藤家原子力委員長の海外出張報告について

平成14年6月11日
内閣府原子力担当

1.目的
 ロシア原子力関係要人との意見交換、ロシア・エネルギー技術研究所(NIKIET:Research and Development Institute of Power Engineering)において開催される原子炉研究開発に関する会議への出席、及びオブニンスクの物理エネルギー研究所(IPPE : Institute for Physics and Power Engineering)での意見交換等を行う。

2.出張者及び日程
(1)出張者:藤家 原子力委員長、内閣府原子力担当 菊池
(2)日 程:5月26日(日)〜30日(木)
5月27日(月)NIKIET主催の原子炉研究開発に関する会議出席
ソローニン原子力省第一次官との会談
アダモフNIKIET技術顧問(前原子力大臣)等との意見交換
5月28日(火)NIKIET主催の原子炉研究開発に関する会議出席
5月29日(水)ツロニコフIPPE所長等との意見交換

3.結果概要
(1)ソローニン原子力省第一次官との会談(5月27日)
  • 今回の会談は、本年1月に就任したソローニン原子力省第一次官と藤家原子力委員長の初めての意見交換であった。
  • 日本の長計にも示されている核燃料サイクルについての考え方は、ロシアのものと同じ方向性であることを確認した。
  • 日露協力は、高速炉とそれに関連する燃料サイクルの開発が主になることについて、共通の認識が得られた。
  • ロシアのBN−600を用いた解体核Pu処理処分への日露技術協力について、成果が上がっていることを確認した。
  • ロシア側より、核燃料供給サービス、極東での原子力発電建設等の産業分野での今後の日本との協力への期待が示された。
  • 次世代炉開発に関する目標及び国際協力の重要性等について、共通の認識が得られた。
  • 藤家委員長より、ソローニン第一次官の日本訪問への期待が述べられた。

(2)原子炉研究開発に関する会議(5月27日−28日)
  • 旧ソ連及びロシアにおける原子炉開発経験をテーマにした会議で、約300人の参加者があった。本会議は、旧ソ連による原子力開発の最初の段階に設立され、多くの原子炉の設計・開発を行ったNIKIETの50周年を記念して開催されたもの。
  • ソローニン原子力省第一次官の開会挨拶の次に、藤家委員長が海外招待者を代表し、アダモフ前原子力大臣の功績及びロシアと日本との協力の成果等を内容とした挨拶を行った。
  • 会議では、RBMK型原子力発電所、研究用原子炉、潜水艦用原子炉、宇宙用原子炉等の幅広い原子炉の設計、開発に関する成果の紹介があった。また、ITER、次世代炉等の将来の原子力に関する研究開発の状況についての紹介があった。更に、研究炉の中性子束の増大、原子炉のモニター及び制御の開発、燃料・材料開発、原子力工業における新しい情報・計算機利用等の要素技術に関する研究成果、今後の方向性に関する紹介があった。

(3)アダモフNIKIET技術顧問(前原子力大臣) 等との意見交換(5月27日)
  • アダモフ顧問の他、イワノフ原子炉研究所技術顧問(前第一次官)、ガバラエフNIKIET所長、及びオルロフNIKIET研究主席と意見交換を行った。
  • 高速炉及び関連する燃料サイクルの開発は、将来のエネルギー源確保のために必要であることが双方で認識された。また、この分野の先進国である日米欧露の協力強化が必要であることが確認された。
  • 藤家委員長より、今月ドイツにおいて開催された「21世紀の核燃料サイクルシステムに関するワークショップ」のフォローアップ会議を今後企画しており、そのロシア側メンバーをアダモフ氏が推薦するよう依頼した。アダモフ氏より、オルロフ研究主席が推薦された。

(4)ツロニコフIPPE所長等との意見交換(5月29日)
  • ツロニコフ所長よりIPPEの研究開発の状況について紹介があった。IPPEでは、加速器・レーザー開発、燃料開発、高速炉開発、解体核Pu処理処分、アイソトープ製造等に重点を置いて研究開発を進めている。
  • ポプラフスキー副所長より日露の高速炉サイクル関連の協力について以下の提案があった。
    1) 日本原子力産業会議とロシアの間で15年間行われてきた「日露高速炉ワークショップ」が、ここ2年間開催されていないので再開を期待したい。
    2) 日露FBRサイクル協力の促進への期待が示された。
    3) IPPEの施設を活用した解体核Pu処理処分の研究協力の拡大への期待が示された。
  • トシンスキー部長より、タービンは既存のVVERのものを利用した鉛冷却小型モジュラー高速炉の概念についての紹介があった。これにより新しいものを全て作るよりコストが2分の1になるとのことであった。
  • 多くの冷却材に対して熱特性実験ができる実スケール実験装置の紹介があった。

5.所感
(1)新しく就任したロシア原子力省第一次官の原子力開発(特に、高速炉及び関連する燃料サイクル)に関する考えは、我が国の方針と一致しており、今後の協力のベースとなると考えられる。
(2)解体核Pu処理処分の日本の協力に対して、ロシア側も高く評価していることが確認された。
(3)日露FBRサイクル協力に関し、ロシア側の協力を加速していきたいという提案に対して、今後の進め方を関係機関と協議していく必要がある。
(4)NIKIETは多くの原子炉の開発を通して、システム・インテグレーションに関する優れた知見・経験を持っていることが披露された。その手法は、日本の各研究機関における今後の研究開発の参考になると考えられる。