国際熱核融合実験炉(ITER)計画について

平成14年5月29日
総 合 科 学 技 術 会 議

 ITER計画については、昨年12月、科学技術政策担当大臣と有識者議員により「ITER計画に対する考え方について」が報告されたところである。この中で、我が国は、「ITER計画に参加することが望ましく、さらにこれを国内に誘致することの意義がある」との判断が示された。その後、総合科学技術会議においては、欧州を初めとする関係諸国の状況把握に努めるとともに、計画実施における経費確保等の分析を行ってきたが、このたび以下の結論に達した。

 我が国は、ITER計画が国家的に重要な研究開発であることに鑑み、政府全体でこれを推進するとともに、国内誘致を視野に、政府において最適なサイト候補地を選定し、ITER政府間協議に臨むことが適当である。その際、参加極間の経費分担については、全ての参加極が一定規模以上の貢献を行う中で、経済規模を反映したものとすべきである。なお、参加極間で費用負担と得られる成果のバランスが取れるような枠組みの形成に努めることとする。
 最終的な参加ないし誘致は、政府間協議の推移や国内外の情勢の進展を踏まえ、費用対効果を考慮しつつ決定することが適当である。
 なお、ITER計画の推進にあたっては、次の項目に留意する必要がある。

  1. ITER計画については、政府全体でその推進に取り組むとともに、所要経費については、第二期科学技術基本計画を踏まえつつ、他の科学技術上の重要政策に影響を及ぼすことがないよう、既存の施策の重点化、効率化を図り、原子力分野の予算の範囲内で確保すること。

  2. 予定外の経費の増加や計画の進捗の遅れが無いよう、厳密な計画の管理と適切な評価を継続的に行い、必要に応じ、我が国の関与の在り方も含め、見直しを行うこと。

  3. 国内の核融合研究については、重点化、効率化を図りつつ、ITER計画と有機的に連携する体制を構築すること。この際、核融合研究開発を支える人材の育成、各種プラズマ閉じ込め方式の研究や、中性子による放射化の少ない材料等の開発等に配慮すること。

  4. ITER計画について国民の理解の促進に努めること。また、誘致する場合には、安全性の確保と放射化物の処理について、周辺住民への説明や放射化物の処理費用の必要十分な積立ても含め、十全に対応すること。

  5. ITER計画の実施に合わせ、核融合エネルギーの実用化に向けた研究開発を加速する議論がある。それとの関係で、材料開発を目指した国際共同研究計画が具体化する可能性があること。