(参考2)

各分野における研究評価の実施状況について

1.物質・材料基盤技術分野

 本分野の7終了課題のうち、6課題についてはWG委員9名出席のもと平成13年12月18日にヒアリングを行い、当日ヒアリングができなかった1課題については、平成13年12月27日に主査、副主査の2名が他委員の書面でのコメントも考慮してヒアリングを行った。

1)課題評価に際して重点を置いた点
 審査にあたっては、原子力の安全に寄与する新材料・新技術の開発研究として、あるいは放射線を高度に利用して物質の分析計測を行う基盤研究として、原子力試験研究にふさわしい結果を出しているかどうかに重点を置いて評価を行った。

2)評価結果概要
 現在と将来の原子力プラントの安全に寄与する炉心材料の新しい評価技術の開発において、および放射線を高度に利用して物質の分析と計測を高効率・高精度でおこなう基盤研究において、7件のうちAが2件、Bが5件であり全体として当初の計画どおりあるいはそれを上まわる成果が得られている。
 評価にあたっては、研究成果が実用化につながるなど積極的に活かされるように、適切な共同研究や研究交流を行うこと、成果発表は当該分野のみでなく原子力分野や異分野にも行うとともに論文だけでなく特許申請を行うことが望ましいなどの提言を行った。


2.生体・環境影響基盤技術分野

 本分野の16終了課題については、平成13年12月27日に、10名のWG委員が出席して、ヒアリングを行った。

1)課題評価に際して重点を置いた点
 評価に当たっては、「原子力試験研究の事後評価の観点について」の内容を基本方針としつつ、各課題が採択されたときの初期条件は何であったか、を念頭においてヒアリングを行うと共に、採択時の初期条件が不明な課題すなわち事前評価が行われなかった課題については、当該課題が関係する学問分野での国内外の研究の進捗具合と研究水準を勘案した。また、副次的成果が得られた課題については、その成果の水準の高低も考慮した総合評価を行った。ただし、副次的成果はあくまで「副次的」であることは申すまでもない。

2)評価結果概要
 C評価になった1つの課題については、研究開始前に事前評価が行われておらず、放射線生物学の専門家がもし研究計画に参画していたなら避けられたであろう初歩的な段階からの実験が行われており、得られた結果も、当該学問分野では、新しい成果としての審査に耐えられるレベルには達していなかった。


3.知的基盤技術分野

 本分野については、12月10日に6名のWG委員が出席してヒアリングを行なった。本年度終了課題は2課題で、いずれも国土交通省(独)海上技術安全研究所が行なった研究である。

1)課題評価に際して重点を置いた点
 研究それ自身として国際的国内的に優れているのみならず、原子力研究として意味のある成果を出したか。特に、この分野では、計算科学技術や知能システムを、原子力プラントの管理や安全性や長寿命化のためにどのように応用しようとしているのかを重点的に評価した。

2)評価結果概要
 後24の課題は、複雑形状をもつ遮蔽体の安全性を、実験およびモンテカルロ計算によって分析し、精度良く推定する手法を提案したもので、そのデータがハンドブックにまとめられ、日本原子力学会の標準委員会において標準データの候補として検討されている点は評価できる。ただし、査読つき論文発表が若干少ない点が残念である。
 後25の課題は、使用済み核燃料輸送における中性子遮蔽に関する研究で、実験結果を計算コードと対比し有用な結果を得ている。しかし、事例研究に留まり知的基盤としての一般化への展望が不足している点が残念である。
 以上2件は、ほぼ予定通りの成果を出していることからBと評価された。


4.防災・安全基盤技術分野

 本分野の12終了課題について、平成13年12月27日に10名のWG委員が出席して、ヒアリングを行った。

1)課題評価に際して重点を置いた点
 防災・安全基盤技術分野では,次の観点を意識して事後評価を実施した。
 (1)防災・安全分野の研究は一般大衆の原子力に対する不信感を拭う上で特に重要である。
 (2)原子力における防災・安全性は他の分野に比して特に厳しいものを求められており,原子力分野のみならず,各種産業界をはじめとして広く一般の研究組織,研究者の協力が不可欠である。
 (3)一般に,当該分野における研究は原子力試験研究としての認識に欠ける面がある。原子力以外の分野の研究者,研究組織が研究成果を如何に積極的に原子力に反映させるかが,当該分野の研究促進に重要である。
 12件の終了課題について書類審査および実施担当者からのヒヤリングを実施した結果、当該分野では全体として良好な研究成果が得られていると判断され,総合評価としてA:7件,B:5件とした。

2)評価結果概要
 A評価とした課題のうち,「原子力施設における火災安全に関する研究」,「高レベル放射性廃棄物の地層処分用合成緩衝剤の製造技術に関する研究」,「放射性廃棄物地層処分環境下での応力腐食割れ挙動とその抑止技術に関する研究」および「海域活断層の三次元調査:デモンストレーションサーベイ」は,優れた研究成果とその公表を積極的に行った点で特に高い評価を得たものであるが,いずれも原子力機関以外の専門家集団による研究であり,今後,原子力関係学会・機関とのさらなる連携,協力,成果の反映が望まれる。「機器・配管系の経年変化を伴う耐震安全裕度評価手法の研究」,「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する地殻変動及び低確率天然事象の研究」および「地盤条件等を考慮した設計地震動の高精度化の研究」は,軽水炉の寿命評価や地質環境の将来予測,第4紀立地における基本的な課題に対して方向性を明らかにする成果が得られており,今後も引き続き研究の深化,データの蓄積が期待される。
 B評価の5課題においては,いずれも着実に研究を進展させ,一定またはそれ以上の研究成果が得られているが,それらの実際の現場への適用や実用化にあたっては,原子力関係機関との密接な連携や協力が必要と判断される。
 なお,我が国における当該分野の研究は,原子力関係機関とそれ以外の研究機関に分かれて競合的に実施されてきているが,研究の円滑な進展,研究成果の適切な反映,研究資金の効率的運用等の観点から,これが将来的にも適当であるか否かに関して,今後議論する時期に来ていると考えられる。