第19回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年5月21日(火)10:30〜11:25
2.場所 中央合同庁舎第4号館7階 共用743会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)、川口参事官補佐
経済産業省原子力安全・保安院新型炉等規制課
 安澤統括安全審査官、鈴木上席安全審査官

4.議題
(1)核燃料サイクル開発機構 高速増殖原型炉もんじゅの原子炉の設置変更
(原子炉施設の変更)について(諮問)
(2)藤家委員長の海外出張報告について
(3)藤家委員長の海外出張について
(4)その他

5.配布資料
資料1−1 核燃料サイクル開発機構 高速増殖原型炉もんじゅの原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(諮問)
資料1−2 高速増殖原型炉もんじゅの原子炉設置変更許可申請の概要
資料2 藤家原子力委員会委員長の海外出張報告について
資料3 藤家原子力委員会委員長の海外出張について
資料4 第18回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)核燃料サイクル開発機構 高速増殖原型炉もんじゅの原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)について(諮問)
 標記の件について、安澤統括安全審査官より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(竹内委員)  高温ラプチャ型破損に関する安全評価では、この破損が発生した場合の破損伝播の防止について評価したのか。
(安澤統括安全審査官)  伝熱管の破損形態としては、高温ラプチャ型の他にウエステージ型が考えられる。ウエステージ型の破損とは、ナトリウムと水の反応で生じたナトリウム酸化物のジェット流が、伝熱管の管壁を削って破損に至る、といった現象であるが、これについては問題がないことを既に確認している。他方、高温ラプチャ型の破損については、英国のPFR(高速原型炉)で高温ラプチャ型の破損事故があったため、我が国の高速増殖炉では大丈夫なのか、ということが話題となり、今回評価することになった。
(藤家委員長)  英国のPFRの事故に関しては、その原因についてもきちんと説明を追加してほしい。
(安澤統括安全審査官)  日本の「もんじゅ」と英国のPFRでは、水漏えいに対する設計思想が異なっている。PFRでは、蒸気発生器の内筒が「もんじゅ」のような溶接構造でないため、漏えい流が生じ、その漏えい流が伝熱管を振動させて破損に至った。また、伝熱管の破損を検出するための検出器が故障していたこともあり、最終的に高温ラプチャ型破損に至った。
  「もんじゅ」はPFRと設計が異なるものであるが、このPFRの事故があったということで、念のため今回の評価が実施された。
(藤家委員長)  事故時の温度上昇は、ウエステージ型の場合に比べてどうか。
(安澤統括安全審査官)  温度上昇は、ウエステージ型の場合と変わらない。
(藤家委員長)  今回の評価は念のために実施した、という解釈だと思う。
(安澤統括安全審査官)  そのとおりである。材料の健全性の観点から見ても問題がないことを念のために再度確認した、ということである。
(藤家委員長)  ナトリウムが漏えいしたときに、ドレン(ナトリウムの抜き取り)をするかどうかについて難しい判断を迫られた。これは財産保護に関わる問題である。私は緊急ドレンを1度ぐらい実施しても問題がないと思っているが、今回の改造では、その点について全く問題がなくなるような設計にした、という解釈で良いのか。
(安澤統括安全審査官)  そのとおりである。
(遠藤委員長代理)  この諮問の後のスケジュールについて紹介してほしい。
(安澤統括安全審査官)  この設置許可申請書が許可された後に、設計及び工事の方法に関する認可申請が行われる。これは、一般的に「詳細設計」と呼ばれている段階であり、より具体的な設計について、事業者が原子力安全・保安院に申請することになる。その申請の認可の後に工事が開始され、工事の進捗に応じ使用前検査等が実施され、その検査の後に運転が開始されることになる。
(遠藤委員長代理)  その過程では、どの時点で地方公共団体が関与するのか。
(安澤統括安全審査官)  設置許可に関する事前協議では、地方公共団体の長は、設置許可を申請することに関しては妥当だと判断する、ただし、工事を開始する段階で再度検討する必要がある、と発言している。そのため、設置許可の後あるいは設計及び工事の方法に関する認可申請の後に、地方公共団体と再度協議が行われる予定である、と事業者から聞いている。
(遠藤委員長代理)  資料にある「工事計画」では、平成14年9月から開始となっているが、そういった過程を考慮すると、現実的な計画でないと思う。
(安澤統括安全審査官)  この設置許可申請の1次審査及び2次審査が終わり、計画について将来の見通しがついたときに、現実的な計画が提出されると思う。この計画は、設置許可申請を出す時点での事業者側の希望であり、審査に時間がかかったりして、計画どおりにならない場合が往々にしてある。これは、「もんじゅ」ばかりでなく軽水炉の申請においても同様である。
(藤家委員長)  以前の申請において、審査の途中で年度が変わったため、一部補正の申請を受けたことがあった。この設置許可申請については、原子力安全・保安院でも、がんばって急いで審査されたのだと思う。
(竹内委員)  「もんじゅ」については、これまで長い間議論されているが、私個人としては、「もんじゅ」は我が国にとっても国際的に見てもとても重要な財産である、と考えているので、なるべく早く運転を再開できるよう進めてほしい。
(藤家委員長)  工事計画については、具体的になったら改めて報告してほしい。
(安澤統括安全審査官)  ある程度見通しがついた段階で、この工事計画の変更があり得ると考えている。現時点では、事業者がその見通しをつけることは難しいのではないかと思う。
(藤家委員長)  原子力委員会が取り扱う「平和利用」や「経理的基礎」について、今日うかがった範囲では大きな問題があるとは思っていない。いずれにしても、これは非常に重要な案件であるので、引き続きよろしくお願いしたい。

 (2)藤家委員長の海外出張報告について
 標記の件について、川口参事官補佐より資料2に基づき説明があり、以下のとおり意見交換があった。
(藤家委員長)  サンタフェ会議では、我が国のプレゼンスを明確に示すことができ、私ばかりでなく米国の参加者も非常に心強く感じられたのではないか、と思う。ラアーグ再処理工場では、日本原燃から訓練を受けに来ている方々と1人ずつ意見交換をすることができた。各々自分の言葉で意見を述べていただき、非常に頼もしく感じた。カールスルーエでのワークショップでは、核燃料サイクルシステムの将来像について意見交換を行った。ここで米国やEU、ロシア、日本が発表した内容のような方向に、今後の原子力が進んでいくのではないかと思う。
(遠藤委員長代理)  米国における最も重要な課題は、ユッカマウンテンの件と原子力発電所の新規発注の件であると思う。ユッカマウンテンの件は、上院で解決されるのではないかと考えているが、新規発注についてはどうであったか。
(藤家委員長)  米国では、2010年計画が具体的に進んでいる。火災事故で休止中だったブラウンズフェリー原子力発電所1号機の運転が再開されそうである。この発電所は、出力アップも図られるようである。米国におけるここ数年間の原子力発電所の稼働率上昇が、こういったポジティブな方向に引っ張っていっているように思う。ただ、PBMR(ペブルベットモジュール炉)については、どこまで具体性を持つことができるのか少し心配している。2010年計画では、軽水炉路線で進むという答もありうると考えている。
(遠藤委員長代理)  ドイツでは9月に連邦議会選挙が行われるが、もし政権交代があった場合、原子力政策はどうなるとお考えか。
(藤家委員長)  ドイツは非核保有国であり、我が国にとって特に大切な国である。バイエルン州、バーデン・ビュルテンベルク州、ヘッセン州には原子力発電所が立地されており、これらの州は原子力発電についてポジティブにとらえてくれている。次回の選挙では、バイエルン州のシュトイバー氏がドイツ連邦首相候補として擁立されている。彼を支持しているCDU(キリスト教民主同盟)は、脱原子力協定の撤回や原子力への復帰を公約としているので、選挙結果によっては、そういったことが十分にあり得ると思う。また、ヨーロッパ全体で政治情勢の変化が起こりつつあり、原子力にとってポジティブな方向へ次第に変わってきていると感じている。
(竹内委員)  米国でも、高速増殖炉核燃料サイクルやプルトニウム利用について、前向きに考え始めているように思っているが、この点について現地ではどうであったか。
(藤家委員長)  川口参事官補佐からの説明で、「米国国家エネルギー政策における高速炉及び核燃料サイクルの位置付けについては、短期的ではないものの、長期的課題として含まれていると考えている。」とあったが、これは、DOE(米国エネルギー省)のマーカス原子力科学技術局次長の発言ではなく、別の方の発言であったので、これを米国の政策ととらえるのは早計かもしれない。しかし、いずれにしても、ブッシュ大統領のエネルギー政策が表明されてから、世界全体が再び核燃料サイクル路線に戻ってきたのではないか、と感じている。それを再確認できたのが、ドイツのカールスルーエでのワークショップであった。我が国は、これまで核燃料サイクル路線を進めてきたが、世界においてもこれから花が咲くのではないかと思う。
(遠藤委員長代理)  米国で、なるべく早くポジティブな展開があってほしいと思っている。
(藤家委員長)  その通りであり、賢人会議を早く開催したいと思っている。
(竹内委員)  賢人会議は、どのような構成にしたいとお考えか。
(藤家委員長)  これから検討するところである。原子力政策について、包括的な議論ができる場を設けたいと思っている。

 (3)藤家委員長の海外出張について
 標記の件について、榊原参事官より資料3に基づき説明があった。

 (4)その他
  • 5月20日(月)に開催された「第5回原子力二法人統合準備会議」について、以下の発言があった。
    (竹内委員)  この会議では、各方面の有識者の方々からいろいろな意見を聴くことができ、非常に有意義であったと思う。
     最近の原子力界は、特に若い世代から見ると、魅力を失ってきているのではないかと思う。今回の会議では、この原子力二法人の統合を機会に、原子力の再生、いわゆる原子力ルネッサンスをどのように進めていくのか、といったことについて意見があり、前向きで良い議論であった。
     また、私もとても気にしていることであるが、各法人が抱えている放射性廃棄物について議論があった。これは、このままにしておくと、各法人にとって将来大きな負担になる。この問題は、通常の予算内での処理は難しいので、特別な方策が必要だと思う。
    (藤家委員長)  この会議では、具体的な議論はしなかったが、これからもこの課題について時機を見て、原子力委員会としての見解を表明していく旨を申し上げた。
  • 事務局作成の資料4の第18回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。

  • 事務局より、5月28日(火)に次回定例会議が開催される旨、発言があった。