第17回原子力委員会定例会議議事録(案)

1.日時 2002年4月23日(火)10:30〜11:15
2.場所 中央合同庁舎第4号館6階 共用643会議室
3.出席者
藤家委員長、遠藤委員長代理、竹内委員
内閣府
 浦嶋審議官
 榊原参事官(原子力担当)
財団法人電力中央研究所狛江研究所
 井上研究参事
原子力総合シンポジウム運営委員会
 岡委員長(東京大学工学系研究科附属原子力工学研究施設教授)

4.議題
(1)電解還元技術を用いた酸化物燃料の乾式簡易処理法について
(2)藤家委員長の海外出張について
(3)第40回原子力総合シンポジウムの後援名義について
(4)その他

5.配布資料
資料1 核燃料サイクルの新しい展開について
 −乾式リサイクル・金属燃料FBR酸化物燃料の電解還元−
資料2 藤家原子力委員長の海外出張について
資料3 第40回原子力総合シンポジウム・プログラム
資料4 第16回原子力委員会定例会議議事録(案)

6.審議事項
 (1)電解還元技術を用いた酸化物燃料の乾式簡易処理法について
 標記の件について、井上研究参事より資料1に基づき説明があり、以下のとおり質疑応答があった。
(遠藤委員長代理)  「乾式法」の経済性や核拡散抵抗性などにおける優位性については良く分かるが、なぜこのように優れた技術が世界で主流となっていないのか。
(井上研究参事)  これまでの再処理方法(ピューレックス法)は、軍事目的の技術から派生して開発された技術で、プルトニウムを単独で分離する点において課題がある。そこで、プルトニウムなどの単独回収が困難である、つまり核拡散抵抗性の高い「乾式法」の研究開発が進められているが、今のところ実用化にまでは至っていない。この方法は、今後、核燃料サイクルを確立していく上で、非常に高いポテンシャルを有しており、欧米においても盛んに研究開発が進められている。
(遠藤委員長代理)  軍事利用と関係のない我が国の場合はどうか。
(井上研究参事)  「乾式法」については、日本では昭和60年から本格的に研究開発が始まった。「乾式法」の基礎研究については、1950年代にかなり行われていたが、「ピューレックス法」が再処理方法に選択されたので、それ以降は研究が凍結した状態であった。しかし、15年程前から、米国において、原子炉と核燃料サイクル施設が一体となったコロケーションの概念が提案され、米国EBR−IIとその燃料サイクル施設を使って、再び研究開発が始まった。この方法の実用化(商業的に用いるには)はもう少し時間がかかるかと思う。
(藤家委員長)  軽水炉でMOX燃料を燃やすことができる、ということは周知の事実であり、その導入に合わせて、開発途中の「乾式法」ではなく、既存の技術である「ピューレックス法」が採用されたことは仕方がなかったことである。ただ、実際に金属燃料を高速炉で燃やすことになるのかどうかについては少し疑問である。MOX燃料の融点は約2800℃であるのに対し、金属燃料は約1200℃と融点が低い、といった欠点がある。この欠点をどのように克服するのか。これの検討には、もう少し時間が必要であると思う。
(遠藤委員長代理)  この「乾式法」で、MOX燃料の製造はできるのか。
(井上研究参事)  この方法は、基本的に高速炉用の金属燃料の製造に適している。
(藤家委員長)  MOX燃料の製造が全くできないというわけではない、と思っている。
(井上研究参事)  藤家委員長のおっしゃるとおり、ここで得られた金属を酸化物に転換することはできるが、経済性を考慮すると、高速炉用の金属燃料の製造の方がより適している。
(竹内委員)  燃料の製造過程でプルトニウムを添加するとのことだが、どのくらい添加するのか。
(井上研究参事)  燃料の種類によって異なるが、高速炉用燃料のプルトニウムの割合は15%程度であり、その割合のうち10%程度を添加することになるかと思う。
(竹内委員)  そのプルトニウムは、軽水炉サイクルで生成されたものを利用するのか。
(井上研究参事)  そのとおりである。六ヶ所村の再処理施設などで生じたプルトニウムを利用すれば、非常に合理的である。
(竹内委員)  コロケーション施設でのコストは、「ピューレックス法」と比べてどうか。
(井上研究参事)  電解還元については、まだ始めたばかりなので具体的には示すことができないが、プロセスが簡素なため経済的な有利さは期待できる。また、金属燃料FBRと電解精製による燃料リサイクルについては、実用化戦略調査研究でも評価されているように、経済的なメリットがある。電解還元を使ったプロセスについては、これから検討していきたいと考えている。
(竹内委員)  「乾式法」では、スケールメリットはあるのか。
(井上研究参事)  「乾式法」は、そこで用いる各々のプロセスがバッチ処理(一括的、自動的な処理)になっているため、規模を大きくすればメリットが増える、といったものではない。しかし、この方法は、プロセスが極めて簡単であるため、各段階のコストが低い、といったメリットがある。
(竹内委員)  「電解還元法」では、最終的にインゴット(鋳塊。後で加工や最溶解などを行う目的で、目的に適した大きさ・形状に鋳造した金属塊)のようなものが生成されるのか。
(井上研究参事)  そのとおりである。資料の14頁にあるように、電解還元を行うと、不要な物質が溶出し、スポンジ状の金属が回収される。その後、陰極処理で塩(えん:陽イオンと陰イオンが電荷を中和する形で生じた化合物)を蒸発させると、最終的にインゴットが生成される。
(竹内委員)  そういった方法では、その生成物に不純物がかなり多く含まれていたり、不均質になったりするのではないか。
(井上研究参事)  この生成物の中には、白金族元素などの核分裂生成物が含まれている。
(竹内委員)  高速炉用の燃料にするためには、生成されたインゴットをさらに精製する必要があるのではないか。また、そのための施設が他に必要になるのではないか。
(井上研究参事)  さらに精製する必要はないと考えている。この生成物を溶解してプルトニウムを添加すれば、高速炉用の金属燃料になる。この中に不要な物質が残ったままでも、燃料として燃やすことができる。これについては、実験を行い、不要な物質が5%ぐらい含まれていても、燃料として問題がないことを確認している。
(藤家委員長)  「電解還元法」では、核反応を妨げるサマリウムを溶出させることができる。これは、この方法の優れている点である。キセノンは、この段階ではなくなっているのか。
(井上研究参事)  既になくなっている。高速炉で燃焼させる上で障害となるような物質もほとんど残っていない。
(竹内委員)  この「電解還元法」については、既に特許化しているのか。
(井上研究参事)  電力中央研究所では、特許の申請を行い、既に受理されている。この方法のヒントは、ケンブリッジ大学の先生が、2年程前に科学誌「nature」で、酸化チタンから金属チタンを工業的に製造することが可能であるとしたことにある。また、米国アルゴンヌ研究所、電力中央研究所及びBNFL(英国原子燃料会社)が研究開発を進めている。BNFLでは、別の方法について特許の申請を行っている。
(藤家委員長)  この方法について、今後いろいろなところで紹介されることになると思うが、この技術を使うことで、核燃料サイクルはどのようになるのか、といった点をもう少し分かりやすく重点的に説明していただく方が良いと思う。

 (2)藤家委員長の海外出張について

標記の件について、榊原参事官より資料2に基づき説明があった。

 (3)第40回原子力総合シンポジウムの後援名義について
 標記の件について、岡委員長より資料3に基づき説明があり、以下のとおり発言があった。
(藤家委員長)  原子力委員会がこのようなシンポジウムを後援することは、大変結構なことだと思う。ただ、今後は、事前にわざわざご説明いただくより、事務的な手続は別途行い、シンポジウムの後にその成果を含めて定例会議でご紹介いただいた方が良い、と考えている。原子力委員会の後援については、事務的にも問題がないので、認めることとする。

(4)その他
  • 事務局作成の資料4の第16回原子力委員会定例会議議事録(案)が了承された。
  • 事務局より、5月14日(火)に次回定例会議が開催される旨、発言があった。