議題は、ITER計画政府間協議の結果等を中心に調整中である旨、発言があった。